四次元ポケット・・・!?



自来也は焦っていた。

伝説の三忍と謳われた元同僚。
綱手姫の行方を掴んだまではいいが、彼女がまだその街に居るという保証がない。
どうあっても早く彼女を捕まえなければならない。

 次の締め切りも迫ってるしのォ。

ぼやきが本物だろうが、嘘だろうが。
兎にも角にも同じく伝説の三忍。
蝦蟇使い自来也は非常に焦っていた。

『焦ってるね〜』
競歩のような足取りで綱手姫が滞在するという『短冊街』へ歩を進める自来也。

背後から自来也について歩くスケスケ青年。
金髪・碧眼。一見美青年風。
自来也の焦る雰囲気とは正反対にのんびり言った。
「焦ってるってば」
独り言のように小さく呟き、自来也の後を追う子供はスケスケ青年に言葉を返す。
『子供の足と大人の足は違うのに、ねぇ?ナルちゃん』
「・・・」
スケスケ青年の言葉に最早相槌を打つ余裕もない。

子供は小走りに自来也の後を追いかける。
僅かに自来也が歩く速度を上げた。
つられて子供も走る速度を上げる。

傍から見れば大変不毛だった・・・。

子供の名は『うずまき ナルト』
三代目火影亡き後、里を担う五代目火影候補の綱手姫を探索する旅に同行中の下忍。
保護者は競歩速度で歩く自来也。
スケスケ青年はナルトの自称守護霊様。
一種のストーカー幽霊で名を注連縄という。

意外性NO.1だとか。ドタバタ忍者だとか。
ナルトの行動についた呼称はとっぴなものが多い。
しかしながら本来のナルト。

おおよそ『うずまき ナルト』とは真逆の性格。
素性・実力共に正反対の凄腕忍者。

素のナルトを知る一人。
自来也と共に更なる飛翔と里の危機を救うべく、探索の旅を続けているのだ。

『これじゃー、余計人目についちゃうよね〜』
「綱手姫が短冊街に留まっている保証もない。エロ仙人なりに焦っているんだってば」
走りながらナルトが注連縄に言い返す。
『ふむ』
注連縄は腕組みをし、小走りにナルトと並んで歩きつつ思案顔。
唇を真一文字に結び顔つきだけはそれなりに考えているような。
空気を纏って。
『綱手さんが短冊街にいるかどうか、分かればいいんだよね〜?』
だから自来也は先ほどから急いで短冊街へ向っているのである。

注連縄の呟きにナルトはため息で応じる。
が、注連縄はフッと妙に余裕綽々の笑みを浮かべ懐から何やら取り出す。

『じゃじゃーんっ!』
自分の口で効果音までつけて、得意満面の注連縄が取り出したのは・・・。
「ジジイの水晶玉!?」
ナルトですら『ドベ』の仮面を打ち捨てて奇声を上げ驚いた。
『ふっ、ふっ、ふっ!この僕の先読みの能力を舐めてもらっちゃ困りますよ〜』

先読みというより。
れっきとした窃盗である。

水晶片手にニヤリと微笑む注連縄に、笑うしかない。
自来也は乾いた笑みを浮かべそれから実体化している注連縄の後頭部を強打した。

『〜!!い、イタイ〜』
「馬鹿者!早く言わんかっ!!」
額に青筋浮かべた自来也が注連縄に怒鳴る。

本気で怒っているというより、大事な事はさっさと言え。
というような、そんなニュアンスで。

 アンタの弟子らしいノリってコトでいいんじゃないの?

大人二人の遣り取りを傍観しナルトは心裡で冷たく突っ込んだ。

「それより気になるんだったら、使ってみるってばよ」
ギャーギャー言い合いをする大人達へ、一番冷静に言葉を投げかけてみたりもする。
ナルトの言葉に自来也と注連縄は大人しくなった。
「そ、そうだのォ」
『そうだね。じゃあお兄さんが使い方知ってるから、術を使うよ〜』
注連縄が印を組みチャクラを発動。

自来也とナルトは興味津々。
水晶に顔を近づけ次第に浮かび上がる景色に見入った。





恐らく短冊街にある城だろう。
乗った巨大な大蛇が見事に城をブチ壊し。

呆然とする女性二人の目の前に現れるのはお馴染みの顔。

 大蛇丸・・・不気味だけど似合っている。

水晶玉に顔を近づけた自来也とナルト。
ほぼ同時に同じ事を考えた。

《見つけたわよ》
地を這うような低い声。
蛇が崩した城の崩壊音。
風に髪を乱し薄く笑う大蛇丸。

相対する女性は唇を真一文字に引き結ぶ。
数分もすれば城も瓦礫の山となり。
普通に会話しても互いの声が聞こえるほどに落ち着いた。

城の壁をバックに立つ大蛇丸とカブト。

《随分と久しぶりだね・・・大蛇丸》
髪を二つに分けて結ぶ女性。
綱手姫が口を開く。
《かなり捜したわよ》
青い顔のまま大蛇丸は綱手に告げた。
《今さら私に何の用なの?昔話でもしようってんじゃないわよね?》
大蛇丸を警戒気味に見やり綱手は相手の出方を窺う。
《実は少々お願いがあってね・・・》
口を開く大蛇丸の顔色は相変わらず青く、肘から下。
両腕の部分が小刻みに震えていた。
《・・・》
相手は医療のスペシャリスト。
伝説の三忍綱手姫。
大蛇丸の不調に気づかぬわけもなく。

