「滝沢演舞城」(2006年) 2006年3月9日(昼の部)/4月13日(昼の部夜の部) 「滝沢演舞城」2007 2007年7月9日(昼の部夜の部)/7月25日(昼の部夜の部) 「滝沢演舞城08・命(LOVE)」 2008年4月8日/4月17日/4月24日(いずれも昼の部夜の部) 「滝沢演舞城09・タッキー&LuckyLOVE」 2009年4月2日/4月20日(いずれも昼の部夜の部) |
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「滝沢演舞城」(2006年) |
大河「義経」でタッキー義経にハマり勢い余ってタッキーファンになっちゃった人手を挙げてー!ハーイッ!…というわけでさっそく遠征してまいりました滝沢「城」(東京新橋演舞場3月~4月公演「滝沢演舞城」)へ。義経物語はじめ昔話や歌舞伎といった“和”をテーマに、平成のアイドル滝沢秀明君が日本の伝統美を繊細かつダイナミックに体現します。 舞台は二幕三部構成、われらが滝沢義経が登場する「義経」のコーナーは第二幕第二部。大河「義経」が終わって寂しさばかりがつのるこの時期に「ナマ」滝沢義経に出会えるなんて、なんと心にくいプレゼントでしょう。 |
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なんだか義経サイトなのにただのミーハーアイドルファンみたいなノリになってスイマセン。大河レビューにも書きましたが大河ドラマ放送前はまったく何とも思っていなかった(むしろ「ちゃんとできんのかよ」となめてかかってた)滝沢君のことが回を重ねるごとにどんどん義経その人の姿に重なってきて、放送終了時にはもう完全に、自分でも信じられないぐらいにハマッていました…。 でもいくら義経イメージにぴったりとはいえ、彼が顔がいいだけのアイドルなら決してハマりはしなかった。「義経」を通じて彼の人となりを知っていくうち、華やかなアイドル生活の裏で積み重ねてきた地道な努力と凄絶な苦労がうかがえて、また仕事に対する真摯な姿勢と強いプロ意識に感じ入り、「たかがアイドル」という目でしか見ていなかった自分をつくづく恥じました。みずみずしい美貌に柔和な物腰、それでいて誰よりも男らしい、逆風に負けないまっすぐな精神…義経の時代から変わらないヒーローの条件を彼は満たしてる。日本男児、かくあるべし! 舞台専門雑誌「Look at Star!」vol.19では彼の義経への思いを知ることができます。私はこれを読んであらためて、この時代に義経を演じてくれたのがほかならぬ滝沢君で本当によかったと思いました。「(世の源義経への不当な評価に対して)義経のために迷わず戦える」という滝沢君、私もこれからは義経のためのみならず、あなたのためにも戦えますぞ!魅力あふれる義経をみごと演じきり、そのうえ義経のことを心から大切に思ってくれているんですもの…これが応援せずにいられましょうか。及ばずながら陰ながら、応援させていただきまする。ヤダといわれたって応援しまする~!(大河初期の弁慶なみのウザさ)…“義経”を通じて好きな人や応援したいもの、新しい世界がどんどん増えてゆく。こんなに豊かな幸せはありません。 ともあれ「滝沢演舞城」、本当に楽しかった!ひとりでも多くの人に見てほしい舞台です。ジャニーズ舞台とはいえ観客の年齢層は幅広くてとても落ち着いた雰囲気(男性客の姿もちらほら)。ごくたま~に傍目もはばからず「ギャアアーッ!」「ウギャー○○く~ん!」と絶叫してる典型的なおねえちゃん達もいるにはいましたが(苦笑)。 アクシデントを乗り越えて、重苦しいプレッシャーをはねのけて、最年少座長として二ヶ月のロングラン公演をみごと大成功に導いた滝沢君。そのお顔はいっそう精悍さを増し、肩から腕にかけての筋肉はますます隆起し、初日に比べて肩幅が5センチも広がったそう。いかに肉体と精神力を駆使してがんばりぬいたかがわかります。滝沢座長、そして全キャスト全スタッフの皆様、堂々の千秋楽、本当におめでとうございます!極上のエンターテイメントをありがとう! そして、祝・再演決定!来年はもっともっと見に行くぞ~!(貯金しとけよ…)今回の演目ももう一度見たいけど、もっといろんな「和」タッキーも見たい!滝沢君に演じてもらいたい魅力的な日本の物語はまだまだいっぱいありますからね。義経コーナーもずっと続けていっていただきたいです。私ごときがえらそうに言うことではありませんが、いち義経ファンの願いとして、滝沢君にはこれからも義経という役をかけがえのない財産として大切に持ち続けていってほしい。あの熱演を目の当たりにしてしまったらもう…彼以外の義経なんて考えられなくなっちゃいます。滝沢義経、あなたに出会えて本当によかった! |
観劇レポ・7月9日/7月25日 | |
※第一部のおおまかな内容は昨年と同じなので、前回と異なる演出、新たに気づいた部分などを中心にご紹介します。なのでやたら「前回は~」「今回は~」と連発していてウザイですが許してください。また昨年のようにパンフレットに演目が載っていないので、一部勝手に演目タイトルをつけてます。さらに劇中のセリフはうろ覚えなので細かな言い回しなど間違っているかもしれませんがご容赦ください。 第一幕第一部 滝沢流にほん昔ばな史 夏の踊り:今年の「城」は夏公演!オープニングに大きな山車が登場するのは前回と同じだけれど、こうしてみると祇園祭で賑わう京都の夏を想起させられワクワクします。その山車のなかから「夏の踊りはヨ~イヤサー!」と真紅のステージ衣装でフライングタッキー登場!わかっていてもやっぱりここは「うおーっ!」と盛り上がりますね。さらに今回はバックに巨大な竜が舞う!滝沢君のイメージモチーフは竜なのですね。かっこいい…。オープニング曲「いにしえ」もいい曲です。この城は音楽もすべていい!サントラ、出して欲しいんですが…。 忠臣蔵:前回は「城」メンバーの名乗り&滝沢座長のご挨拶だけでしたが、今回は新たに討ち入りシーンが加わりました。滝沢大石内蔵助がもろ肌脱いでの殺陣、これが美しいのなんのって!ストーリー上脱ぐ必然性はまったくないのですが(笑)、あんな綺麗な上半身、皆に見せずに何とする。美しく締まった肉体が躍動するさまはストイックなエロチシズムに満ちていて、まさに眼福。大河「義経」の頃から思ってましたが彼はむやみに扇情的なパフォーマンス(エロエロダンスとか…笑)をするよりも、キリリとすればするほど匂い立つようなエロスが出ます。今後はぜひこっちの方向でがんばってみてください。雪に見立てた大きな白い布の上で滝沢大石内蔵助と吉良上野介(ジャニーズジュニア風間君)が戦う姿は幻想的で美しく、また戸板を使ったアクションはとてもスリリング。メンバーが支える不安定な戸板の上を素早く駆け抜け、さらに三枚の戸板を使った戸板倒しでは観客から驚きと感嘆の「おおーっ!」というどよめきが一斉に起こりました。 山寺の和尚さん:滝沢座長が子供達と一緒に遊びます。横並びになって菅笠を投げ送る笠リレー、そして笠フリスビー?花道から子供達が次々と笠を投げ、それを舞台にいるタッキーがキャッチするのです。9日夜の部では順に上手くキャッチしていき、最後のひとつだけとんでもない方向に飛んでいったのですが、わんこのように追いかけてみごとスライディングキャッチ!立ち上がって両の手で「よしっ!」とガッツポーズ。おちゃめさん…かわいい…これがついさっきまで凛々しい殺陣を披露していた人だとは(笑)。25日の回では最後の笠にゴムがついててピュ~と戻っていってしまいタッキーがずっこけるというヴァージョンに変わってました。 滝沢隊長と白虎隊:今回は冒頭の忠臣蔵にダイナミックな殺陣があるのでこちら白虎隊は自害シーンのみ。「無駄に若き命を捨ててはならぬ!」という滝沢隊長の悲痛な叫びはいよいよ情感が増し、胸に重く響きます。ジュニアの子達の演技も着実に上手くなってますね。 MASK:取っても取っても素顔の出てこないマスクパフォーマンス、滝沢君のお顔がなかなか拝めないのは残念ですがこれもケレン味たっぷりで好きな演目。