『衣食住』




住編。

すったもんだの大騒動。
は何処に住むか? 候補は四つ。

「フラットとオプテュスとアキュートと城」

フラットだとトウヤ・カシス・クラレットが。

オプテュスであれば、バノッサ・カノン。

アキュートはスタウト・ペルゴ。

城はキールとイリアス・サイサリス・ラムダ・セシル等等。

後見人をかって出てくれている候補者はそれぞれに居る。
指折り数えてハヤトは地球に考えるためだけに戻ってきた を見る。

「で、どうすんだ?」
尋ねたハヤトに は思案顔のまま答えた。

「バノッサ兄上の所に行こうと思う」
熟考を重ねた結果。
は後見人に妥当だと思われる人物の名前を口に出す。

「……なんで?」
文字通り目を点にしてハヤトは問い返した。

「南スラムは安定しているが、北はまだまだだ。兄上だけで街並みを戻すと時間がかかりそうだ。何より兄上は優しいぞ」

ぶっきら棒で乱暴だけれど、性格が丸くなったバノッサは。
カノンと の面倒をぼやきながらもしっかり見ていて。

段々長兄らしくなっていっている(キール談)

しかもクラレットやカシスのボケた部分もさり気にフォローする苦労人(エドス談)

でもあるらしい。

人は環境が変わると性格も変わる。
良い意味での一例といえよう。

「バノッサが??」
俄かに信じられない。
目を丸くするハヤトに は自信満々。
「うむ」
嬉しそうに微笑む の姿からして、バノッサは優しいらしいが。

「へぇ〜(具体的に聞いてみたけど怖くて聞けない)」
後にハヤトはクラレットに『役立たず』と怒られたとか、そうでないだとか。
暫くの間ハヤトは怯えてリィンバウムへ姿を見せなかった。





食編。

フラットへ顔を見せた を発見したのはカシス。
「あれ〜、どうしたの?」

リプレが買い物に出てしまっていて、台所には誰も居ない。
は一人元の姿に戻って懸命に作業中。
滅多に封印を解かない が封印を解き、戦闘以外で奮闘するのは珍しい。
の背中にカシスは声をかけた。

「カシス姉上、丁度良い」
青い光が飛び交う不思議空間となったフラットの台所。
は無邪気に微笑みカシスを手招きする。
カシスは小首を傾げながら へ近づいた。

「らーめん? なんで が作ってるの???」
「バノッサ兄上がさり気に食べたそうにしておった。全てがリプレママのように手作り出来ぬが、茹でて具を調理したのは我だ。姉上、味見をしてもらえぬか?」
小皿に注がれた醤油味のスープ。
カシスに差出し は強請る。

「りょーかーいー」
カシスは小皿のスープを一口口に含み、思案した後、控えめに切り出した。

「ねぇねぇ! 姉様も食べたくなっちゃったv 一口だけでも、駄目?」
両手を揉み手しつつ に擦り寄るカシス。
は笑って口を開きかけ。

「ずるいですね……二人で仲良くして、楽しそうで」

 ふふふふふ。

半眼のクラレットが黒い何かを放出し実の妹を牽制し。

「まぁまぁ、やあ、 。カシス? ……その、大丈夫かい?」
クラレットを宥めながら、勉強の相棒(カシス)の身を案じるトウヤ。
二人の乱入によってカシスは身の縮む思いをしたそうな。


「だったら最初からこうすればよかったのに」
らーめんパーティーの準備をしながらリプレが呆れて零し。
「平和の証と思えば、それもまた笑い話になりますよ」
同じく調理担当として借り出されたペルゴが笑う。

の秘密のらーめん調理は結局らーめんパーティー開催に早代わり。
フラットに集まった全員がリプレ・ペルゴ・ の共同制作らーめんを堪能したのだった。






衣編。

妹決定後の
如実に変わったのは服装である。

「……一人称も直したし、いいんじゃないのかな?」
キールが の姿を眺め、返答を返す。

シルターン風の長袖着物の上着膝丈に、下は動きやすい踝までのズボン。
腰で帯のような柄の幅の狭い紐を使い、上着を縛り。

草履に似た名も無き世界から持ってきたサンダルなる履物。
子供の時でも、元の姿の時でも。
両方合う様にと衣服の色は深い藍色。

「動きにくくなけりゃ、なんだって構わねぇだろう」
口では言いながら。
キールと の服を品評しあうバノッサの口元は僅かに緩む。

「アカネとシオンから、髪を結う紐と簪を貰った。リプレママからは短剣を入れる革袋を。
ガゼルには新しいピアスを作って貰って、クラレット姉上とカシス姉上からは上着の内側に着るキルカ綿の長袖シャツを。
トウヤ兄上とハヤト兄上からこの靴とズボン。それから……」

自分が身に着けているものは、家族からの贈り物。
指折り数えて喜々として報告する にキールとバノッサは顔を見合わせた。

「「……」」
兄として自分もこの存在の身内だとアピールしたい。
アイコンタクトを交わし、二人揃って咳払い。
まだまだ続きそうな貰ったもの話を打ち切る。

「ハイネックのシャツに合う、マフラーでも買いに行こうか?」
ニッコリ笑ってキールが の手首を掴む。

「手首につける刀避けの腕輪も必要だろうが」
反対側の手を掴み、バノッサが仏頂面で言い切った。

「……????」
訳の分からない を引きずり回す二人の姿は、サイジェントの商店街に大きな衝撃を齎したそうな。




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 その後の主人公のSSSドリって事で。ブラウザバックプリーズ