義経ふたたび!舞台「滝沢演舞城」

「滝沢演舞城」(2006年)
2006年3月9日(昼の部)/4月13日(昼の部夜の部)

「滝沢演舞城」2007
2007年7月9日(昼の部夜の部)/7月25日(昼の部夜の部)

「滝沢演舞城08・命(LOVE)」
2008年4月8日/4月17日/4月24日(いずれも昼の部夜の部)

「滝沢演舞城09・タッキー&LuckyLOVE」
2009年4月2日/4月20日(いずれも昼の部夜の部)

「滝沢演舞城」(2006年)
 大河「義経」でタッキー義経にハマり勢い余ってタッキーファンになっちゃった人手を挙げてー!ハーイッ!…というわけでさっそく遠征してまいりました滝沢「城」(東京新橋演舞場3月~4月公演「滝沢演舞城」)へ。義経物語はじめ昔話や歌舞伎といった“和”をテーマに、平成のアイドル滝沢秀明君が日本の伝統美を繊細かつダイナミックに体現します。
 舞台は二幕三部構成、われらが滝沢義経が登場する「義経」のコーナーは第二幕第二部。大河「義経」が終わって寂しさばかりがつのるこの時期に「ナマ」滝沢義経に出会えるなんて、なんと心にくいプレゼントでしょう。


新橋演舞場「滝沢演舞城」エントランス
 東京・新橋演舞場は都営地下鉄大江戸線・築地市場駅から徒歩3分、あるいは都営地下鉄浅草線・東銀座駅から徒歩5分。八十年の歴史を誇る由緒正しいこの場所で滝沢君は史上最年少男性座長をつとめます。しかも二ヶ月のロングラン公演!そういえば大河ドラマ主役も歴代最年少記録なのでした。前例をくつがえし数多のプレッシャーと闘いながら前へ前へとあくなきチャレンジを続ける果敢な彼の姿はまさしく現代の義経と呼ぶにふさわしい。


新橋演舞場(舞台)
 こちらが場内の様子。二・三階席もけっこう舞台に近くて見やすそう。フライングタッキーと目が合っちゃうかも?また一階席にはタッキーが天井から降ってきます(バンジージャンプで)。


滝沢演舞城ポスター二種
 上の写真は制作発表時にお目見えしたポスター第一弾。「舞」の字の舛の部分にご注目…「タッキー」になってる!
 そして下は滝沢君が歌舞伎「鷺娘」に扮したポスター第二弾。となりの男前ノーマルタッキーからは想像もつかない妖艶系美女に大変身!個人的にはもうちょっと滝沢君っぽさを残したキリリ系美女になってもらったほうが好みですが…(きさまの好みなど聞いておらん)。私同様多くの女性客がこのポスターの前でバシバシ写真を撮ってました。


滝こみごはん弁当\1500
 一階売店では滝沢城のオリジナル弁当「滝こみごはん弁当」が販売中。タッキーだから炊き(滝)込みご飯…あ~このベタなネーミングセンス好きだなあ。滝沢君の大好物だという甘エビ・ウニ・カニなどの海鮮がたっぷり入ったリッチな御飯。多すぎず少なすぎず、幕間に食べるのにちょうどいいサイズで女性客にピッタリ。もちろんお味も最高です。
 ※レストランメニュー滝こみごはん御膳(\3500)もあり

海鮮サラダそば\1200
 同じく「滝沢演舞城」限定メニューの海鮮サラダそば(レストランメニュー)。甘エビやカニなど海鮮をふんだんに盛り込んだリッチでヘルシーなサラダそばです。

観劇レポ・3月9日(昼の部)
開場 12:00~
座席案内 
12:30~

第一幕第一部 「ジャ(PA)ニーズ(Hi)Story日本昔ばな史」
13:00~14:15(約1時間15分)
 春の踊り/少年忠臣蔵四十七士/山寺の和尚さん/滝沢隊長と白虎隊/MASK/滝の白糸/男の花道/七変化/五条大橋

 ジャニーズジュニア勢によるにぎやかな和テイストのダンスを皮切りに、フライングで座長・滝沢秀明登場!「忠臣蔵」に「白虎隊」、はたまた歌舞伎「道成寺」「鷺娘」など、日本の歴史や伝統文化をジャニーズ流にアレンジしたド派手演出でタッキーがめまぐるしく変身します。めまぐるしすぎて「えっと…これは何?」と考えてる間に次の演目に変わっちゃう。制作発表時には九変化の予定だったのがどんどん増えてついには三十六変化になっちゃったんだとか。予定の四倍増しって…メチャクチャやん!でもそのメチャクチャをやってのけちゃうのがタッキーなのですね。和装洋装とっかえひっかえ踊って歌って立ち回るさまはたまらなくワイルドそしてセクシー。白虎隊のシリアス演技、大太鼓の上での軽快なタップ、鋭い殺陣に華麗な舞、少林寺拳法や水芸などその魅せ方も実に多彩です。
 フライングやバンジージャンプといったジャニーズならではの三次元アクションももちろん満載。タッキーがいつどこから現れるかわからないので一秒たりとも油断できない。二、三階席はフライングタッキーにピンポイントで手を振ってもらえる確率高し。オイシイぞ!ちなみに私は一階席でしたが、タッキーがバンジージャンプで頭上スレスレに降ってきた時には思わず奇声を発してしまいました。この年にして黄色い歓声をあげるミーハーファンの心理が理解できようとは。
 話題の女形は「道成寺」清姫、八百屋お七、花魁、鷺娘など…でもめまぐるしい変化のなかのワンシーンなので「え…それだけ?」というくらいあっけない。しかもポスターと違ってメイクはほとんどナシ(メイクしたって汗で流れて「ものの3分でスッピンになっちゃう」のだそう)。どうせやるなら女形オンリーのコーナーを作ってメイクもばっちり決めた徹底的なのを見せてほし…いやいや、これ以上ムチャは言うまい。「顔だけじゃなく全体を見て」という滝沢君の言葉のとおり、ここは所作の美しさや艶やかな舞から醸し出される「オンナ」の色気に注目しましょう。なるほどタッキー鷺娘の舞姿は何とも楚々と可憐でたおやか。しかもそのあとすぐさま男装(加賀屋歌右衛門)で現れてうってかわってきびきび凛々しい男舞をみせてくれるんだから驚きです。
 変化ショーの締めは「五条大橋」。セットの橋上で滝沢遮那王と弁慶がすれちがい、すわバトルか!?と思いきや、あらあら弁慶何もしないでかしずいちゃった…。着物姿のジュニアたちも勢揃いして滝沢遮那王を取り囲み、第一幕が終了です。
 一瞬たりとも観客を飽きさせない矢継ぎ早の展開はジェットコースターのようなスリルとスピード感。あっという間の1時間15分でした。

幕間14:15~14:50(35分)

第二幕第二部 義経 14:50~16:15…ぐらい(第二部第三部あわせておよそ1時間25分)
 第二幕「義経」はジャニーズ色は影をひそめ、滝沢義経の演技をじっくり見せる本格的なお芝居です。「大河とはちがう義経」「誰も知らない義経」という触れ込みのわりには思いのほかスタンダード。義経モノとしてはむしろ王道ともいえるストーリーです。私はまた「義経は女だった!」とか静御前は男だった!とかいやいや弁慶が××だった!とか××が××だった!とか××が××!とかもっと突飛なものを想定して恐々としてたんですがフタを開けてみればフツーでした。フツーじゃないのは私の脳みそでした。
 物語は、源氏の力で「平和の世」をつくるべしという父義朝(亡霊)の言葉をよりどころに戦い続ける義経が、愛する人達を次々失い、信じた肉親には裏切られ、迷いと苦悩の末ついに戦いのむなしさに気づく…というシェークスピア的心理劇。平家に心を寄せる大河版の義経とはちがい、この義経は終始「源氏」を意識して行動します。(平家メンバーは知盛以外は雑兵ぐらいしか出てこない)しかし平家を慕おうと源氏にこだわろうと、義経の辿る道は結局同じ…(泣)。むしろひたすら源氏だけを思って戦うこちらの義経のほうが何ら報われるものがなくいっそう哀れです。
 メインの登場人物はまずは滝沢義経、そして武蔵坊弁慶(関ジャニ∞の大倉忠義君)、兄頼朝(関ジャニ∞の横山裕君)、そして母常盤御前(星奈優里※元宝塚の女優さん)と平家女性の「こずえ」(叶千佳※同じく宝塚の女優さん)。母常盤と義経のシーンは一番の泣かせどころ。壇ノ浦でようやく再会した母子のつかの間の交流そして永久の別れには観客からもすすり泣きが…。
 「こずえ」は義経の淡い恋のお相手として登場します。一ノ谷合戦の最中に敵同士として出会いイイカンジになるんですが、実は彼女は常盤の娘…つまり義経の実の妹だった!衝撃を受けたふたりは恋心をあきらめ笛と舞のセッションで別れを惜しみますが、常盤に続き、なんと彼女までが流れ矢に当たって…!愛する女性をふたり一時に失うなんてあまりに救いのないムゴイ展開です。
 横山裕君演じる頼朝はかなり個性的でおもしろい。大河の中井頼朝がなんだか偽善的だったのに対し、この横山頼朝は露悪的なまでに憎々しいヒール役。感情むき出しでえばりんぼ。およそ武家の棟梁としての貫禄はないですが、こんなイケイケ頼朝も新鮮です。法皇から官位をいただく義経のもとへ「愚か者めが!」と花道からずかずか乱入。法皇の書状を奪い取ってバリバリバリーン!と破いちゃう。吉本新喜劇の辻本茂雄(ヤーさんバージョン)ばりの勢いと押しの強さです。
 そしてそのまま最終決戦に突入。奥州に逃れるまでもなく頼朝軍に討たれちゃう義経主従って…(泣)。しかし頼朝に烏帽子をはたき落とされ長髪をふり乱しながら戦う滝沢義経の色っぽいこと!頼朝とタイマンで激しく切り結ぶシーンでは「いけー!殺ったれ!」と史実も忘れて大興奮。しかし多勢に無勢、郎党達は次々に討たれ、弁慶も奮戦むなしく立往生(頼朝vs弁慶の一騎打ちもあり!頼朝にトドメを刺されるなんて弁慶も口惜しかろう)…。弁慶役の大倉君もなかなかのハマり役。シビアな空気をほっと和らげてくれるコメディリリーフを好演してます。
 仲間を失い追いつめられた義経は燃えさかる館のなかで自害(ここで豪快に「屋台崩し」!)…。幕が下り、ふたたび舞台上に現れた横山頼朝は虚空を見あげ独白します。「義経…お前は優しく純粋すぎたのだ!」傲岸不遜に徹した横山頼朝だからこそはっとさせられる、痛切な叫びです。
 舞台に一面の桜の花吹雪が舞い、花道にはいつしか水干に被衣姿の滝沢遮那王がたたずんでいます。“義経の魂はなつかしい鞍馬山に戻り、その澄んだまなざしで今でも我々を見つめている…”というナレーションがかかり、被衣の下からそっと顔をもたげてしばし場内を見回した遮那王はやがてしずしずと花道を退場してゆきます。場内、割れんばかりの拍手…!その神々しい後姿を見送りながら私の目頭にもいつしか熱くこみ上げるものが…。
 設定やストーリーは変われど、滝沢義経は大河そのままの清廉なキャラクター。テレビから現実世界に抜け出してきたようなナマ滝沢義経の凛々しさ美しさにはただただうっとりです。衣裳もおなじみのブルー系の直垂で、合戦シーンの鎧兜はもちろん鮮やかな赤糸縅!(でも源氏カラーの白を基調にしてるっぽい?)また最期の決戦シーンでは白地に金糸の華麗な直垂を着用。乱れ髪の色気も相まってまぶしいくらい似合ってます。
 またテレビではあまり意識しなかったことですが滝沢義経の「声」の魅力には目からウロコ…いや耳からウロコ。張りのある大音声は実に痛快で小気味よく(大好きなセリフ「いざ参ろうぞ!」がナマで聞けるなんて!)、愁嘆場では一転して繊細にふるえる哀切な声音で観客の涙を誘う。大河からさらに進化した堂々たる演技です。
 第一幕第一部が「動」のタッキーならこの第二幕第二部は「静」の滝沢君。(とはいえ殺陣はたっぷりありますよ!八艘飛びがないのは残念だけど←ぜったいワイヤーアクションでやってくれると思ってた)一時間そこそこで義経物語を消化するため大河のような重厚さ細やかさは望むべくもないですが、義経のメンタリティと物語のコンセプトが一貫していて、お芝居としてきれいにまとまってます。何よりナマでみる滝沢義経の演技は迫力満点!ジャニーズファンのみならず幅広い層が等しく楽しめる完成度の高い作品に仕上がっているのではないでしょうか。

第二幕第三部 Tackey World
 第二部の幕が下り、間髪いれずショータイムに突入。ジャニーズジュニア等のメドレーののち、「夢物語」のイントロが始まるや観客は大歓声!天井ゴンドラからスパンコールをちりばめたゴージャスなステージ衣装でタッキー登場。客席通路に降り立ち、舞台に上がって持ち歌を次々披露してくれます。最新ヒット曲「ヴィーナス」では出演者総出でダンス!頼朝役の横山君はうってかわってニコニコ笑顔でタッキーにちょっかい出していちびりまくり。そして観客も曲に合わせて座ったまま手ブリでノリノリ!場内一体となって盛り上がれる歓喜の瞬間です。
 そしてカーテンコール、最後の挨拶に滝沢君登場。「今日はやっと三回目ということで、え~…残すところあと七十数回というわけで…」と思わず遠い目をしちゃう滝沢君に観客席からどっと笑いが。たしかに「こんなのを一日二回、二ヶ月もぶっ続けでやるの!?」と心配になってしまうくらいひたすらハードなフルスロットル舞台。でも大河主役を立派につとめきった彼ならばどんな試練も乗り越えられるはず…がんばれ!彼が無事千秋楽を迎えられるよう祈りつつ、「私ももっとがんばらなくちゃ…」と身の引き締まる思いがしました。