箱の中から金色の滝を流すやつ(正式名称わからず…)も華やかでいいですね。簡単そうに見えて実はかなり神経を使うむずかしい技だそう。それを毎回こともなげにやってる滝沢座長…さすがです。ラストには新作の京劇マスク&衣装もお目見えしました。 白波五人男:ジュニアから選抜された五人が名乗りを上げます。回によってこのメンバーは替わるよう。売り出し中の有名ジュニア君や岡本健一さんのお子さん、京本政樹さんのお子さんといった意外な顔ぶれも登場して会場が沸きます。 男の花道:鷺娘タッキー、身のこなしが一層なよやかになり可憐です。「顔は見ないで!アップはやめて!(笑)」と言われたって見ちゃうもんね!彼は凛々しい男顔の美形なので確かに女には見えませんが、所作はもちろん、楚々とした儚げなその表情から、身も心も女になりきって演じているのがわかります。そして続く加賀屋歌右衛門の男舞!待ってましたこのシーン大好き。前回の、子分?をしたがえ横手組をバッタバッタ倒してゆく荒っぽいヴァージョンが私は好きで、やや説明不足なところも有無を言わせぬ勢いがあってよかったと思ってますが、今回の、女形のままで駆けつけみんなの前で生着替え(笑)、せり上がりながらきびきびと舞うバージョンも洗練されててかっこいいですね。何より、滝沢君のキレのある舞をじっくり堪能できるのがいい。 安珍と清姫:前回よりさらに怖くなっております…やめてー!そんなとこまでグレードアップしなくていいから!暗がりから不気味な日本人形がヌボ~と出てきたり、赤子を抱いた女性の首がゴロン!と落ちたり…下手なお化け屋敷より怖いかも。怖いの苦手な私には非常にツライ…でも怒れるフライングタッキー清姫が颯爽と出てくると、怖いのなんてケロリと忘れてテンション上がります。地獄に仏のようなありがた~い存在。一番怖い役のはずなんですが。 滝の白糸:タッキー白糸の水芸!最後の血しぶきは、前回はブシュウウッ!と勢いよく障子に飛び散る感じでしたが、今回は上からダラーリと垂れてくる感じでちょっと怖…しかし「芸人は与えられた芸を全うするのみ!」の一連のセリフは回を重ねるごとに力強くなっていて聞き惚れてしまいます。 ダンス(たぶん天草四郎):萌黄色のゆかしくも華やかな着物で登場した滝沢君が、クラシック曲(グリーンスリーブス)に合わせて優雅な日舞を披露。クラシックで和を踊る、この斬新な発想!とても華麗で見ごたえがあります。音楽が勇壮な交響曲(ショスタコーヴィチ「革命」)に変わると滝沢君も早変わり、フリルの襟のキリシタン(天草四郎?)衣装に変身し、ダンスも一転して重々しく力強いものに変わります。 変化いろいろ:ま~た今回も早い早いってば!八百屋お七にはじまって狐忠信、「まさかの老人芸」(ヨボヨボ歩きがおみごと)、花魁で締めという流れは前回と同じですが、新たなキャラに雷神様が加わりました。黒髪長髪のイケメン雷神様。超かっこいいのでもっとじっくり見たいんですけど…あっという間に終わっちゃう。(泣) バンジージャンプ!!!何べん見てもドキドキする空中パフォーマンス。今回はゴンドラがなくなり、かわりに空中ブランコのようなところからばっと飛び降りたり、張りめぐらされたロープに飛び移ったり、前回とはまた異なるスリルがあります。高速回転も健在!見ているだけで目が回りそう。つい滝沢君ばかりに目が行きますが、ABC(ジュニアグループ)のアクロバットもおみごとです。 鞍馬の遮那王:牛若丸VS天狗の戦いもパワーアップ、なんとフライング!雨のしぶき(と滝汁)を撒き散らしながら縦横無尽に飛びまわる殺陣はド迫力。それにしても子供達のピンチに颯爽と現れる滝沢牛若丸は理屈ぬきにかっこいい。やっぱり彼には正統派ヒーローが似合います。不良系やチャラチャラ系の若手アイドルが跳梁跋扈する昨今、これほど「正統派」がはまる人はそういません。もっともっと彼のこういう役を、舞台はもちろんドラマや映画などでも見てみたいです。 五条大橋:今回の弁慶役はジャニーズジュニアの藤ヶ谷君。昨年の大倉弁慶の流れを汲むクール系イケメン弁慶です。対する滝沢遮那王は、薄紅の可憐な衣裳をまとい悠然と登場。さすがピンク系がよく似合う男性ランキング第一位です。(そんなランキングはない)優美な遮那王と荒ぶる弁慶、橋上での息詰まる攻防…ところがそれに見とれていたら、なんと花道から滝沢「頼朝」が登場!さっきまで舞台にいたのは確かに“滝沢”遮那王だったのに…いつの間に入れ替わったの?!「城」観劇も二年目でだいたいのカラクリはわかったつもりでいたけれど、やっぱりいろんなところで驚かされる。参りました。 「牛若、我らにはやらねばならぬことがある。…いざ!牛若!」滝沢頼朝の厳格なセリフと轟く雷鳴で、第二幕への期待がいやが上にも高まります。 第二幕第二部 タッキーひとり芝居 第一幕クライマックスと同シーンから始まる第二幕「義経物語」。今回は滝沢君が義経、兄頼朝、のみならず父義朝の三人を演じるとのことで、何はさておき滝沢「義経」が大好きな私としては、よりにもよって頼朝を演じなくても…とちょっと不満かつ不安な気持ちもあったのですが、滝沢頼朝…これがかっこいいのですよ!くやしいことに。(笑)ビジュアル的にはあんなに若くて美しい頼朝はまずありえないのですが(笑)、声が渋く太く、冷ややかな威厳があって、頼朝ならではの貫禄を感じさせ、優しく潤んだ滝沢義経の声と鮮やかな対をなしています。 一方の滝沢「義朝」は、鎧に宿る父の亡霊という設定で、冒頭シーンで頼朝義経に「我が恨みを晴らせ」と訴える“声”のみの出演。でもこれを滝沢君は頼朝よりもさらに低く重い声色で巧みに演じ分けています。最初これが滝沢君の声だとはまったく気づきませんでした。彼は声優にも向いているんじゃないでしょうか?噛む癖さえ直れば。(笑) 亡父の雪辱と新しい世の草創という兄弟の思いはひとつ。義経は頼朝の命をうけ、平家との戦に赴きます。この合戦シーンを殺陣ではなく、傷つき敗走してゆく平家武者の中をひとり毅然と歩いてくる義経、というシンプルなシーンで表現しているのが印象的。すれ違いざま、力尽きてバタリと倒れる平家武者をはっと振り返り、仲間に支えながら去ってゆくその姿をしばし立ちどまって見送るシーンは、実にさりげないひとコマですが、戦を通して義経が感じたものを象徴的に表しています。 しかしそんな義経の快勝ぶりに、京の公家、そして鎌倉武士たちがそれぞれの思惑から動き出します。それを、舞台の左右に公家と武士の二対の人形を配置し、人形浄瑠璃ふうに演出しているのもおもしろい。京の義経のシーンでは公家人形にスポットが当たり、不気味に蠢いて義経へ甘言を弄します。鎌倉で頼朝が戦況報告を受けるシーンでは、黒子のジュニア達がセリフを言い、それに合わせて武家人形が動きます。無機質な人形から繰り出されるセリフに聞き入る頼朝の姿は、義経の真の言葉や生の様子がダイレクトに伝わらないもどかしい状況を示しているよう。そんな状況をおそらく重々承知の上で、滝沢頼朝はどこまでも厳粛で苛烈。「武士が命を捨てるに二人の棟梁なし!」中途半端に情をみせず、揺るがぬ覚悟のみを見せつける、義経とはまた異なるまっすぐさ。実際の頼朝はもっと歪んだ面や柔弱な部分も併せ持つややこしい人物だと思いますが、この物語では、義経が敬慕したであろう頼朝の気高く厳格な部分を端的に示しています。 対する義経は、兄から面会を拒まれ、その激昂ぶりに戸惑いながらも、「兄が天下を取るためには私が京を押さえておかないと…」とどこまでも従順です。やっぱりいいな、滝沢義経。義経の魅力である一途さ、いじらしさをここまで気持ちよく、かつリアリティをもって演じられるのはやはり彼しかいません。 そんな折、義経は伊勢三郎と出会います。演じるはジャニーズジュニアの風間俊介君。私はジュニアメンバーに疎く風間君のこともよく知らなかったのですが、そのずば抜けた演技力と堂々たる存在感には圧倒されました。さすが多くの舞台経験を重ねてきただけあって、若いのにすでに独自の風格を漂わせています。滝沢義経との相性も抜群で、華やかな主役をうまく引き立てその魅力を引き出しています。この第二幕のみならず、滝沢座長の頼もしい片腕として舞台全体を引き締め盛り上げ、最高のパートナーぶりを発揮しています。