11月


何時もの待ち合わせ場所。

甘味処。

甘い香りが立ち込める店内にて待つこと数分。
普段着姿の『彼女』は平然とした態度で店内にやって来た。

「久しぶり」
店内に入るや否や直ぐに俺を見つけて彼女は言った。
俺の座る指定席、横長の椅子。俺の座る隣に並んで座る。
店員は慣れた調子で彼女を見やり、店内に居た客達は驚きの眼差しで彼女を見る。

美女寸前にまで育ったふくよかな躯。
すんなり伸びた手足にくびれた腰と。
見ているだけで肩の凝りそうな重そうな胸元。
肩にかかった金色の髪を払いのけ、蒼い瞳を細めて笑う。

「ああ、久しぶり」
語る会話は軽やかで、俺と彼女を隔てる壁など無いようにも感じる。
つかの間の逢瀬のこの時だけ。俺も極力普通を装い返答する。

「ふふふ、へーんな顔、だってばよ?」
皴の寄った俺の眉間を突き彼女は至極楽しそうに指摘した。
上目遣いに俺を見る。
興奮で赤く染まった頬。何時見ても潤んでる蒼い瞳。桃色の唇。
「考え当ててあげるってばv火影候補であるアタシと密会してていいのかな〜、とか? 自分は暁の副隊長なのに敵なのに。なーんてちょっとアンニュイ?」
期待に満ちる蒼い瞳から視線を逸らし俺は小さな声で答える。
「いや」
今更だ。
「え? 違うの!?」
俺の前で只の女の顔をして。ガックリ肩を落とすのが、七代目火影候補だと思うと。
思わず笑みが込み上げる。

「もし君が火影の椅子に座るなら、この場所で会うのは止める。今度会う時は戦場だろう。覚悟は決めてある」
「ふーん……」
俺の決意表明に彼女は興味を示さない。
顎に手を当てて何かを深く考え込んだ。
「じゃあ、もうここじゃ会わないね」
あっさり彼女は軽い口調で言い切った。

「だから覚悟しておいて。戦場であったら真っ先に捕まえて上げる。捕まえて木の葉に連れ帰って洗脳して一生コキ使ってあげるってばv サスケにバレないようにねv」
俺の耳元に唇を寄せ艶のある声音で囁き、彼女は俺の腕を掴む。
わざと胸が当たるように身体を押し付けしなだれかかってきた。
「アタシ、決めてるんだ。子供はイタチの子しか生まないって決めてるの。そりゃ、イタチは性格破綻者で、ブラコンで変態だけど。生まれてくる子供に罪はないってば。イタチのDNAはぜーんぶ、アタシのモノ。他の誰にも譲れないってばよ?」
「……」
随分な謂われようだが、ナルトの脳内にある『うちは イタチ』は性格破綻者でブラコンで変態なのだろう。
だからおいってナルトの期待に沿うような『イタチ』になるつもりはないが。
ナルトの発言には、俺への執着に近い愛情がある……んだろうな?

既に俺を越えてしまった七代目火影候補は、切れる頭を極限にまで行使して俺を絡めとる策を練るらしい。

逃げられないだろうな。

俺は考えて薄く笑った。

「髪の毛一本から血の一滴まで。他の誰にも譲ったら駄目だってば。もし破ったら容赦なく躾して一生木の葉暮らしだからね」
俺の両目の縁に口付け、時と場所を弁えずに俺の口を塞ぐ。
これもこの店名物で、店員は慣れたモノ。気にもされない。
寧ろこのタイミングで偶然店に居合わせた客の視線が俺に突き刺さる。

「鬼鮫? ちゃーんと見張っておくってばよ?」
「承知いたしておりますよ、暁創始者、うずまき ナルト様」
背中合わせで背後に座る鬼鮫が苦笑して彼女に応じる。
「イタチが輝ける場所としてアタシが作った暁だもん。活用してくれなきゃ困るってば、イタチv」
俺は彼女の言葉に応じず、深く口付けしなおすことで気持ちに応じた。

彼女が作った箱庭の平和。
箱庭の波乱。
全てが彼女の手のひらで踊る。

不快じゃないのは彼女の執着対象が、俺、だからだろう。



 11月のお相手はイタチさん。
 2003年設定なので、暁設定がいい加減です。捏造です。(苦笑)
 数年ぶりに見返してみるとやっぱり微妙……(苦笑)
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