観劇レポ追記・4月13日(昼の部/夜の部)
 滝沢座長の「また会いましょう!」の言葉に導かれふたたび行ってまいりました滝沢城、しかも今度は昼の部夜の部ぶっつづけ!一度見たらまた見たくなる、何度でも見たくなる、楽しい夢のようなこの舞台。3月下旬には不運な出火事故がありましたが、滝沢一座は義経もかくやのすばやさで城を建て直し、ダメージを受けるどころかよりパワーアップ&グレードアップしてよみがえりました。演出はますますダイナミックに改善され、滝沢君たちの演技や踊りにはいよいよ磨きがかかり…まことに舞台は日々「進化」する生き物なのですね。あの大きなアクシデントを乗り越えたからこそ、ひとまわりもふたまわりも大きく成長をとげたように見受けられます。
 前回見た時はあまりの内容の濃さに全容を把握しきれずアヤフヤなレポになってしまいましたが、今回はなんとか覚えている限りをきちんとお伝えしたいと思います。それでもなおアヤフヤですが。
第一幕第一部 「ジャ(PA)ニーズ(Hi)Story日本昔ばな史」
春の踊り
:ジュニア勢のダンスパフォーマンスにはじまって、舞台上には滝沢義経の顔が描かれた大きな山車が出現。そのなかから王子様的キラキラ衣装のタッキーが颯爽とフライングで登場!ひとしきり宙を舞い、演舞城テーマソング?を歌いつついったん退場、ほどなく二階席扉からサプライズ登場してふたたび豪快にフライング!花道に降り立ち、まずは最初のご挨拶。観客席からの「スゴーイ!」のどよめきに開口一番「すごいでしょ!」とニッコリ。観光バスの年配客が大勢入っていた昼の部では「今日はおじいちゃんおばあちゃんがたくさん見に来てくださっててうれしいですね!」とニコニコ。夜の部では客席で観劇中の少年隊のヒガシさんを紹介し「今回は大先輩がいらっしゃるので緊張してます。ヒガシさん…僕より目立っていませんか?」と笑いを誘う。観客の心を解きほぐし舞台と客席との距離を一気に近づける自然体の挨拶はさすがです。
少年忠臣蔵四十七士
:赤穂浪士に扮したジュニアメンバーが続々登場して自己紹介。最後に花道から座長タッキー登場、時代劇口調で改めて観客に凛々しくご挨拶。そのあとダイナミックなドラムアクション&大太鼓タップを披露してくれます。
滝沢隊長と白虎隊
:「青い山脈」(アップテンポなジャニーズアレンジ)にあわせてジュニアのダンス、そのあと白虎隊のお芝居へ…短いながらこの悲劇の演技は圧巻です。「無駄に若い命を散らしてはならぬ!」殺陣も音楽とぴったりマッチしていて痛快。
MASK
:「人は生きている間に様々な顔を持つ…」滝沢君が和・洋・中華風いろんな衣裳とマスクを次々取り替えながら傘や扇でパフォーマンス。フライングもあり!でもあのキレイなお顔を隠しちゃうのはもったいない…
安珍と清姫
:舞台は一転しておどろおどろしい雰囲気に…貞子チックの女たちが地を這い宙を舞う。タッキーも一瞬貞子化し、その後怒れる清姫に変身。大蛇とともに勇ましくフライング!憤怒の形相で坊さん達をびしばし蹴散らします。前回観劇した時はどういうわけだか何の関係もない女性が大蛇に食われててこわかったんですが今回はちゃんと安珍が食われていたので安心(※シャレではない)しました。
山寺の和尚さん
:小坊主に扮したジュニアが「山寺の和尚さん」のメロディーに合わせてタップダンス。皆かわいくてなごみます。
滝の白糸
:タッキーの白糸、優雅な水芸を披露。「芸人はなにがあっても舞台を降りてはならぬ!」滝沢君自身思いいれのある言葉というだけあって胸に響く力のこもったセリフです。
男の花道
:タッキー鷺娘登場!前より一段と可憐になったその姿は女の私が見てもキュンキュンです。そのあと恩人の先生のピンチに駆けつけるタッキー加賀屋(黒着物が似合いすぎ)はうってかわってキリリと凛々しく格調高く、なおかつポップに舞い踊る。も~かっこいいったら!第一幕ではこの鷺娘→加賀屋のシーンが一番好き。
七変化
:「男の花道」の流れからそのまま七変化へ。まずは八百屋お七、鐘を打ち鳴らす悩ましく狂おしいシルエットに見入っていたら舞台上にはもう鮮やかなオレンジの少林寺衣裳に身を包んだタッキーが。そして「義経千本桜」、ピョンピョン飛び跳ねる狐忠信のコミカルな動きがキュート。そのあと老人芸(またと見られぬよぼよぼタッキー)、そして艶やかな花魁へとめまぐるしく変化してゆきます。
バンジージャンプ!!!
天井ゴンドラを使ったメンバーたちのパフォーマンスののち、真っ赤な洋装に身を包んだタッキーがいきなり客席めがけてダイブ!そのまま空中で高速回転を披露します。回転するたび、彼のまわりには無数の汗の粒がダイヤモンドダストのようにキラキラ輝いて飛び散ります。ああ美しい…。浴びたい…。(←変態)
五条大橋
:大興奮のバンジーのあと、舞台は鞍馬の山中に。天狗に襲われる仲間達を救うべく駆けつけるタッキー牛若!白装束の片肌脱いで水びたしになりながら木刀をふるうセクシー牛若に視線は釘づけです。前回はアクションのみでしたが今回はちゃんとセリフが入っていてシチュエーションがわかりやすくなってました。このあとの五条大橋でも、前回なかった弁慶との立ち回りが今度はちゃんと加えられていて納得のシーンになってました。


第二幕第二部 義経
 「義経」では滝沢義経の情感あふれる力強い演技にいよいよ磨きがかかっていて驚かされます。前回は大河の滝沢義経との共通点ばかり探してしまいましたが、今回、ストーリーを把握しながら彼の熱演をじっくり見ていると、そのちがいがよくわかる。この義経は実にまっすぐに怒り、悲しみ、嘆きます。大河の義経が悟りの境地に達して静謐な最期を迎えたのにくらべて、こちらは「戦いの末に私が見たのはいとしい人々の最期だけ…!」「戦いとはいったい何ですか!」と憤りをぶちまけ、「私は源氏のため父のため戦ってきたが本当は母の愛を求めていただけかもしれない…」と人生のむなしさを嘆き、理不尽な兄の仕打ちに怒り、郎党たちの痛ましい死に身を揉んで慟哭し、荒れすさぶ最期をとげます。
 義経の悲しみや苦悩といったメンタル面をテーマに据えたこのお芝居、滝沢義経の演技が真に迫っているのも相まって、正直「もうやめて」と言いたくなるぐらい痛々しくてかわいそう…。でもそんな苦しみぬいた義経が死してふたたび遮那王となり花道によみがえった時、そのまなざしはどこまでも穏やかに澄んでいる。それがひときわ見る者の胸を打つのです。精一杯人生を戦い抜いた男がようやくたどりついた静かな場所…同じテーマの大河とはまた異なるテイストですが、悲劇を乗り越えて「救い」を得る心の浄化(カタルシス)の物語としてよりインパクトがあり感動的です。これぞ義経物語の真髄といえましょう。
 ドラマでの抑えた演技も舞台でのほとばしる演技も申し分ない滝沢義経。しかしそんなシリアス演技からは想像もつかない舞台ならではの爆笑アドリブも必見です。こずえと運命的な出会いをした後、大倉弁慶に「殿はお人がよすぎます」といさめられるシーン。どうやらここで毎回何らかのアドリブを入れるのがお約束になってるようで、昼の部では滝沢義経と大倉弁慶、目が合っただけでどちらからともなく「ブッ」と吹き出し、「なぜ半笑いなんだ!」と詰め寄る滝沢義経に大倉弁慶しどろもどろ。執拗にアドリブを要求され「もうカンベンしてください!仲良くしてください!」「仲良くしているではないか!」の押し問答。夜の部では観客席のヒガシさんを意識してやや緊張気味の滝沢義経、「殿なんでそんなに汗かいてんですか?」と大倉弁慶につっこまれ、「今日は客席にも殿(ヒガシさん)がいるからな…」と苦笑い。(そういえばヒガシさんも民放ドラマで義経を演じてましたね。あのハツラツ義経もなかなかよかった)そんな滝沢義経に「どちらの殿もステキですよ!」と大倉弁慶ナイスフォロー、場内大拍手!「弁慶お前は私の一番の理解者だな」「殿…!」熱く見つめ合うふたり…(笑)。しかしそのあと大倉弁慶セリフを忘れ、殿に「お前だよっ!」とつっこまれ、最後は「殿~!ごめんなさ~い!」と絶叫しながらハケてゆきました。いや~大倉弁慶おちゃめさんですね。このアドリブシーンで彼にぐっと愛着を持ってしまうから、クライマックスの立往生シーンがいっそう痛々しくやるせない。しかもトドメは頼朝に刺されちゃうんだから無念もきわまれり。ちくしょー頼朝め…
 でもこの頼朝もまたやたら黒くていい。横山頼朝、私けっこうハマってます。義経を追いつめ館に火を放ち「紅蓮の炎で飾ってやる!」と不敵に笑う。ドSです。しびれます。対する滝沢義経が手負いの獣の気高さで「お好きになさるがよい!」と決然と叫ぶのも妙に色っぽくてよいです。
 来年めでたく再演決定ということで、もし次も義経コーナーがあるのなら、今度はこの横山頼朝との確執をもっと見せてほしい!また大倉弁慶や郎党達とのからみも気になるところ。こずえとの悲恋も悪くはないけど、やっぱり恋物語には静御前のご登場を願いたい。静御前が頼朝をぶっとばすシーンとか見てみたい(ムチャ言うな)。もしくは今回の女形&早変わりの経験を生かして滝沢君の義経・静ひとり二役なんてどうでしょう。(だからムチャ言うなって)…夢は勝手に広がるばかり。滝沢義経のさらなる飛躍、さらなる可能性をこれからも見届けてゆけるならば、こんな幸せはありません。

第二幕第三部 Tackey World(ショータイム)
ジャニーズジュニア・関ジャニ∞ヒットナンバーメドレー
タッキー&翼メドレー「夢物語」「愛想曲」「ヴィーナス」などなど…
 ショータイムでは新たにイリュージョンが加わりました。舞台上で女性ダンサーたちを次々と消してゆくタッキー、次いでタッキー自身が消えた…と思ったら客席通路からいきなり登場!その他シルエットダンスも披露してくれます。
 クライマックスでは総キャストとともに山車の大きいのや小さいのや五条大橋や水芸のセットといった大道具もいっさいがっさい出てきて舞台の「仲間」たちが正真正銘勢揃い。そして牛若の紅い被衣を肩にふわりとかけた黒スーツ姿の滝沢君が五条大橋の上でラスト曲「エピローグ」をしっとりと歌い上げる。その歌声に、場内を包んでいた熱い興奮と高揚感がしみじみとした感動へとかわってゆきます。えもいわれぬ充実感、そして「もう終わっちゃうのか…」という寂寥感。もっと見ていたい、ずっと見ていたい…こんなに満ち足りたさびしさを味わわせてくれる舞台はなかなか他にありません。来年、また来年、きっと会いましょう…!

オミヤゲ情報
ハローキティ根付「弁慶」「忠信」「静御前」(各\525)
 新橋演舞場売店コーナーにはおなじみハローキティの歌舞伎シリーズが各種そろってます。義経関連キャラは「勧進帳」の弁慶、「義経千本桜」の忠信そして静御前。ほかにも助六や藤娘などいろんな種類がありますが、なかでもタッキー鷺娘の影響かキティ鷺娘が大人気のようです。(売り切れてた…)
「滝沢演舞場」ステージフォト各種(各\500)
 二階特設売店では舞台オリジナルグッズが買えます。まずは撮りおろしステージフォト。たくさんの種類が出てます。美しい滝沢義経・遮那王の姿に舞台の名場面がよみがえる…。
 ほかポスター二種(各\800…買っちゃった!)、ポストカードセット二種(三枚組・各\500)などがあります。共演者たち(ジャニーズメンバー)のグッズも用意されています。開場と同時にあっという間に長蛇の列ができた…
「滝沢演舞場」パンフ\2000/ペーパーバッグ\500
 こちらは舞台パンフレット&ペーパーバッグ。パンフには麗しい和装や渋い洋装そして妖艶な女形(鷺娘姿)の滝沢君、また浴衣を着用しての舞台稽古フォトなどタッキー&ジャニーズメンバーのグラビアが満載です。残念ながら滝沢「義経」の写真は載ってないですが、黒着物でびしっと決めた「殿」の御姿はため息もの…いや鼻血もののかっこよさ。
 ペーパーバッグは興奮のあまり買っちゃったポスターを入れるためやむなく購入(紙袋はタダでもらうものであって買うものではないっ!という関西人魂)。でも手にとって見れば何とも華やぐ春らしいデザイン、しかも丈夫で、すっかり気に入っちゃいました。ただしこれを下げて帰るということは「滝沢演舞城に行ってきました=タッキーファンです」と公言しているようなもの。滝沢君そしてタッキーファンの皆様の名を貶めぬよう、「これから地下鉄に乗って新幹線に乗って家に着くまでが滝沢演舞城です」と自分に言い聞かせ、粗相のないよう気をひきしめながら帰路につきました(←自意識過剰)。
 ちなみに写真に写ってる小さい紙切れ(紙袋の口付近)は舞台の間に降ってきた紙ふぶきの花びら。こんなものまで記念に持ってかえっちゃう私の浮かれっぷりがわかっていただけましょうか。

 なんだか義経サイトなのにただのミーハーアイドルファンみたいなノリになってスイマセン。大河レビューにも書きましたが大河ドラマ放送前はまったく何とも思っていなかった(むしろ「ちゃんとできんのかよ」となめてかかってた)滝沢君のことが回を重ねるごとにどんどん義経その人の姿に重なってきて、放送終了時にはもう完全に、自分でも信じられないぐらいにハマッていました…。
 でもいくら義経イメージにぴったりとはいえ、彼が顔がいいだけのアイドルなら決してハマりはしなかった。「義経」を通じて彼の人となりを知っていくうち、華やかなアイドル生活の裏で積み重ねてきた地道な努力と凄絶な苦労がうかがえて、また仕事に対する真摯な姿勢と強いプロ意識に感じ入り、「たかがアイドル」という目でしか見ていなかった自分をつくづく恥じました。みずみずしい美貌に柔和な物腰、それでいて誰よりも男らしい、逆風に負けないまっすぐな精神…義経の時代から変わらないヒーローの条件を彼は満たしてる。日本男児、かくあるべし!
 舞台専門雑誌「Look at Star!」vol.19では彼の義経への思いを知ることができます。私はこれを読んであらためて、この時代に義経を演じてくれたのがほかならぬ滝沢君で本当によかったと思いました。「(世の源義経への不当な評価に対して)義経のために迷わず戦える」という滝沢君、私もこれからは義経のためのみならず、あなたのためにも戦えますぞ!魅力あふれる義経をみごと演じきり、そのうえ義経のことを心から大切に思ってくれているんですもの…これが応援せずにいられましょうか。及ばずながら陰ながら、応援させていただきまする。ヤダといわれたって応援しまする~!(大河初期の弁慶なみのウザさ)…“義経”を通じて好きな人や応援したいもの、新しい世界がどんどん増えてゆく。こんなに豊かな幸せはありません。
 ともあれ「滝沢演舞城」、本当に楽しかった!ひとりでも多くの人に見てほしい舞台です。ジャニーズ舞台とはいえ観客の年齢層は幅広くてとても落ち着いた雰囲気(男性客の姿もちらほら)。ごくたま~に傍目もはばからず「ギャアアーッ!」「ウギャー○○く~ん!」と絶叫してる典型的なおねえちゃん達もいるにはいましたが(苦笑)。
 アクシデントを乗り越えて、重苦しいプレッシャーをはねのけて、最年少座長として二ヶ月のロングラン公演をみごと大成功に導いた滝沢君。そのお顔はいっそう精悍さを増し、肩から腕にかけての筋肉はますます隆起し、初日に比べて肩幅が5センチも広がったそう。いかに肉体と精神力を駆使してがんばりぬいたかがわかります。滝沢座長、そして全キャスト全スタッフの皆様、堂々の千秋楽、本当におめでとうございます!極上のエンターテイメントをありがとう!
 そして、祝・再演決定!来年はもっともっと見に行くぞ~!(貯金しとけよ…)今回の演目ももう一度見たいけど、もっといろんな「和」タッキーも見たい!滝沢君に演じてもらいたい魅力的な日本の物語はまだまだいっぱいありますからね。義経コーナーもずっと続けていっていただきたいです。私ごときがえらそうに言うことではありませんが、いち義経ファンの願いとして、滝沢君にはこれからも義経という役をかけがえのない財産として大切に持ち続けていってほしい。あの熱演を目の当たりにしてしまったらもう…彼以外の義経なんて考えられなくなっちゃいます。滝沢義経、あなたに出会えて本当によかった!