お見逸れしました。 飢饉で親を亡くし、盗人として捨て鉢な暮らしを送る伊勢三郎に、義経は「どうせ盗むなら天下を盗め」と志を高く持つよう諭します。感動した三郎は家来になることを誓い、「親方って呼んでいいですか?」と義経にいきなりピトッと抱きつき、そこへ藤ヶ谷弁慶が「一の家来はこの我だ!」と割って入り、そして…毎度おなじみ!アドリブシーンに突入。(笑)このほのぼの(グダグダ?)箸休めシーンがあればこそ、後のシリアスな芝居が生きてきます。 三郎が「一の家来というのならこういうことができるか?」と無茶ブリ、弁慶が必死でアドリブ、義経が肩を震わせながらそれを見守る…というのが今回アドリブのお決まりパターン。昨年の大倉弁慶同様、「城」の弁慶は宿命的にいじられキャラなのですね。(笑)殿への愛を込めたラップを歌わされたり、ご両親へ感謝の言葉を言わされたり、(藤ヶ谷君のご両親がご観劇だった?)女の子への告白シーンを演じさせられたりとホント大変。三郎もその都度機転を利かせてアドリブ、「(弁慶に)お前は親方の衣裳に毛くずがついていることにも気づかないのか」と義経の直垂の毛くずを取ってあげ、「ねっホラ親方!(にっこり)」義経「三郎…!(感激)一の家来はお前だ!」見つめあいイイカンジになるふたりに、弁慶あわてて義経に駆け寄りほかに毛くずがないか必死で探す。(笑) 私が見た中で一番盛り上がったのはアミコラネタ。これは弁慶いじりというより義経いじり?「一の家来というのなら美容にも気を使っているだろうな?」という何とも仕込みくさい三郎のフリに弁慶は「もちろんだ!」と懐からアミコラのミニボトルを取り出し、さらにもう一本取り出して、滝沢義経があぜんと見守る中、ふたりでぐびぐび飲み始める。三郎が「なぜかこれは親方が持つほうがしっくりくる気がする」というと弁慶、懐から三本目を取り出した!「さあ親方!飲まなきゃ♪ダメ・ダメ・ダメ~」三郎のあおりを受けて観客も大喜びで手拍子、新橋演舞場は飲み屋と化した(笑)。滝沢義経意を決し、アミコラ一気飲みいったー!「どうですか親方!」「…ゥエーッ…」さすがにつらそうかと思いきや、「♪アミコラアミコラ♪」と例のアミコラダンスを一小節だけ披露、場内大爆笑!しかしすぐさま「ちょっと休憩しないか」と座り込んでしまい、「弁慶、私を笑わせてくれ」と一発芸を要求。(笑)弁慶は「怖いな~スベったらいやだな~」とぼやきつつ突如ぺたんと座り込み「テディベア!」滝沢義経は倒れ伏してバカ受け!弁慶、「やったー!マジで嬉しい」と三郎と抱きあって大喜び。もうみんな完全に「素」。(笑) アミコラ一気と笑いすぎで息も絶え絶えの滝沢義経、背後の白い緞帳に映る自分の影に気がついてやにわにカニやキツネさんをつくって影絵遊びを始めます。この影絵遊びはアドリブの一環のようで実は次の展開につなぐ大事なシーン。三郎が故郷の様子を話し始め、それに合わせて滝沢義経がウサギやふくろう、オオカミといった当意即妙の影絵を披露。これがとても巧みで、観客は大いに沸きます。「ねえ親方、親方ならどんな世にしたいですか?」「そうだな…」誰も争うことのない、皆が笑って暮らせる世を…と滝沢義経は両の手で羽を広げた鳥をつくり、三郎と弁慶のつくった鳥とともに仲良く空高くはばたいていく姿が映し出されます。その幸せな時間はしかし、突如現れた鎌倉からの刺客によって破られる… 兄に命を狙われていることを知った義経は決戦を促す弁慶らに対し、「これくらいのこと耐えなくてどうする」といさめます。兄に殺されかけるのが「これくらいのこと」なんて。お人よし、なんて言葉では片付けられない悲壮な覚悟がうかがえます。「好んで戦をする者がいようか…もう充分だ」「…それでも兄がこの首を欲するというのなら、喜んで差し出そう」みずからではなく兄のため、民のため、理想の世のために戦う誇りが言わせる、この一言。こんなことが言える人などいない、いてもごく稀。稀だからこそ尊いのです。 続く安宅関のシーンは、歌舞伎「勧進帳」の様式美を踏まえつつ、情感たっぷりのリアルな演技で魅せてくれます。打たれる滝沢義経は本当に痛そうで、よろよろと立ち上がり歩き出すシーンなど痛ましすぎて見ていられないほど。そして、泣いて詫びる弁慶をねぎらう義経の演技がまた何ともいえず心がこもっていて、泣かせるのです。「私ほどよき家来を持った者はいないだろう…!」セリフを繰り出す際の「間」が絶妙で、言葉の一つ一つから、なみなみならぬ深い思いが伝わってきます。またそれに応える藤ヶ谷弁慶も、滝沢義経と風間三郎という熟練コンビに挟まれながら、見劣りしない迫真の演技を見せてくれます。 そして奥州にて義経主従は最後の戦いに臨む…。「義経、誰もこんなことは望んでいなかった…」ふいに頼朝の声が義経の耳に届きます。「もう兄と思うな…」低く抑えた声色には確かに苦渋の響きがあります。頼朝の隠された悲しみをこの短いセリフのみで表現しているのが逆に切ない。やり方は違えど、頼朝も義経も、共通の大きな目的のために生死を捧げているのは同じ。その誇り、その覚悟、そしてそれがゆえの悲しさは誰よりもこの兄弟同士がわかり合っていたのではと思わされるシーンです。 合戦の最中、まず最初に命を落としてしまうのが伊勢三郎…。決然と敵陣に斬り込むも奮闘の末めった刺しに刺されて倒れ、「最後の最後でやっと立派な家来になれた…三郎は日ノ本一の幸せ者です」と泣き笑いながら息絶えてゆくのです。全身全霊を込めたその迫真の演技に、会場のあちこちからすすり泣き、ハンカチを目にあてがう姿が…かくいう私もこのシーンからクライマックスまでずっと涙が止まりません。 三郎に続き、弁慶も…。主従が交わす最後の会話は秀逸です。殿なくして我らの夢は叶わぬと訴える弁慶に、義経もまた「弁慶あっての私であった」とねぎらい、暇を乞う弁慶にゆっくり首を振ってみせ、「また会おう」と優しくささやいて最後の戦いへと送り出すのです。「…行け!」 そして奮戦の末立往生を遂げる弁慶、その凄絶な光景を目の当たりにし義経の心もさすがに揺れます。「兄上!これで本当によろしいのでしょうか!」しかしもはや彼に残された道はひとつ。すべてを諦観した滝沢義経は静かに跪き、おのれの首に刀をあてます。「兄上、どうか私の亡き後、理想の世をおつくり下さい…」この時、滝沢義経の目には綺麗な涙があふれ、それがはらはらと頬を伝うのです。「私に与えられた運命…、幸せにございました!」自害のその瞬間、目も眩むような強い光と大量の紙吹雪が場内を包み、そのなかから、冒頭シーンと同じ薄紅の衣裳をまとった滝沢遮那王がふわりと飛び出してきます。「義経、私を許せ…」頼朝の声を聞きながらひとしきり光の中を舞い地上に降り立つと、そこには愛馬(白童子)が待っています。「またお供できて幸せです」という弁慶・三郎らの声にも迎えられ、遮那王=義経は“新たな旅”へと手綱を取ります。「さあ、参ろうか…」そして滝沢君のナレーションがかかり、物語は幕…「こうして義経は若くして命を散らしました…でも義経はきっとそれを悲劇だとは思っていなかったのでしょう…死してなお、兄に夢を託したのですから」 義経は決して悲劇のヒーローではない。これは滝沢君が以前から主張していたことでした。私もその思いに強く同調します。大概の義経ものではクライマックスで義経の生死をぼかしてしまうけれど、私は義経が生き延びることがイコール義経の幸せだとは思いません。彼の死は決してみじめなものでも無意味なものでもない、むしろあれほどおのれの生を全うし価値ある死をとげた人はいないと信じているからです。あの死があればこそ兄頼朝は歴史に名を残す偉人となり、義経は伝説の中で永遠に生きる英雄になりました。また、義経の人生にはいつも愛があった。弁慶たち郎党衆や静御前ら素晴らしい女性達とまっすぐな愛を交し合った義経が、この世に恨みつらみを残していようはずがない。愛に生き、死してなお愛され続ける義経ほど幸せなヒーローはいないのです。 そんな義経に心残りがあったとすれば兄頼朝との和解がならなかったことだと私は思っていましたが、死に臨む滝沢義経の「幸せにございました」という言葉に、はっと目が覚めました。