また 漁港を訪れた






 小さな漁港に出かけた。
 先日、出会った老漁師が夫婦で網の片づけをしていた。船尾から繰り出した網は魚を捕らえて船首に回収される。次の漁のために船尾に網を整えておく。
 老夫婦が二人がかりで時々手を休めながら、息のあったタイミングで網を広げ折りたたんでゆく。
 所々に網の破れが見られる。一度、網を流したら だいたいは破れるものだそうだ。
 船首から船尾に繰られてくる網。破れ目があると見ているこちらまでため息が着いて出る。
 運悪く、カメラを持ち合わせていなかったため写真はないが、話を聞くことができた。
 

 この網の長さは300メートル。しかも、岩場に流せば破れるのは当然。
 3重になっとるけぇ余計に破れる。
 (夫婦)二人で漁に出ることはない。(妻の方が)船に酔う。
 風を切って走っているうちはええけど、止まると船酔いをする。船は遊覧船しか乗ったことがない。
 女の漁師はここらにはおらん。他所にはいるらしいけど…。
 娘は漁師が嫌いだって言うし、漁師の嫁にもなりとうない言うて他所に嫁に行った。
 漁師の嫁は、こうやって手伝いせにゃあいけんけぇ。
 この辺も、年寄りばっかりになって跡継ぎがおらん。

 (今夜の漁の準備ですか?と訊ねたら)今夜は漁には出ん。南風だけぇ、凪に見えてもちょっと沖にでりゃ風が強い。

 (お父さんは)75歳。まだ元気だ。ちょっと腰が曲がっとるけど…。

 これから網の繕いをする。網を繰ってそれから網の繕いをする。これが毎日っていっても漁に出たときだけどなぁ

 作業が終わるまで見ていた。 網に時々、小さなカニやエビ ウニ サザエの殻などがくっついている。老漁師の方がそれをとっている間、妻は船の縁に腰掛けて休憩する。妻が取っているときは老漁師が腰掛けて休憩をしている。
 作業が終わると妻は帰り、老漁師は1人で網の繕いを始めた。
 この次はカメラを忘れずに持ってゆこう。
(2004年5月9日)