滝沢演舞城2007
 あの夢の舞台から一年余り。皆様いかがお過ごしでしたか?私は…、「タッキー&翼」のファンクラブに入りました。(笑)いや、すべてはこの「城」のため!「城」チケットをスムーズに取るためだから!…そのわりにはCDも買い大阪城ホールのコンサートにも行って思うさまタッキーファンライフを楽しんでますが…?(笑)今回チケットがなかなか取れず難儀した滝沢義経ファンの皆様、今からでも遅くない、観念してファンクラブに入るのです。そして私と共にもっと深みにはまるのだ。(笑)
 今回は七月公演。私は上旬と下旬にそれぞれ一日二公演、ダブルヘッダー観劇しました。観る側はダブルヘッダーだろうがトリプルヘッダーだろうが全然OKですが(金銭面以外は・泣)、演じる側はどんなにか大変だろう…とこれほど思わされる舞台はありません。座長・滝沢君は前回以上に八面六臂の活躍ぶり。観る人を楽しませ、前よりさらにいいものを見せようと全精力をつぎこむ彼の頑張りがびしばしと伝わってきて、それだけでもう胸が熱くなってしまうのですが、今回はことに第二部の義経物語が筆舌に尽くしがたいすばらしさ。義経ファンとして至福の時間を味わわせていただきました。


「滝沢演舞城2007」ポスター
 今回も演舞城の「舞」のなかの「タッキー」は健在です。2007のロゴが交錯しているのが一段とかっこいいですね。そして凛とした麗しい横顔の滝沢君!黒い着物が本当によくお似合いで…。当然の如く、このポスターの前には写メ撮りの人だかりができてました。


滝氷
 同ラウンジでは夏ならではのオリジナルメニューかき氷…ならぬ「滝氷」(\500)が味わえます。ワイドショーでファンに「タッキーの味がする」と言われていましたね。もちろん私も賞味しました。タッキーの味は…とってもさわやかで甘かった。(笑)かわいい器ももちろんお持ち帰りです。


滝こみごはん弁当・かに海鮮サラダそば
 ロビーでは昨年同様「城」オリジナル弁当「滝こみご飯弁当」(\1500)が販売され、レストランではかに海鮮サラダそば(\1200)が味わえます。値段はそのまま、お味はさらにグレードアップ!(しているような気がする)お弁当は毎回完売、レストランもつねに大入り。人混み苦手な私ですが、こういう景気のいい光景をみるのは大好きです。

観劇レポ・7月9日/7月25日
※第一部のおおまかな内容は昨年と同じなので、前回と異なる演出、新たに気づいた部分などを中心にご紹介します。なのでやたら「前回は~」「今回は~」と連発していてウザイですが許してください。また昨年のようにパンフレットに演目が載っていないので、一部勝手に演目タイトルをつけてます。さらに劇中のセリフはうろ覚えなので細かな言い回しなど間違っているかもしれませんがご容赦ください。
第一幕第一部 滝沢流にほん昔ばな史
夏の踊り
:今年の「城」は夏公演!オープニングに大きな山車が登場するのは前回と同じだけれど、こうしてみると祇園祭で賑わう京都の夏を想起させられワクワクします。その山車のなかから「夏の踊りはヨ~イヤサー!」と真紅のステージ衣装でフライングタッキー登場!わかっていてもやっぱりここは「うおーっ!」と盛り上がりますね。さらに今回はバックに巨大な竜が舞う!滝沢君のイメージモチーフは竜なのですね。かっこいい…。オープニング曲「いにしえ」もいい曲です。この城は音楽もすべていい!サントラ、出して欲しいんですが…。
忠臣蔵
:前回は「城」メンバーの名乗り&滝沢座長のご挨拶だけでしたが、今回は新たに討ち入りシーンが加わりました。滝沢大石内蔵助がもろ肌脱いでの殺陣、これが美しいのなんのって!ストーリー上脱ぐ必然性はまったくないのですが(笑)、あんな綺麗な上半身、皆に見せずに何とする。美しく締まった肉体が躍動するさまはストイックなエロチシズムに満ちていて、まさに眼福。大河「義経」の頃から思ってましたが彼はむやみに扇情的なパフォーマンス(エロエロダンスとか…笑)をするよりも、キリリとすればするほど匂い立つようなエロスが出ます。今後はぜひこっちの方向でがんばってみてください。雪に見立てた大きな白い布の上で滝沢大石内蔵助と吉良上野介(ジャニーズジュニア風間君)が戦う姿は幻想的で美しく、また戸板を使ったアクションはとてもスリリング。メンバーが支える不安定な戸板の上を素早く駆け抜け、さらに三枚の戸板を使った戸板倒しでは観客から驚きと感嘆の「おおーっ!」というどよめきが一斉に起こりました。
山寺の和尚さん:
滝沢座長が子供達と一緒に遊びます。横並びになって菅笠を投げ送る笠リレー、そして笠フリスビー?花道から子供達が次々と笠を投げ、それを舞台にいるタッキーがキャッチするのです。9日夜の部では順に上手くキャッチしていき、最後のひとつだけとんでもない方向に飛んでいったのですが、わんこのように追いかけてみごとスライディングキャッチ!立ち上がって両の手で「よしっ!」とガッツポーズ。おちゃめさん…かわいい…これがついさっきまで凛々しい殺陣を披露していた人だとは(笑)。25日の回では最後の笠にゴムがついててピュ~と戻っていってしまいタッキーがずっこけるというヴァージョンに変わってました。
滝沢隊長と白虎隊
:今回は冒頭の忠臣蔵にダイナミックな殺陣があるのでこちら白虎隊は自害シーンのみ。「無駄に若き命を捨ててはならぬ!」という滝沢隊長の悲痛な叫びはいよいよ情感が増し、胸に重く響きます。ジュニアの子達の演技も着実に上手くなってますね。
MASK
:取っても取っても素顔の出てこないマスクパフォーマンス、滝沢君のお顔がなかなか拝めないのは残念ですがこれもケレン味たっぷりで好きな演目。箱の中から金色の滝を流すやつ(正式名称わからず…)も華やかでいいですね。簡単そうに見えて実はかなり神経を使うむずかしい技だそう。それを毎回こともなげにやってる滝沢座長…さすがです。ラストには新作の京劇マスク&衣装もお目見えしました。
白波五人男:ジュニアから選抜された五人が名乗りを上げます。回によってこのメンバーは替わるよう。売り出し中の有名ジュニア君や岡本健一さんのお子さん、京本政樹さんのお子さんといった意外な顔ぶれも登場して会場が沸きます。
男の花道:
鷺娘タッキー、身のこなしが一層なよやかになり可憐です。「顔は見ないで!アップはやめて!(笑)」と言われたって見ちゃうもんね!彼は凛々しい男顔の美形なので確かに女には見えませんが、所作はもちろん、楚々とした儚げなその表情から、身も心も女になりきって演じているのがわかります。そして続く加賀屋歌右衛門の男舞!待ってましたこのシーン大好き。前回の、子分?をしたがえ横手組をバッタバッタ倒してゆく荒っぽいヴァージョンが私は好きで、やや説明不足なところも有無を言わせぬ勢いがあってよかったと思ってますが、今回の、女形のままで駆けつけみんなの前で生着替え(笑)、せり上がりながらきびきびと舞うバージョンも洗練されててかっこいいですね。何より、滝沢君のキレのある舞をじっくり堪能できるのがいい。
安珍と清姫
:前回よりさらに怖くなっております…やめてー!そんなとこまでグレードアップしなくていいから!暗がりから不気味な日本人形がヌボ~と出てきたり、赤子を抱いた女性の首がゴロン!と落ちたり…下手なお化け屋敷より怖いかも。怖いの苦手な私には非常にツライ…でも怒れるフライングタッキー清姫が颯爽と出てくると、怖いのなんてケロリと忘れてテンション上がります。地獄に仏のようなありがた~い存在。一番怖い役のはずなんですが。
滝の白糸
:タッキー白糸の水芸!最後の血しぶきは、前回はブシュウウッ!と勢いよく障子に飛び散る感じでしたが、今回は上からダラーリと垂れてくる感じでちょっと怖…しかし「芸人は与えられた芸を全うするのみ!」の一連のセリフは回を重ねるごとに力強くなっていて聞き惚れてしまいます。
ダンス(たぶん天草四郎):萌黄色のゆかしくも華やかな着物で登場した滝沢君が、クラシック曲(グリーンスリーブス)に合わせて優雅な日舞を披露。クラシックで和を踊る、この斬新な発想!とても華麗で見ごたえがあります。音楽が勇壮な交響曲(ショスタコーヴィチ「革命」)に変わると滝沢君も早変わり、フリルの襟のキリシタン(天草四郎?)衣装に変身し、ダンスも一転して重々しく力強いものに変わります。
変化いろいろ
:ま~た今回も早い早いってば!八百屋お七にはじまって狐忠信、「まさかの老人芸」(ヨボヨボ歩きがおみごと)、花魁で締めという流れは前回と同じですが、新たなキャラに雷神様が加わりました。黒髪長髪のイケメン雷神様。超かっこいいのでもっとじっくり見たいんですけど…あっという間に終わっちゃう。(泣)
バンジージャンプ!!!
何べん見てもドキドキする空中パフォーマンス。今回はゴンドラがなくなり、かわりに空中ブランコのようなところからばっと飛び降りたり、張りめぐらされたロープに飛び移ったり、前回とはまた異なるスリルがあります。高速回転も健在!見ているだけで目が回りそう。つい滝沢君ばかりに目が行きますが、ABC(ジュニアグループ)のアクロバットもおみごとです。
鞍馬の遮那王:牛若丸VS天狗の戦いもパワーアップ、なんとフライング!雨のしぶき(と滝汁)を撒き散らしながら縦横無尽に飛びまわる殺陣はド迫力。それにしても子供達のピンチに颯爽と現れる滝沢牛若丸は理屈ぬきにかっこいい。やっぱり彼には正統派ヒーローが似合います。不良系やチャラチャラ系の若手アイドルが跳梁跋扈する昨今、これほど「正統派」がはまる人はそういません。もっともっと彼のこういう役を、舞台はもちろんドラマや映画などでも見てみたいです。
五条大橋
:今回の弁慶役はジャニーズジュニアの藤ヶ谷君。昨年の大倉弁慶の流れを汲むクール系イケメン弁慶です。対する滝沢遮那王は、薄紅の可憐な衣裳をまとい悠然と登場。さすがピンク系がよく似合う男性ランキング第一位です。(そんなランキングはない)優美な遮那王と荒ぶる弁慶、橋上での息詰まる攻防…ところがそれに見とれていたら、なんと花道から滝沢「頼朝」が登場!さっきまで舞台にいたのは確かに“滝沢”遮那王だったのに…いつの間に入れ替わったの?!「城」観劇も二年目でだいたいのカラクリはわかったつもりでいたけれど、やっぱりいろんなところで驚かされる。参りました。
 「牛若、我らにはやらねばならぬことがある。…いざ!牛若!」滝沢頼朝の厳格なセリフと轟く雷鳴で、第二幕への期待がいやが上にも高まります。