義経は兄のため民のために戦いきったことに満足し、それに見返りを求めていません。(もちろん優しい言葉のひとつぐらいかけてもらいたかったでしょうが)彼の愛は無償の愛です。無償の愛に悔いはない。それは義経のために命を捧げた弁慶や伊勢三郎も同じ。自分のためではなく誰かのために精一杯生きて死ぬ、それは傍目には不幸でも、究極の愛であり幸せではないでしょうか。悲しみを越えたところにある至高の幸せ、それが義経主従の絆と源兄弟の確執を通して描き出されたことに私は深い感銘を受けました。 滝沢義経の演技はすでに演技の域を越え、義経その人がそこにいるかのような錯覚をおこさせます。滝沢義経の美しい涙を、私はずっと忘れません。かつて源義経を演じた役者さんで、これほど義経を愛してくれた人がいたでしょうか。彼が源義経というはまり役に出会えたことは彼や彼のファンにとってはもちろん義経ファンにとっても喜びですが、その彼がこうして義経を愛しその役を大切に育んでいってくれている、こんな大きな幸せはありません。ほかならぬ義経も、きっと喜んでいることでしょう。滝沢秀明君というすばらしい表現者を得て、源義経はさらにいっそう「幸せなヒーロー」になりました。 第三幕第三部 踊るタッキー演舞城 義経物語の感動の余韻冷めやらぬ中、タッキー&翼の新曲「SAMURAI」を皮切りにショータイムが始まります。サムライ…もちろんこれは義経のテーマソングですよね?えっ巨人?そんなもん知らん!トラキチの私にいったいどうしろと!?これは巨人のみならず全野球チーム、ひいては戦う男すべてに送る応援歌なのだ!とみずからに言い聞かせ、CDを買うことにいたします。(笑)ショータイムも佳境に入ると、“マジシャン”タッキーが次々と女性ダンサーを消してゆき、最後は自らが檻に入って消え、次の瞬間客席通路から艶やかな着物姿で登場します。マイクを手に取り、おもむろに何を言うのかと思えば、「今宵、真夏の夜の夢。あなたと私、そんなに触れちゃあヤケドする。それでもいいなら…踊り明かそう、ダメ音頭!」前シングル曲「×(ダメ)」の盆踊りヴァージョンが流れ、滝沢座長とハッピ姿のメンバー達が所狭しと踊る踊る!観客も手ぶり&手拍子で大盛り上がり。たっ楽しい…!泣かせて笑わせて楽しませる、滝沢君はつくづく希代のスターでありエンターティナーだと思います。 そしてラストは「エピローグ」。この曲、本当にいいですね。歌い終わった滝沢座長はメンバーを従えて三方礼。この際のまなざしが本当に温かく、会場に来た人みんなを感謝を込めてくまなく見渡しているのがわかって、毎回感激させられます。カーテンコールでは改めて挨拶に現れた滝沢君に、観客が一斉にスタンディングオベーション!この最後の瞬間まで含めて、「滝沢演舞城」は本当に素敵な舞台です。 |
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城もめでたく二年目、観劇も回を重ねてくると、滝沢君だけでなく彼と共演者やスタッフ達とのやりとりにも目を向ける余裕が出てきます。それをみていると、滝沢君は舞台上の役柄のみならず、座長としても義経さながらに度胸と決断力そして責任感があり、皆から慕われ大きな信頼を寄せられているのがわかります。後輩達もこの舞台に選ばれて立っていることを意気に感じているのでしょう、とてもいい表情をしています。そんな彼らのふだんからの信頼関係や心のつながりが、義経の演技にそのまま生きているのだと気づかされました。 弊サイトに遊びに来てくださる義経ファンにも、この「城」へ滝沢義経に会いに行かれた方は多く、皆一様に「すばらしかった」と喜んでいます。また、義経ファンでもタッキーファンでもないお連れのお友達がこの「城」をみて、感動した、もう一度観たい、といって楽しんでくれたというお話が聞かれるのも嬉しいこと。ひとりでも多くの人に見てほしい、来年以降もずっとずっと続いていってほしい舞台です。「また会おう」滝沢義経の言葉を胸に、再会を楽しみにしています! |
観劇レポ・4月8日/4月17日/4月24日 | |
注1※うろ覚えレポートなので劇中の細かな言い回しや順番など間違っているかもしれませんがご容赦ください。 注2※「城08」をDVDでまっさらな状態で観たいという人は、このレポートは超ネタバレ(特に第二幕)になるので先に読まないほうがいいです…。 第一幕第一部 滝沢流にほん昔ばな史 オープニング・春の踊り~いにしえ~:ヴァイオリンの「城」メインテーマが静かに流れるなか、まだ何のセットもない暗く空虚な舞台中央に被衣で顔を隠した牛若がふわりと舞い降ります。代役かと思いきや…被衣をそっと上げると、なんと滝沢座長ご本人!思いがけない早々の真打ち登場に歓声と拍手がわき起こります。そんな場内を静かに見回した滝沢牛若はふたたびふわっと浮き上がり、舞台上を右に左にまた上下に、ゆっくりゆっくり浮遊します。そのさまは実に優雅で幻想的で、神々しさすら感じます。 「春の踊りはヨ~イヤサ~!」威勢のいい滝沢座長のかけ声が響くと、舞台は一気に「静」から「動」へ!せりあがってくる豪奢な山車とダンサー達、そして背景に展開する京の街並。山車が開いて屏風になると場内に轟く竜の雄叫び、そしてスポットライトの先には滝沢座長!きらびやかな真紅の衣裳とマントををまといオープニング曲「いにしえ」を歌いながらフライング。ひとたびジュニア達の群舞のなかに消えたかと思うと二階席から再登場、今度は純白のマントをはためかせてより高くフライング!初演の頃からずっと変わらないこのジャニーズならではのド派手演出、何度見ても圧巻で惚れ惚れします。昨今は時ならぬ王子様流行りですが、この人ほど王子様然とした姿が似合う人もいないんじゃないでしょうか。いや、ここでは王子ではなく「殿」なんですけどね。 口上:白虎隊に扮したジュニアたちが自分の名前をダジャレふうに紹介しながら名乗りを上げます。初回の関ジャニ∞横山君大倉君、前回の風間君といった滝沢座長を隣で支える片腕的存在が今回はいませんが、そのかわり、A.B.Cの河合君戸塚君、Kis-My-Ft2の北山君藤ヶ谷君ががっちり脇を固め、フルスロットルで大活躍。滝沢座長を守る四天王という感じで頼もしいフォーメーションをみせています。その「城08四天王」(勝手に命名)のほか、まだかなりちいちゃい子たちもいますが、いずれもバトンや詩吟や三味線といった一芸に秀でた子たちが選ばれていて、ちいちゃいながら精鋭部隊のおもむきです。 シャボン玉遊び:前回は子供達と笠投げをして遊んでた滝沢座長、今回はシャボン玉遊びにトライです。私はいずれも平日に見にいったのですが、昼の部は小さい子たちが学校に行っているため人数が少なく、(5~6人ほど?)「みんな学校か?」「さびしいな~」「演舞城より学校か」といじけてみせる滝沢座長。(笑)大きなシャボン玉をつくって小さい子の頭にすっぽりかぶせたり、傘型のシャボン玉器?をくるくる回して大小さまざまなシャボン玉を量産したり、そのたびに場内から歓声があがり、どうだ!と得意げな滝沢座長。でも座長なのに、先輩なのに、小さい子たちに「タッキーこれやって!」「タッキーすごいね!」と超タメ口で呼ばれてる。(笑)「俺先輩だぞ」と言いつつもニコニコと子供以上に無邪気な笑顔で遊ぶ座長の姿は、たしかにちょっとからかってみたくなる可愛さです。 白虎隊:これはほぼ前回と同じ。ただ、バックミュージックとなる詩吟を小さいジュニアの子がナマ披露していて驚かされます。どんな正当な理由があろうとも戦はすべてにおいて地獄…という、今回の「義経」にもつながる重いテーマが冒頭から胸にこたえます。 MASK~変面~:演目冒頭の、金色のジャバラ状の紙?をざーっと落とすやつ(いいかげん正式名称調べなさい)がなくなって、かわりに純白の衣裳をまとった滝沢座長が京劇ふうの「変面」を披露。ジャン!という音に合わせて顔に手をかざすたび、次々と新たなマスクに変わってゆきます。クライマックスでは座長がひとり、いろんなマスクがぎっしりダンゴ状に連なってる長い棒(縁日のお面売り場みたいなの)を肩に担ぎ、豪快にブンまわす。