『話題休閑・本当の敵2後』




落ち着かない調子で右往左往する件(くだん)の人物。
ノックしてから扉を開けば、飛び上がらんばかりに驚かれた。

「……大丈夫か?」
石のように固まった相手に、思わず が問いかける。
「ああ、すまない。大丈夫だよ」
件の人物。
蒼の派閥の召喚師・ギブソンは渇いた口を動かしなんとか答えた。

は動揺するギブソンを追及せず。
窓から見える月を見上げた。

「無色の派閥。危険思想の総帥。宝玉を使って行う魔王召喚儀式」
ギブソンに言うとはなしに、 は言葉を押し出す。
の意図が分らず、ギブソンはフードを目深に被ったまま見据える。

「手には負えない。助力を仰ぎたい、なにより」
含みを十二分に持たせ、もったいぶって発言する に。
ギブソンは警戒の色を濃くした。

幾ら察しが良いからといって己の行動が にばれている訳がない。
ましてや、自分が行った行為は正しいのだ。
自分に言い聞かせる。

胸に手を置くギブソンを は感情の篭らない瞳で見遣って。それから、
「烏合の衆には荷が重い」
と。
誰が、とも。何を、とも。
具体的な表現は一切使わずに遠まわしに。

シルターン風の言葉を使ってギブソンへ言った。

「………何が、言いたいんだい?」
緊張で乾く口内を叱咤し、無理矢理にギブソンは言葉を発する。

「いや別に。俗に言う余計なお節介というものだ、汝が後悔せぬようにな」
完璧なポーカーフェイス。
の口振りからも表情からも感情は窺えない。

「何を後悔すると……」
咄嗟にギブソンは言い繕うとした。
薄々何かを察し始めた に恐れを抱いて。

「瞳が迷っておる。正しい行動を取ったなら、どうしてそこまで迷うのだ?」
だが、ギブソンが全てを言い終わらないうちに。
が言葉を遮り、打って変わった鋭い口調でギブソンを咎める。

「汝の眼差しはどうしてそう暗くなっていく? 正しいのなら胸を張れ。己の考えを誇れば良い。それが派閥のきまりだからと逃げを打つな。汝が選択した行為であろう?」

 読まれている?

絶句するギブソンに、 は困った顔になった。

「そこまで正直に反応するでない。全て決めるのはトウヤとハヤトだ。そしてギブソン自身だ。先も口にした通り、僕のは余計なお節介。すまなかったな」

が考えるよりもギブソンは生真面目すぎるのかもしれない。
加えて、誰よりもトウヤ達を心配してくれているのかもしれない。

 なんせ専門がサプレスだからな。
 魔王の危険性も十分に加味して出した結論なのであろう。
 灸を据えすぎたか?

項垂れるギブソンに は謝る。
それでも物凄く凹んでしまったギブソンの姿。
の良心はちょっぴり痛んだのだった。



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 やっぱ2への前フリのようだけど……ギブソンさんの変貌(1→2)には驚きました。ブラウザバックプリーズ