タイトル『炎情の剣2』




死の沼地でフラット御一行を待ち構えていたもの。
剣が激突する音。
戦うレイドとラムダの姿に。
見守るスタウト・ペルゴ・セシルの姿。

生物の気配をまったく感じない不気味な沼地でレイドとラムダは決闘していた。

「時代錯誤な……いっその事両名腹を切って詫びればいいではないか」
神聖な決闘を見学しての のコメント。
「駄目だよ、 。ここは日本じゃないんだし、武士道だよ。それは」
のボケ発言にトウヤが律儀に訂正を入れ。
「え!? 武士道??? シルターンにも武士が居るんだよ」
アカネも呑気に とトウヤの会話に割り込んでいる。

冷やかしている は放置して、ハヤトはセシル達に訴え始めた。
「考えていることは同じなのに、どうして二人が戦わなきゃいけないんだ」
訴えかけるハヤトにペルゴが首を横に振る。

「ラムダ様は革命の為に全てを捨て去る覚悟をお持ちです。貴方方にその覚悟はありますか?
犠牲を払わねば新たな世界は作りえない……我々のこれまでの活動から学んだ事です」

理知的なペルゴの台詞にクラレットが眉根を寄せた。

「では一方的に革命され生活を壊されても良いと? 正しいことをしていれば許されるとでも思っているんでしょうか? それは勝手に正義を振りかざす貴方達の傲慢です」

知性には言葉の刃で。
クラレットの毅然とした反論にペルゴも一瞬顔色を失くす。

「わたしは……わたしは、サイジェントの街の生まれではありません。だからこそ街の良い部分も悪い部分も良く見えました」

胸の前で両手を組んみ。
決意を固めた表情でクラレットは尚も喋った。

「アキュートの皆さんが思っているより、サイジェントは悪い街じゃありません。人々は一生懸命生きています。毎日を過ごしています。
金の派閥の召喚師達は行き過ぎですが、それを街の人々の怠惰のせいにするのは卑怯です」

常に人から一歩引いて動くクラレット。
その彼女が怒りを滲ませてペルゴを睨む。

「そうよ! わたしもお姉様と一緒にサイジェントに来たけど。理解のある人は沢山居る。召喚術全てが悪いわけじゃない。
考えても見なさいよ、サイジェントの特産品を召喚獣で運べなかったら街はもっと貧しくなるのよ? 分ってるの!」

悪循環じゃない!

姉に続けとばかりにカシスも捲くし立てる。
が、ペルゴの視線が怖いのか素早くハヤトを盾にした。

「お、俺が盾かよ」
グイグイ前に押し出されたハヤトが焦って背中のカシスを睨む。
「いーじゃない。なんか怖いんだもん、あの槍使い」

 えへ。

小さく舌を出して笑うカシスにハヤトは脱力する。
その横ではトウヤが とアカネに騎士道を説明中。

「殿中での抜刀禁止や切腹とかにならぬのか」
年末の風物詩ではないか。
戦うレイドとラムダを止める気ゼロ。
は口先を尖らせて詰まらなそうに文句を言う。
「それは忠臣蔵!」
眩暈を起こしかけつつもトウヤは律儀に突っ込み、アカネは好奇心に目を輝かせ。
「忠臣蔵?? ナニ! ナニそれ〜!!」
なーんて、はしゃいだ様子でトウヤに詰め寄ったりしていて。
アンバランスな様相を呈してきた。

徐々に議論を戦わせるクラレットとペルゴの目が据わりだし、暗雲立ち込める。

「「ならば勝負!!」」

ペルゴをセシルが止め。
クラレットをカシスが止めるが、二人はもう止まらない。

互いに槍と杖を取り出し構えた。
交渉決裂。

「ますたー! クラレットさんがなんだかとっても殺る気満々ですの」
すっとぼけたモナティーの声に は一触即発のペルゴとクラレットを見る。
「クラレットは我等の仲間だ。致し方あるまい、今回も蹴散らさせてもらおう」
躊躇いナシです、 さん。
短剣を素早く抜き放ち、 は手近に控えていたアキュート兵士をぶっ飛ばす。
「よーっし! おれっちも暴れるぜ〜」
腕をボキボキ鳴らしながらジンガも後に続き。
「忍者の腕のみっせどころ〜♪」
アカネも瞬身の術で素早い移動を始めた。

「トウヤ……ガゼル、カシス、エドス。せめて俺達はレイドとラムダを止めよう」
喜々として戦い始める ・クラレット・ジンガ・アカネ。
遠い目をしてハヤトが残りのメンバーの顔を順に見渡す。