これがまた男らしくてかっこいい!MASKは見どころ一杯の「城」のなかでも豪華絢爛、極彩色のイメージで、「和」(一部中華)ならではの派手さが楽しめる演目です。景気のいいBGMも大好き。サントラ出してほしいな~~! 星のしずく:滝沢さんの力強いダンスとたくましい二の腕(笑)が堪能できる「城」中盤のおなじみテーマソング。今回のパンフレットでやっとこの曲のタイトルがわかった…。オープニングの「いにしえ」といい、耳に残るいい曲ですよね。サントラ出してくださいね!(しつこい) 安珍清姫:これも大筋は前回と同じですが、道成寺のあらましがナレーションできちんと説明されていて、よりわかりやすくなっています。大ネタだけでなくこういう些細な部分をきちんと改善していっているあたり、「城」をよりよいものにしていこうという丁寧なこだわりが感じられます。真っ赤な長髪をなびかせてフライングする滝沢清姫はいよいよ勇ましく痛快。前回までは単独飛行してましたが、今回は安珍も首根っこをつかまれてむりやり一緒にフライング。(笑)そんな安珍を空中でこともなげにポイと放り投げる冷酷さにもしびれます。 滝の白糸:こちらもほぼ前回と同じ。ハードな展開が続く中、この水芸はひとときの清涼感をもたらします。ホラーな安珍清姫のあとだからなおさら…。でも「白糸の覚悟、とくとご覧あれ!」とヤカラに向かって手首を切り血をふきつけるシーンは、座長の気迫と、流れ落ちてくる大量の血のせいで、個人的には安珍清姫より怖かったりする。(笑)思えばこの「城」で扱っているお話はすべて「死」を思わせる物語ばかり。唯一「死」と無縁(まったくの無縁ではないけど)の「男の花道」だけが単純にスカッと胸のすくストーリーで、悲しくやるせない物語が続く中ひとつのアクセントになっていました。この人気演目を今回あえて削ったのは、このあとの「滝沢歌舞伎」をメインに据えるためには仕方ない…とはいえ、またぜひ復活してほしいです。 滝沢歌舞伎・弁天娘女男白浪/鷺娘/櫓のお七/執着獅子 さてその「滝沢歌舞伎」!よっ待ってました!歌舞伎に疎い私が「何これ…すごい…!」と息を呑み圧倒されたのはもちろんのこと、歌舞伎通の方たち(けっこう多いんです、義経ファンで歌舞伎好きの方)からも、「おみごと!」という感嘆のお声が多く寄せられてます。 歌舞伎シーンのみならず、歌舞伎役者に変化してゆく姿をあえて舞台上で見せようという試みが面白い。舞台上にポツリと置かれた化粧台に向かう上半身裸の滝沢座長。その引き締まった精悍な肉体がスクリーンに大写しになると思わず観客がどよめく。(笑)真っ赤な化粧台の前で己の顔に首筋に、さっさと白塗りをほどこしてゆき、顔はどんどん女性のものになっていくのに、そのテキパキとしたしぐさは凛々しく男らしく、まさに両性具有の美。真剣な面持ちで紅をさす姿は何ともいえない妖艶さです。なのに、自分の顔が大写しになっていると気づくや否や、カメラに向かって口をンパンパしてみせたり鼻の下をヌボーッとのばしてみたり、変な顔を連発。(笑) そんな座長のまわりを、五人のかわいい娘達が今回の「城」テーマソング「WITH LOVE」のメロディにあわせて舞い踊ります。あまりにも違和感がないのでフツーに女の子達だと思っていたら、これがジュニアの子たちだったんですね!いやはやうまく化けたもの。滝沢座長が奥で化粧にいそしんでる間、この五人娘(?)が「弁天娘女男白浪」を演じます。呉服屋・浜松屋へ織物を買いにきた娘達。最初の頃は型どおりのセリフを言っていたのに、公演後半頃には若干ギャル化してた(笑)。正体がバレるシーンではバク転してみせたりと、ジャニーズならではのお遊びも。このシーンのジュニア達、誰が誰だかさっぱりわからないけど(笑)皆それぞれ楽しんで演じているのが伝わってきて、見ているほうもほっこり和みます。 名乗りを上げた白浪五人男がはけていくと、天井からは「鷺娘」「櫓のお七」「執着獅子」等、各演目の書かれた提灯が降りてきます。最初の演目「鷺娘」の提灯に灯りがともると、花道から滝沢座長の登場。舞台上にしとやかな足取りで歩んでゆき、傘をすっともたげると、白塗りの麗しい鷺娘…!雪の中儚げに舞う姿は何とも哀切で、イナバウアーのようなしなやかなのけぞりがまた色っぽい!そして続くは「櫓のお七」。淡雪のような鷺娘の純白のイメージから、舞台は一気に情念の赤に染まります。櫓に登り、燃え盛る江戸の町を見下ろしながら鐘を叩き鳴らす姿、ひるがえる緋色の着物と乱れ髪・・・人形のように美しい女形が制限された動きの中でほとばしるような情念を見せる、その刹那の様式美にはただただ圧倒されるばかり。そこにジャニーズならではのアクション要素が加わって、またダイナミックなオリジナル音楽もぴったりマッチして、えもいわれぬ盛り上がりをみせます。ジャニーズ舞台と本格歌舞伎、どちらも私は詳しくないですが、双方をうまくコラボさせ、みごとなエンターテイメントに仕上がっていると思います。観客の反応にそれは何より明らか。「櫓のお七」が終わってひとたび「滝沢歌舞伎」の幕が下りると、声にならない感嘆のため息が場内にあふれます。 ふたたび幕が上がって始まる「執着獅子」では、獅子の姿で豪快な毛振りを披露!鮮やかな赤い髪がきれいな円を描くさまは圧巻です。端正な美貌の滝沢座長に獅子の豪奢な姿と牡丹の花がまたよく似合う!獅子は百獣の王、牡丹も王者の花ですからね。 そういえばドラマ「雪之丞変化」でも牡丹柄の美しい着物を滝沢雪之丞が着てましたね。あのドラマは一人二役に名女形役と、難しい役どころを演じてさぞや大変だったでしょうが、それゆえに、滝沢さんの魅力と秘めた才能が如何なく発揮されていたと思います。滝沢さんにはやっぱりこういう、普通の人ができないような役が合っている。もっともっと、こんな本格ドラマに出てほしい!舞台はもちろん、テレビや映画でも彼の演技がもっと見たい!タキツバとして歌い踊ってるタッキーもバラエティーではしゃいでるタッキーも好きですが、やっぱり「義経」で彼を好きになった私としては、「役者」滝沢秀明に一番の魅力を感じるのです。人々の心の琴線に触れる真の作品に、これからもどんどん出てほしい。滝沢さんにはその力があるのだから!お願いしますよジャニーさん、頼みますよホント。まあ本音をいえば、もういちど「義経」を滝沢義経でドラマ化、あるいは映画化してほしいんですけどね。しかもその際の監修は偏頗な歴史専門家より滝沢さん自身にまかせたほうがいいんじゃないかとすら思ってる。義経を誰より愛し理解している人、みんなの観たい義経をみせてくれる人、それは滝沢さんをおいて他にない。「城」をみるたびその思いが強まります。 忠臣蔵:前回は第一幕冒頭の見せ場だった忠臣蔵ですが、今回はクライマックス直前の山場になっています。前回の白い着物でもろ肌ぬいでの殺陣も筆舌に尽くしがたい美しさでしたが、今回の、黒い着物をまとい白装束の敵集団をなぎはらってゆく演出も幻想的でかっこいい。敵勢の白い衣裳は乱舞する雪の象徴でしょうか、とても妖しくセクシーです。スリリングな戸板崩しも健在、そして高い櫓の上から落下するという危険な技にも挑戦!観客からは思わず悲鳴が…。バンジージャンプがなくなったと思ったら新たにこんな荒業をもってくるとは…。お客さんをいかに驚かせ楽しませるかということに心血を注ぐ、座長の飽くなき向上心とプロ根性に感服します。 吉良を追いつめ「お命、頂戴!」立ち込めるスモーク、そのなかからおなじみの羽織姿で登場する滝沢内蔵助。やがてどこからともなく集結する四十七士(今までどこいっとったんじゃい)、滝沢内蔵助を先頭に、そのさわやかな勇姿を江戸の人々に見送られながら、永代橋を渡って去ってゆきます。 五条大橋 義経と弁慶:四十七士が去った永代橋が半回転してそのまま五条大橋となり、舞台奥から弁慶登場!弁慶役は前回に引き続き藤ヶ谷君、そして伊勢三郎は戸塚君。伊勢三郎の登場は、前回は第二幕「義経」の劇中からでしたが、今回はこの五条大橋からのお目見えです。そして花道からはオープニングと同様の薄紅の衣裳をまとった滝沢牛若がしずしずとやってきて、舞台上の弁慶と五条大橋の上でご対面。「我が名は…牛若!」