『どっち?』



「譲れません、妹です」
静まり返る北スラム。
バノッサの家、居間にてクラレットが言い切った。
「え? 姉様、前は弟だって……」
クラレットの迫力に気圧されつつも、カシスが以前の記憶を辿り発言する。
「それは の正体が分る前です」
涼しい顔をして返事をするクラレット。

キールは目を丸くして、口を開いたまま固まり。
カノンはクラレットに同意してニコニコ笑い。
トウヤとハヤトは居心地が悪そうに身体を縮め。
バノッサは無言を貫きながら、実はクラレットの黒いオーラに引いていた。

「仮に弟だとします。と、何処の馬の骨とも知れない女が についたら、カシス、どうします? わたし達より品の無い女性だったら?」
「う〜ん、それは見たくないなぁ。 が相手にしないにしてもさ。あれで見てくれは良い方だもんね、
クラレットに話を振られ、カシスは考え考え返事を返す。

「そうですよ、カシスさん。加えて さんのあの性格。きっちりしてるんですけど、肝心なところで抜けてるじゃないですか。あれで弟とは見えないんですよ……妹、ですよね? どちらかというと」

カノンがクラレットを擁護するように発言して。

「あぁ―――、確かにさぁ、 って微妙にボケキャラだよな。神様のクセにゲームは好きだわ、ハイテク好きだわ、暴力的だし。見てるこっちがハラハラする時もあったよな」

今迄を回想。
ハヤトがぼやけば、クラレットは満面の笑みを浮かべる。

「弟扱いだと。周りはきっともっとしっかりするように、言うかもしれません。けれど が自分のペースを崩すような子に見えますか?
きっとずっとあのままです。この際、妹という事にしてさり気なく護ってあげないと。牽制にもなります」

尚も意見を喋るクラレットにキールが両手を上げた。

「クラレットの判断が正しいと思うよ。 は凛々しいけれど、やっぱりどこか抜けてるんだ。見ていて危ないと思う場面もあったし……クラレットに賛成するよ」
「有難う御座います、キール兄様v」
早々に白旗を揚げたキールへクラレットが弾んだ声を出す。

それからジーッと。
セルボルト家の長兄となってしまったバノッサへ黒い笑みを浮かべて見せた。

「勝手にしろ」
黒い笑み自体は怖くない。
ただクラレット……妹に非難されるのは苦手なバノッサである。

面倒でもあったし、バノッサとしても内心 は妹だろうと。
考えていたのであっさり会議参加を放棄した。

「はいv勝手にしますv」
黒い何かを四散させ喜ぶクラレット。

「有難う御座います! バノッサさん」
カノンも顔を輝かせバノッサに頭を下げる。
誓約者二人組みは目で素早く会話を交わす。

クラレットとカノンに逆らっては身が持たないと。

が了承するなら、俺は反対しないよ」
「同じく〜、俺も」
トウヤ→ハヤトの順に誓約者達は発言。
クラレットは花も綻ぶ可愛らしい笑顔でもって二人の意見を歓迎して。
今度は凍るような視線でカシスを射抜く。

「わ、わ、わた、わたし! 反対だなんて一言も言ってないよ〜」
涙目になってカシスが言えば会議は終了。

「それでは はセルボルト家の末妹で、誓約者二人の妹分という事に」
問答無用。
クラレットが宣言すれば、途端に緩まる緊迫した空気。

「服とか、リプレさんに頼んで女の子らしいのにして貰いましょうよ!」
我が事の様に嬉しい。
カノンが楽しそうにクラレットへ提案し、カシスも交えて洋服の話に花が咲く。
遠巻きに見詰める誓約者&セルボルト兄弟。

こうして、リィンバウムが危機を回避した翌日に。
クラレットの手によって、性別は女だと決定されてしまった であった。



Created by DreamEditor
 今後主人公の立場はセルボルト家の末妹です(笑)要は家名がセルボルトって訳ですよ。ブラウザバックプリーズ