幸せになるための子育て  その1

 

 我ながらいい題名だと思います。やっぱり、皆幸せになりたくて、いい子を産みたくて楽しく生きたくて頑張っているんだと思います。もちろん中には、生きているのが苦しいと思っている人もいるでしょうが・・・なんて書くと、やっぱり職業意識丸出しで悩んでいる人に視線を送ってしまう精神科医の顔が出てしまいます。
 自己紹介が遅れましたが、22年間児童精神科医をやっています。今、小児科医が少ないなんていっていますが、児童精神科医は「とき(朱鷺)」みたいなもので絶滅危惧種です。児童精神科医に興味のある医学生は大勢いても生活が成り立たないということでほとんどなり手がいない(実際には生きていけるのですが)職種です。

 話はそれましたが、日本はほっといても子は育つ、がんばらせれば子どもは伸びる、やるべき事をやる子、自主的にやる子、幼い頃からしっかりした子はいい子になる、しっかりしつければしっかりした大人になるという類の育児観、教育観をもつ国です。どれも魅力的でしょ。
 こう育てれば、将来安泰と思うでしょう。左団扇でしょうか。ところがどっこい、そうはいきません。
 13万人にものぼる小中学校の不登校、不登校しない子たちの問題も数知れず。その先には、無気力な大学生、大学を卒業してもあまり自主性がなく覇気のない新卒者、まだそれならいいが引きこもりと称する一群の若者たち。でも、この子達は最初から問題ではなく、ある時期ずっとしっかり者で通ってきた子が大部分です。

 ある一時期だけ見ている教育者は、その一時期はこうすれば子どもは伸びるのでこれでいいんだと信じています。このある一時期というのが曲者です。幼稚園や小学校1,2年生までは誰とでも遊べて社交的だった、小学校5,6年までは提出物もしっかり出して積極的だった、とか、高校生まではリーダーシップとってすごかった、など、確かにある一時期はかっこいい場合が良くあります。ところが、その後まるで正反対の人間になってしまうなんて誰が想像しましょう。
 今までの子育てや教育はなんだったんでしょう。
 一生懸命子どものお尻を叩いているあなた、ちょっと手を休めてください。
 将来しっかりした子になってもらいたくて一生懸命子どもに正しい事を分かってもらおうと説得しているあなた、お茶でもいっぱい飲みましょう。まあ、そう力をいれずに、ゆっくりゆっくり。子育ては、コツのいる武道みたいなもの。力を入れるばっかりではだめで、ふわーっと力を抜いて、ここぞというところではバシッと決めて、大人の威厳でどっしり頑固に。見て見ぬ振りしたり、ほっとくところも隠し味。緩急両方要るのです。
 緩の時に心が育ち、急の時に生きる技が育つのです。親も子どもになりキャッキャッと遊んだり、親がのんびりとゆったりしている廻りで子どもが勝手に遊んでいたり、親が黙々と何かをやっているそばで子どもが何かを無心でやっていたり、不安でパニックになって泣いている時に親が一生懸命あやしてくれたり、いたずらしたり危ないときにはガンと怒ってくれたり、でもその後でまた優しくしてくれたりそういう守られ、どっしりした親の世界の中にいること。
それが、子どもに安心できる世界の基本を作ります。その安心感を得た子は、人生初期には生きることにずうずうしいので問題も起こしますが、豊かな能力を伸ばして生きます。   

・・・・ではまた次回。

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