ここでワーッとボリュームアップする「城」テーマ曲、舞い散る桜吹雪、そして背景には大きな月…!いかにも絵画的なこのシーン、義経物語の美の象徴のようで大好きです。 第二幕 義経(秘)悲話 前回の義経物語は本当にすばらしく、あまりのすばらしさに、滝沢さんがもう義経は演りきったと満足して義経から卒業しちゃうんじゃないかと心配になってしまうぐらいでした。パンフレットによると、実際に義経からひとまず離れて新たな人物をやろうかという話もあがっていたそうですが、やはり「義経」を観たいと思うファンも多いだろうし、義経という役が滝沢さん本人にとっても大切なものだということで、今回も無事、滝沢義経に会える運びとなりました!よ…よかった…本当によかったー!これからもお願いします…本っ当にお願いします!(平身低頭) 脚本は中盤までは前回とほぼ同じですが、滝沢義経の演技はさらにいっそう情感を増し、見る者をより深く重くその世界観に引き込みます。またクライマックスの演出が大きく異なるのと、劇中に頼朝の弟を思う心が見え隠れするのも大きな特徴で、兄弟愛と主従愛がより強調されたかたちとなっています。義経物語の肝であるこの部分に焦点を据えてじっくり演じてくれる滝沢さんは、やっぱり義経のことを誰よりよくわかっていらっしゃる!06年より07年、07年より08年と、年を重ねるごとに滝沢さんの想いがより濃く反映された内容になっていっている気がします。 今回も義経・頼朝・義朝の三役に挑戦する滝沢さん、「頼朝を単なる悪役にしたくない」とおっしゃっていましたが、今まででも充分、充分すぎるほど頼朝に配慮した構成になっていたと思うんですが…そもそも滝沢さんが演じるという時点で頼朝美化にもほどがある。(笑)06年の横山頼朝だって、確かにとんでもないイジワル兄ちゃんだったけど、悪ぶりすぎてどこか憎めない感じになっちゃってたし。悪態をつけばつくほど、キレればキレるほど観客から「くすくす」「ぷぷっ」と笑われてしまう頼朝。(笑)でも横山頼朝はそこが味であり人間くささであり、愛すべきところ。私の中の頼朝像は未だひとつに定まっておらず、「クールかっこいい系」「実はやさしい系」等いろんなパターンがありますが、横山頼朝をみた時から、新たに「空回りドS系」というジャンルが加わりました。(笑) 一方の滝沢頼朝は、弱冠26歳が演じてるとは思えないぐらい威風堂々として貫禄があり、横山頼朝の危なっかしさにくらべると、あまりに完璧に演じすぎていて文句のつけようがなさすぎて、逆につまらないぐらい。(笑)正反対のキャラクターである頼朝と義経を瞬時に演じ分ける巧みさは見事というよりほかありません。頼朝と義経がどちらも舞台上にいて対話するシーンでは、頼朝の声のほうを録音で流しているのかと思いきや、よくよく見れば何とどちらのセリフもその場で滝沢さんがしゃべってる!すごい…。頼朝の聡明さと厳しさ、義経の強さと優しさ、どちらが欠けても意味がない、コインのように表裏一体で価値をなす兄弟。それをひとり二役というかたちで滝沢さんは効果的に表現してくれます。 でも…やっぱり、滝沢さんは“義経”です。滝沢頼朝のシーンのあと滝沢義経が登場すると、やっと本来の姿に戻った!と思わずほっとしてしまう。まあそれは単に私が義経ファン、何より「滝沢義経」のファンだからでしょうが(笑)、義経を演じるときの滝沢さんは、何の力みもなく、ごく自然に義経その人になりきっているようにみえます。役が「板についている」とはまさにこのこと。もちろん頼朝もいいのだけれど、威圧をこめたポーカーフェイスで佇んでいる頼朝よりは、やっぱり家来たちにジャレつかれながら優しくほほえんでいる義経、「兄上…」とうるうるわんこ状態(笑)で兄を見つめている義経のほうが、滝沢さんの生来持っている雰囲気にしっくり合ってて魅力的です。 滝沢義経の溌剌としたアクション、覇気のある言動も大好き。「合戦とは押しに押し、攻めに攻め、進みに進んで勝利を得るもの!」「ものども、この義経に続け!」力強い大音声の心地良さったらありません。そのあと、足をすっと引いて踵を返すしぐさがまたカッコいい!滝沢義経がやると「まわれ右」ですらカッコイイ。(笑) そんな滝沢義経の脇を固める家来は、藤ヶ谷弁慶と、前回の風間伊勢三郎に代わる戸塚三郎。風間三郎の熱演は未だ記憶に新しいですが、今回の戸塚三郎もまたキュートで味のあるキャラクター。同じ脚本で同じセリフを言っても、風間三郎だと海千山千のクセモノっぽい感じになりますが、戸塚三郎だといかにも明るく無邪気なお調子者で、大好きなご主人様のまわりをうれしそうにキャンキャン飛び跳ねてる子犬のよう。そんな戸塚三郎とコンビ?を組む藤ヶ谷弁慶は、前回よりだいぶん余裕が出てきたか、たたずまいに弁慶ならではの頼もしさが加わってきました。硬派で一本気な藤ヶ谷弁慶、とても好感が持てます。 それでもアドリブシーンでのいじられっぷりは前回と変わらず。(笑)一の家来のポジション争いをする三郎と弁慶をよそ目に、義経は舞台端に座ってモグモグと袋に入った餅(実はマシュマロ?)を食べ、ついでに周囲のお客さんにも気軽に分け与えるのですが、実はそれは三郎が盗んできたもので、そうとわかるや否や袋ごとお客さんに押し付け、自分はすかさずその場を離れ「知らない」「食べてない」としらばっくれる。そう言いつつもお口はせわしくモゴモゴ。(笑)三郎が袋を持ったお客さんを発見し、「こら!返せよ」と抗議、義経も弁慶のうしろに身を隠しつつピョコッと顔だけ出して怖い声で「よくないぞ!そういうのは」とお説教。(笑) 凸凹コンビの弁慶と三郎、そんな彼らの取っ組み合いを殿はのん気に影絵で再現します。しかしここで家来達が殿のプライドを傷つける言動に及ぶ…!「俺のほうが身長が高い!」「男は身長だろ!」影絵をしていた殿の動きがピクリとこわばる…(笑)はっと気づいた家来ふたり、あわてて殿のもとに駆け寄るも…「男は身長か…?」ヘコみがちにつぶやく殿に、弁慶「いや、男は器量の大きさです」と真顔でマジフォロー。場内大拍手! 17日には翼君が観劇していたらしく、「殿と翼君どっちが好きだ?」「殿と翼君どっちがかっこいい?」当然、翼君アゲアゲの流れに…。しゃがみこみ、両のひとさし指をつきあわせて典型的いじけポーズを取る殿(カワイイ!)のもとに三郎いち早く駆け寄り、「俺は殿が好きですよ!」と猛アピール、「三郎ずるいぞ!」後れをとって焦る弁慶。(笑) そして24日には少年隊がご観劇!少年隊の東山さんは私が初演を見にいった時にもゲスト観覧されていたので、またもや新旧義経そろいぶみの場に居合わせることができて超ラッキー!私、東山義経は滝沢義経の次に好きなんです。でも東山さんは義経もいいけど頼朝を演ったらもっと似合いそう。もし東山頼朝と滝沢義経なんて並びが実現したら、私はもうこの世に思い残すことなどありません。(笑)ついそんなことを考えてしまったものだから、劇中、滝沢義経が「兄上…!」というたびに東山頼朝を勝手に想像して勝手に萌えてました。すみません。 ともあれ少年隊ご観劇ということでアドリブにも緊張が走る…!「お前がこの世で一番好きな男性は誰だ!」(←なんちゅう質問じゃ)「そんなの殿に決まってるだろう!」「じゃあ少年隊と殿とどっちが好きだ?」「決まってるだろ!」「いつもお世話になってるんだからな」三郎と弁慶、殿のほうへ歩み寄る、と思いきや…くるりと客席のほうにむかってふたりで「少年隊です!」と一礼。場内大爆笑、殿豪快にズッコケる!そのあと、またもやいち早く殿の側についたチャッカリ三郎、殿と共同で巨大ゴリラの影絵をつくり、弁慶(の影)をパンチで倒す!「ま、まいった…」根をあげる弁慶に、「弁慶、まあ一息つけ」とありがたくも殿手ずから弁慶に急須でお茶をついでくれる(※影絵で)。そこから普段なら通常モードに戻るのですが、この日は殿の心のわだかまりが消えなかったのか、油断しきってくつろいでいた弁慶に「やっぱり少年隊か?」と蒸し返す!答えに窮した弁慶、「三郎はどうなんだ!」といきなりパス、これまた不意をつかれた三郎、こわばった笑顔で救いを求めるように殿を見つめたまま絶句…しばしの見つめ合いの末、殿たまらず噴き出す。