第二幕第二部 タッキーひとり芝居
 第一幕クライマックスと同シーンから始まる第二幕「義経物語」。今回は滝沢君が義経、兄頼朝、のみならず父義朝の三人を演じるとのことで、何はさておき滝沢「義経」が大好きな私としては、よりにもよって頼朝を演じなくても…とちょっと不満かつ不安な気持ちもあったのですが、滝沢頼朝…これがかっこいいのですよ!くやしいことに。(笑)ビジュアル的にはあんなに若くて美しい頼朝はまずありえないのですが(笑)、声が渋く太く、冷ややかな威厳があって、頼朝ならではの貫禄を感じさせ、優しく潤んだ滝沢義経の声と鮮やかな対をなしています。
 一方の滝沢「義朝」は、鎧に宿る父の亡霊という設定で、冒頭シーンで頼朝義経に「我が恨みを晴らせ」と訴える“声”のみの出演。でもこれを滝沢君は頼朝よりもさらに低く重い声色で巧みに演じ分けています。最初これが滝沢君の声だとはまったく気づきませんでした。彼は声優にも向いているんじゃないでしょうか?噛む癖さえ直れば。(笑)
 亡父の雪辱と新しい世の草創という兄弟の思いはひとつ。義経は頼朝の命をうけ、平家との戦に赴きます。この合戦シーンを殺陣ではなく、傷つき敗走してゆく平家武者の中をひとり毅然と歩いてくる義経、というシンプルなシーンで表現しているのが印象的。すれ違いざま、力尽きてバタリと倒れる平家武者をはっと振り返り、仲間に支えながら去ってゆくその姿をしばし立ちどまって見送るシーンは、実にさりげないひとコマですが、戦を通して義経が感じたものを象徴的に表しています。
 しかしそんな義経の快勝ぶりに、京の公家、そして鎌倉武士たちがそれぞれの思惑から動き出します。それを、舞台の左右に公家と武士の二対の人形を配置し、人形浄瑠璃ふうに演出しているのもおもしろい。京の義経のシーンでは公家人形にスポットが当たり、不気味に蠢いて義経へ甘言を弄します。鎌倉で頼朝が戦況報告を受けるシーンでは、黒子のジュニア達がセリフを言い、それに合わせて武家人形が動きます。無機質な人形から繰り出されるセリフに聞き入る頼朝の姿は、義経の真の言葉や生の様子がダイレクトに伝わらないもどかしい状況を示しているよう。そんな状況をおそらく重々承知の上で、滝沢頼朝はどこまでも厳粛で苛烈。「武士が命を捨てるに二人の棟梁なし!」中途半端に情をみせず、揺るがぬ覚悟のみを見せつける、義経とはまた異なるまっすぐさ。実際の頼朝はもっと歪んだ面や柔弱な部分も併せ持つややこしい人物だと思いますが、この物語では、義経が敬慕したであろう頼朝の気高く厳格な部分を端的に示しています。
 対する義経は、兄から面会を拒まれ、その激昂ぶりに戸惑いながらも、「兄が天下を取るためには私が京を押さえておかないと…」とどこまでも従順です。やっぱりいいな、滝沢義経。義経の魅力である一途さ、いじらしさをここまで気持ちよく、かつリアリティをもって演じられるのはやはり彼しかいません。
 そんな折、義経は伊勢三郎と出会います。演じるはジャニーズジュニアの風間俊介君。私はジュニアメンバーに疎く風間君のこともよく知らなかったのですが、そのずば抜けた演技力と堂々たる存在感には圧倒されました。さすが多くの舞台経験を重ねてきただけあって、若いのにすでに独自の風格を漂わせています。滝沢義経との相性も抜群で、華やかな主役をうまく引き立てその魅力を引き出しています。この第二幕のみならず、滝沢座長の頼もしい片腕として舞台全体を引き締め盛り上げ、最高のパートナーぶりを発揮しています。お見逸れしました。
 飢饉で親を亡くし、盗人として捨て鉢な暮らしを送る伊勢三郎に、義経は「どうせ盗むなら天下を盗め」と志を高く持つよう諭します。感動した三郎は家来になることを誓い、「親方って呼んでいいですか?」と義経にいきなりピトッと抱きつき、そこへ藤ヶ谷弁慶が「一の家来はこの我だ!」と割って入り、そして…毎度おなじみ!アドリブシーンに突入。(笑)このほのぼの(グダグダ?)箸休めシーンがあればこそ、後のシリアスな芝居が生きてきます。
 三郎が「一の家来というのならこういうことができるか?」と無茶ブリ、弁慶が必死でアドリブ、義経が肩を震わせながらそれを見守る…というのが今回アドリブのお決まりパターン。昨年の大倉弁慶同様、「城」の弁慶は宿命的にいじられキャラなのですね。(笑)殿への愛を込めたラップを歌わされたり、ご両親へ感謝の言葉を言わされたり、(藤ヶ谷君のご両親がご観劇だった?)女の子への告白シーンを演じさせられたりとホント大変。三郎もその都度機転を利かせてアドリブ、「(弁慶に)お前は親方の衣裳に毛くずがついていることにも気づかないのか」と義経の直垂の毛くずを取ってあげ、「ねっホラ親方!(にっこり)」義経「三郎…!(感激)一の家来はお前だ!」見つめあいイイカンジになるふたりに、弁慶あわてて義経に駆け寄りほかに毛くずがないか必死で探す。(笑)
 私が見た中で一番盛り上がったのはアミコラネタ。これは弁慶いじりというより義経いじり?「一の家来というのなら美容にも気を使っているだろうな?」という何とも仕込みくさい三郎のフリに弁慶は「もちろんだ!」と懐からアミコラのミニボトルを取り出し、さらにもう一本取り出して、滝沢義経があぜんと見守る中、ふたりでぐびぐび飲み始める。三郎が「なぜかこれは親方が持つほうがしっくりくる気がする」というと弁慶、懐から三本目を取り出した!「さあ親方!飲まなきゃ♪ダメ・ダメ・ダメ~」三郎のあおりを受けて観客も大喜びで手拍子、新橋演舞場は飲み屋と化した(笑)。滝沢義経意を決し、アミコラ一気飲みいったー!「どうですか親方!」「…ゥエーッ…」さすがにつらそうかと思いきや、「♪アミコラアミコラ♪」と例のアミコラダンスを一小節だけ披露、場内大爆笑!しかしすぐさま「ちょっと休憩しないか」と座り込んでしまい、「弁慶、私を笑わせてくれ」と一発芸を要求。(笑)弁慶は「怖いな~スベったらいやだな~」とぼやきつつ突如ぺたんと座り込み「テディベア!」滝沢義経は倒れ伏してバカ受け!弁慶、「やったー!マジで嬉しい」と三郎と抱きあって大喜び。もうみんな完全に「素」。(笑)
 アミコラ一気と笑いすぎで息も絶え絶えの滝沢義経、背後の白い緞帳に映る自分の影に気がついてやにわにカニやキツネさんをつくって影絵遊びを始めます。この影絵遊びはアドリブの一環のようで実は次の展開につなぐ大事なシーン。三郎が故郷の様子を話し始め、それに合わせて滝沢義経がウサギやふくろう、オオカミといった当意即妙の影絵を披露。これがとても巧みで、観客は大いに沸きます。「ねえ親方、親方ならどんな世にしたいですか?」「そうだな…」誰も争うことのない、皆が笑って暮らせる世を…と滝沢義経は両の手で羽を広げた鳥をつくり、三郎と弁慶のつくった鳥とともに仲良く空高くはばたいていく姿が映し出されます。その幸せな時間はしかし、突如現れた鎌倉からの刺客によって破られる…
 兄に命を狙われていることを知った義経は決戦を促す弁慶らに対し、「これくらいのこと耐えなくてどうする」といさめます。兄に殺されかけるのが「これくらいのこと」なんて。お人よし、なんて言葉では片付けられない悲壮な覚悟がうかがえます。「好んで戦をする者がいようか…もう充分だ」「…それでも兄がこの首を欲するというのなら、喜んで差し出そう」みずからではなく兄のため、民のため、理想の世のために戦う誇りが言わせる、この一言。こんなことが言える人などいない、いてもごく稀。稀だからこそ尊いのです。
 続く安宅関のシーンは、歌舞伎「勧進帳」の様式美を踏まえつつ、情感たっぷりのリアルな演技で魅せてくれます。打たれる滝沢義経は本当に痛そうで、よろよろと立ち上がり歩き出すシーンなど痛ましすぎて見ていられないほど。そして、泣いて詫びる弁慶をねぎらう義経の演技がまた何ともいえず心がこもっていて、泣かせるのです。「私ほどよき家来を持った者はいないだろう…!」セリフを繰り出す際の「間」が絶妙で、言葉の一つ一つから、なみなみならぬ深い思いが伝わってきます。またそれに応える藤ヶ谷弁慶も、滝沢義経と風間三郎という熟練コンビに挟まれながら、見劣りしない迫真の演技を見せてくれます。
 そして奥州にて義経主従は最後の戦いに臨む…。「義経、誰もこんなことは望んでいなかった…」ふいに頼朝の声が義経の耳に届きます。「もう兄と思うな…」低く抑えた声色には確かに苦渋の響きがあります。頼朝の隠された悲しみをこの短いセリフのみで表現しているのが逆に切ない。やり方は違えど、頼朝も義経も、共通の大きな目的のために生死を捧げているのは同じ。その誇り、その覚悟、そしてそれがゆえの悲しさは誰よりもこの兄弟同士がわかり合っていたのではと思わされるシーンです。
 合戦の最中、まず最初に命を落としてしまうのが伊勢三郎…。決然と敵陣に斬り込むも奮闘の末めった刺しに刺されて倒れ、「最後の最後でやっと立派な家来になれた…三郎は日ノ本一の幸せ者です」と泣き笑いながら息絶えてゆくのです。全身全霊を込めたその迫真の演技に、会場のあちこちからすすり泣き、ハンカチを目にあてがう姿が…かくいう私もこのシーンからクライマックスまでずっと涙が止まりません。
 三郎に続き、弁慶も…。主従が交わす最後の会話は秀逸です。殿なくして我らの夢は叶わぬと訴える弁慶に、義経もまた「弁慶あっての私であった」とねぎらい、暇を乞う弁慶にゆっくり首を振ってみせ、「また会おう」と優しくささやいて最後の戦いへと送り出すのです。「…行け!」
 そして奮戦の末立往生を遂げる弁慶、その凄絶な光景を目の当たりにし義経の心もさすがに揺れます。「兄上!これで本当によろしいのでしょうか!」しかしもはや彼に残された道はひとつ。すべてを諦観した滝沢義経は静かに跪き、おのれの首に刀をあてます。「兄上、どうか私の亡き後、理想の世をおつくり下さい…」この時、滝沢義経の目には綺麗な涙があふれ、それがはらはらと頬を伝うのです。「私に与えられた運命…、幸せにございました!」自害のその瞬間、目も眩むような強い光と大量の紙吹雪が場内を包み、そのなかから、冒頭シーンと同じ薄紅の衣裳をまとった滝沢遮那王がふわりと飛び出してきます。「義経、私を許せ…」頼朝の声を聞きながらひとしきり光の中を舞い地上に降り立つと、そこには愛馬(白童子)が待っています。「またお供できて幸せです」という弁慶・三郎らの声にも迎えられ、遮那王=義経は“新たな旅”へと手綱を取ります。「さあ、参ろうか…」そして滝沢君のナレーションがかかり、物語は幕…「こうして義経は若くして命を散らしました…でも義経はきっとそれを悲劇だとは思っていなかったのでしょう…死してなお、兄に夢を託したのですから」
 義経は決して悲劇のヒーローではない。これは滝沢君が以前から主張していたことでした。私もその思いに強く同調します。大概の義経ものではクライマックスで義経の生死をぼかしてしまうけれど、私は義経が生き延びることがイコール義経の幸せだとは思いません。彼の死は決してみじめなものでも無意味なものでもない、むしろあれほどおのれの生を全うし価値ある死をとげた人はいないと信じているからです。あの死があればこそ兄頼朝は歴史に名を残す偉人となり、義経は伝説の中で永遠に生きる英雄になりました。また、義経の人生にはいつも愛があった。弁慶たち郎党衆や静御前ら素晴らしい女性達とまっすぐな愛を交し合った義経が、この世に恨みつらみを残していようはずがない。愛に生き、死してなお愛され続ける義経ほど幸せなヒーローはいないのです。
 そんな義経に心残りがあったとすれば兄頼朝との和解がならなかったことだと私は思っていましたが、死に臨む滝沢義経の「幸せにございました」という言葉に、はっと目が覚めました。義経は兄のため民のために戦いきったことに満足し、それに見返りを求めていません。(もちろん優しい言葉のひとつぐらいかけてもらいたかったでしょうが)彼の愛は無償の愛です。無償の愛に悔いはない。それは義経のために命を捧げた弁慶や伊勢三郎も同じ。自分のためではなく誰かのために精一杯生きて死ぬ、それは傍目には不幸でも、究極の愛であり幸せではないでしょうか。悲しみを越えたところにある至高の幸せ、それが義経主従の絆と源兄弟の確執を通して描き出されたことに私は深い感銘を受けました。
 滝沢義経の演技はすでに演技の域を越え、義経その人がそこにいるかのような錯覚をおこさせます。滝沢義経の美しい涙を、私はずっと忘れません。かつて源義経を演じた役者さんで、これほど義経を愛してくれた人がいたでしょうか。彼が源義経というはまり役に出会えたことは彼や彼のファンにとってはもちろん義経ファンにとっても喜びですが、その彼がこうして義経を愛しその役を大切に育んでいってくれている、こんな大きな幸せはありません。ほかならぬ義経も、きっと喜んでいることでしょう。滝沢秀明君というすばらしい表現者を得て、源義経はさらにいっそう「幸せなヒーロー」になりました。

第三幕第三部 踊るタッキー演舞城
 義経物語の感動の余韻冷めやらぬ中、タッキー&翼の新曲「SAMURAI」を皮切りにショータイムが始まります。サムライ…もちろんこれは義経のテーマソングですよね?えっ巨人?そんなもん知らん!トラキチの私にいったいどうしろと!?これは巨人のみならず全野球チーム、ひいては戦う男すべてに送る応援歌なのだ!とみずからに言い聞かせ、CDを買うことにいたします。(笑)ショータイムも佳境に入ると、“マジシャン”タッキーが次々と女性ダンサーを消してゆき、最後は自らが檻に入って消え、次の瞬間客席通路から艶やかな着物姿で登場します。マイクを手に取り、おもむろに何を言うのかと思えば、「今宵、真夏の夜の夢。あなたと私、そんなに触れちゃあヤケドする。それでもいいなら…踊り明かそう、ダメ音頭!」前シングル曲「×(ダメ)」の盆踊りヴァージョンが流れ、滝沢座長とハッピ姿のメンバー達が所狭しと踊る踊る!観客も手ぶり&手拍子で大盛り上がり。たっ楽しい…!泣かせて笑わせて楽しませる、滝沢君はつくづく希代のスターでありエンターティナーだと思います。
 そしてラストは「エピローグ」。この曲、本当にいいですね。歌い終わった滝沢座長はメンバーを従えて三方礼。この際のまなざしが本当に温かく、会場に来た人みんなを感謝を込めてくまなく見渡しているのがわかって、毎回感激させられます。カーテンコールでは改めて挨拶に現れた滝沢君に、観客が一斉にスタンディングオベーション!この最後の瞬間まで含めて、「滝沢演舞城」は本当に素敵な舞台です。


オミヤゲ情報
パンフレット(\2000)
 前回の白地に桜のデザインも春らしくて素敵でしたが、今回はシックな黒地に燦然と輝く滝沢演舞城のロゴ、そして乱舞する桜と波。…かっこいい!よく見れば「滝」のかくし文字もあって、見れば見るほど惚れ惚れとする粋なデザインです。
 もちろん中身も充実してます。京都で撮影された滝沢君のグラビアは美しく、インタビュー内容もとてもいい。なかでも鞍馬ロケのレポートは滝沢君が義経になるべくしてなった人だと思わせられるエピソードが満載です。「将来は京都に住みたいと思ってる」という滝沢君、関西在住者としては将来じゃなくて今すぐにでも住んでいただきたいのですが。(笑)
 ほかにも、京都ロケのフォトをみて「これはきっとあの場所だな!」と推理したり、ジャニー喜多川氏の挨拶文を勝手にジャニー語に変換したり(「皆様どうぞお楽しみください」→「YOU達楽しんじゃいなよ!」)、稽古フォトで滝沢君がタンクトップにさしているペンになりたい…と妄想したり、いろいろ楽しめます。(笑)
ショッピングバッグ(\500)・油取り紙(\500)・扇子(\1500)
 パンフと同じ柄の渋いグッズ陣。普段使いにもOKなデザインがうれしいですね。なので扇子は二本買いました、保存用と使う用に。この夏はもう、これでもか!っつうぐらいあちこちでこれ使います。
ステージフォト(各\500)
 一枚500円だとぅ?ぼりやがって!とぼやきつつも買ってしまうんだからなあ。(泣)きりがないから滝沢「義経」の写真のみ厳選して買おう、…と毎回思うのですが、あれもいいこれもかっこいいと、結局だんだん増えてしまい、最終的には自分でも引くぐらいの枚数になっちゃう。引きはするけど、後悔はしないさ!

 城もめでたく二年目、観劇も回を重ねてくると、滝沢君だけでなく彼と共演者やスタッフ達とのやりとりにも目を向ける余裕が出てきます。それをみていると、滝沢君は舞台上の役柄のみならず、座長としても義経さながらに度胸と決断力そして責任感があり、皆から慕われ大きな信頼を寄せられているのがわかります。後輩達もこの舞台に選ばれて立っていることを意気に感じているのでしょう、とてもいい表情をしています。そんな彼らのふだんからの信頼関係や心のつながりが、義経の演技にそのまま生きているのだと気づかされました。
 弊サイトに遊びに来てくださる義経ファンにも、この「城」へ滝沢義経に会いに行かれた方は多く、皆一様に「すばらしかった」と喜んでいます。また、義経ファンでもタッキーファンでもないお連れのお友達がこの「城」をみて、感動した、もう一度観たい、といって楽しんでくれたというお話が聞かれるのも嬉しいこと。ひとりでも多くの人に見てほしい、来年以降もずっとずっと続いていってほしい舞台です。「また会おう」滝沢義経の言葉を胸に、再会を楽しみにしています!


滝沢演舞城08・命(LOVE)
 さあ今年も新橋演舞場に築城されました我らが殿の「滝沢演舞城」!06年は春、07年は夏、そしてこの08年はふたたび春。桜咲く華やかな春は義経の、そして滝沢さんのイメージにもぴったりの季節で、何とも心が浮き立ちます。私は今回4月上旬・中旬・下旬の三回“登城”、計六公演の観劇です。毎年、着実に観劇回数が増えていってて我ながら怖いです。だって…!行けば義経がいるんですよ!ナマ義経に会えるんですよ!しかも、ついに出会えた理想の義経様、ともいうべき滝沢義経に!大河ドラマだけでもありがたいのに、テレビの中だけでなく、毎年じかに会えるんですから!こんな幸せがあっていいのでしょうか。滝沢義経が現れるまでは、義経ファンライフがこんなに楽しくなるなんて想像もしていませんでした。いまや歴史ファンのなかでいちばんいい思いをしているのは義経ファンなんじゃないかとすら思えます。(笑)

「滝沢演舞城08命」ポスター
 演舞城の「舞」の下部分が「タッキー」の文字になっているのはもうおなじみですが、今回のテーマタイトルである「命」という文字も、よくみればアルファベットの「LOVE」になってます。おみごと!こんなこと毎回思いつくジャニーさんの頭の中っていったいどうなってるの?(笑)


桜もなかアイス
 前回夏の「滝氷」に続く、滝沢演舞城オリジナルメニュー春バージョン!季節感を大事にするのは「和」の基本ですもんね。ぱりっとしたモナカのなかに、やさしい桜の香りがするアイスが入ってます。



滝こみごはん弁当・かに海鮮サラダそば
 今年の「滝こみご飯弁当」(\1500)は和風と洋風、ふたつの味が選べます。どっちも美味しい!
 恒例かに海鮮サラダそば(\1300)もレストランで味わえます。舞台同様、回を重ねるごとに内容が吟味され、美味しさがアップしている気がします。
 レストランや売店にはほかにも手ごろな通常メニューがありますが、やっぱり毎回、このサラダそばと滝こみごはん弁当を選んでしまう。ジャニーズ事務所の思惑通りにお金を落とす、私はとってもいいお客。(笑)

