不器用貧乏
波の国の任務はなんちゃって護衛。
本来の任務は火の国に程近い波の国の国情安定。
それがナルトに下された任務だった。
心配? してなかったわよ。
「いえ……顔が怖い、です」
何時もは怖いくらい爽やかなリーも引いていた。
そりゃ、彼のフェミニスト精神が許すものなら。
ガイ先生が“それは仕方ないぞ! リー”とか言ってくれるのなら。
全速力で彼女から遠ざかっていったことだろう。
忍術では及ばないが、脚力では彼女に勝る。
リーには自信があった。
だが今はリーの脚力を問題に挙げる時ではない。
「そう? いつもと変わらないけど」
手鏡を見て件の人物がリーへ返事を返した。
人気のない公園。
二人でブランコに並んで座る。
南無三! です。
漢(おとこ)なら決断しなければならない。
ロック=リー。潔く腹を括った。
「ナルト君なら帰ってきましたし、一体何が不満なんですか? イノさん」
リーは根性あるチャレンジャーである。
また馬鹿がつく程のお人よしでもある。
今回の成功はリーが一重に正直者だったから、だろう。
ふぅ。
イノはため息ついて一気に喋り出した。
堰を切ったように。
「ええ! 不満よ、ふ ま ん!! ナルトが成り行きでサスケに庇われたらしくて、なんだかも〜!!!
真っ先にわたしの所に来て欲しいのに、ナルトは平気な顔して平気に暗部の任務に行っちゃうし。
あー見えてもナルトって結構繊細で、無自覚に気にしてるトコあるのよ!?
わたしとしたら心配じゃない。
人の心配を気にも留めないで……イビキは笑ってるし。
笑い事じゃないじゃないのぉおぉおぉぉぉぉ〜。思わず毒薬盛っちゃおうかとも思うけど里の為にはならないし、わたしに任務が回ってきても困るから止めたけど。
三代目も三代目よ! わたしがいるから平気だってのたまわったわよ!! 大体ナルトは……(以下長過ぎ、リーの聞き取り不可の為省略)」
リーの左右の耳を超高速で突き抜けるイノのマシンガントーク。
目を白黒させながらリーは捲くし立てるイノの言葉の端を掴むだけで精一杯。
内容の把握にまでは至らない。
約八分後、イノの長く速い愚痴は収束を迎えた。
「って思うの」
「そ、そうですか」
ほとんど聞き取れず、冷や汗を流すリーとは対照的にイノはすっきり。
額の汗をふき取る仕草をし大きく息を吐き出している。
ガ、ガイ先生っ! 僕は、僕はどうしたら……。
努力馬鹿のリーの『努力』の範囲に『女性への適切な対応』は入っていなかった。
リーの反応を待つイノと、混乱し始めるリー。
「なにやってんだ?」
イノとリーの背後。
気配を感じさせずナルトが偶然現れる。
ナルト本人はそのつもりでも、イノもそう思っていても。
リーだけは知っている。
ナルトは偶然『素』で散歩をするほど酔狂な人物じゃない。
つまりは。
イノさんを心配して探していたんですねっ! 流石です、ナルト君!!
男の鑑です!
心の中で滝のような涙を流してリーは感激した。
ナルトの手を掴み、乱暴に上下に振る。
「ナルト君! 君って人は、君って人はなんて男前なんだ〜!!!」
雄叫びに近い絶叫を上げ、リーはハイテンション。
「はぁ?」
対するナルトは訳が分らず首を傾げる。
「こうしてはいられません。僕もナルト君のように内実共に強い男を目指し、努力します! 修行をし直して来ます」
びしっ。
リーは垂直姿勢で言って、イノが止める間もなく超ダッシュで消えてしまう。
一方的な感動の余韻を持ち去って。
「「……」」
ナルトとイノは暫し呆然とし、リーが土煙を上げて去って行った方角を見る。
リーの感激が何処から来て何処へ向かっていくのか。
ナルトとイノには分らなかった。
「ナルト、あのっ」
がしゃん。
ブランコから立ち上がりイノは頬を赤くするが、ナルトは曖昧に笑ってイノの額に口付けを送った。
突然のキス……外では珍しいキスにイノは再びブランコに座り込んでしまう。
「俺は根無し草じゃない。アイツと一緒にするな」
イノの座るブランコの前にしゃがみ込み、ナルトはイノを見上げた。
「え?」
ナルトの言いたい事が分らなくてイノはもう一度聞き返す。
「サスケが俺を助けようとして、俺は助けられた。事実だ。けどな、刹那的な逝き方しか出来ないアイツと俺は違う。俺は根無し草じゃない」
前より言葉を増やしてナルトはもう一度言った。
「もう土のない生活は出来ないんだよ、俺にはな? アイツはアイツの心まで踏み込んでくる人間が居なくて孤独だ。
それを前面に出してくる部分は少しだけ前の俺に似てるかもしれない。似たような事で昔イノに殴られたもんな」
笑ったナルトにイノは頬を押さえて羞恥に顔を赤くした。
だって〜!!!
出会って少ししてから、家から持ち出した毒草で火影様を脅して、それでナルトに会いに行ったら!!
寂しいくせに私を追い払うし、可愛くないけど放って置けなくって。
わたしが来るのを待ってるくせに素直じゃないから殴ったのよね。
本音を曝していい相手とそうじゃない相手くらい線引いて分けろ。って。
自分がガキじゃないって言うなら大人になりなさいよっ。
とかなんとか、言った気がする……。
その時涙目になりながら、わたしの持ってきた飴舐めてたっけ。
ナルトったらv
「俺は何事も興味なさそうな顔してるけどな。イノに教えられて、線は引いてる。帰るべき場所もここだけだ。あんま心配させんなよ? 俺は……ココにしか帰ってこれない」
そっとイノの頬を挟みジーっと見詰めるナルトと見返すイノ。
真っ直ぐナルトを受け入れて倍以上の愛情を注ぐ彼女はナルトにとっての大地。
木の葉で、世界で唯一のナルトの土地なのだ。
「うん。ご免」
落ち着かないナルトは心配。
でもそれ以上にわたしはナルトに笑顔を向けて安心させたい。
わたしが不安になるだけでナルトが不安になる。
わたしがナルトに与える影響があるって事。
誰よりもわたしがナルトの居場所だって事。
もっと自信を持たなきゃね。
にしても不器用な励ましなんだからv ナルトったらvvv
はにかんで笑うイノにナルトは照れくさそうに笑った。
年相応の少年らしいナルトの表情。
引き出せるのはイノだけ。
「久しぶりに一楽行こう? ほらほら、変化」
イノは印を組み自分を数年分成長させた大人に変化する。
ナルトもイノの変化に付き合って大人へ変化した。
「これなら堂々とデートできるでしょ? 腕も組めるし」
ナルトの腕に己の腕を絡ませてイノが幸せそうにナルトを見上げる。
普段のナルトなら目立つ行動はしないのに、今日だけはやけに優しい。
特に文句も言わずイノに付き合って腕を組んだまま歩き出す。
その夜、一楽では金髪カップルが。
茹だるほどの熱いチャクラを飛ばしつつ、ラーメンを食べる姿が目撃された。
女性に優しくを目指し修行したにもかかわらず、サクラに即行でフラれたリーが、一番の不器用貧乏であることを記しておく。
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