「本気で困るなっ!」ジャニーズのこういう上下関係、なんかいいですよね。適度な緊張感のなかに程よい親しさと信頼関係があって。 影絵コーナーはアドリブを含め前回よりさらにグレードアップ。はばたく鳥、飛び立つふくろう、舌なめずりをする狼、いずれもとても繊細に表現されています。なかでも二羽のウサギが向き合って前足でうりゃうりゃ!とジャレ合うシーンは「かわいい~~!」と毎回歓声が起こります。影絵だけでなく、影絵を作る殿のきれいな指先にも見入っちゃう…。平和の象徴として三羽の鳥がはばたいてゆくシーンでは、戦装束のままあおむけに寝そべって影絵をつくる殿の無防備な姿にちょっと萌え…(笑)「幼き頃に兄上と語り合ったものだ…戦のない穏やかな国を作ろうと…」「その夢、きっと叶いましょう」そんな主従の睦まじくも平和なひとときは、鎌倉軍の襲撃によって破られる… ほのぼのラブラブ義経主従と対照的な「腹黒」(by三郎)鎌倉勢。ことあるごとに義経謀反の恐れありと頼朝を焚きつけます。その筆頭が、つねに頼朝のそばに控える北山君演じる御家人A。(役名が出てないので勝手に命名・笑)ポジション的には梶原景時っぽいですが、「関東の武士が命がけでつくりあげた鎌倉の幕府…その存在を危うくするものはその首必ず取ってやる…それが義経であっても、頼朝であってもな!」という彼の言葉は、個人というよりは関東武士の総意ともとれ、あえて人物を特定する必要はないのかもしれません。源氏兄弟の仲を引き裂く、ばかりか頼朝個人への忠誠心も特にないというイヤな役どころを、北山君はあるときはクールに、あるときはねっとりといやらしい声色で熱演しています。彼は第一幕でも吉良など悪役として登場することが多く、これで中尾彬ばりの面構えだったら文句なしの悪役キャラなんですが、いかんせん彼は子ギツネみたいなキョトンとしたかわいい顔してるもんだから、いまいち憎みきれない。(笑) 対する頼朝は「私と交わした固い約束、義経が破るなどありえぬ」とあくまでも弟を信じようとするのですが、御家人Aはじめ取り巻き達の矢継ぎ早のネガティブ報告に、「…私に弓引くつもりか?」と疑惑を持っちゃう。(泣)本当に頼朝のことを思ってくれているのは義経だけなのに…。大きな目的を追求するあまり真実が見えなくなってしまう頼朝の、義経とはまた異なる頑固さ、不器用な人間性がうかがえます。 それからの頼朝の態度は実に峻烈。情にひきずられそうな己自身をも切り捨てるかのように、「義経の血筋、すべて海に沈めよ!その首取って鎌倉に持ち帰れ!」と太刀をかざして叫びます。滝沢頼朝の太くよく通る大音声は、義経ファンとしてはくやしいけれど、しびれるくらいかっこいい…。チクショー!(笑) そんな兄の思いがけない変心にも、弟義経の非戦の決意は揺るぎません。そして、「このくらいのこと耐えなくてどうする…」と、前回から変わらない、私の大好きなセリフに続きます。「好んで戦をする者などいない、戦のない世をつくるため人はやむなく太刀を抜く。平家との戦いでいやというほど血を流してきた、もう充分だ!…それでも兄上がこの首を望むとあれば、喜んで差し出そう…」義経のキャラクターはとかく戦に強いという面のみがアピールされ好戦的な人物と思われていることが多く、私はかねがねそれがイヤだった。もちろん義経は強くないとダメ、勇猛でないとダメ。でも、それ以上に優しくないとダメなのです。優しさがなければ、どんなに強くたって意味がない。そこを滝沢義経は、一番大切に丁寧に演じてくれている。滝沢義経の魅力そして真価はここにあるのです。佐藤継信最期のエピソードが示すように、「この人のためなら命はいらぬ」と郎党達が固く誓ったのは、義経が強かったからではなく、情ある人だったから。戦場で幾人もの命を奪ってきた義経だからこそ、「もう充分だ!」という叫びにも似たやりきれない言葉がリアリティをもって胸に重く響きます。 そして場面は安宅関へ。ここで登場する関守・富樫は、格調高い時代劇的口調と所作で独自の緊迫感を作り出さなければならない重要かつむずかしい役割ですが、前回の富樫はこれを照れや迷いなくしっかりつとめあげていました。当時は誰がやってるかわからなかったのですが、戸塚(三郎)君だったのですね!お見逸れしました。そして今年の富樫は河合君。これまた落ち着きのある、堂々たるたたずまいです。「待たれ~い!」しんがりを歩く義経に目をつけ、笠を取り上げ、その顔を見るや…「あなたさまは!」驚き、うろたえ、視線がしばし宙をさまよい、同じく呆然と立ち尽くしている弁慶とはからずも見つめ合う…、この一連の演技で、緊迫感が一気に高まります。 やむなく義経を打ち据える藤ヶ谷弁慶の熱演も見逃せません。「もうよしとするがよかろう!」富樫に言われようやく手をとめるも、倒れ伏して痛みに耐える主のほうをまともに見ることもできず、肩で息をしながらなんともいえない苦渋の表情を浮かべるのです。 よろめきながら何とか身を起こした義経に富樫は歩み寄り、そっと笠を差し出します。「ご無事を…!」はっとして顔をあげる義経、静かにうなずく富樫。交錯する視線、こみあげる万感の思い…。一礼して、きれいな所作でさっと笠をかぶり立ち上がる義経。虎口を逃れた主従の、花道でのやりとりがまた白眉です。額を地面に擦りつけて詫びる弁慶に、義経「詫びなければならないのはこちらのほうだ…」しぼり出すようにふるえる声はすでに涙です。「五条の橋から今日までのこと、ありがたく思っているぞ…」「私ほどよき家来を持った者などいないだろう!」義経も泣く、観客も泣く…。「さあ、参ろう」穏やかな、しかし力強い殿の言葉。ふたたび立ち上がり歩き出した主従に、観客は惜しみない拍手を、殊更に大きな拍手をおくります。義経の痛み、弁慶の苦しみ、三郎の動揺、富樫の葛藤…展開はわかっているはずなのに、観客は引き込まれ、息を詰めて見守ってしまう。歌舞伎「勧進帳」の様式美と、演者たちの熱演がみごとに融合した名シーンです。 そしてクライマックス…。決戦を前に三郎はうれしそうに弁慶に告げます。「俺はちっとも怖くない。それどころかワクワクしている!」少し遅れて現れた義経は、戦装束ではなく、立烏帽子に白く美しい直垂姿。「お前のおかげで明るい旅ができた」と三郎を優しくねぎらい、小刀を授けます。小刀をみつめしばし感極まっていた三郎、弁慶に「殿を頼む!」と告げるなり、軽やかに走り去ってゆきます。 弁慶と義経にも別れの時が迫ります。「弁慶なくして私の旅はなかった」義経の言葉に弁慶深く平伏し、ひとたびは互いに背を向けて歩き出すも、今一度、名残を惜しむように「殿!」と呼びかけます。振り向いた義経に、深々と一礼。義経も黙って瞳でうなずいてみせます。 三郎、弁慶の最期は、前回よりいっそう激しく切なく、そのぶん主への愛が痛いほど伝わってきます。致命傷を負った三郎、よろめきながら「軽く見つもっても10人は殺しました…俺がんばりましたよ!」と笑い、「これでやっと立派な武士に…義経様の家来に…」冷酷な表情の御家人Aがとどめをさすべく近づいてくるのも気に留めず、小刀を押し頂いたまま叫びます。「殿ーっ!」このセリフ、最初の頃はふつうの音声だったのですが、後半見にいった際にはエコーがかかり、いっそう痛切なものとなっていました。 弁慶も負けてはいません。「これより先、お前達の進む道なし!」鬼気迫る怒声とともに最期の大立ち回り。囲まれてめった刺しにされつつも最後の力をふりしぼり立ち上がる。「殿には指一本触れさせない!」そして「殿!義経様ー!」と、三郎同様、大切な主の名を呼びながら息絶えるのです。 かけがえのない郎党の死を見届けた義経、いつしか舞台上には激しい雨が降り注いでいます。「兄上、本当にこれでよろしいのでしょうか?幼き日ともに語り合った夢、もうその胸にないのでしょうか?」激しい悲しみにふるえる義経…、それでも決然と叫びます。「私はどうあっても叶えとうございます!」兄のためにできることはもはやただひとつ、自分の命と引き換えに永い争いを終わらせること…。でも、命をなげうって自分を守ってくれた郎党たちのため、むざむざ敵の手にかかるわけにはいかない…! 