観劇レポ・4月8日/4月17日/4月24日
注1※うろ覚えレポートなので劇中の細かな言い回しや順番など間違っているかもしれませんがご容赦ください。
注2※「城08」をDVDでまっさらな状態で観たいという人は、このレポートは
超ネタバレ(特に第二幕)になるので先に読まないほうがいいです…。
第一幕第一部 滝沢流にほん昔ばな史
オープニング・春の踊り~いにしえ~
:ヴァイオリンの「城」メインテーマが静かに流れるなか、まだ何のセットもない暗く空虚な舞台中央に被衣で顔を隠した牛若がふわりと舞い降ります。代役かと思いきや…被衣をそっと上げると、なんと滝沢座長ご本人!思いがけない早々の真打ち登場に歓声と拍手がわき起こります。そんな場内を静かに見回した滝沢牛若はふたたびふわっと浮き上がり、舞台上を右に左にまた上下に、ゆっくりゆっくり浮遊します。そのさまは実に優雅で幻想的で、神々しさすら感じます。
 「春の踊りはヨ~イヤサ~!」威勢のいい滝沢座長のかけ声が響くと、舞台は一気に「静」から「動」へ!せりあがってくる豪奢な山車とダンサー達、そして背景に展開する京の街並。山車が開いて屏風になると場内に轟く竜の雄叫び、そしてスポットライトの先には滝沢座長!きらびやかな真紅の衣裳とマントををまといオープニング曲「いにしえ」を歌いながらフライング。ひとたびジュニア達の群舞のなかに消えたかと思うと二階席から再登場、今度は純白のマントをはためかせてより高くフライング!初演の頃からずっと変わらないこのジャニーズならではのド派手演出、何度見ても圧巻で惚れ惚れします。昨今は時ならぬ王子様流行りですが、この人ほど王子様然とした姿が似合う人もいないんじゃないでしょうか。いや、ここでは王子ではなく「殿」なんですけどね。
口上:白虎隊に扮したジュニアたちが自分の名前をダジャレふうに紹介しながら名乗りを上げます。初回の関ジャニ∞横山君大倉君、前回の風間君といった滝沢座長を隣で支える片腕的存在が今回はいませんが、そのかわり、A.B.Cの河合君戸塚君、Kis-My-Ft2の北山君藤ヶ谷君ががっちり脇を固め、フルスロットルで大活躍。滝沢座長を守る四天王という感じで頼もしいフォーメーションをみせています。その「城08四天王」(勝手に命名)のほか、まだかなりちいちゃい子たちもいますが、いずれもバトンや詩吟や三味線といった一芸に秀でた子たちが選ばれていて、ちいちゃいながら精鋭部隊のおもむきです。
シャボン玉遊び:前回は子供達と笠投げをして遊んでた滝沢座長、今回はシャボン玉遊びにトライです。私はいずれも平日に見にいったのですが、昼の部は小さい子たちが学校に行っているため人数が少なく、(5~6人ほど?)「みんな学校か?」「さびしいな~」「演舞城より学校か」といじけてみせる滝沢座長。(笑)大きなシャボン玉をつくって小さい子の頭にすっぽりかぶせたり、傘型のシャボン玉器?をくるくる回して大小さまざまなシャボン玉を量産したり、そのたびに場内から歓声があがり、どうだ!と得意げな滝沢座長。でも座長なのに、先輩なのに、小さい子たちに「タッキーこれやって!」「タッキーすごいね!」と超タメ口で呼ばれてる。(笑)「俺先輩だぞ」と言いつつもニコニコと子供以上に無邪気な笑顔で遊ぶ座長の姿は、たしかにちょっとからかってみたくなる可愛さです。
白虎隊
:これはほぼ前回と同じ。ただ、バックミュージックとなる詩吟を小さいジュニアの子がナマ披露していて驚かされます。どんな正当な理由があろうとも戦はすべてにおいて地獄…という、今回の「義経」にもつながる重いテーマが冒頭から胸にこたえます。
MASK~変面~
:演目冒頭の、金色のジャバラ状の紙?をざーっと落とすやつ(いいかげん正式名称調べなさい)がなくなって、かわりに純白の衣裳をまとった滝沢座長が京劇ふうの「変面」を披露。ジャン!という音に合わせて顔に手をかざすたび、次々と新たなマスクに変わってゆきます。クライマックスでは座長がひとり、いろんなマスクがぎっしりダンゴ状に連なってる長い棒(縁日のお面売り場みたいなの)を肩に担ぎ、豪快にブンまわす。これがまた男らしくてかっこいい!MASKは見どころ一杯の「城」のなかでも豪華絢爛、極彩色のイメージで、「和」(一部中華)ならではの派手さが楽しめる演目です。景気のいいBGMも大好き。サントラ出してほしいな~~!
星のしずく:滝沢さんの力強いダンスとたくましい二の腕(笑)が堪能できる「城」中盤のおなじみテーマソング。今回のパンフレットでやっとこの曲のタイトルがわかった…。オープニングの「いにしえ」といい、耳に残るいい曲ですよね。サントラ出してくださいね!(しつこい)
安珍清姫:これも大筋は前回と同じですが、道成寺のあらましがナレーションできちんと説明されていて、よりわかりやすくなっています。大ネタだけでなくこういう些細な部分をきちんと改善していっているあたり、「城」をよりよいものにしていこうという丁寧なこだわりが感じられます。真っ赤な長髪をなびかせてフライングする滝沢清姫はいよいよ勇ましく痛快。前回までは単独飛行してましたが、今回は安珍も首根っこをつかまれてむりやり一緒にフライング。(笑)そんな安珍を空中でこともなげにポイと放り投げる冷酷さにもしびれます。
滝の白糸:こちらもほぼ前回と同じ。ハードな展開が続く中、この水芸はひとときの清涼感をもたらします。ホラーな安珍清姫のあとだからなおさら…。でも「白糸の覚悟、とくとご覧あれ!」とヤカラに向かって手首を切り血をふきつけるシーンは、座長の気迫と、流れ落ちてくる大量の血のせいで、個人的には安珍清姫より怖かったりする。(笑)思えばこの「城」で扱っているお話はすべて「死」を思わせる物語ばかり。唯一「死」と無縁(まったくの無縁ではないけど)の「男の花道」だけが単純にスカッと胸のすくストーリーで、悲しくやるせない物語が続く中ひとつのアクセントになっていました。この人気演目を今回あえて削ったのは、このあとの「滝沢歌舞伎」をメインに据えるためには仕方ない…とはいえ、またぜひ復活してほしいです。
滝沢歌舞伎・弁天娘女男白浪/鷺娘/櫓のお七/執着獅子
さてその「滝沢歌舞伎」!よっ待ってました!歌舞伎に疎い私が「何これ…すごい…!」と息を呑み圧倒されたのはもちろんのこと、歌舞伎通の方たち(けっこう多いんです、義経ファンで歌舞伎好きの方)からも、「おみごと!」という感嘆のお声が多く寄せられてます。
 歌舞伎シーンのみならず、歌舞伎役者に変化してゆく姿をあえて舞台上で見せようという試みが面白い。舞台上にポツリと置かれた化粧台に向かう上半身裸の滝沢座長。その引き締まった精悍な肉体がスクリーンに大写しになると思わず観客がどよめく。(笑)真っ赤な化粧台の前で己の顔に首筋に、さっさと白塗りをほどこしてゆき、顔はどんどん女性のものになっていくのに、そのテキパキとしたしぐさは凛々しく男らしく、まさに両性具有の美。真剣な面持ちで紅をさす姿は何ともいえない妖艶さです。なのに、自分の顔が大写しになっていると気づくや否や、カメラに向かって口をンパンパしてみせたり鼻の下をヌボーッとのばしてみたり、変な顔を連発。(笑)
 そんな座長のまわりを、五人のかわいい娘達が今回の「城」テーマソング「WITH LOVE」のメロディにあわせて舞い踊ります。あまりにも違和感がないのでフツーに女の子達だと思っていたら、これがジュニアの子たちだったんですね!いやはやうまく化けたもの。滝沢座長が奥で化粧にいそしんでる間、この五人娘(?)が「弁天娘女男白浪」を演じます。呉服屋・浜松屋へ織物を買いにきた娘達。最初の頃は型どおりのセリフを言っていたのに、公演後半頃には若干ギャル化してた(笑)。正体がバレるシーンではバク転してみせたりと、ジャニーズならではのお遊びも。このシーンのジュニア達、誰が誰だかさっぱりわからないけど(笑)皆それぞれ楽しんで演じているのが伝わってきて、見ているほうもほっこり和みます。
 名乗りを上げた白浪五人男がはけていくと、天井からは「鷺娘」「櫓のお七」「執着獅子」等、各演目の書かれた提灯が降りてきます。最初の演目「鷺娘」の提灯に灯りがともると、花道から滝沢座長の登場。舞台上にしとやかな足取りで歩んでゆき、傘をすっともたげると、白塗りの麗しい鷺娘…!雪の中儚げに舞う姿は何とも哀切で、イナバウアーのようなしなやかなのけぞりがまた色っぽい!そして続くは「櫓のお七」。淡雪のような鷺娘の純白のイメージから、舞台は一気に情念の赤に染まります。櫓に登り、燃え盛る江戸の町を見下ろしながら鐘を叩き鳴らす姿、ひるがえる緋色の着物と乱れ髪・・・人形のように美しい女形が制限された動きの中でほとばしるような情念を見せる、その刹那の様式美にはただただ圧倒されるばかり。そこにジャニーズならではのアクション要素が加わって、またダイナミックなオリジナル音楽もぴったりマッチして、えもいわれぬ盛り上がりをみせます。ジャニーズ舞台と本格歌舞伎、どちらも私は詳しくないですが、双方をうまくコラボさせ、みごとなエンターテイメントに仕上がっていると思います。観客の反応にそれは何より明らか。「櫓のお七」が終わってひとたび「滝沢歌舞伎」の幕が下りると、声にならない感嘆のため息が場内にあふれます。
 ふたたび幕が上がって始まる「執着獅子」では、獅子の姿で豪快な毛振りを披露!鮮やかな赤い髪がきれいな円を描くさまは圧巻です。端正な美貌の滝沢座長に獅子の豪奢な姿と牡丹の花がまたよく似合う!獅子は百獣の王、牡丹も王者の花ですからね。
 そういえばドラマ「雪之丞変化」でも牡丹柄の美しい着物を滝沢雪之丞が着てましたね。あのドラマは一人二役に名女形役と、難しい役どころを演じてさぞや大変だったでしょうが、それゆえに、滝沢さんの魅力と秘めた才能が如何なく発揮されていたと思います。滝沢さんにはやっぱりこういう、普通の人ができないような役が合っている。もっともっと、こんな本格ドラマに出てほしい!舞台はもちろん、テレビや映画でも彼の演技がもっと見たい!タキツバとして歌い踊ってるタッキーもバラエティーではしゃいでるタッキーも好きですが、やっぱり「義経」で彼を好きになった私としては、「役者」滝沢秀明に一番の魅力を感じるのです。人々の心の琴線に触れる真の作品に、これからもどんどん出てほしい。滝沢さんにはその力があるのだから!お願いしますよジャニーさん、頼みますよホント。まあ本音をいえば、もういちど「義経」を滝沢義経でドラマ化、あるいは映画化してほしいんですけどね。しかもその際の監修は偏頗な歴史専門家より滝沢さん自身にまかせたほうがいいんじゃないかとすら思ってる。義経を誰より愛し理解している人、みんなの観たい義経をみせてくれる人、それは滝沢さんをおいて他にない。「城」をみるたびその思いが強まります。
忠臣蔵:前回は第一幕冒頭の見せ場だった忠臣蔵ですが、今回はクライマックス直前の山場になっています。前回の白い着物でもろ肌ぬいでの殺陣も筆舌に尽くしがたい美しさでしたが、今回の、黒い着物をまとい白装束の敵集団をなぎはらってゆく演出も幻想的でかっこいい。敵勢の白い衣裳は乱舞する雪の象徴でしょうか、とても妖しくセクシーです。スリリングな戸板崩しも健在、そして高い櫓の上から落下するという危険な技にも挑戦!観客からは思わず悲鳴が…。バンジージャンプがなくなったと思ったら新たにこんな荒業をもってくるとは…。お客さんをいかに驚かせ楽しませるかということに心血を注ぐ、座長の飽くなき向上心とプロ根性に感服します。
 吉良を追いつめ「お命、頂戴!」立ち込めるスモーク、そのなかからおなじみの羽織姿で登場する滝沢内蔵助。やがてどこからともなく集結する四十七士(今までどこいっとったんじゃい)、滝沢内蔵助を先頭に、そのさわやかな勇姿を江戸の人々に見送られながら、永代橋を渡って去ってゆきます。
五条大橋 義経と弁慶:四十七士が去った永代橋が半回転してそのまま五条大橋となり、舞台奥から弁慶登場!弁慶役は前回に引き続き藤ヶ谷君、そして伊勢三郎は戸塚君。伊勢三郎の登場は、前回は第二幕「義経」の劇中からでしたが、今回はこの五条大橋からのお目見えです。そして花道からはオープニングと同様の薄紅の衣裳をまとった滝沢牛若がしずしずとやってきて、舞台上の弁慶と五条大橋の上でご対面。「我が名は…牛若!」ここでワーッとボリュームアップする「城」テーマ曲、舞い散る桜吹雪、そして背景には大きな月…!いかにも絵画的なこのシーン、義経物語の美の象徴のようで大好きです。


