家庭内暴力への対応と予防活動

 家庭内暴力は、最近ではDV(domestic violence)という言葉で呼ばれ、男性配偶者の暴力の問題が次第に大きくなっている。ここでは、以前から日本で特徴的であった家庭内でのみ起こす、子どもから親への暴力を中心に述べる。

 家庭内暴力と一般の暴力との違いは、家庭という場所や状況に制約されているという点である。その持つ意味は、対象が親であるという逃げ場をもちながらの衝動性の発露であり、許されるという予測が存在する。臆病さや卑怯さの要素がそこには潜む。もちろん、そういう強さ健全さの貧困こそがその病理であるわけだが。

 また破壊衝動そのものというより、甘えや依存の裏返しであり、怒りや不満をぶつける、不安をごまかすと同時に甘えを満足させるという行為でもある。暴力を許されることは、深い依存につながる。しかし、同時に自分をも切り刻みながらの深い依存である。自傷行為でもある。家庭内暴力による依存からは、肯定的な、生産的な方向性は出てこない。

 さまざまな場合があるが、基本的には以下のような特徴が認められる。

子どもの特徴

1 未熟で他罰的である。

2 神経症的で不安になりやすい。不安耐性が低く容易にパニック、混乱をきたしやすい。

3 孤独に弱く、甘えたいがうまく甘えられないか、あるいは受け入れてもらえなかった。

4 気が弱く臆病で、自分より強い人の前や家以外では自分の衝動を出すことをためらう。

親の特徴

1 父親は一般的に存在感が薄い。子どもとつながっていなかったり、信頼の裏打ちのある上下関係がついていない。

2 母親は自分というものが希薄な場合が多い。周囲に特に子どもに流されてしまう。

3 母親は不安になりやすく、また、トラブルを避ける傾向がある。自分さえ我慢すればという考え方になりやすい。批判にも弱く、その場限りの対応をしやすい。

4 母親は、暴力があるときには離れたほうがいいと分かっていても、距離をおくという事ができない。

見立てポイント

1 精神病レベルの問題があるか、発達の問題はあるかなど精神医学レベルの問題の整理をする。

2 自傷他害の可能性を検討する。

3 他の場所や他人に対しても出てしまう類の衝動か、家庭内に限局されうる衝動か、など衝動の質を判断する。

4 他の人との関係のとり方を検討する。緊張感、被害感、依存性、協調性、不安の強さなどを見る。

対応

 両親とのかかわりは、暴力を介して深めるのではなく、自然な交流あるいは甘えの中で深くつながっていくべきでもある。しかし、それがどこかで頓挫したわけである。ゆえに対応は、自然な親子のかかわりをつなぎなおすこと、育てることにある。単に、暴力を抑えたり、子どもの行動上の問題のみとしてとらえたりすると、その後に引きこもり状態に移行することが多い。また、重度の神経症的問題を残すことが多い。

初期の対応のポイント(これだけで、収まる軽症例も多い)

1 本人と出会えたときには、最初から暴力の事は問題にしない。本人は、あまり罪悪感は持っておらず、自分こそ被害者だと思っている。

2 本人のつらい部分、たとえば不安で被害的にとってしまう部分などをわかってあげ共感する

3 まずい関係になる人からは引き離してあげる。例えば、母親等。時に、別のところや他の人との間でいい適応ができ、情緒の成長をみることがある。

4 両親から相談を受けたときは、じっくり話を聞いてまず信頼関係を作る。

5 子どもが家庭内暴力をする意味、せざる得ない意味について親とともに考える。

6 その行為を助長してきた関わり方について検討する。(暴力を我慢して甘んじて受ける、何事も無かったようにお互いに演じる、本当の不安についての話題を避ける等)

7 暴力に屈して謝るのではなく、親の理屈ではなく子どもが苦しんでいるということを率直に認めて謝る事は大事である。しかし、だからといって暴力を甘んじて受けることを避ける必要はある。

8 メンタルフレンド(学生等)、心理士等の訪問が可能なケースもある。

その後の対応ポイント
 
初期の対応で、治療的流れができないときには、また、工夫が必要になる。どの例にも適応となる方法はなく、その子の不安の深さ、人を信用できるかどうか、親との関係のこじれ具合、周囲のサポート資源により、かかわっている専門家が決めるしかない。さまざまな手段を持っており、状況に応じて使える力が求められている。よくなって「なんぼ」である。

1 父親、あるいは母親の不安緊張が過度に高い場合、彼らに薬を処方する。

2 暴力の裏に、周囲への過度の不安や緊張感がある場合は、また、それを親が癒すことが現実的に難しいときには、子どもに薬を使用する。苦しく大変な時期には本人もその提案に乗ることが多い。

3 母親の家出、時には父親の家出、また時には、本人以外全員が家を離れるということが必要となる。帰ってまた暴力が見られたら、すぐ出る必要がある。この方法は、家出という手段をとる前に本人を受け入れていい関係になっているときに、より効果的となる。

4 筋の通った対応を行っても、依然として暴力がおさまらないときや、その暴力がエスカレートして危険なときは入院を考える。できれば、親族、知り合いを頼み、親が本気で入院を考えているということをきっちりと伝え、そのまま入院とするのが進められる。

5 寮の機能を持ったフリ−スペースに相談をし、そこにあずける。どちらも、これ以上の打開策がなく疲れてきたあたりでは、応じることが多いが初期には無理な場合が多い

 
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