敵勢の前に悠然と姿を現した義経、髻をふりほどき「弁慶、三郎!この義経の流す涙、しかとその身に受け止めよ!」この声、マイクを通さない生声なのです。義経の魂の叫びが、じかに耳に、そして心に届きます。 群がり寄る雑兵たちを次々斬り捨ててゆく義経、やがて白い着物の懐に手を入れ、ばっと開いてもろ肌脱ぎに(…なるや否や、お客さん一斉にオペラグラスを構えるっ…!)。鍛え抜かれた鋼のように美しい筋肉は、まがうかたなき強さの証。鎧姿の武者たちをこともなげに倒してゆく裸の義経は無敵の「鬼神」そのものです。兵たちの返り血を浴び義経の白い着物と白い肌がみるみる赤く染まってゆく、それでも義経は止まらない。血染めの義経…「キレイなだけの話にしたくない」という滝沢さんの想いがこめられた壮絶な姿です。でも、それでも、美しい。この血みどろの姿には、恐怖とか不快感とか、そんな感情をもしのぐ、覚悟を決めた男の凄絶な美の境地がみえます。 激闘の末御家人Aを倒すと、立っているのはもう義経のみ。降りしきる雨の中、しばしおのが刀を見つめると…、「兄上ーっ!」義経もまた、弁慶、三郎がそうしたように、心から慕い夢を託した人の名を叫び、かざした刀を自らの首に振り落とす…!その瞬間、義経の身に真っ赤な血の雨がふりそそぎます。がくりと膝をつき、いま一度顔をあげぼんやりと刀をみつめる義経。やがてその刀が手からするりとすべり落ちると、義経はもはや二度と動かぬ姿に…。「義経…牛若、この頼朝を許せ…!」頼朝の声が響く中、「城」メインテーマが大きく流れ、幕がおごそかに下りてゆきます。 あまりにも壮絶な滝沢義経の死に観客は魂を抜かれ、ただ呆然と拍手することしかできません。早くふたたび幕が開いてほしい、滝沢座長の無事な姿をみたい…そんな願いと焦燥感すら込もった大きな拍手のなか幕が上がると、そこには血染めの義経の姿のままの滝沢座長が、静かなまなざしでマイクを持って立っています。いっそう大きくなる拍手の中深々と一礼、そして観客への感謝の言葉と舞台に込められた想いを述べてくれます。「今回はこんなふうにちょっと切ない終わり方になってしまいましたが…命の重さや大切さを少しでも感じとってもらえたらと思います」、「この舞台をやっていて、義経という役があらためて自分の中で大事なものになっていっていると実感します。これからもずっと演じていたいな…、そんな気持になってます」という、義経ファンとして本当に嬉しい言葉を聞くこともできました。 今回の義経物語は滝沢座長の「命」というテーマへの強いこだわり、そして深い「義経愛」が伝わってきます。物語としては前回のように自害のあと牛若の姿に転生するほうが救いがあって後味もいいのでしょうが、義経を血の通ったひとりの人間として生かし死なせた滝沢さんの姿勢からは、命の重み、死の怖さ、それをも覚悟で守るべき愛と貫くべき絆、そしてそれを身をもって示した義経という人物への惜しみないリスペクトが伝わってきます。そんな滝沢さんに、私もまたありったけの賞賛をおくりたい! 08テーマソング「WITH LOVE」 前回までは第二幕の重さを忘れさせるような楽しいショータイムがありましたが、今回はそれをばっさり削り、披露するのはただ一曲、滝沢座長作詞作曲の「WITH LOVE」。今回のテーマ「命(LOVE)」のために作ったというこの曲は、さまざまな人々への感謝が込められた、滝沢さんの温かな人柄がしのばれるとてもいい曲です。サントラ、絶対出してくださいね!(まだ言うか)義経の死の余韻、その張り詰めた悲しみを癒すように、優しいメロディと優しい歌声がしっとり心に沁みてきます。真紅のスーツに着替えた滝沢座長、マイクを持つ手にも振り付け(手話!)をする手にもまだ血糊のあとが残っていて、「滝沢秀明」に戻りきらないまま、義経の魂を宿したままでこの歌を歌ってくれているよう。ジャニーズファンが楽しみにしているであろうショータイムを削ってまで、義経にかける強い思いを示してくれた滝沢座長。ありがとう…義経ファンでよかったと、こんなに強く思えたことはありません。滝沢さんの義経をみるたびに、義経のことが、そして滝沢さんのことがますます好きになっていきます。 舞台天井からは桜の紙ふぶき、両脇からは無数のシャボン玉が噴き出され、夢のように美しい光景が広がります。そして滝沢座長の三方礼…前回レポートでも書きましたが、彼の凛とした丁寧な三方礼が私は大好きです。この三方礼のために12000円払っているといっても過言ではない。というのはさすがに過言ですが(笑)、この心のこもった三方礼をみると、「観にきてよかった…!!」と熱い喜びが改めてこみあげるのです。 |
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今年の「城」は、冒頭からいきなりの滝沢牛若登場、そして義経姿のままでの座長挨拶と、まさに義経に始まり義経に終わるといった感の構成で、義経ファンとしては、ここまでしてもらっていいの?と思うくらい嬉しく心に沁みる舞台でした。滝沢さんはそんじょそこらの義経ファンより義経を愛している、これはもう間違いないです。「義経以外に演じてみたい歴史人物は?」との問いに「義経以外演じたくない」と答え、「義経役をほかの誰にも演らせたくない」とまで言ってくれた滝沢さん。私ももう、滝沢義経以外の義経なんて見たくない…!義経はもう滝沢さんのものです。滝沢さんの「十八番」です。これからもどうぞ大切に、滝沢さんの中で育みながら、いつまでも演じ続けていってほしい…! 今回滝沢座長が掲げた「命=愛(LOVE)」というテーマは、義経をはじめとした舞台演目からはもちろん、命がけのパフォーマンスに挑む座長とそれを守る「城」メンバーの姿からもよく伝わってきて、そういうチームワークも含め、本当に「城」は素晴らしい舞台だとあらためて思いました。来年、再来年と、そんな「城」がずっと続いてゆきますように、滝沢義経にまた会えますように…。「我らの旅はまだまだ終わらぬ!」さらなる高みをめざす滝沢座長を、今後いっそう、心より応援させていただきます! |
観劇レポ・4月2日/4月20日 | |
(各タイトルはパンフレットに記載されているものです) 口上 |
06年の初演、07年夏、08年「命」、そして今年と、大きな骨組みは変わらないものの、毎年それぞれ趣を変えて楽しませてくれた「滝沢演舞城」。初演を観た時は、こんな世界があったんだ…!という驚きと興奮の連続で、とにかく何もかもが衝撃でした。そして07年は唯一の夏公演、「義経物語」の今のかたちがほぼできあがった年でした。壮絶な最期を迎える08、09のクライマックスも好きですが、舞台の締めとしてなら、後味の良い07バージョンが一番好き。自害のあと牛若の姿となって晴れやかに舞い上がり、弁慶三郎とともに旅立ってゆく…というあの終わり方は、義経の悲劇をまっすぐに描きながら、熱い幸福感が胸一杯に広がる名ラストシーンでした。夏ならではのダメ音頭も今思えば貴重だった。(笑)劇場を後にするお客さんが皆、幸せそうないい笑顔だったのを思い出します。08年は滝沢歌舞伎が加わってクオリティがぐんと上がり、また座長の義経愛が全編を通して伝わってきて、感動の涙が止まりませんでした。“衝撃”の06年、“幸せ”の07年、“感動”の08年。そして09年はその3年間の積み重ねが活かされた、いっそう見ごたえのある完成度の高い舞台になっていました。いったいこれからどこまで進化し続けるのでしょう?「変化」よりも「進化」。手を変え品を変えではなく、ひとたび手にしたものを大切に磨き育て上げてゆくのは尋常ならぬ努力と根気のいることです。その面倒で難しい道をあえて選び進もうとするところに、滝沢座長のすごさがあるのでしょう。 そんな滝沢さんに敬慕と感謝の念をこめつつ、場所が変わってもタイトルが変わっても来年からも滝沢座長と滝沢義経に会えることを願いつつ、私の「城」レビューもここでひとまずファイナルとさせていただきます。こんなチマチマだらだら読みにくいレビューに最後までお付き合いくださいました皆様、本当にありがとうございました! |
NHK大河ドラマ「義経」コーナートップへ |