晴天に誘われて小さな漁港を訪れた。

写真:老漁師が網の手入れをしている。顔を上げるように頼んではみたが…


 晴天に誘われて近くの小さな漁港に立ち寄った。 海は穏やかで数隻の漁船が静かにもやっていた。
 漁船の上で老漁師が網を繕っていたので話を聞いた。


 漁師をやって50年になる。若い頃は他人の船に乗ったが自分の船を持ってからは1人で漁に出る。昔は、夕方出て明け方の市の時間まで漁をしたが、今は 夕方4時か5時頃に出て10時か11時頃に帰ってくる。
 網を流すときぁ1人でするけど、(港に帰ってから)網を繰るときぁや、おかあと二人でする。

 凪の時は魚は獲れん。荒れた方がええけど今は凪の時しか漁にでん。たった1人で船の上にいるのは命がけ。小便するにも何かにさばっとらなあいけん。

 海は、本職よりもレジャーが多くていけん。あいつらぁは、船も道具もいいもんもっとるけぇ…。
 一番の大物っていうのは、ワニかなぁ。3メートルくらいの…。今は魚が安くていけん。もうからん。
 プラスチックになってから船の寿命は長くなった。今、乗っている船は15年目。ちゃんと船を造る分を蓄えとかにゃいけんけぇ、金は残らん。息子がいないから、俺で終わり。今は、昔と違って熱がはいらんけぇ…。なんでもかんでも道具も船もようなったけぇ、どんどん魚が獲れて、今度は魚がおらんようになってきた。
 漁師は、海が荒れりゃ漁に出れんけぇ、平均すりゃ休んでいる方が多いだ。

 今は、鰺(アジ)がとれる。この網だと何でもかかる。魚はうまいもんを一番に食える。網にかからんもんは、金 出して買うのはあたりまえだぁ。カニは獲らんけぇカニは買って喰うだ。

 もやってある船に乗らせてもらった。外から見ると大きいようだが乗ってみると狭さが感じられる。たくさんの機械がある。無線はあるがレーダーはいらないという。レーダーがあると他の船の位置が解って衝突しないという。「広い海の上で衝突するのか」と訊ねると 「そんなことはしょっちゅうある」とのこと。
 放り出されたら、それでおしまい。確かに命がけの仕事だ