ペットロスの話U〜ゴンちゃんの一周忌に寄せて〜

ゴンちゃんと最期のお別れのとき、庭に咲いてた花や手編みのセーターや、ゴンちゃんが好きだったおかあさんの古いショールを一緒に箱に詰めました。
そのとき、ひと回り小さくなったゴンちゃんの体を撫ぜました。
冷たくて固くなった体…
「死ぬ」ということを実感した瞬間でした。

「ゴンちゃんの死」に対する悲しみは、新婚旅行や生活環境の変化の中に徐々に埋もれていきました。
それでも長い間、朝目覚めるたびにゴンちゃんを想って泣きました。
結婚で家を出ていたぶん、わたしはまだマシだったのかもしれません。
父母は、娘がみんな嫁いで家を出てしまった上、ゴンちゃんを失ったのですから、どんなに寂しかったことでしょう。
そんなわけで、結婚当初は実家にまめに顔を出しました。
実家に帰るとゴンちゃんの姿を無意識に探している自分がいました…。

そんな気持ちの中、「チョコとの出会い」の話に続き、チョコがうちの子になったのです。



最初チョコを迎えたとき、わたしの心の中は後ろめたい気持ちが消えませんでした。
ゴンちゃん以外の犬を可愛がることに、罪悪感を感じたのです。
それでもチョコを迎えて以来、笑うことが多くなりました。
チョコパパのためにも、早く元気にならなくては…と申し訳なくも思っていました。
でも今思えばその頃は、チョコのことを「ペット」として見ていたように思います。
ゴンちゃんは「家族」であり「親友」でした。
チョコは「赤ちゃんの犬」で、「ペット」だったのです…。

そんな気持ちをくつがえす出来事が起こりました。
「ワクチン接種」の話で紹介したとおりです。
病院に向かう車の中で、気付いたのです。
今チョコを失ったら、精一杯愛情を注がなかった事をどうやってもつぐなえない…


それで心のもやが一気に晴れました。
チョコはもうとっくに、わたしの心の中で「家族」だったのです。



震災で大切な友人を失ったとき、こんな話を教えてくれた人がいました。
生き物が死ぬと、その魂は大きな生命体の中に還るんだって。
それは巨大な光の塊のようなものなのかな〜と、そのときぼんやり考えたことがあります。

その生命体に取り込まれた魂は、生命体と一体になり、これから生まれてくるさまざまな物の生命力となってまた戻ってきます。
仏教でいう「輪廻」の教えですよね。
それはこれから咲く花の中にも、生まれてくるさまざまな生き物の中にも、新しく寄せる波の中にも、平等に分け与えられるのです。
だから、死に逝くときは幸せの記憶を胸に、きれいな心で生命体に還らなくてはならないのです。
邪悪な思念が支配している魂が成仏できないっていうのは、次の生命力として復活できないからなのかなぁ?

話が難しくなりすぎました。
でも「死ぬ」ということは次へのステップなのだと思うことで、わたしの心は慰められました。
「ゴンちゃん」はもう「ゴンちゃん」ではなくなったけれど…
ゴンちゃんがいなくなったことは寂しいけど、この世界のありとあらゆる物の中にゴンちゃんは生き続けているんだと思うと、命あるものすべてに優しくなりたいと思います。

「ゴンちゃん」がどこにも存在しなくなったからこそ、わたしはずっとゴンちゃんのことを忘れない。



かわいがってた犬が死んで3ヶ月程度で、すぐ次の犬を飼うことができたの?って聞かれたことがあります。
でも、ゴンちゃんに対する愛情がチョコに移ったのではないのです。
愛情は、増えていくものなのです。
チョコパパへの愛、両親や姉たちに対する愛、友人への愛、全部ひとつひとつが本物なのです。
そして、チョコを育てていく中で、ゴンちゃんがどんな子だったのか未だに再発見する時がある…

残された者は生きている限り、前に進まなくてはなりません。
すぐには前を見ることができなくても、長い時間がいずれ解決してくれます。
悲しみとともに、いつまでもその場にとどまっていてはいけないんです。
自分の命も、誰かにとって大切なものの命だったはずです。無駄にしてはいけないんです。



この話を書きかけては悩み、書き直し、公開するのをやめようかどうしようか…と悩みました。
簡単に話してはいけない内容だと思ったからです。

でも、このホームページを通じて、いろいろな方の心の傷に触れる機会がありました。
ご自分の過失で大切なペットを亡くされたことを悩み、わたしのような者に相談してくださる方、亡くされたお嬢様の面影をわたしに見つけてくださり、親切なメールをいつもくださる方…
大切な人・ペットに先立たれる悲しみ、人ごととは、思えませんでした。
おこがましいですがなにかお慰めできることがあれば…と思い、以前から漠然と抱いていた「死」に対する考えをお話したいと思いました。

初めはチョコかわいさで立ち上げたホームページでしたが、こうしてたくさんの方とお知り合いになれました。
チョコを通じて、たくさんの人ともお友達になれました。
チョコがわたしに与えてくれた、一番の贈り物です。

ゴンちゃんは「生」と「死」を、身をもってわたしに教えてくれたワンコでした。
チョコは、わたしを「ママ」にしてくれたワンコです。
先に死なれるのがつらいから、ペットは飼わないっていう考え方の人もいるけど、一緒に過ごす時間がかけがえのないものだから、わたしはこれからも生き物を育てていきます(^^)