3月


俺が中忍になってから、大分時が流れて。
まぁ、色々在ったけど木の葉は未だ存在する。語弊がある説明か?
一々突っかかってくんなよ、俺にとっては一世一代の大芝居を打つ日なんだ。
緊張したって仕方ねーだろ。

人生色々。

日々表向きは『火影になる』と豪語していたアイツが、いよいよ特別上忍に昇進する日。
ったく……裏じゃ暗部SSランクの仕事しかこなさいない猫被りが、重い腰を上げたってトコだな。

「昇進、おめっとーサン」
人生色々に始めて顔を出したナルトに俺は言った。
面倒くさそうに。

ナルトはキョロキョロと周囲を観察しながら俺の隣に座る。

「ありがとうってば。……シカマル? 他の皆は?」
何時の間にか髪を伸ばし始めたナルト。
長い髪がナルトの動きに合わせて左右に揺れた。
「サスケとネジ・キバがAランク任務。イノはカカシとゲンマと一緒に諜報活動中。サクラとチョウジは午後から。ヒナタはシノとSランク任務」
予め知っててこの日を選んだくせによく言うぜ。呆れつつも俺は律儀に答えてやった。
「なんか緊張するってば」
頬を赤らめて胸を押さえるナルトの演技は相変わらずパーフェクト。

俺達下忍ルーキーが、ルーキーと呼ばれていたあの頃から八年。
二十代に突入した俺達だが進展がない。
目の前のターゲットは年々女らしさを増して、ファンを増やしているってのに。俺は友達以上恋人未満を抜け出せずにいた。

……本当は抜け出しても良かったのかも知れねぇ。
けど俺が、きっと俺がこのぬるま湯を心地よいと思っていた。
だからナルトも同僚としての立場を崩さなかった。
知ってるんだぜ? ナルト。お前がサスケやカカシの告白を悉く蹴ってきたっての。

「なぁ、ナルト」
俺は真正面を向いたままナルトの名前を呼んだ。
「? なぁに?」
ナルトは不思議そうに俺へ返事を返す。
はぁ。
表向きの演技はまだまだ続けるのか。
俺にはあんまり関係ないけどな。

「俺と結婚してくれ」
さらっと。俺は明日の天気を話す調子でナルトへプロポーズした。

素っ気ねぇだと!? 煩ぇな。
これでも三ヶ月は散々悩んで考え抜いて出した言葉なんだよっ。

人生色々の空気が瞬時に固まり、ナルト自身も固まっている。

「俺はお前が他の野郎と結婚するのを黙ってみてられるほど、物臭じゃねぇ」
どう出る? ナルト。
お前はまだ表の演技を続けたい。
そして俺とは恋人を演じている。

このプロポーズ、断れないだろ?
あー、またツッコんでくるなよ。こうでもしなきゃ、ナルトは逃げるからな。
しかも俺の実力じゃ、逃げるナルトを捕獲出来ねぇんだよ。物理的に。
悔しいが俺は現実派だし、論理派だ。無理なものを気合でカバーしたりはしねぇ。

「……本気だぞ」
畳み掛けた俺の気迫勝ち。
こうして沢山の証人(人生色々に詰めていた上忍&特別上忍達)も確保して俺はナルトへのプロポーズを成功させた。



息子のシイは呆れた顔で俺を見て、クナイを磨いているナルトを見た。
「母さんってさ、騙されたわけ? 親父に」
中々可愛い性格に育ったシイを俺は無言で殴る。
シイは涙目になって俺を睨んだ。
「策士だと言え、策士だと」
むすっとして俺が言う。
ったく、今なら俺が中忍になりたての頃の、親父の気持ちが良く分るぜ。
女心を知らねぇガキは面倒臭せぇな。
「シイも大人になれば分るわ。私は騙されて結婚するような性格してないってば」
にっこり笑って俺に抱きついてくるナルトを抱き締め返し。俺は勝ち誇った笑みをシイへ送る。

悪いな、息子。幾ら実の子だといっても俺のナルトは譲らねぇぞ?

密かにマザコンのシイは何処となく悔しそうだった。



 3月。最後を飾るお相手はシカマルです。
 しっかし、色々書いてましたねぇ(笑)
 数年ぶりに見返してみるとやっぱり微妙……(苦笑)
 昔の企画の復活なので、楽しんでいただけるか分かりませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
 ブラウザバックプリーズ