不登校への対応と予防活動

1 問題が起こったときの対応の基本的な考え方

1  不登校をはじめ、精神的な問題を認めたときには、その裏に長い歴史、あるいは非日常的な事態のどちらか、あるいは、その両方がある.そのため、その子供のそれまで生きてきた流れをさかのぼることが、これから子供とのかかわりに有用になるし、子供のつらさをわかる一助ともなる。

2  1の対応前にまず、応急的対応がある。子供の気持ちは追い詰められた気持ち、挫折感、不安と罪悪感と、また、同時に安堵感があると予想される。不登校によって得た安心感をまず保証するところから始める。状況によって違うが「ゆっくり休んでいいよ」「大変だったね」「自分がこれ以上大変にならないためのいい選択だね」「よく無理して通っていたね」などである。

3  親への対応のほうが複雑かもしれない。親自身とても傷ついている。予想外に自分の子供が不登校になってしまい、挫折感、不安感、怒りなどで抑うつ状態になっている。また、学校に怒りが向いたり、休んでいる子供に怒りが向いたり、自分自身に怒りというか罪悪感が向いてしまう。そういう気持ちを和らげることが親自身にも必要である。

4  まず、1から3までの作業をじっくりやることが前提である。その部分がしっかりできると親は子供を受け入れることができ、子供は一度崩れた自信とプライドを再び作り直すことになる。

2 具体的対応場所

 1 学校の保健室:学校の中で、唯一成績もつかず、勉強の要素がないところ。ずいぶん落ち着くことが多い。しかし、他の子供がどんどん入ってくる上、他の教師からは甘えさせているようにみえ違和感を抱かれやすく、早く教室へ戻るよう圧力がかかる。養護教諭が、子供と教師の間に入って苦しむ場合もある。

 2 学校の相談室、カウンセリングルーム:教師が運営しているものから、カウンセリングを勉強した教師、臨床心理士を配置している場合もある。

 3 学校内のフリースペース:相談室に付属している場合もある。最近、需要(不登校生徒や不適応生徒)が増え、居場所になっている。

 4 校長室:おじいさん(おばあさん)タイプで、公務員的でない校長の場合、ことのほかよい居場所になる。

 5 教育委員会運営の相談所:退職校長の問題(指導的、経験や常識を押し付ける)は依然としてあるが、捨てたものではなく、なかには情があって今までの既成概念を捨てて子供と関わってくれる元校長がいる。しかし、情緒的な面の変化は教えるという概念とは、質的にも時間のかかり具合でも異質であり臨床心理士との組み合わせの仕事でないと、教師だけでは急いでしまったり期待しすぎてしまうことになりやすい。若手の臨床心理士だけでは心もとないので、経験のある懐の深い校長は学校との連携をとる上で頼りになる場合が多い。

 6 教育委員会における不登校グループ指導:チャレンジ教室、ふれあい教室などの名前で運営されている場合がある。集団活動になると学校的発想(指導的に関わる、早く正常ルートに戻す、気持ちよりも現実にできるということが評価される)が、どうしても出がちになる。教師以外にゆったりやらせるところもあると思われるが多くはない。

 7 情緒障害学級・養護学級(特殊学級):ゆったりしたペースのなかに入り安心して生活でき、成長していくことが期待できる。幼児的な退行的雰囲気はプラスに働く。

 8 病弱養護学校・国立療養所:歴史的には、国立療養所に結核・喘息をはじめ慢性疾患で入院している子供の教育を保証するために併設された。しかし、治療が進み、そういう子供の入院が少なくなるにつれて、不登校、心身症、情緒障害の子供の入院が増えてきた。子供の状況によって、家庭を離れることに意味があるかどうか検討して入院を考える必要がある。

 9 情緒障害児短期収容施設:家庭や学校で軽度の情緒障害児を対象に入居、通所させる施設。全国に17箇所しかない。児童相談所を通して入所が決められる。

10 民間のフリースペース、フリースクール:当然学校より暖かい設定で、子供たちが無理なく通えるように配慮しているところが多い。農業、さまざまなアルバイト、興味のある勉強中心、居場所的な場所作りなど多様な活動が見られる。

11 児童・思春期の子供対象の民間の寮:数人から20人ぐらいが共同生活をする。スタッフの人柄と、地域に根ざした生活を特徴としているところが多い。

12 民間の塾:補習塾での対応の場合と、不登校に徳化している塾がある。

13 不登校児を受け入れる高校:定時制、昼間定時制、単位制高校をはじめ、私立でも積極的に不登校児を受け入れている高校がある。

14 サポート校:通信教育など併用して、様々な教育と居場所を提供している。

15 宗教やそれに類した受け入れ場所:いろいろありコメントしがたい。

16 精神科:児童精神科医は専門的に対応してくれるが、数が少ない。一般精神科医は不登校にはあまりなじみがなく対応は難しい。大学病院でも、児童・思春期精神科の専門外来を持っていない場合、対応が難しいことがある。

17 小児科:発達心理、心身症に造詣の深い小児科医の居るところ、および臨床心理士が機能しているところでは.対応できる。

18 保健センター、精神保健福祉センター:精神障害全般を扱っているが、なかには児童・思春期相談に力を入れているところもある。

19 心理相談室、カウンセリングルーム:児童へのかかわりを得意としているかどうか、情報を集める必要がある。

3 その他の対策
  1 スクールカウンセラー:臨床心理士などを学校に派遣して教師や子供や親の相談に乗るという事業の研究的試行が行われている。今後とも拡大していく方向にある。外部の専門家が学校の中に入るということで画期的である。教育的理解と心理学的理解が融合することは子供にとって利益となる。

 2 不登校対策協議会など:行政主導で地域の行政、教育や心理などの専門家、関係者が集まっておこなわれる。機能している地域もあれば形骸化しているところもある。

 3 親の会:親同士のサポートから、専門かも関与して親の勉強会などを開いているところもある。親自身が地域で孤立することから防いでくれる。

4最近の不登校児童

  昔(といっても約10年前)は“しっかり”と不登校する子供が多かった。葛藤し、自室に閉じこもり、また、周囲と闘っていた。しかし最近は、不登校をした直後から、一見のんびりしたように見え、好きなことに興じる様子が見られる。切実感は伝わりにくい。しかし、かかわると、以前の子供たちよりも関係がつきにくい。悩んでいるところを言葉で表現したり言葉で悩みを意識したり共有したりすることがうまくいかない。しかし、人と一緒にいる不安感、安心できないということは意識している。言葉以前の段階で、不適応を起こしている子供が多い印象である。不登校の子供に限った問題ではなく、最近の子どもにある程度共通するが、情緒の一部は未熟でありカウンセリングなど言葉によるだけではなく、上記であげたような様々な場所で小集団という状況のなかで体験を積み重ねることが必要になってきている。身体症状のみであったり、表面的には人当たりが良かったりしても、対人関係の発達面では経験不足が目立つので安易な対応はせず、じっくりと成長を見守る必要がある。
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