『迷走列車2』




の名指し? に、赤い鎧の男が目線を へ向ける。

「召喚師が圧制をしているからといって、召喚術を無くしては街は機能しない。そんな単純な事を分らぬ汝ではあるまい。愚かだな」

しみじみ言って頭(かぶり)を振る の態度と容姿がかみ合わない。

驚くアキュートメンバー。

「一つを得るためには何かを犠牲にしなければならない。綺麗事を並べるつもりなら容赦なく斬り捨てる」
赤い鎧の男が感情の篭らぬ声音で へ言った。

「悪いな。僕は強欲だ。僕が大切だと想う人達の生活を護ろうとして何が悪い? 解釈と見解の相違だな。
まぁ、これで互いに正義のありどころが違うと宣言しあった訳だ。遠慮なく蹴散らせて貰うぞ」

短剣を抜き放ち不適に微笑む はすこーし悪人面。
これではどっちが正義の味方なのだか分らない。

「レイド! ボケーッとしてないで立つ立つ!」
気がつくとレイドの傍らにアカネが立っていて、レイドの腕を掴む。
「一人で行くなんて無謀だな。俺のことを笑えないぜ」
アカネと同じく剣を構えて周囲を窺いながら、ローカスも屋根上に上ってる。
「そうですの! ますたーはとっても怒ってますからね」
ガウムに助けられ屋根上にのぼったモナティーが精一杯凄みを利かせ、レイドを叱った。

「すまない……皆」
嬉しい反面申し訳ないと感じる。
レイドが殊勝な態度で頭を下げれば、アカネとローカスが笑った。

「大きなお世話って言うの? トウヤとハヤト。それに と一緒に居ると感染っちゃうみたいなんだよね。でもアタシ、こーゆうの嫌いじゃないよ」
器用に片目をつぶってアカネがおどける。
「悪い気分はしないな」
ローカスも薄く笑ってレイドの肩を叩いた。

「呑気に語らうならとっと前進。あの頑固鎧集団を蹴散らすぞ」
岩棚から降り注ぐ弓矢。
短剣で薙ぎ払い が和むレイド達を怒鳴りつける。

の怒声に慌ててアカネとローカス、ガウムが岩棚へ飛び移った。

「では遠慮なく〜」
人差し指と中指。
間に挟んだ投具を弓兵の手へ投げ放ちアカネが岩棚を舞うように移動。

くの一と名乗っただけはある。
アカネの奇襲にローカスの止め。
ガウムの伸縮自在な体が兵士達の足を混乱させ、狭い岩場が一層狭くなる。

「ペンタ君ボムですの〜」
最後尾ではモナティーがペンタ君ボムを連発。
もレイドと共に岩場を駆け抜け、アキュート兵達を確実に蹴散らしていく。

「驚きです。寄せ集めの人々がこのように統制された動きを取れるとは」
槍を振るいながらペルゴは驚きの声を漏らす。
「当然だ。僕が自ら教育したのだぞ」
槍の刃先を短剣で弾き が自慢した。
「そうですか」
無邪気に自慢され、ペルゴは逆に毒気を抜かれて間抜けな顔で相槌を打つ。

ペルゴの脇を縫いスタウトが剣を横に薙ぐ。
スタウトの足元にアカネが投具を放ちスタウトの動きを一瞬止めた。

「ちっ」
スタウトは舌打ちする。
スタウトの動きが止まった瞬間に は素早く後退し、ペルゴとスタウトの頭上に降ってくるのはペンタ君ボム。
激しい爆発音と共に足場が崩れペルゴとスタウトは岩場から落下する。

「応援班! その二人を助けておけ」
岩棚の下に到着したトウヤ達が降ってくるスタウトとペルゴの姿に大騒ぎ。
は言うだけ言って今度は赤鎧の男を護るように立ちはだかるセシルに近づく。

