「長靴を履いた猫」は、なぜ長靴を履くのか? |
長靴を履いた猫」は、何故 長靴を履くのだろうか?
私が講師を続けている保育士養成施設の学生達にこのテーマでレポートを課した。
ほんの思い付きだったので深い考えもなく、学生の皆さんには提出すれば試験結果に5点を追加してあげよう。
更に内容によっては最高20点まで与えようと約束した。
レポートの課題としては極めて、難しいと思う。私が学生時代に課せられたレポートでこんな面倒くさいレポートはなかったように思う。
さて、学生さん達はどんなレポートを出してきたかというと一様に皆が困ったようだ。
課題に対して、それなりの考察があり、更に結論(つまり猫が長靴を履く理由)を導いているというレポートもある。
ただし、ほとんどのレポートは結論が唐突に導かれているのは否めない。
つぎに、彼らの導いた答えのいくつかをあげてみる。
※猫は長靴が好きなのです。 ※普通の人間と同じように歩いたり出来ると考えた。 ※作者が長靴を好きだった。 ※「靴を履いた猫」より「長靴を履いた猫」の方が語呂がよいから。 ※四足歩行のままでは、王様に会ってもらえないから。 ※末息子の資本の投下(長靴)によって猫が利益(王女との結婚)を還元するという資本主義を象徴した。(末息子は筆頭株主、猫が社長) ※藪の中に入るため(藪は世間の荒波を象徴している)。 ※猫は人間になりたかったのだ。 ※猫がみな長靴を履いていた国があった。 ※長靴を履かない猫は普通の猫。 ※(長靴を履いた)珍しい猫だから王様に会えると考えた。 ※長靴は身分や階級の象徴 ※そんなことより、この猫には名前がない。 ※猫の足の構造を考えれば普通の靴では脱げてしまうから。 ※魔法の長靴 ※末息子に溺れるまねをさせるとき濡れるから長靴を履いた。(びしょびしょでは王様が会ってくれそうにない。 ※こんな猫がいたら化け物だ。すぐに研究室か博物館行き。 |
突っ込みを入れたくなる答えもあるが、何人かの学生は、正解を導いていたが、数少ないとはいえ予想よりは多かったという印象である。ネットで調べたようだか「長靴」を調べて「権力と富の象徴」にたどり着いた学生がいた。 私が長年、解らなかったことにこうもあっさりたどり着かれると、ちょいと悔しいという気持ちも湧いてくる一方で、ほとんどの学生は擬人化の方に目が向いていて本質を失っていた。 特にこの物語が創作童話であることを忘れて、昔話のようにとらえてしまうと 議論が混乱する。つまり「作者の意図」というのがあるということなのだ。 猫を擬人化して何か伝えたいことことが作者の意図なのである。擬人化することに着目してしまうと「※猫は人間になりたかったのだ。」「※猫の足の構造を考えれば普通の靴では脱げてしまうから。」ということになってしまい、答えとしては面白いがペローの意図するところではなくなってしまう。 正解を導くのは私のHPを知っているのが一番の近道であるが、このHPは検索サイトに登録していないからたどり着くのは難しい。しかも、ペローの原作を元に絵本や童話集としていろいろな脚色がなされている。アニメのイメージで考察を加えた学生もいたようだ。 ただ、絵本で「王様が猫と同じ様な皮の長靴を履いている」ことを発見して権力の象徴にたどり着いたレポートもあったが、これはこれで大したものである。 いずれにせよ、「長靴を履いた猫」を知っている学生も知らなかった学生も、「猫が何故長靴を履かねばならないのか」などとは考えたこともなかったことは確かなことである。 このレポートで学生のすべてを評価しようとは思っていないが、この思い付きのレポートが案外、学生達の気分や信条、見方を知る上で役に立ったと感じている。 学生さん達の気分や信条、見方についてはまた 別の機会に紹介することとしたいが、字の汚いのには閉口した。しかも、大半の学生が鉛筆で書いている。もう大人なんだからインクで書いて欲しかった。 きっと 私も彼らの年頃にはそうであったと思うけど、一応 人生の先輩というか 講師としては字の汚いのと誤字 当て字の多いのには困ったものだ。 (この項おわり2003年7月26日頃) |