第二幕 義経(秘)悲話
 前回の義経物語は本当にすばらしく、あまりのすばらしさに、滝沢さんがもう義経は演りきったと満足して義経から卒業しちゃうんじゃないかと心配になってしまうぐらいでした。パンフレットによると、実際に義経からひとまず離れて新たな人物をやろうかという話もあがっていたそうですが、やはり「義経」を観たいと思うファンも多いだろうし、義経という役が滝沢さん本人にとっても大切なものだということで、今回も無事、滝沢義経に会える運びとなりました!よ…よかった…本当によかったー!これからもお願いします…本っ当にお願いします!(平身低頭)
 脚本は中盤までは前回とほぼ同じですが、滝沢義経の演技はさらにいっそう情感を増し、見る者をより深く重くその世界観に引き込みます。またクライマックスの演出が大きく異なるのと、劇中に頼朝の弟を思う心が見え隠れするのも大きな特徴で、兄弟愛と主従愛がより強調されたかたちとなっています。義経物語の肝であるこの部分に焦点を据えてじっくり演じてくれる滝沢さんは、やっぱり義経のことを誰よりよくわかっていらっしゃる!06年より07年、07年より08年と、年を重ねるごとに滝沢さんの想いがより濃く反映された内容になっていっている気がします。
 今回も義経・頼朝・義朝の三役に挑戦する滝沢さん、「頼朝を単なる悪役にしたくない」とおっしゃっていましたが、今まででも充分、充分すぎるほど頼朝に配慮した構成になっていたと思うんですが…そもそも滝沢さんが演じるという時点で頼朝美化にもほどがある。(笑)06年の横山頼朝だって、確かにとんでもないイジワル兄ちゃんだったけど、悪ぶりすぎてどこか憎めない感じになっちゃってたし。悪態をつけばつくほど、キレればキレるほど観客から「くすくす」「ぷぷっ」と笑われてしまう頼朝。(笑)でも横山頼朝はそこが味であり人間くささであり、愛すべきところ。私の中の頼朝像は未だひとつに定まっておらず、「クールかっこいい系」「実はやさしい系」等いろんなパターンがありますが、横山頼朝をみた時から、新たに「空回りドS系」というジャンルが加わりました。(笑)
 一方の滝沢頼朝は、弱冠26歳が演じてるとは思えないぐらい威風堂々として貫禄があり、横山頼朝の危なっかしさにくらべると、あまりに完璧に演じすぎていて文句のつけようがなさすぎて、逆につまらないぐらい。(笑)正反対のキャラクターである頼朝と義経を瞬時に演じ分ける巧みさは見事というよりほかありません。頼朝と義経がどちらも舞台上にいて対話するシーンでは、頼朝の声のほうを録音で流しているのかと思いきや、よくよく見れば何とどちらのセリフもその場で滝沢さんがしゃべってる!すごい…。頼朝の聡明さと厳しさ、義経の強さと優しさ、どちらが欠けても意味がない、コインのように表裏一体で価値をなす兄弟。それをひとり二役というかたちで滝沢さんは効果的に表現してくれます。
 でも…やっぱり、滝沢さんは“義経”です。滝沢頼朝のシーンのあと滝沢義経が登場すると、やっと本来の姿に戻った!と思わずほっとしてしまう。まあそれは単に私が義経ファン、何より「滝沢義経」のファンだからでしょうが(笑)、義経を演じるときの滝沢さんは、何の力みもなく、ごく自然に義経その人になりきっているようにみえます。役が「板についている」とはまさにこのこと。もちろん頼朝もいいのだけれど、威圧をこめたポーカーフェイスで佇んでいる頼朝よりは、やっぱり家来たちにジャレつかれながら優しくほほえんでいる義経、「兄上…」とうるうるわんこ状態(笑)で兄を見つめている義経のほうが、滝沢さんの生来持っている雰囲気にしっくり合ってて魅力的です。
 滝沢義経の溌剌としたアクション、覇気のある言動も大好き。「合戦とは押しに押し、攻めに攻め、進みに進んで勝利を得るもの!」「ものども、この義経に続け!」力強い大音声の心地良さったらありません。そのあと、足をすっと引いて踵を返すしぐさがまたカッコいい!滝沢義経がやると「まわれ右」ですらカッコイイ。(笑)
 そんな滝沢義経の脇を固める家来は、藤ヶ谷弁慶と、前回の風間伊勢三郎に代わる戸塚三郎。風間三郎の熱演は未だ記憶に新しいですが、今回の戸塚三郎もまたキュートで味のあるキャラクター。同じ脚本で同じセリフを言っても、風間三郎だと海千山千のクセモノっぽい感じになりますが、戸塚三郎だといかにも明るく無邪気なお調子者で、大好きなご主人様のまわりをうれしそうにキャンキャン飛び跳ねてる子犬のよう。そんな戸塚三郎とコンビ?を組む藤ヶ谷弁慶は、前回よりだいぶん余裕が出てきたか、たたずまいに弁慶ならではの頼もしさが加わってきました。硬派で一本気な藤ヶ谷弁慶、とても好感が持てます。
 それでもアドリブシーンでのいじられっぷりは前回と変わらず。(笑)一の家来のポジション争いをする三郎と弁慶をよそ目に、義経は舞台端に座ってモグモグと袋に入った餅(実はマシュマロ?)を食べ、ついでに周囲のお客さんにも気軽に分け与えるのですが、実はそれは三郎が盗んできたもので、そうとわかるや否や袋ごとお客さんに押し付け、自分はすかさずその場を離れ「知らない」「食べてない」としらばっくれる。そう言いつつもお口はせわしくモゴモゴ。(笑)三郎が袋を持ったお客さんを発見し、「こら!返せよ」と抗議、義経も弁慶のうしろに身を隠しつつピョコッと顔だけ出して怖い声で「よくないぞ!そういうのは」とお説教。(笑)
 凸凹コンビの弁慶と三郎、そんな彼らの取っ組み合いを殿はのん気に影絵で再現します。しかしここで家来達が殿のプライドを傷つける言動に及ぶ…!「俺のほうが身長が高い!」「男は身長だろ!」影絵をしていた殿の動きがピクリとこわばる…(笑)はっと気づいた家来ふたり、あわてて殿のもとに駆け寄るも…「男は身長か…?」ヘコみがちにつぶやく殿に、弁慶「いや、男は器量の大きさです」と真顔でマジフォロー。場内大拍手!
 17日には翼君が観劇していたらしく、「殿と翼君どっちが好きだ?」「殿と翼君どっちがかっこいい?」当然、翼君アゲアゲの流れに…。しゃがみこみ、両のひとさし指をつきあわせて典型的いじけポーズを取る殿(カワイイ!)のもとに三郎いち早く駆け寄り、「俺は殿が好きですよ!」と猛アピール、「三郎ずるいぞ!」後れをとって焦る弁慶。(笑)
 そして24日には少年隊がご観劇!少年隊の東山さんは私が初演を見にいった時にもゲスト観覧されていたので、またもや新旧義経そろいぶみの場に居合わせることができて超ラッキー!私、東山義経は滝沢義経の次に好きなんです。でも東山さんは義経もいいけど頼朝を演ったらもっと似合いそう。もし東山頼朝と滝沢義経なんて並びが実現したら、私はもうこの世に思い残すことなどありません。(笑)ついそんなことを考えてしまったものだから、劇中、滝沢義経が「兄上…!」というたびに東山頼朝を勝手に想像して勝手に萌えてました。すみません。
 ともあれ少年隊ご観劇ということでアドリブにも緊張が走る…!「お前がこの世で一番好きな男性は誰だ!」(←なんちゅう質問じゃ)「そんなの殿に決まってるだろう!」「じゃあ少年隊と殿とどっちが好きだ?」「決まってるだろ!」「いつもお世話になってるんだからな」三郎と弁慶、殿のほうへ歩み寄る、と思いきや…くるりと客席のほうにむかってふたりで「少年隊です!」と一礼。場内大爆笑、殿豪快にズッコケる!そのあと、またもやいち早く殿の側についたチャッカリ三郎、殿と共同で巨大ゴリラの影絵をつくり、弁慶(の影)をパンチで倒す!「ま、まいった…」根をあげる弁慶に、「弁慶、まあ一息つけ」とありがたくも殿手ずから弁慶に急須でお茶をついでくれる(※影絵で)。そこから普段なら通常モードに戻るのですが、この日は殿の心のわだかまりが消えなかったのか、油断しきってくつろいでいた弁慶に「やっぱり少年隊か?」と蒸し返す!答えに窮した弁慶、「三郎はどうなんだ!」といきなりパス、これまた不意をつかれた三郎、こわばった笑顔で救いを求めるように殿を見つめたまま絶句…しばしの見つめ合いの末、殿たまらず噴き出す。「本気で困るなっ!」ジャニーズのこういう上下関係、なんかいいですよね。適度な緊張感のなかに程よい親しさと信頼関係があって。
 影絵コーナーはアドリブを含め前回よりさらにグレードアップ。はばたく鳥、飛び立つふくろう、舌なめずりをする狼、いずれもとても繊細に表現されています。なかでも二羽のウサギが向き合って前足でうりゃうりゃ!とジャレ合うシーンは「かわいい~~!」と毎回歓声が起こります。影絵だけでなく、影絵を作る殿のきれいな指先にも見入っちゃう…。平和の象徴として三羽の鳥がはばたいてゆくシーンでは、戦装束のままあおむけに寝そべって影絵をつくる殿の無防備な姿にちょっと萌え…(笑)「幼き頃に兄上と語り合ったものだ…戦のない穏やかな国を作ろうと…」「その夢、きっと叶いましょう」そんな主従の睦まじくも平和なひとときは、鎌倉軍の襲撃によって破られる…
 ほのぼのラブラブ義経主従と対照的な「腹黒」(by三郎)鎌倉勢。ことあるごとに義経謀反の恐れありと頼朝を焚きつけます。その筆頭が、つねに頼朝のそばに控える北山君演じる御家人A。(役名が出てないので勝手に命名・笑)ポジション的には梶原景時っぽいですが、「関東の武士が命がけでつくりあげた鎌倉の幕府…その存在を危うくするものはその首必ず取ってやる…それが義経であっても、頼朝であってもな!」という彼の言葉は、個人というよりは関東武士の総意ともとれ、あえて人物を特定する必要はないのかもしれません。源氏兄弟の仲を引き裂く、ばかりか頼朝個人への忠誠心も特にないというイヤな役どころを、北山君はあるときはクールに、あるときはねっとりといやらしい声色で熱演しています。彼は第一幕でも吉良など悪役として登場することが多く、これで中尾彬ばりの面構えだったら文句なしの悪役キャラなんですが、いかんせん彼は子ギツネみたいなキョトンとしたかわいい顔してるもんだから、いまいち憎みきれない。(笑)
 対する頼朝は「私と交わした固い約束、義経が破るなどありえぬ」とあくまでも弟を信じようとするのですが、御家人Aはじめ取り巻き達の矢継ぎ早のネガティブ報告に、「…私に弓引くつもりか?」と疑惑を持っちゃう。(泣)本当に頼朝のことを思ってくれているのは義経だけなのに…。大きな目的を追求するあまり真実が見えなくなってしまう頼朝の、義経とはまた異なる頑固さ、不器用な人間性がうかがえます。
 それからの頼朝の態度は実に峻烈。情にひきずられそうな己自身をも切り捨てるかのように、「義経の血筋、すべて海に沈めよ!その首取って鎌倉に持ち帰れ!」と太刀をかざして叫びます。滝沢頼朝の太くよく通る大音声は、義経ファンとしてはくやしいけれど、しびれるくらいかっこいい…。チクショー!(笑)
 そんな兄の思いがけない変心にも、弟義経の非戦の決意は揺るぎません。そして、「このくらいのこと耐えなくてどうする…」と、前回から変わらない、私の大好きなセリフに続きます。「好んで戦をする者などいない、戦のない世をつくるため人はやむなく太刀を抜く。平家との戦いでいやというほど血を流してきた、もう充分だ!…それでも兄上がこの首を望むとあれば、喜んで差し出そう…」義経のキャラクターはとかく戦に強いという面のみがアピールされ好戦的な人物と思われていることが多く、私はかねがねそれがイヤだった。もちろん義経は強くないとダメ、勇猛でないとダメ。でも、それ以上に優しくないとダメなのです。優しさがなければ、どんなに強くたって意味がない。そこを滝沢義経は、一番大切に丁寧に演じてくれている。滝沢義経の魅力そして真価はここにあるのです。佐藤継信最期のエピソードが示すように、「この人のためなら命はいらぬ」と郎党達が固く誓ったのは、義経が強かったからではなく、情ある人だったから。戦場で幾人もの命を奪ってきた義経だからこそ、「もう充分だ!」という叫びにも似たやりきれない言葉がリアリティをもって胸に重く響きます。
 そして場面は安宅関へ。ここで登場する関守・富樫は、格調高い時代劇的口調と所作で独自の緊迫感を作り出さなければならない重要かつむずかしい役割ですが、前回の富樫はこれを照れや迷いなくしっかりつとめあげていました。当時は誰がやってるかわからなかったのですが、戸塚(三郎)君だったのですね!お見逸れしました。そして今年の富樫は河合君。これまた落ち着きのある、堂々たるたたずまいです。「待たれ~い!」しんがりを歩く義経に目をつけ、笠を取り上げ、その顔を見るや…「あなたさまは!」驚き、うろたえ、視線がしばし宙をさまよい、同じく呆然と立ち尽くしている弁慶とはからずも見つめ合う…、この一連の演技で、緊迫感が一気に高まります。
 やむなく義経を打ち据える藤ヶ谷弁慶の熱演も見逃せません。「もうよしとするがよかろう!」富樫に言われようやく手をとめるも、倒れ伏して痛みに耐える主のほうをまともに見ることもできず、肩で息をしながらなんともいえない苦渋の表情を浮かべるのです。
 よろめきながら何とか身を起こした義経に富樫は歩み寄り、そっと笠を差し出します。「ご無事を…!」はっとして顔をあげる義経、静かにうなずく富樫。交錯する視線、こみあげる万感の思い…。一礼して、きれいな所作でさっと笠をかぶり立ち上がる義経。虎口を逃れた主従の、花道でのやりとりがまた白眉です。額を地面に擦りつけて詫びる弁慶に、義経「詫びなければならないのはこちらのほうだ…」しぼり出すようにふるえる声はすでに涙です。「五条の橋から今日までのこと、ありがたく思っているぞ…」「私ほどよき家来を持った者などいないだろう!」義経も泣く、観客も泣く…。「さあ、参ろう」穏やかな、しかし力強い殿の言葉。ふたたび立ち上がり歩き出した主従に、観客は惜しみない拍手を、殊更に大きな拍手をおくります。義経の痛み、弁慶の苦しみ、三郎の動揺、富樫の葛藤…展開はわかっているはずなのに、観客は引き込まれ、息を詰めて見守ってしまう。歌舞伎「勧進帳」の様式美と、演者たちの熱演がみごとに融合した名シーンです。
 そしてクライマックス…。決戦を前に三郎はうれしそうに弁慶に告げます。「俺はちっとも怖くない。それどころかワクワクしている!」少し遅れて現れた義経は、戦装束ではなく、立烏帽子に白く美しい直垂姿。「お前のおかげで明るい旅ができた」と三郎を優しくねぎらい、小刀を授けます。小刀をみつめしばし感極まっていた三郎、弁慶に「殿を頼む!」と告げるなり、軽やかに走り去ってゆきます。
 弁慶と義経にも別れの時が迫ります。「弁慶なくして私の旅はなかった」義経の言葉に弁慶深く平伏し、ひとたびは互いに背を向けて歩き出すも、今一度、名残を惜しむように「殿!」と呼びかけます。振り向いた義経に、深々と一礼。義経も黙って瞳でうなずいてみせます。
 三郎、弁慶の最期は、前回よりいっそう激しく切なく、そのぶん主への愛が痛いほど伝わってきます。致命傷を負った三郎、よろめきながら「軽く見つもっても10人は殺しました…俺がんばりましたよ!」と笑い、「これでやっと立派な武士に…義経様の家来に…」冷酷な表情の御家人Aがとどめをさすべく近づいてくるのも気に留めず、小刀を押し頂いたまま叫びます。「殿ーっ!」このセリフ、最初の頃はふつうの音声だったのですが、後半見にいった際にはエコーがかかり、いっそう痛切なものとなっていました。
 弁慶も負けてはいません。「これより先、お前達の進む道なし!」鬼気迫る怒声とともに最期の大立ち回り。囲まれてめった刺しにされつつも最後の力をふりしぼり立ち上がる。「殿には指一本触れさせない!」そして「殿!義経様ー!」と、三郎同様、大切な主の名を呼びながら息絶えるのです。
 かけがえのない郎党の死を見届けた義経、いつしか舞台上には激しい雨が降り注いでいます。「兄上、本当にこれでよろしいのでしょうか?幼き日ともに語り合った夢、もうその胸にないのでしょうか?」激しい悲しみにふるえる義経…、それでも決然と叫びます。「私はどうあっても叶えとうございます!」兄のためにできることはもはやただひとつ、自分の命と引き換えに永い争いを終わらせること…。でも、命をなげうって自分を守ってくれた郎党たちのため、むざむざ敵の手にかかるわけにはいかない…!
 敵勢の前に悠然と姿を現した義経、髻をふりほどき「弁慶、三郎!この義経の流す涙、しかとその身に受け止めよ!」この声、マイクを通さない生声なのです。義経の魂の叫びが、じかに耳に、そして心に届きます。
 群がり寄る雑兵たちを次々斬り捨ててゆく義経、やがて白い着物の懐に手を入れ、ばっと開いてもろ肌脱ぎに(…なるや否や、お客さん一斉にオペラグラスを構えるっ…!)。鍛え抜かれた鋼のように美しい筋肉は、まがうかたなき強さの証。鎧姿の武者たちをこともなげに倒してゆく裸の義経は無敵の「鬼神」そのものです。兵たちの返り血を浴び義経の白い着物と白い肌がみるみる赤く染まってゆく、それでも義経は止まらない。血染めの義経…「キレイなだけの話にしたくない」という滝沢さんの想いがこめられた壮絶な姿です。でも、それでも、美しい。この血みどろの姿には、恐怖とか不快感とか、そんな感情をもしのぐ、覚悟を決めた男の凄絶な美の境地がみえます。
 激闘の末御家人Aを倒すと、立っているのはもう義経のみ。降りしきる雨の中、しばしおのが刀を見つめると…、「兄上ーっ!」義経もまた、弁慶、三郎がそうしたように、心から慕い夢を託した人の名を叫び、かざした刀を自らの首に振り落とす…!その瞬間、義経の身に真っ赤な血の雨がふりそそぎます。がくりと膝をつき、いま一度顔をあげぼんやりと刀をみつめる義経。やがてその刀が手からするりとすべり落ちると、義経はもはや二度と動かぬ姿に…。「義経…牛若、この頼朝を許せ…!」頼朝の声が響く中、「城」メインテーマが大きく流れ、幕がおごそかに下りてゆきます。
 あまりにも壮絶な滝沢義経の死に観客は魂を抜かれ、ただ呆然と拍手することしかできません。早くふたたび幕が開いてほしい、滝沢座長の無事な姿をみたい…そんな願いと焦燥感すら込もった大きな拍手のなか幕が上がると、そこには血染めの義経の姿のままの滝沢座長が、静かなまなざしでマイクを持って立っています。いっそう大きくなる拍手の中深々と一礼、そして観客への感謝の言葉と舞台に込められた想いを述べてくれます。「今回はこんなふうにちょっと切ない終わり方になってしまいましたが…命の重さや大切さを少しでも感じとってもらえたらと思います」、「この舞台をやっていて、義経という役があらためて自分の中で大事なものになっていっていると実感します。これからもずっと演じていたいな…、そんな気持になってます」という、義経ファンとして本当に嬉しい言葉を聞くこともできました。
  今回の義経物語は滝沢座長の「命」というテーマへの強いこだわり、そして深い「義経愛」が伝わってきます。物語としては前回のように自害のあと牛若の姿に転生するほうが救いがあって後味もいいのでしょうが、義経を血の通ったひとりの人間として生かし死なせた滝沢さんの姿勢からは、命の重み、死の怖さ、それをも覚悟で守るべき愛と貫くべき絆、そしてそれを身をもって示した義経という人物への惜しみないリスペクトが伝わってきます。そんな滝沢さんに、私もまたありったけの賞賛をおくりたい!
08テーマソング「WITH LOVE」
 前回までは第二幕の重さを忘れさせるような楽しいショータイムがありましたが、今回はそれをばっさり削り、披露するのはただ一曲、滝沢座長作詞作曲の「WITH LOVE」。今回のテーマ「命(LOVE)」のために作ったというこの曲は、さまざまな人々への感謝が込められた、滝沢さんの温かな人柄がしのばれるとてもいい曲です。サントラ、絶対出してくださいね!(まだ言うか)義経の死の余韻、その張り詰めた悲しみを癒すように、優しいメロディと優しい歌声がしっとり心に沁みてきます。真紅のスーツに着替えた滝沢座長、マイクを持つ手にも振り付け(手話!)をする手にもまだ血糊のあとが残っていて、「滝沢秀明」に戻りきらないまま、義経の魂を宿したままでこの歌を歌ってくれているよう。ジャニーズファンが楽しみにしているであろうショータイムを削ってまで、義経にかける強い思いを示してくれた滝沢座長。ありがとう…義経ファンでよかったと、こんなに強く思えたことはありません。滝沢さんの義経をみるたびに、義経のことが、そして滝沢さんのことがますます好きになっていきます。
 舞台天井からは桜の紙ふぶき、両脇からは無数のシャボン玉が噴き出され、夢のように美しい光景が広がります。そして滝沢座長の三方礼…前回レポートでも書きましたが、彼の凛とした丁寧な三方礼が私は大好きです。この三方礼のために12000円払っているといっても過言ではない。というのはさすがに過言ですが(笑)、この心のこもった三方礼をみると、「観にきてよかった…!!」と熱い喜びが改めてこみあげるのです。


