最凶こんび

大蛇丸が去り。
今しがた里を守って死んだばかりの火影の遺体。
取り囲んで呆然とする忍達。

かしずくように頭を垂れた金色頭の子供はやっと頭を上げ嘆息。

「ナルト! どういうことか……」
詰め寄る黒髪の少年。金色頭の子供=ナルトは困ったように笑う。

「えっと……」
目を左右に泳がせて誤魔化そうかと思案中。
緊急事態だったから変化は解かなかったものの素の自分を大分見せてしまった。
この同班の仲間、サスケに。

実はナルト素性も性別も性格も隠して『うずまき ナルト』を演じる凄腕上忍。
九尾の器とされた為に過去を封印して現在に至るわけだが……。

「それよりナルト。天鳴(あまなり)って、アノ天鳴か?」
担当上忍までが予想外のナルトの出自に驚いて、サスケと同じくナルトへ詰め寄っている。
ナルトも予想外の二人の形相に冷や汗をかき後ずさった。

「シノ~! どーしよう」
矢張り泣き付くのはナルト長年の相棒油女 シノ。
半泣き状態でシノへ縋りつく。

よし よし。

シノの上着を掴みナルトはシノの懐に顔を押し付けた。
そんなナルトの頭を優しく撫でるシノ。
この状況下で二人の世界を臆面もなく構築するのはシノくらい。
シカマルが怒りに拳を振り上げるも、勝ち誇ったシノの顔に黙り込む。

「シカマル。お前は説明できるよな」
先ほどははぐらかされたが今しかチャンスはない。
サスケは口撃の矛先をシカマルへ向けた。
同様に考えたかカカシまでシカマルにジリジリ詰め寄る。

 あう。

シカマルは額といわず全身に嫌な汗をかき、頬を引きつらせた。

 じょ、じょーだんじゃねーぞ。俺だって全部知っている訳じゃねぇ!
 しかもなんで俺が一々サスケやカカシに事情なんざ説明しなきゃならねーんだよ。

 めんどくせーじゃねーか。

一気に考えてシカマルは口を引き結ぶ。
ガイを始めとする上忍達もシカマルが説明するのを待っているようだ。
視線がシカマルへ集中する。
面白がって傍観しているのは蝦蟇仙人こと自来也只一人。
ニヤニヤ笑ってシカマルを見る。

 ううう~。貧乏くじは俺かよっ!

「説明はわしらからしようか」
ご意見番の二人が音もなく姿を見せる。
背後には暗部一小隊を引き連れて。
「実は……」
ご意見番の一人コハルが口を開きかけた正にその瞬間。


「『ちょーっとまったぁー』」


綺麗にハモって聞こえる二重音。

『勝手に事情説明されると僕が困るんで、黙っててくれるとあり難いんですけど? ホムラさんにコハルさんv』
ボフン。
派手な煙と共に姿を見せるスケスケ青年。
金髪・碧眼で一見美青年風。
無邪気に微笑みながら目が全く笑っていない笑顔で登場。
ナルトの守護霊もといストーカー背後霊の注連縄だ。

「ナルトの元教育係としては放っておけないね!」
肩に垂れた黒髪を払う美女。
ナルトとの関連はさっぱり分からないが、シカマルも面識のあるくの一。
シノの所属する第八班、担当上忍の夕日 紅その人である。

「おっさん……は分かるとして? 紅さ……ん?」
シカマルは鬼気迫る紅の顔に腰が引けた。

「同意の上とはいえ……寂しい想いをさせたね、ナル」
ぐいぐい。
無理矢理シノからナルトを引き剥がし、己の胸にナルトを押し付ける紅。
ナルトは呼吸困難で顔を真っ赤にして苦しそうだ。

「おい! おっさん。どうして紅がナルトのこと知ってるんだよ」
滝のように涙を流し感動している紅を遠巻きに眺め、シカマルはこっそり注連縄に近づいた。
注連縄は微笑ましい光景にニコニコしていたが、シカマルへ目線を落とす。


『だって、ナルちゃんは女の子でしょ?』


爆弾投下。


注連縄の声は決して大きくはない。
彼の普通の声量で発せられた問題発言は、しっかりカカシやサスケ。
ガイにイビキ、ゲンマといった面々の耳に届いた。

「……は?」
サスケ絶句。
我が耳を疑い怪しげな……それでいて生命の危機を感じさせるスケスケ青年を見る。
カカシも顔には出していないが相当驚いているようで、一瞬だけ固まった。

