避妊手術U〜想像妊娠〜

チョコのヒートが終わり、チョコママの葛藤が日に日に募っていきました。
ヒート後、最低1ヵ月半は避妊手術をすることはできません。
これは、ヒートによって子宮が膨らんでいるからなのだそうです。

「次のヒートが来る前に、手術したほうがいいね」
チョコパパはそういいました。
「そうやな…。」
でもチョコママは、チョコのヒートを見てしまった今、避妊手術について肯定的な意見をもてなくなりつつありました。
とりあえず、1ヶ月半ある…。
そう思って安心しているうちに、次の難関が迫ってきました。



「チョコのお乳、なんか腫れてない?」
日に日に気になっていくお乳をチョコパパに見せて、お乳を調べてみました。
お腹のほうの、一番下のお乳二つがコリコリしています。
そして、あきらかに膨らんで少し黒ずんでいます。
「もし乳がんやったらどうしよう…」「一回、病院に連れて行こうよ」
チョコパパの休みの日に、病院に行くことに決めました。

不安でたまらないチョコママがお散歩仲間に見せてみると、「これは想像妊娠と違うかな」という答えが返ってきました。
「想像妊娠!?」
それから、本やネットで調べてみると、やはり症状がそっくりです。
そして、病院で見てもらった結果も、想像妊娠だということでした。



「想像妊娠する子は、ホルモンのバランスが正常でない場合が多いです。乳腺などの病気にかかる確率も、当然高くなります。お産する予定がないなら、若くて回復力があるうちに避妊手術をしてあげたほうがいいでしょう。」

先生からこういう説明を受け、チョコパパと先生の間で避妊手術の日取りが決められていきました。
病気にかかる確率が高いのなら…
チョコママは、ゴンちゃんのパルボ腸炎の闘病の日々、そしてワクチン注射でチョコを失いかけた日のことを思うと、泣く泣く同意するしかありませんでした。



でも、チョコの手術の日が近づくにつれて、チョコママは実に何度もチョコパパを困らせました。
「お産させないからって、子宮をとってしまうのなんか、残酷やん。人間やったら、わたしは一生独身で子供生まないから、子宮取るわなんて絶対ないやんか。」
「チョコは怖がりやのに、痛い思いさせるのなんかかわいそうやん」
「もし手術が失敗したらどうしよう?チョコの体が手術に耐えられなかったら?」

…チョコパパは辛抱強く、
避妊手術に危険がないことを先生と何度も話し合って確認したこと、
病気してから切除しても助かる可能性が低くなる事、
避妊手術したほうが寿命が長いという統計がでていること、
発情期のストレスがなくなるということ、などを言い聞かせてくれました。

チョコママも頭では十分理解しているのですが、それでも、なにもしらずに無邪気にしているチョコを見ると涙がでてくるのでした。

チョコを一生守るって決めたのに…
チョコに最善な道を選ぼうって、決めてたのに…

チョコママには、避妊手術は飼い主のエゴなのではないか、チョコにとっての最善が、避妊手術なのかという疑問が消えず、苦しみました。



手術の前々日の夕方、いつものお散歩仲間に当分顔を出せない事を言うと、みんなが励ましてくれました。
手術の前日、これから当分は散歩も控えないといけないから…と午前中にたくさん散歩をしました。
お昼前に、お風呂に入れました。
翌日は絶食なので、夜ごはんを早めに与えました。
チョコママは機械的に、それらのスケジュールをこなしました。
チョコママの気持ちとは裏腹に、手術のための準備が着々と進んでいきました。

そうして、手術の日がやってきました。