夢のお告げ!?活用法

舞い落ちる赤い紅葉。
黄色い銀杏は同じ黄色、金色の髪にかかる。
『迎えに来た、ナルト』
舞い落ちる広葉樹の葉。
雨の様に降りしきる葉の間。
立ち尽くす男が一人。

細身で長身、長めの黒髪を束ね。
細められた赤き血潮色の瞳。深く揺らめく蒼い瞳を熱の篭った視線で絡め取った。

『イタ……チ?』
男と対峙する美少年は蒼い目を見開き、首を傾げた。

はらり。

美少年の髪から銀杏の黄色い葉が落ちた。
淡い桃色の唇が言葉を形作る。

ふっ、と笑みを深くして赤い瞳の男は美少年の唇に人差し指を当てる。
『答えはきかない。たとえ否であったとしても連れて行く』
美少年の耳元で囁かれる掠れた低い声。
腕の中に美少年を抱き締める。
やがて、男の唇は美少年の唇に重なった。




「……って夢を見たのよね」
目の下に隈を作り、どんよりしたチャクラを見に纏い。
頬杖ついてイノは隣に座るゲジ眉下忍へぼやいた。

ゲジ眉は頬の筋肉を痙攣させつつかろうじて、笑顔を顔に貼り付ける。
ここら辺りの気遣いは彼の『根性&努力』が成せる技であろう。
「そ、それは凄い夢ですね、イノさん」
ナルトとイノの小さな協力者。

ナルトの幻術に耐性を持つ、その名はロック=リー。
アカデミーで一つ上の学年だった彼は、今年目出度く下忍と成り任務に励んでいた。

「はぁ。現実って残酷よね」
すっかりたそがれモード。
イノは寂しそうに小さく笑う。
「どんなに誤魔化して演技を続けても。ナルトの根底にある『美少年ほわほわオーラ』が男共を惹きつけてやまないのよ」
「びしょうねん、ほわほわおーら……ですか?」

 なんじゃそりゃ?

心の中で思いつつ。
律儀に人生相談に乗ってしまうリーは、根っからのフェミニストだ。

「そ。悔しいけどわたしより美人でしょ?
肌は綺麗だし、髪はサラサラ。
演技の時のキラキラ瞳で、しかも上目遣いで! 見上げられて御覧なさいよ。
頭の血の巡りが悪いあいつ等は確実に『落ちる』わね」
両手を広げ肩を竦めたイノ。
「はぁ……?」
ナルトに関して魅力の『み』の字も感じない。

まっとうかつ天然思考のリーには理解しがたい説明。
よく分からないが相槌だけは打つ。

戸惑うリーの様子が分かっているイノは、別に気にした風もない。

 だから愚痴を零せるんだけどね。
 リーにはさぁ。
 本当、リーがアカデミーでの協力者で助かったわ。

リーの反応を横目にイノはもう一度ため息をつく。
「不安だよ。ナルトは全部自分で抱えるから。なぁんにも言ってくれないから。わたしだけ空回りしてるのかな〜? ってね。思っちゃう時もあるの」
おどけた口調ながら、イノの瞳は真剣そのものだ。
リーは思わず背筋を正した。
「わたしがナルトをこの里に縛ってる。押し込めてる。でも……本当はそうしない方が良かったのかもしれない」
「迷うのはイノさんの自由です。でも、そういう悩みはナルト君本人に確かめた方がいいですよ?」
愚痴モードに入ろうかという、イノの言葉を途中で中断させて。
リーは優しく諭す。
「イノさんは聡過ぎる。だから先回りして色々考えてしまう。だけどそれはイノさん一人の出した結論でしょう? 相手の気持ちを確かめもしないで、決め付けてしまうのは早計です」
親指を立て歯を光らせて力説すれば、げんなりした顔でイノはリーを見た。
「はいはい。分かったわ。諦めて今日は家でホームエステでもしとく」
あくまでも爽やかなリーの言葉と励ましに、テンションが一気に下降したのだろう。
イノは相変わらずどんよりしたチャクラを身に纏い、とぼとぼ家へと帰って行った。

イノの寂しそうな背中を見守りつつ。
微苦笑しながらリーは背後を振り返る。
「これでよかったんですか? ナルト君」
「……やりすぎだろ」
音もなく、つま先だけでリーの座る丸太の数歩先へ着地。
憮然とした顔でナルトはそっぽを向いた。
「でも、これナルト君が考えた台詞じゃないですか〜」

 僕にはこんなナウイ言葉は思いつかないですよ! あはははは。

言葉を続けて言い、リーはことさら爽やかに笑った。

イノが元気のない様子で数日過ごしていた。
気になったナルトはあらゆる手段を講じてイノの悩みをリサーチ。
本人に尋ねないところがナルト流。
そして相談役として据えたのは、この目の前の努力馬鹿。

 他の男にあんなイノ見せてたまるか。

イノ自身だって無自覚だ。
周囲の男共には嫌煙されるのは、あんな風に強気に振舞うから。

黙っていれば顔立ちは整っているし、日々欠かさないという身体の手入れも相まってスタイル抜群。
気は利くタイプだし案外控え目でもある。
どんな状況下でも自分を一番に考えて真っ直ぐ自分の言葉を曲げない。
だからきつい言葉もポンポン口にする。相手が火影であっても師匠であってもナルトであっても。

密かに。
しゅんとしたイノの顔が実はナルト好みだったりするのだが、これは極秘だ。

「……」

 そ、それは事実だけど。
 お前が言うとなんとなく、クサイんだよ。
 俺が考えた台詞とは言え恥ずかしいだろっ。

内心愚痴るも、相手は天然ボケキャラ『ロック=リー』
下手にリーのテンションを上げれば被害を被るのはナルト。
実体験を持つナルトは無駄な労力を消費しない選択をした。

「青春ですねっ! ナルト君もイノさんも!」
駄目押しのように無邪気に笑うリーへ、更なるツッコミは恐らく無意味だろう。
ナルトは口角の端を持ち上げた。
「今回はサンキューな。にしてもな?」
苦笑気味のナルトに察したリーもつられて苦笑。
「僕はお会いした事ないですけど、あのイタチさん、ですか」
「イノのヤツ、イタチに挑発されて以来天敵みたいに思ってるからな。確かに俺に忍術を教え里抜けを示唆して。木の葉を潰せ、みたいな事言ってたけどな」
ナルトを溺愛し誰よりもその強さを認めていた、若きエリートうちは イタチ。

だが彼が認めていたのは『忍としてのナルト』であり。
ナルト自身を見ているようで、見てはいなかった。

イノはその正反対。
ナルトを駒呼ばわりし、自分の役に立てと脅す。
ナルトの闇を知り、その闇さえも、自分の幸せの為に利用して見せると言い切った。

どちらを取るかなんて。
ナルトにしか決められない問題だ。

「僕はナルト君ではないので、その考えを全て察する事は無理です。木の葉の里に愛着はなくても、イノさんに愛着があるのは分かります。お似合いだと思いますよ?」
臆面もなくリーが告げればナルトは瞬時に顔を赤くした。
「……それをイノさんに見せてあげればいいのに」

 イノさんもそうだけど。
 お互い僕にこういう所、見せても無駄でしょう?

気分はすっかり二人の兄貴分である。
心の中でもう一度苦笑。

リーは「それでは」とナルトに別れを告げ。

薄闇迫る木の葉の里、自宅へ向けて歩き出した。


ギャグですvどっちかというとこんな感じの話の方がスキかも知れない・・・。リーの爽やかさに乾杯(謎)ブラウザバックプリーズ