『今は下忍だから構わないけど。将来的にはね? 女の子に戻ってくの一になるにせよ。お嫁さんになって引退するにせよ。女の子としての嗜みは一通り知っていなくちゃいけないでしょ?』

周囲が瞬時に固まっているのを無視して注連縄は説明を続ける。
因みにナルトは注連縄に向かってなにやら叫んでいるが、紅の腕から抜け出せずにいた。
『三代目が先生として選んだのは当時中忍だった紅なんだよ。ナルちゃんにくの一としてもやっていけるように、お花とかお茶とかね。行儀作法を教えたんだよ』
麗しい師弟愛だねぇ~。
腕を組み微笑ましい(?)紅とナルトの抱き合う(?)姿。
注連縄はのほほんと答えた。

『それでね。お互いに将来助け合っちゃうと良くないって。ナルトが言い出して、紅も合意して紅の記憶とナルトの記憶を三代目が封印したってわけv』<
「やたら詳しいな」
注連縄の解説にシカマルは納得しつつも疑問を口にした。
『三代目からぜーんぶ聞きだしてあるもーん♪ ナルちゃんがどう過ごしてきたかv』
ふふふふふ。
不敵に微笑みシカマルとシノをゆっくり眺める注連縄。
子供相手に喧嘩を売るのは大層大人気ないが、買う子供の根性も座っている訳で。
「シノは知らなかったのか?」
シカマルはナルトを良く知るシノへ声をかけた。
「おそらくは。俺が三代目の元で修行していた時期に、ナルトは紅先生に教えをうけていたのだろう。俺も今知った」
流石にシノも注連縄の大人気なさに『喧嘩上等!』の気分になっているようで、シカマルへ律儀に答える。

「約束通りにわたしは上忍になったわ。今度こそ一緒に暮らしましょうね、ナル」
すりすりすりすりすり……。
渾身の力を込めナルトを抱きしめ一人悦に入る紅。
「#$%&‘&$#“!!」
酸素希薄でナルトは声も出せない。
「忘れてた。どれくらいの美少女に育ったか先生に見せてねv」
紅は徐にナルトを引き剥がし印を組む。

「「ちょっとまてー!!」」

シノとシカマルが珍しく同じ言葉で叫ぶも時遅く。
紅が変化を解く術を使ったせいでナルトは普段の美少女姿に。
しかも着衣はいつもの『うずまき ナルト』仕様で。
少しブカブカの服を身につけたナルトは。

『滅茶苦茶可愛いよvv ナルちゃ~んvv』
らしい。

肩まで届くサラサラの金糸に、蒼い瞳。
肌はうずまきナルト時よりも、滑らかで美しい陶磁器のような光沢を湛え。
矢張りうずまきナルト時よりも細めの眉に、小さな鼻。
桃色の唇と全体的に丸みを帯びる身体。
俗に言う美少女が立っていた。

「い、いくら先生でも横暴だろ。俺はこれまで通りに一人暮らしだからね」
不躾な外野の視線に晒されて恥ずかしいのだ。
ナルトは頬を薄っすら赤く染めて且涙目で紅を睨む。
紅は本来のナルトの姿に骨抜き。
うっとりした顔で頬に手を当てている。
「駄目よ! これからどんどん女らしくなる時期なのに。一人だと不便だよ」
紅、笑顔でナルトの意見を却下する。
「シノだってシカマルだって泊りに来てくれるし。特にシノはおじさんに断れば一時的には一緒に暮らせるから問題ないって」
焦って両手を左右に振るナルトに、男共は『それが一番危ないっていうんだ』と。
口に出せずに成り行きをただただ見守るだけ。
ご意見番の二人も紅の熱いチャクラに気圧され傍観を決め込んだようだ。
自来也はネタでも思いついたのか、せっせとメモを取っている。

「そういう問題じゃないんだよ? ナル。シノがいようと、どのみち一人なんだから夜とか無用心じゃない」
「夜? シノと一緒に寝てるから危なくはないと思うけど」
小首を傾げて不思議そうに紅に答えるナルト。
愛くるしい少女の口から発せられる衝撃発言にサスケ撃沈。
鼻を押さえてしゃがみ込む。

