思惑の一致


「「シカマルを」」
声を綺麗に重ねて言ったナルトとイノに、イビキは呆れ顔。
ご意見番の二人は沈黙した。

大蛇丸の暴走で過労死した三代目。
中忍試験最中に倒れつい数日前に息を引き取った。

が、里は存在し、人々は生活している。
新たな火影を選出する問題とは別に、この度の中忍試験において中忍に相応しい下忍がいるか否か。

ナルトとイノはご意見番に呼び出され、意見を問われていた。

その結果の反応が、奈良 シカマルを推すと言うもの。

見事に一致するナルトとイノの意見に大人達は苦笑した。

「え? ナルトも???」
目をまん丸にしてイノが隣のナルトを見た。

「ああ。あいつは我愛羅追跡時において冷静な判断を下した。下忍にしておくのは惜しい。先読みの能力が高いしな、あいつは」

 ましてや、イノに気があるんだ。
 同じ班にこれ以上放置して置けるか。
 面倒臭そうにしていても相手をきっちり観察する。
 あの要領でイノに目を着けたら……幾らイノの同僚だからって俺も黙っていられない。
 そうなる前に上に上がってもらわねーとな。

本音は胸の奥に蓋をして。
ナルトは努めて客観的な見地からシカマルを推薦する。

「そうなのよ〜。なんか知らないけど、シカマルって頭がいいのよね。アスマが調べたらしいんだけど、IQ二百だって。
二百も在れば天才よね。下忍で燻らせとくのは勿体無いってわたしも思うわけ」

 あったりまえでしょ〜!!
 ナルトが実は美形だって。
 アカデミー時代、一番最初に気づいてたのはあのシカマルなんだから!
 興味をもたれて正体バレたらマズイじゃない。

 大蛇丸やカカシだけでも厄介なのに。
 これ以上馬鹿を増やしてなるものですかっ!

イノもイノで。
本音にはかたーく蓋をしてシカマルの優秀さを推す。

「つまり先読みの良さと、冷静な判断がずば抜けていると」
イビキが問いかければナルトもイノも同時にうなずく。

「下忍は力がある程度あればなんとかなる。だが中忍となれば違う。一小隊の隊長として動くこともある。求められるのは力じゃない。判断力だ」
相変わらずの無表情。
鉄面皮のままナルトは語り出した。

「確かにシカマルはまだ発展途上だが。直情型のネジとサスケとは違って客観性を持っている。
熱くなっていても敢えて冷淡な行動も取れる。引き際も心得ている。ある程度経験を積めば良い中忍、ひいては上忍となって里に貢献してくれるだろう」

一旦ここで言葉を区切ってナルトは少しだけ息を吐く。

「俺はこういった理由からシカマルを推す」
感情を隠して言い切るナルトと横で何度も首を縦に振るイノ。
ご意見番もイビキも理路整然としたナルトの意見に異論はない。
異論はないのだが。

 なんというか、しっくりこない。

イビキは傷だらけの顔を顰めて口を真一文字に結ぶ。

ナルトもイノも。
基本的にお互いにしか興味のないある意味『馬鹿ップル』だ。
そんな二人がこれだけ奈良を観察しているというのが、引っかかる。

何故奈良を観察していたんだ?
どうして躍起になって奈良を推すんだ??

大人達の謎は果てなく広がるばかり。
訝しいナルトとイノの言動に、二人の顔色を窺うが本人達の真意は見えない。

ご意見番とイビキ。
アイコンタクトを交わした後、イビキが重い口を開いた。
「二人の意見はよく分かった。他の上忍達の意見と同じく纏めて報告しよう」
代弁者は当然イビキ。
イビキの言葉にナルトとイノが何故か安堵のため息を漏らす。

 だから……何故!?

イビキの困惑は止まらない。
次の瞬間、イビキは冷酷なまでの冷たいナルトの視線に射抜かれて硬直した。

(イビキ、世の中知らない方が良い事の方が多いんだ。余計な口を挟むな)
目を細めて殺気だったチャクラをイビキへ送るナルト。
無音の脅迫つきで。

(これ以上の疑問は挟まないで下さいねv プライバシーですから。調べようものなら、師匠といえど容赦はしません)
ナルトとは別の思惑があるらしいイノからは、矢張り無音で物騒な忠告が。

別々に脅されてイビキは生きた心地がしない。
座った畳が針の筵のように感じる。

(これ以上は不問にする)
迫力負け。テクニカルノックアウト。
我が身は可愛い。
人生先は長い。
自分に言い聞かせてイビキは二人へ声なき返事を返した。

「では」
一礼して立ち去るナルトと。
「ナルトッ! 待ってよ〜」
慌ててナルトの後を追うイノ。
木の葉最強のカップルは意見だけを言うと、さっさと去っていってしまった。




 ったく。イノの傍にシカマルを置いておけないだろ。

イノに腕組みされながらナルトは内心考えて。

 冗談でしょ。これ以上ナルトの傍にシカマルは置いておけない!

ナルトに腕を絡ませながら思うイノ。

「やっぱりシカマルが妥当だと俺は思う」
一緒に歩きながらナルトは改めてイノへ告げた。
妙な誤解をイノに与えない為に。
「うん。それはわたしも同じ」
イノもナルトへ妙な誤解を与えないよう素早く同意した。

「そっか」
ここで始めて、ナルトは笑顔を見せる。
つられてイノもニッコリ笑ってナルトへ擦り寄った。
ナルトも心持ちイノを引き寄せて仲良く歩く。

「変化して一楽寄って帰るか」
イノの頬の感触を肩に感じてナルトが提案する。
「サンセーv」
はしゃいだ声をイノが上げればこの後の時間は食事タイムに決定。

二人の思惑通りにシカマルが中忍に任命されるのは時間の問題であった。


 ナルイノ版・シカマルが中忍にあがったワケ(爆笑)
 能力があるからは勿論、彼は色々美味しい位置にいますからね〜。
 ブラウザバックプリーズ