不審そうな目つきで大蛇丸を一瞥する。

《綱手様・・・あなたならもうお分かりの筈だ》
重苦しい雰囲気を払うかのようにカブトが口を開いた。
《他を当たりなよ。私はもう医療は辞めたわ》
片手を上げ綱手姫はカブトの申し出を断る。

息を潜めて成り行きを見守っていた自来也がガッツポーズを取った。

《そうはいかない・・・。この傷の重さはあなたになら分かるハズだ。誰にもこの腕の傷は治せない》
交渉役なのか?カブトが再度喋りだす。
《医療のスペシャリストとして名を馳せた『伝説の三忍』綱手姫。あなた以外にはね》
《・・・その腕。ただの傷じゃないわね。一体何したっての?》
カブトの言葉を半ば無視し綱手姫は大蛇丸に逆に問い直す。
《なに・・・三代目を殺した時にちょっとね・・・》
顔色一つ変えずに言い切った大蛇丸。
凍りつく場。
綱手姫と彼女の連れは一瞬目を見張った。
《アンタ・・・ホントに・・・》
噂で聞くのと張本人から聞かされるのでは重みが違う。
綱手姫は少し動揺したようだった。
《フン・・・そう怖い顔しなくてもいいでしょ・・・。形あるものはいずれ朽ちる。人も同じよ・・・あなたにも分かっている筈》
綱手姫を挑発するように含みを持たせた、大蛇丸らしい発言である。

怪しい雲行き。
自来也と注連縄の表情が曇る。

《なにせ最愛のヒトを二人も死なせたんだから》
大蛇丸が放つ棘のある台詞。
綱手姫の眦がこれ以上はないくらいつり上がり、険しい表情のまま大蛇丸を睨みつけた。
《クク・・・いやぁ・・・あれは酷い死に方だった・・・》
火に油を注ぐ大蛇丸の発言に綱手姫と共に居た連れが動く。

素早い動きで服の裾を上げ腕を水平に構えると仕込みの針を大蛇丸へ向け放つ。
その動きを察したカブトは一本を覗く全ての針を弾き飛ばした。
カブトの顔色から察するに。

毒針。

《落ち着きな、シズネ》
綱手姫が連れの名前・・・女性をシズネと静かに呼ぶ。
《ハ――――》
一瞬だけ目を閉じ綱手は大きく息を吐き出す。
己の高ぶる心を落ち着かせるように。
《大蛇丸・・・アンタ昔から・・・そういう奴だった・・・》
次に満面の笑みを湛えた綱手姫の顔のアップ。

背筋に寒いものを感じて後ずさる自来也と注連縄。
ナルトはジッと水晶が映し出す光景を食い入るように見つめる。

《私の性格は良く知っているでしょ・・・おちょくるのは止めなよ・・・》
笑顔のまま綱手は拳を背後にある城の壁にぶち込んだ。

 ドゴォ。

音と共に、綱手姫の拳から蜘蛛の巣状にヒビが入り崩壊する壁。

殺すぞ、コラ
水晶越しでもはっきり分かる綱手姫の殺気。
数メートル分まで崩れ落ちた壁と残骸。

ナルトは驚きに目を見張った。
彼女の目が怒りのあまり血走っている。

「綱手の奴、相変わらずのバカ力だのォ・・・昔こいつに殴られて100メートル近くふっ飛んだのを思い出すのォ・・・」
どこか遠い目をした自来也が一人心地に呟く。

映像はまだまだ続きそうだが、ナルトは水晶から顔をはずし数歩下がった。
太陽の位置と頭に叩き込んだ地図を思い起こし、短冊街までの距離を測る。

 今の映像でコレだけ嫌な予感がするって事は。
 またひと波乱は確実だ。
 早目に綱手姫へ五代目火影要請をした方が賢明かもしれない。

「おお!」
奇声を発し水晶に釘付けの自来也を他所に、ナルトは客観的に事態を分析した。

自来也にとってはかつての戦友だが、ナルトにとっては知らない他人。
熱くなる自来也よりかは幾分落ち着いて物事を判断できる。

 つーか、メロドラマじゃないんだし・・・。
 いつまで見てるつもりだ?

 世話の焼ける。

ナルトは白い目線を自来也の背中に向けて、それから口を開く。
「早く短冊街に行かなくていい訳?これ以上水晶で実況中継見てても意味ないって」
手に汗握って水晶を覗き込む自来也の背中に、ナルトは冷たく指摘した。
「・・・・呑気にしてはおれんぞ!」
我に返った自来也が叫ぶ。
『この忍術の難点は、水晶を固定しなきゃいけないから移動しつつ、映像を見る。なーんてのができない事ですね〜』
おっとりした調子で注連縄が言い、己の懐に水晶を仕舞いこむ。

幽霊のクセしてカメラは持ってるは、水晶はくすねてくるはで。

 四次元ポケット?

音を立てずに飛翔した自来也の後を追い、飛びつつ。
ナルトは首を捻る。
緊迫した事態の最中に全然違う事を考えられるナルトもある意味器の大きな子供かもしれない。


『ふふふ〜、ミステリアスな男ほど格好良いイメージがあるじゃない?』
とは。
奇しくも自来也を足止めしてしまった注連縄の弁解の台詞。


急げや急げ。
木の葉の里の一大事。

伝説の三忍思惑抱えた五代目火影就任依頼任務。
勝つのは大蛇丸の狡猾さか。
自来也の豪胆か。

それとも・・・?


主役?



注連縄さんはドラ○モン?主人公をサポートするさり気ない大人。そんな立場であって欲しいな〜。じゃ、のび○君がナル?・・・無理っぽそう(笑)こうやって『覗き』の技は弟子へ引き継がれていくのですよ。ブラウザバックプリーズ