「ラムダ様には近づかせない」
決意の篭った瞳を持ったセシル。

細身の外見からは想像もつかない、破壊力のある足の一撃。
砕ける岩に は目を細める。

「あの赤鎧はラムダというのか」
対する の返答はこれだ。
「え、ええ」
やっと名前が分かったと喜ぶ に、セシルもどうしたものかと動きを止める。

人の神経を逆撫で。
いや、逆撫でよりももっと酷くズタズタに切り裂く言動をとったかと思えば。
気が抜け落ちるくらいユルーイ反応を見せる。

「レイドとラムダは顔見知りか? 互いに表情が硬いが」
更に敵であるセシル相手に真顔で問いかけてくる。
振り上げようとした足を地面へ下ろし、セシルは苦笑した。

「ラムダ様は騎士団の団員だったの」
自分から言い出せるのはこれだけ。
説明を終え脚を振り上げたセシルの動作に、 は感謝の言葉を口に出し消える。

「!?」
真正面の が姿を消し、代わりに二段下の足場からアカネが投具を投げる。
セシルは咄嗟に脚の武具で投具を弾き返した。

「すまないな」
の声が背後からしてセシルの意識はそこで途絶える。

気を失ったセシルの身体をそっと岩陰に隠し は睨み合うレイドとラムダに近寄った。

火花が散るというか。
ラムダの鋭い眼光にレイドが怯んでいる情けない状態である。

「俺はお前が騎士団へ残り、騎士団で戦うものだと信じたのだ。なのに……」
低い声でラムダが口を開く。
「……」
レイドはラムダの厳しい言葉に俯いた。
説教をする教師と叱られる生徒のよう。

ラムダとレイドを交互に見遣り は小さく鼻を鳴らす。

「俺があの時の暴動の責任を取ったのは、レイド、お前が……」
尚も口を開くラムダに は飛び掛る。

ッ!?」

 無謀だ。

レイドは叫びかけるがラムダの動きのほうが早い。
の小さな身体がラムダの剣に弾き返され、岩場にぶつかった。

「レイド。僕等はレイドを仲間だと思っている。だからこの場に駆けつけ戦っているのだ。なのにお前のこの体たらく。悩むのはラムダを追い払ってからにしろ」

背中を強打したはずなのに は淡々と言葉を紡ぐ。

打ちつけた岩に滲み出る赤い血。
自分の怪我よりもレイドの態度に怒る は、燃える瞳でレイドを睨みつけた。

「ほう。お前よりその子供の方が遥かに現状を理解しているか」
ラムダの言葉にレイドは無言で剣を構え、ラムダに切りかかる。
「うにゅぅうぅうぅぅぅ〜!!! ますたぁー!!」
モナティーが悲鳴をあげ、救急セットを片手に全力疾走で に近づく。

モナティーの前を移動していたアカネとローカスがレイドの背後を護り、 とラムダの間に壁を作る。

「召喚っ!!! おいで!」
懐に忍ばせた赤いサモナイト石を手にアカネが鬼神斬を発動。
鎧武者がラムダ目掛けて刃を振り下ろす。

「召喚術か」
独り言を漏らし、ラムダが整った眉を顰め鎧武者の刃を受け止める。
「行け!」
続いてローカスがディアブロを召喚。
ビーム光線がラムダを襲う。

隙を逃さずレイドは己の剣戟をラムダへと放った。

敢えて怪我をしてまでレイドの迷いの霧を晴らそうとした
自分より遥かに小さな子供に諭されて。
それでも立ち止まってしまったらあの時と同じだ。

逃げたくない、レイドは決意を固めながら剣を振るう。

「分が悪いか」
同じ剣での戦いなら負けるつもりはない。
だが、レイドの背後から召喚術を発動するアカネとローカスのも加わっては不利だ。
冷静に防御に徹しながらラムダは口内で呟く。

そしてモナティーに看病されて余計に死にかける を見詰めた。

 只者ではないな。

堂々と自分に喧嘩を売りながらも。
イムランをあれだけ馬鹿にしてみせた態度も豪胆。
極めつけはレイドを正気づかせるために取ったあの行動。
全てがあの子供が外見通りの子供ではないと示している。

「今日は引こう。目的は既にここには居ないのだからな」
己の剣を鞘へ収めラムダが岩陰に非難させられているセシルを抱き上げた。
「先輩……」
背後でレイドがラムダを呼ぶが、ラムダはわざと無視する。


道を違えてしまった以上、もう一度この後輩とは刃を交えなければならない。
胸中は複雑だが譲れないものがある。
岩場の下に保護(拘束?)されていたスタウト・ペルゴと合流しながら、ラムダは漠然と感じていた。



Created by DreamEditor
 えへv 実はアキュートメンバーは大好きです。セシルさんしか使ってなかったけど。
 でも、モナに手当てされたら死ぬような気も……(汗)ブラウザバックプリーズ