 一体どうゆう想像したんだか。

シカマルは白い目をサスケへ向けた。

 これを機会に撃沈していろ。

シノはすかさずサスケの後頭部を強打。
気絶して崩れ落ちるサスケに強力な暗示と幻術をしかける。

まだ早すぎる。
ナルトの本当の姿を知っても動揺しないくらいに。
ともに歩けるくらいに強くなければナルトの隣に居てはいけないのだ。
精神も肉体も。

 サスケは実力はあるが精神面で抱える問題が複雑すぎて不適合だな。

シノはさっさと結論を下し術を使った。
シカマルはシノの行動を知らん振り。
注連縄も黙って親指立てているので、黙殺のようだ。
満足そうにシノは小さく笑った。

「取りあえずはだ。ナルトはこのまま『うずまき ナルト』のままが良いだろうのォ」
一頻りネタをしたためた自来也が初めて意見を言った。
「どうしてですか?」
案の定、紅が怪訝そうに自来也を見る。
「天鳴(あまなり)も。腹の九尾も。ナルトの持つ『宝』は狙われやすい。人の口の堅さは同じじゃないからのォ。
必要と思われる忍以外はナルトの秘密を知らない方が良いだろうな」
「ましてや今は三代目が亡くなった直後。木の葉の里も甚大な被害を被っておる」
自来也に同調してホムラが重々しく告げた。
「ですが……」
不服そうな紅。
ほっと胸をなでおろすシノ・シカマル。
ナルトはどちらでも良いようで肯定も否定もしない。

「ところで……先生?」
注連縄と紅のペースに呑まれてうっかり忘れてしまいそうになった事実。
思い出してカカシは逝去したはずの師と対面する。
『どうやって僕がココに居るとか? つっ込みはノーサンキューだってばよv』
有無を言わさぬ注連縄の返答にカカシは乾いた笑みを浮かべた。
『だ・か・らvv用なし達はナルちゃんを綺麗サッパリ忘れてねvあ、勿論僕の存在もね~♪』
「せ、先生!」
恐怖に顔を青ざめさせて慄くカカシ。
師である彼の性格は知り尽くしている。
問答無用に術を仕掛けるなんて卑怯な真似、絶対にできる人なのだ。
しかも容赦なく。

『大丈夫。痛くないよ、怖くもないし』
迫り来る黄色い頭の悪魔にイビキでさえも動けない。
金縛り状態でひきつけのような呼吸を起こしている。
サスケ、早々に気絶できて幸せだったのかもしれない。

「そういうことなら。お手伝いします、四代目v」
夕日 紅。
意外に注連縄と相通じる部分があるようだ。
『そう? 助かっちゃうな~♪』
無邪気に紅の申し出を受ける注連縄。

それならいっそ最初から幻術を使って眠らせておいてくれればよかったのに!!
思いも寄らない敵襲に恐怖する忍達は皆、そう思った。

「おい、いいのか? アレで」
シカマルが呆然と立ち尽くすナルトの肩を突いた。
ナルトはため息をつき首を左右に振る。
諦めているようだ。

「ああなったら誰にも止められん。元よりナルトがあ奴等の記憶を消すつもりだったんだろ? 一手間省けたなァ」
完全に面白がっている自来也が項垂れるナルトの背をバンバン叩いた。
「紅の記憶の再封印は出来ないと思ってくれ。ナルも次代の火影が決まるまでは、うずまき ナルトとしての生活を続けること。暫定案じゃが、良いな」
苦々しい顔つきでホムラが顎の髭を撫でる。
「はい……」
ナルトが返事をすれば、注連縄と紅の攻撃を受けた上忍や特別上忍その他諸々の忍の絶叫が響き渡った。

「最凶コンビじゃのォ」
締めくくりに自来也。クツクツ喉奥で笑いコメントを述べた。


私流バレネタです。どの女性(女の子)キャラを保護者にするか迷うところですが。うちは紅さんに決定~!!でもってパパの強固な守り(嘘)によりナルコはまたナルトとして生活します。いずれは本当のバレネタも書きたいですけど。コレはあくまでも捏造かつギャグなので。笑って流してくださいませ。
 ブラウザバックプリーズ。