タイトル『話題休閑・エルゴの試練2後』




項垂れるアカネを取り囲むのは、 ・トウヤ・ハヤト。

あかなべの仕事をほったらかして、フラットに居座り続けて十数日。
店へ報告に帰るタイミングをアカネは逸している。

「無断外泊連続21日目とは……破門されたいのか? アカネ」
は指折り数えてカウントした。

「あうううぅ」
遠慮も容赦もない のコメントにアカネは打ちひしがれる。
呻いて泣き出しそうな瞳をハヤトへ向けた。

「シオン店長に事情を話そうぜ?」
アカネの縋る目線に一歩後ろに下がりながら、ハヤトがアカネに言う。

「えううぅぅうぅ」
対するアカネは意味不明瞭な悲鳴? 呻き声を漏らし、遠い目をし始める。

黄昏モードのアカネにトウヤもどうしたものかと考え込み。
で、トウヤとハヤトの判断に任せると宣言しているので無干渉。
沈黙がメンバーを包み込む。

「やっぱり、話に行った方がいいよ。黙っているのも良くないし。俺とハヤトも も行くからさ」
苦肉の策。
トウヤが同行を申し出れば途端に輝くアカネの瞳。
逃げようとした を素早い動きで封じ、アカネは会心の笑みを浮かべる。

「やっぱさ! 持つべきものは仲間だよねぇ〜」
暴れる を羽交い絞めにし、ニコニコ笑うアカネに。

 騙された?

なんて。
思わずアイコンタクトを取ってしまう、トウヤとハヤトであった。



ぶすくれる をおんぶして歩くトウヤ。
アカネが逃走しない様にひっついて歩くハヤト。
妙に緊張感の漂う一行は商店街にある薬屋『あかなべ』へ。

「おや皆さんお揃いで……如何しましたか?」
暖簾の先の決戦場。
店先でシオンと遭遇する。

物腰・口調は相変わらず穏やかなのに、シオンの目はまったく笑っていない。
ビビったハヤトがアカネをシオンの眼前に、生贄宜しく差し出した。

「俺達の事を助けてくれて、ずっと店に戻れなかったんだ。だからアカネを怒らないで……欲しいんです」
トウヤがシオンの眼圧に耐えながら、しどろもどろにアカネを擁護。
ぎこちない動きでアカネは頭を下げた。

「ご、ごめんなさい! お師匠様」
上擦った声音でシオンに謝罪するアカネ。

黙り込むシオン。
師弟の間を漂う居心地の悪い静寂にトウヤもハヤトも口を挟めず。
に至っては怒っているので目前の光景を無視。

 シオンだとて本気で怒ってはおらぬではないか。
 演技だけは上手い。
 いや? 元々こ奴は忍だ。
 感情を隠すのは造作もないか。
 にしても、アカネ……相当怯えておるな。

小さくなるアカネに は口角を持ち上げた。
やがてアカネが事情を話し始め、シオンも穏やかにアカネの言い訳に耳を傾ける。

「そうですか……大体の事情は分りました。アカネさん、まず一つ確認したいことがあります」
背筋を正すシオンにアカネが唾を飲み込む。

「本来忍とは君主に仕える影です。己の正体を明かし、助ける以上。アカネさん、貴女は彼等を主としているのでしょうね?」
シオンの言葉の端々に現れる棘。
首を竦めたアカネは首を横に振った。

主として認めた人に仕える。
それが忍の基本なのはアカネだって耳ダコになるまで聞かされた。
でも違う。
友達として助けたかっただけ。

だからシオンが云う主従関係とも少し違う。
アカネの否定にシオンの瞳孔が細まった。

「……云いたいことが遠まわしすぎて伝わっておらんぞ、シオン。こちらも時間がない。出来れば手身近に頼む」
ノロノロと展開するアカネの店帰り。
この分だと夕飯過ぎても帰れない。
判断した がリプレの怒りを免れるために重い口を開いた。

「忍の枠を超え僕等に手を貸したアカネはまだ未熟。汝がその腕を案じるなら、タイマンでも果し合いでもなんでもして力量を測るが良かろう」
気だるげに、言い捨てる にトウヤとハヤトが慌てる。

仮にも年上のシオンを捕まえて、命令調。
そんなに深く付き合っていないシオンが相手だけに、 の喋り方が気になって仕方ない。
逆に指摘されたシオンは顎に手を当て思案。
の何かを確かめるように逡巡した。

「………アカネさん」
長い間があってシオンが口を開く。
「はっ、はいぃぃ!」
少しおかしな口調でアカネが返事を返す。
「わたしと勝負して今後を決めましょうか? 見届け役をトウヤさんとハヤトさんにお願いしますね」
有無を言わせないシオンの宣告。

アカネは声なき悲鳴をあげ大絶叫。
同じくトウヤもハヤトも勢い良く首を左右に振った。

「夕飯が終わってからベルネット平原へ来て下さい」
相変わらず目が笑っていない笑顔を振りまき、シオンが場所と時間をも指定。

「どうして は何もナシなんですかぁ〜??」
堪らずアカネがシオンに問いかける。
さんは夜更かし出来ないでしょう? リプレさんが許しそうにありませんし。ですから、夜間の外出が可能なトウヤさんとハヤトさんにお願いしたんですよ」
一瞬驚いた顔を見せるシオンだが、何時もの笑顔に戻りアカネの疑問に答えた。

「「「……」」」
間違ってない指摘だけど、なんだかシオンは に甘い気がする。

気のせい? 沈黙に同じ気持ちを込めるアカネ・トウヤ・ハヤト。

その夜ベルネット平原で繰り広げられた戦闘で、師弟の絆は益々深まった……らしい。



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 1ではシオンさんより召喚術を取る卑しいプレイヤーでした(大汗)2では仲間にしましたけどね♪ブラウザバックプリーズ