「ああ。レイドだって大切な仲間だ。一人で決闘なんて馬鹿げてるよ」
最前線で戦う先走り組( 達)を一瞥し、トウヤは気持ちを切り替える。
何より今まで一緒に戦ってきた仲間だ。

達が頼りになる事を知っているから。
自分達は自分達に出来ることをする。

「うん。お姉様も適度なところで止めないとまずいし」
カシスも杖を取り出し笑顔を見せた。
の奴がこれ以上暴走してみろよ。レイドもラムダもボコボコじゃねぇか?」
ガゼルが周囲に散らばるアキュート勢の位置を確認して応じる。
「笑えないなぁ」
エドスが引き攣った笑いを零し斧を持ち換えれば後進組も準備万端。
頷き合うハヤト達にモナティーが挙手した。

「うにゅぅ。モナティーはどうしていればいーですの??」
には置いていかれて、ハヤト達の会話には混じれず。
凹んだ様子のモナティーに、すっかりモナティーを忘れていたハヤトが慌てる。

「そ、そうだ! モナティーには大切な仕事を任せたいんだ」
少々裏返った声で切り出すハヤトに、カシスが白い目を向けた。
「とか言ってさぁ? すっかり忘れてたの間違いじゃないの?」
カシスがトウヤの耳に小声で囁く。
「ははは……」
幼馴染の分りやすい態度にトウヤは乾いた笑い声を立てる。

「モナティーはガウムと一緒に俺達の後ろを護ってくれ。俺達が切り開いた道をちゃーんと辿るんだぞ? 沼地だから足を滑らせないようにな?」

態の良い戦闘不参加通達だが、モナティーにはこれでも十分な仕事。

「はいですのっ♪」
ハヤトの説明? というより、移動時の注意をされてモナティーは嬉しそうに返事。
ガウムも承知したと一声鳴いた。

「はぁ〜、出発!!」
さっきの勢いは何処へやら。
ぐったりと肩を落として拳を振り上げるハヤト。

エドスが無言でハヤトの肩を叩いて慰める。
戦いながら遣り取りを聞いていたスタウト。
近くに居たセシルへ苦笑い。

「あの連中、本当に岩棚で俺達を打ち破った連中か?」

夢か幻か。
非常時に漫才を展開するのはある種大物だが。
大胆すぎるというか、考えなしというか。

スタウトが体験した『戦闘の常識』を覆す面々だとも言える。

「観ていれば分るわ。最初はわたしもあの子供だけが強いのかと思ったの。でも違う」

セシルの視線の先。
大剣を振るい、アキュート兵の攻撃を軽々と相殺するハヤトの姿。
傍らに立つトウヤは広範囲の召喚術を使用。

負傷したアキュート兵をガゼルとエドスが沈黙させていく。

互いの長所を生かしたコンビネーション。
合間を縫ってカシスが回復を担当し、最後尾をメイトルパの召喚獣が歩いている。

「成る程。相当鍛えられてるみてーだな」
初対面の時に は自慢していた。
あの実力派の子供が誇るだけはある。
納得してスタウトはアカネの投具を避けた。

「神聖な決闘を邪魔させないわ」
セシルに迫るジンガの拳。
避けてジンガの腹に蹴りを放ち、セシルは声高に叫ぶ。
かと思えば、子供の口喧嘩レベルの争いも同時に起きていて。

「その偏見と妄執を矯正して差し上げます!!!」
怒声を孕んだクラレットの声と共にペルゴに振り下ろされるエビルスパイク。

「そっくりそのまま同じ言葉をお嬢さんにお返しします」
エビルスパイクの先を槍で突き崩し、負けじとペルゴも言い返す。

「……」

 はぁ。

セシルはこめかみを引き攣らせつつ、ジンガの後頭部へ回し蹴りをお見舞いし。

「あーあぁ。インテリが怒ると大変だぁな」

スタウトも滅多に見られないペルゴの感情的な姿に愚痴っぽく一人呟く。
呟きながらもしっかりとアカネの背後を取って剣先をアカネへ突きつけた。

「負けませんっ!」

劣勢のジンガとアカネ。
そこを救うのがキレたクラレットの放つ召喚魔法。
広範囲召喚魔法デヴィルクエイクが発動し始め……。

「「逃げるが勝ちっ!!」」
アカネとジンガは叫び、セシルとスタウトを置いて見事といえる遁走を披露。

呆気に取られるセシルとスタウトに激しい振動が襲い掛かった。



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 えーっとこの間もレイドさんとラムダさんは戦ってます。ブラウザバックプリーズ