オミヤゲ情報
パンフレット(\2000)
 今回のパンフレットはハードカバー仕様になっていて持ち運びしやすい!(ちょっと重いけど・笑)厳島神社ロケのグラビアも情緒があって美しく、中身も読み応えあり!「歌舞伎」「着物」「京都」等といった数々のキーワードをテーマに滝沢さんが語ってくれています。「源義経」の項目のお言葉は我ら滝沢義経ファンには感涙もの…!城四天王たちとの対談も収録されていて、メルアドをまだ教えてもらってないだのテレビ電話をかけてきてもらっただの、滝沢座長の愛をめぐって争う四天王はまさに義経主従そのもの。(笑)
ショッピングバッグ(\600)・小風呂敷(\800)・扇子(\1500)
 城オリジナルの「和」グッズも毎回の楽しみのひとつです。扇子やショッピングバッグ、そして新たに小風呂敷がお目見え!今回のモチーフは「命」の文字に舞い散る桜とはばたく鳥。第二幕で仲良く並んで飛ぶ、義経主従の影絵の鳥が思い起こされます。
ステージフォト(各\500)フォトアルバム(\1500)
 もう絶対無駄遣いはしない!ステージフォトは滝沢牛若、滝沢義経のだけ買うことにする!ほかのは買わない!滝沢頼朝だって買わないんだから!…と、固く決意したはずなんですけど…おかしいなあ~、なんでこんなに買っちゃうんだろう…。フォトアルバムにはすでに写真がぎっしり。まあ、いつものパターンに今回もハマったというわけです。(笑)

 今年の「城」は、冒頭からいきなりの滝沢牛若登場、そして義経姿のままでの座長挨拶と、まさに義経に始まり義経に終わるといった感の構成で、義経ファンとしては、ここまでしてもらっていいの?と思うくらい嬉しく心に沁みる舞台でした。滝沢さんはそんじょそこらの義経ファンより義経を愛している、これはもう間違いないです。「義経以外に演じてみたい歴史人物は?」との問いに「義経以外演じたくない」と答え、「義経役をほかの誰にも演らせたくない」とまで言ってくれた滝沢さん。私ももう、滝沢義経以外の義経なんて見たくない…!義経はもう滝沢さんのものです。滝沢さんの「十八番」です。これからもどうぞ大切に、滝沢さんの中で育みながら、いつまでも演じ続けていってほしい…!
 今回滝沢座長が掲げた「命=愛(LOVE)」というテーマは、義経をはじめとした舞台演目からはもちろん、命がけのパフォーマンスに挑む座長とそれを守る「城」メンバーの姿からもよく伝わってきて、そういうチームワークも含め、本当に「城」は素晴らしい舞台だとあらためて思いました。来年、再来年と、そんな「城」がずっと続いてゆきますように、滝沢義経にまた会えますように…。「我らの旅はまだまだ終わらぬ!」さらなる高みをめざす滝沢座長を、今後いっそう、心より応援させていただきます!



滝沢演舞城09(タッキー&LuckyLOVE)
 今年もやってまいりました「城」の季節、桜の4月!…と、毎度テンション高めのおバカ観劇レビューを書こうと思っていたのです、が!千秋楽前に突如、「城」今年でファイナル!(歌舞伎座改築工事のため)との発表があったそうで…、私の心は真っ白に燃え尽きてしまいました。来年からは日生劇場で「城」に替わる和の舞台が予定されているとのことですが、この四年間、新橋演舞場に遠征しているうちに、あの和の空間がすっかり好きになっていたので、場所とタイトルが替わってしまうのはとても残念です。
 何より、義経をはじめとする「城」の演目が次の舞台にも引き継いでもらえるのか心配でたまらない。ヤダヤダ来年も観たい!会いたい!滝沢義経に!滝沢牛若に!滝沢内蔵助に!観たいです…「夢の続き」が観たいです!安西先生っ!と混乱のあまり「スラムダンク」ごっこができそうな勢いですが、落ち着け。そもそも大河「義経」で滝沢義経が誕生したこと自体、奇跡のような幸せだったのだから。しかも、ふつうなら大河ドラマが終わればそれっきりなのに、その後毎年、「城」で義経を演じ続けてくれたのだから。「義経(役)は誰にも渡したくない」「滝沢といえば義経、義経といえば滝沢といわれるようになりたい」とことあるごとに語ってくれた滝沢さん。そのゆるぎない義経愛が嬉しくて、頼もしくて、そのありえないような幸せを、つい当たり前のものとして受け止めてしまっていた…。
 滝沢さんの演じる義経が私は誰よりも好きです。義経を心をこめて魂かけて演じてくれる滝沢さんが大好きです。そんな大好きな滝沢さんをこれからも応援する気持にブレはない、たとえ義経を演じてくれなくなっても…。
いやいやいやいや!まだ早い!義経を卒業するにはまだ若すぎる。27歳でしょう!?義経が一番活躍していた年齢ですよ!?もうちょっとがんばって~!せめて義経の享年(31歳)までは義経でいて!願わくばそれ以降もずーっと義経でいてほしいけど…。平成によみがえった現代の義経様として、義経の「それから」を、義経ファンの「夢の続き」を、どうか見せてください…!見たいです!夢の続きが見たいです!安西先生っ!目下このようなエンドレスな苦悶を繰り返す日々です。もっと有意義に生きろ。
 ともあれこの4年間、本当にこんなに幸せでいいかしらと思うくらい幸せな思いをさせてもらったので、熱い感謝の気持をこめて、そして来年からの新生舞台に引き継いでほしい演目のアピールもしつつ、さらにファイナルだからちょっぴり辛口意見もまじえつつ、最後の「城」レビューを送りたいと思います。
 今回、卒倒しそうなほどいい御席を取ってくださったT.S様、A.O様、本当にありがとうございます…!ファイナル「城」、おかげさまで夢のような素敵な時間をすごすことができました。


滝沢演舞城09タッキー&LuckyLOVE」ポスター
 昨年の「命=LOVE」からさらにサブタイトルが長くなって今年は「タッキー&ラッキーラブ」。???命=LOVEはともかく、新たにくっついた「ラッキー」とはいったい…?まあ私にとっては滝沢義経に会えるのが最上級のLuckyですけどね。


 
滝沢座長とお花&メッセージ
 ロビーの一角には、舞台に届いたお花に囲まれた牛若モード座長の御写真とメッセージが飾られています。今でも大河「義経」関係の方々からお花が届いているのですね。義経主従さながらの強く温かい絆を感じます。



かに海鮮サラダそば(上)・滝こみごはん弁当(和風/洋風)
 おなじみ「滝こみご飯弁当」(\1500)和風or洋風、恒例かに海鮮サラダそば(\1300)。おかずが年々グレードアップしていて嬉しい~!お箸袋とカードももちろん記念に持ち帰ってチケットやステージフォトといっしょに保存です。
 新橋演舞場はこういった「城」ならではのオリジナル食事が楽しめるのも大きな魅力でした。歌舞伎座の改修工事が終わったら、ぜひまた新橋演舞場に戻ってきて「新生・滝沢演舞城」を築いてほしいです。

観劇レポ・4月2日/4月20日

(各タイトルはパンフレットに記載されているものです)
第一部
OVERTUNE

 バイオリンの静かな旋律で幕が上がるのは4年を通して変わらぬスタイル。心に沁み入るこの美しいメロディー、「城」が終わってからもふとした瞬間に思い出しては癒されます。サントラ、出してほしいな~!ソロシングル出した勢いでソロアルバムも出せばいい、二枚組にして片方を「城」サントラにして!(勝手に決めんな)
 スクリーンには初演からの「城」の名シーンがダイジェストで流れます。男の花道や鞍馬の牛若、大太鼓タップなど、今ではやらなくなった演目をメインにつづられたその映像をみていると、この四年間のさまざまなことが思い出されて早くも目頭が熱くなってきます。
 そして前回同様、薄紅色の衣をまとった滝沢牛若がオープニングからご登場…!前回はまずふわっと地上に降り立ち周囲を見渡したのちふたたび舞い上がるという流れでしたが、今回は宙にしばし静止し、そのままふわりふわりと舞台上を舞い続けるというさらに幻想的な演出になっていました。

オープニング
 宙を舞っていた牛若が消え、「春の踊りはヨーイヤサー!」威勢の良い座長の掛け声とともに、舞台は一気に静から動の世界へ!巨大な山車が回転しながらせりあがり、きらびやかな衣装のジュニア勢が所狭しと踊り出し、竜がとどろき吼える!そして開いた山車のなかから俊敏な鷹のように飛び出してくる座長・滝沢秀明。このオープニングは何度見ても圧巻で、映像も音楽も演出もパーフェクトの完成度です。ぜひ次回の舞台でも継続してほしい、テーマ曲「いにしえ」ともども。「いにしえ」の入ったソロアルバム、出してくださいね~!

口上
 フライングを終えていったん舞台袖に消える座長、入れ替わりに舞台上にぞろぞろと居並ぶのはジュニアたち。ひとりひとり名前にダジャレをまじえたり流行りの小ネタを入れたりして自己紹介。初演のころからずっと気になっていたことを今更ぶっちゃけますが、めくるめくスピード感に満ちた第一幕のなか、ここだけいつもグダグダもたついて感じる。なにも律儀に全員に名乗らせなくても、メインで活躍するジュニア4名(私は勝手に「城」四天王と呼んでる)や、詩吟や三味線など特別に見せ場のある子たちだけでいいんじゃないのかなあ…。詩吟の子の「得意なのは詩吟です。でもお笑いの詩吟とはちがいます」という口上は幼いながらプロのプライドが感じられて小気味よかった。「城」は未来のジャニーズを担うジュニア育成の場という意義もあるのだろうけど、だったらなおさらシビアな実力主義でいってほしい。とはいえ、ここがいかにもグダグダだからこそ、「…そして最後に控えしは!」満を持して登場する滝沢座長の頼もしさが際立つのかも。「東西東~西!」花道から威風堂々ご登場の滝沢座長は実に凛々しく、裃をまとった姿は最強にかっこいいです。

城下町
 そのかっこいい御姿のまま子供たちと一緒に遊ぶ滝沢座長。けん玉やヌンチャクやサッカーボールやルービックキューブ等々、古今東西のいろんなアイテムで遊ぶ子供たちに、座長がそれぞれ「すごいね~」「やらして?」と声をかけてゆく。けん玉の飛行機は4回見たうち3回、一発で決めてました。さすが!そして締めには紙づくりの二匹の赤い蝶を扇であおいでふわふわ羽ばたかせる芸を披露。花にとまらせ、地上に降り立たせ、また舞い上がらせる。この典雅な芸、いかにも春らしく上品で、麗しい滝沢座長にぴったりです。蝶がひときわ高く舞ったその瞬間、客席に向けて蝶のかたちの紙吹雪がブワッと噴射される…!その量たるやハンパない。前のほうの席は頭から足もとまで色とりどりの蝶まみれ。私も家に帰って鞄を開けたら、中から蝶が何匹も何匹も出てきました。ちょっと幸せ。

白虎隊
 白虎隊も初演からずっと続いた演目ですが、セリフや演出が毎年少しずつ違ってきているのがおもしろい。初演は殺陣があったんですよね。今となっては不思議な感じ。今回は幼い弟の介錯をしなければならない兄(滝沢座長)の苦悶と憤りの演技が加わって、より引き込まれるシーンになっていました。弟の目を閉じさせ頭をなでるそのしぐさが細やかな愛情に満ちていて、泣かせるのです。あわただしい時間の中でこれほどずっしり重みのある演技ができるのですから驚きです。

MASK
 これも定番の演目。ド派手でにぎやかで、好きな演目です。でも、顔が見えないのをいいことに前回よりも滝沢座長の出番が減ってませんか…?(笑)中華風の変面では、古代中国皇帝のような丈の長い衣装に身を包んだ座長が威厳に満ちてかっこいい。でも変面の面はどれも不気味でこわいので、お面はいいから早く顔出せ! といつも思ってしまう。
 そして座長がようやく素顔をだすと今度はド迫力の太鼓パフォーマンス。滝沢座長の掛け声のもと、ジュニア総勢で一斉に太鼓を打ち鳴らす。地響きとなって場内をどよもす勇壮な太鼓の音!くぅ~かっこいい。でもジュニア勢が上半身裸でずらりと居並んでるのはちょっと異様。ハッピでも何でもいいから着ればいいのに、日本人らしく慎み深く。と一瞬思ったけれど、私は座長の引き締まった二の腕しか見てないから別にいいか。
 そしてここでショータイム、新曲「無限の羽」「シャララ」を披露します。和の舞台でここだけいきなり洋の世界。「星のしずく」はないの…?ガーン!城でしか聴けないあの歌大好きなのに。まあいいや、サントラ出してくださいね~!!「シャララ」では滝沢座長を中心にトレンチ着て踊ってた女性ダンサーたちが曲中盤でトレンチを脱いでラメラメのキャミワンピに!これがもう超セクシーで見とれてしまいます。ジュニア達の上半身裸には冷ややかに眉をひそめるくせに女性ダンサーのダンスには色めき立つ、私の中身はオッサンかもしれません。ただ、彼にはこういうダンサブルでセクシーな歌もいいけど、「WITH LOVE」系の優しく穏やかな曲、あるいは「城」テーマソング2曲のようなヒロイックで哀切な曲のほうが彼の持つノーブルな雰囲気と甘い声色に合ってると思うので、そういう曲ももっとテレビで披露してほしいです。あ、「愛・革命」はもういいです。(おい)

お化け~清姫
 「お化け」とは滝沢座長が今回の舞台のために制作した短い映像作品。でも「お化け」なんてカワイイもんじゃないです、アレは。霊とかグロとか大嫌いな私には拷問以外の何物でもない。だったら見なきゃいいのに座長が出てるから見ないわけにいかない。でもまともにみたのは最初の回だけ、次からはずっと目を閉じてました。しかし目を閉じてても「ガシャーン!」「ドーン!」という効果音だけでコワイ(泣)コワイというより心臓に悪い。小さい子やお年寄りも見に来ているというのに、なんてヒドイことを。映像制作の腕がプロ級なのはよ~くわかったから、どうせ撮るなら今度からはこんな人を怖がらせるものじゃなく、人を幸せにするものを撮ってください。「義経」短編撮ってください。(これが本音)
 この恐怖の余韻さめやらぬまま安珍清姫の演目に入るので、客席通路から老婆や日本人形、ノッペラボーが音もなくそろ~っと現れるのは今までと同じお約束演出なのに、場内のあちこちから「ギャッ!」「やべえ!」と悲鳴と絶叫があがる。(笑)
 安珍清姫も初演からの定番演目ですが、初演に比べるとストーリーや物語設定をよりわかりやすくするための工夫が随所に見られます。安珍のおびえっぷりは年々パワーアップ。舞台上を所狭しと暴れるヘビさんも、うしろのほうでお坊さんを3人ぐらい巻き上げたりしてひそかにパワーアップ。

滝の白糸
 因縁つけてくるヤカラとそれに対する女性たちのリアクションがパワーアップ。(笑)恥ずかしながら毎年見ているのに未だによくわからないのが、最後、白糸が釣りあげられて「わーっ」と落っこちる意味。「芸人魂ここにあり!」でびしっと締めればいいところを、何故?わからないといえば、安珍清姫の滝沢清姫のキャラも謎だし(清姫本人ではなく清姫に乗り移った蛇神?)、初演の鞍馬の牛若も、天狗は何のために子供たちを襲ってるのか、襲われて消えた子供がなぜ天狗の仲間になっているのか等わからないことが多かった。そもそも初演は全体的にわからないことだらけだった。でもたぶんジャニーズ舞台に、というかジャニーさんに理由や理屈を求めること自体が間違っているのだろう…

楽屋&女形~白浪五人男
 待ってました!座長のナマ白塗り。どうでしょうこの鍛え抜かれた光輝く鋼のような美しい肉体!一心不乱に塗り塗りする座長に瓦版屋役のジュニア戸塚君が「白塗り三年柿八年、私は永遠の美少年!(場内大拍手。やはりここはジャニーズ舞台・笑)そうですよねお師匠!」と話しかけるものの、ツンツン座長は「ちがう」「そんなことない」等とクールに突き放す。「バカ!」と言った回もあった。(笑)でも戸塚君も負けずに「その冷たい返し…きらいじゃないです」とニヤリ、座長も我慢できずに相好を崩す。いいコンビです。
 座長の支度が完了するまで五人娘が「WITH LOVE」に合わせて踊る。この五人娘、女形が妙にハマっていてなかなか可愛く、つい見入ってしまう。…と思ってたらなんかジュニアがいっぱい出てきた~!みんな女物の着物きて長髪のヅラつけて。これはちょっと…悪ノリのしすぎでは?女形ですらないただの女装の男の子たちが心もとなげな顔で踊ってるのは見ていて気持の良いものではない。春休みだからって子供ありったけ出せばいいってもんじゃないぞ!ここはシンプルに五人娘(+青い着物の三人娘)だけでいい。彼ら(彼女ら?)だけで十分に見ごたえのあるシーンなのだから。
 さっきからジュニアに対して容赦なく冷淡な私(そもそもジャニーズ自体苦手なんですよ実は)ですが、ジュニアだけで繰り広げられるこの「白浪五人男」は気に入ってます。ジュニア勢が皆生き生きしていてテンポよく、役を自分のものにして気負いも気遅れもなく楽しんで演じているのがわかります。そのいい意味での余裕が観客にも伝わって、シリアスな演目の合間にちょっとした笑いの息抜きができる名物コーナーになっています。ただ、五人娘は昨年と同じ顔ぶれですが、明らかに去年よりゴツくなってる…声も体つきも。男の子の成長は早いなあ。それを知ってか知らずか「二年目です」「去年よりキレイでしょう?」「心配しないでください、私たちオバケじゃありません」と無駄に愛嬌をふりまくのが笑えます。

滝沢歌舞伎
 滝沢座長のジャニーズ歌舞伎、去年よりもますます堂に入って頼もしくお見事です。儚げな「鷺娘」、情念の「櫓のお七」、そしてゴージャスな「執着獅子」。お七では「命に代えても!」というセリフが加わりました。どれも大好きですが私は勇壮で絢爛豪華な「執着獅子」が一番好き。桜も似合うが牡丹の花もよく似合う艶やか座長です。幕が上がる前の「城」四天王によるモップの舞(モップ言うな)もなんかかわいくて好き。20日には途中でモップの先が取れちゃった子がいたけど動じずによくがんばった。
 ところで来年からの日生劇場の舞台タイトルは今のところ「滝沢歌舞伎(仮)」とされていますが、歌舞伎メインになるの?たしかに滝沢歌舞伎は目新しくて見ごたえたっぷり、今後もぜひ見続けたい演目のひとつです。でもこれがメインになっちゃうのはちょっと違う気がする…。歌舞伎もありストレートプレイ(義経物語)もあり殺陣パフォーマンスもありマジックもあり歌もダンスもありの多彩で斬新な「和」のエンターテイメント、というのが「城」の魅力だから、場所が替わってもこのスタイルは貫いてほしい。
 もちろん女形の滝沢さんは素敵ですが、あの美貌を白塗りで隠し通すのはなんかもったいない。(笑)
そもそも女形って地味顔かちょいブサなほうが似合うんじゃあ…(ぼそっ)「雪之丞変化」「城08」DVDのメイキング映像で着物姿の素顔の滝沢さんが舞の稽古をしている姿が私は好き。なぜか女形の時より妙に美しく色っぽくみえるのです。だから城07のグリーンスリーブスの舞も大好き。ああいうのをもっと見たいなあ~。どうしても滝沢歌舞伎と名乗るなら、まんま「歌舞伎」じゃなくて、ここはひとつジャニーさんお得意の当て字で「滝沢華舞記」とか「滝沢華武奇」とかにすればいいんじゃあ。本当は「滝沢演舞城」のタイトルは変えないでくれるのが一番うれしいけど…それがダメなら「城」からさらにスケールアップして「京(みやこ)」にしよう!舞台もいっそ京都(南座とか)に移し、滝沢演舞京(えんぶきょう)。滝沢座長、「城主」から「帝」へ!滝沢座長が帝なら私はバリバリの右翼になる。こんなことを考えて一日が終わるんだから私もたいがいアホです。

忠臣蔵
 初演の「男の花道」が大好きだったので08年からこれがなくなっちゃったのが残念でしたが、思えばこの滝沢歌舞伎から忠臣蔵への流れは「男の花道」のバージョンアップ版といえましょう。(でもやっぱり「男の花道」も観たい…笑)つい先刻まで歌舞伎で女のたおやかさ艶やかさを見せつけていた座長が、一転して黒い衣装に身を包み、男らしく凛々しい殺陣を披露する!
 忠臣蔵は07年の白い衣装もよかったし(途中からもろ肌脱ぎになるのがまた…)、白い大きな布の上を突き進んでゆく演出もファンタジックで大好きでしたが、08年からの雪の化身のような白い集団をなぎはらう黒い滝沢内蔵助も鮮やかなコントラストをなしていて絵画的な美しさ。流れるような鋭い殺陣もみごとです。殺陣の合間に背で太刀を鞘におさめるしぐさがやたらセクシー。戸板崩しのあと障子を突き破っての登場、花道で放つ蜘蛛の糸、長刀を使った殺陣など今年新たに加わった演出もすべてかっこいい。メロメロです。
 そして櫓から落ちるシーンはなんと二段落ち。天井に届きそうな高い櫓から身を投げ、落ちた先の台がガタンと傾いてさらに床に落ちる。怖い!怖すぎる…初めて見た時は台が落下の衝撃で壊れたのかと思って、「お化け」の恐怖映像よりもよっぽど心臓に悪かった。寿命縮むわ!バカー!でも一瞬「くっ」と呻いただけで何事もなかったかのようにすっくと起き上がり吉良に向かってゆく不死身の滝沢内蔵助。
 「お命、頂戴!」舞台上に立ち込めるスモーク、そのなかから赤穂浪士のトレードマークの羽織を羽織って出てくる内蔵助の姿は何度見てもしびれます。この忠臣蔵、ぜひ次回の舞台でも続けてほしい!兵庫ゆかりの赤穂浪士をやってくれるのは関西人としても嬉しいし。吉良さんには悪いけど。宴席で女をはべらしただけで妖怪呼ばわり(冒頭ナレーション)されてるのもちょっとお気の毒だけど。(笑)

五条大橋
 牛若様…!!花道をしずしずと歩いてくるゆかしき姿はまるで絵本から抜け出てきたよう。初年の清楚な白い水干も好きでしたが、今となっては「城」の義経(牛若)といえばこの薄紅色の着物が思い浮かびます。優美で華やかで、滝沢義経に本当によく似合ってる。
 橋の上で牛若と弁慶が出会う、それだけの短くシンプルな演目ですが、「私の名は…牛若!」滝沢牛若の凛とした存在感が映え、第一幕の締めにふさわしく、身震いするほどビシリと決まる屈指の名シーンです。ただ、だからこそ、ジュニア勢が意味もなく出てきて周りで踊る今回の演出は蛇足だったと思う…ここばかりは昨年の牛若・弁慶・三郎の三人だけの終わり方のほうが断然よかったです。
 辛口意見といいつつ、私のダメ出しは結局「ジュニア出しすぎ」の一言に尽きる。(笑)ジャニーズ舞台に「ジュニア出しすぎ」なんて文句つける人もそういないでしょうけど。でもこの「城」はジャニーズファン以外の幅広い層にも受け入れられるクオリティの高い舞台だと思うので、(ジャニーズ苦手な私が言うんだから間違いない)ジャニーズらしさも残しつつ、よりクールにしたたかにブラッシュアップしていってほしい。来年からは内容を変えるより、試しにお客さん層をごっそり変えてみたらおもしろいのに!ジャニーズファン一切禁止、ジャニーズにとくに興味のない一般客だけを入れたジャニーズ舞台。ジャニーズのお約束やお遊びが一切通用しないシビアな観客相手にすべったり引かれたりして演者はきっと鍛えられるぞ~(笑)まあこれは冗談ですが、私は本当に、自分の観る回数を減らしてもいいから(よくないけど)より多くのいろんな人に見てほしいと強く願っています。



第二部 義経物語
 今年の義経物語は、義経不死伝説やチンギスハン説をからめてくるかも?とのフレコミがあってどうなるんだと案じてましたが、ふたを開ければ前年とほぼ同じ内容&キャストで、正直ホッとしました。
 滝沢義経の大きな魅力のひとつは「死」をきちんと描くという点です。そこに私は滝沢さんの真摯な義経愛をみるのです。義経を死なせず「その後」にロマンを求めるのは、どこか独善的というか、ファンタジーやミステリーを読み解くゲーム感覚のようで、義経その人への愛や敬意からちょっとズレている気がして、私はいまいち乗っていけない。もちろん北行説やチンギスハン説を信じる義経ファンも多く、彼らの義経愛を否定する気は毛頭ないですが。
 義経は実は逃げ延びて仲間たちとどこかで人知れず幸せに暮らしている…めでたしめでたし、と思いたい気持はすごくわかる、そうあってほしいと私も思う。でも、やはり、主従自決というクライマックスがない義経物語は義経物語じゃない。義経は己の身を捨て、桜のように潔く散ったからこそ鮮烈な残像となり、伝説となり、それがために時代を超えて愛され続ける不滅のヒーローになったのです。死してこその「不死」。そこをごまかしちゃ意味がない。でも結構ごまかしてる作品が多いんだな~…。そんな中、滝沢さんだけは大河「義経」以降ブレずにそれを一貫して演じ続けてくれていて、それが私は嬉しいのです。
 何にしても、義経=チンギスハンだけはないから!よそさまの英雄を勝手に日本人にしちゃいけません。そもそも、他国を侵略し女たちの絶望の悲鳴を聞くのが人生最大の楽しみ!などと言い放つ人物がなんで義経であるものか。義経と日本人の名誉のためにもやめてほしい。脱マンネリや娯楽性を求めるならば義経不死伝説ネタもアリかもしれませんが、今の義経物語の究極のカタルシスを超える演出が果たしてできるのか?やらないほうがいいんじゃないのかな~。でも来年から劇場とタイトルが変わるのに乗じて義経物語やらなくなるぐらいなら、もう不死伝説でも何でもいいからやって~~!とポリシーかなぐり捨てて叫びたい気持です。でも、それでも、チンギスハンだけはないから。(しつこいぞ)ほかの俳優さんやほかの義経作品ならチンギスでも何でもお好きにおやりなさいという感じですが、滝沢義経だけは、ネタに頼らず邪道に走らず、誇り高き王道をいってほしいです。

 前ふりはこれぐらいにして(長い前ふりだなオイ)、前述したように内容的には前回と同じなのであらすじの説明等は省略します。ただ今回は頼朝と義経の仲を裂く悪役の御家人A(北山君)が梶原景時であることが判明。また前回は安宅関のシーンのみ登場だった富樫(河合君)が景時とセットで物語序盤から登場します。最初は義経シンパだったのが、景時の口車に乗せられて頼朝をそそのかすキャラに…。
 個人的には富樫は安宅関にのみ登場するほうがインパクトがあっていいと思いますが、その安宅関では、義経を追い込んでしまった自責の念が込められているのか、前回よりもさらに「間」がたっぷり取られた重い演技になっています。また弁慶の勧進帳をのぞき込み弁慶がそれを必死でかわすというシーンが新たに加わりましたが、この古典的駆け引きは一歩間違えればドリフのコント。でも両者とも気を緩めず真剣に演じているので笑いが起こることもなく、ぴりりとした緊張感が維持されてます。
 そして関所を通過したあと、詫びる弁慶をねぎらう義経。「私ほどよき家来を持った者などいないだろう!」ここは滝沢義経の真骨頂。今回近くで見させていただくことが多かったのですが、毎回必ず滝沢さんは涙を流しているのです。これを見てしまうと、こっちも熱い涙を流さずにはいられない。その熱演に対して、そして、それほどまでに魂を込めて義経を演じてくれる滝沢さんに対して。ああ、義経を演じてくれているのが滝沢さんでよかった!と心の底から実感できる瞬間です。
 さてそんな滝沢義経をねちねちと追い詰める北山君の景時は前回よりエグい暗躍ぶり。がんばってます。ただ前回レビューでも書きましたが彼は悪人顔じゃないので、どんなにがんばって凄んでもただのふくれっ面に見えてしまう…戸塚君の伊勢三郎や藤ヶ谷君の弁慶はキャラが合ってて演じやすそうなのに、ひとり彼だけなぜこんな難役(悪役)をあてがわれているのか。そのぶんやりがいはあるんだろうけど…。あの景時役は、たとえ他の「城」四天王の誰が演じてもたぶんしっくりこない。
 たとえば初演の、滝沢座長と同期?の横山頼朝はある意味すごくハマっていた。あのギャーギャーうるさいアホ頼朝(アホ言うな)は私の中でネタキャラとして今も生きている。(笑)07年の風間君の悪役(吉良など)も憎たらしさが堂に入っていて、安心して見ていられた。やはり物語に大きくかかわってくる悪役はそれなりにキャリアを積んだ同格か先輩クラスにやってもらうのが視覚的に一番落ち着くと思う。それが無理なら、いっそのこと景時は影絵にしちゃえ!まさに「影」時。声は中尾彬さんでお願いします。
 では北山君はなにを演れば…。景季(景時の息子)とかいいかも?大河「義経」みたいに、尊敬する義経と父景時の間をチョロチョロする景季。それかいっそ北山君も河合君も義経郎党にしちゃうとか。喜三太とか鷲尾三郎とか片岡八郎とか佐藤兄弟とか…郎党いっぱいいるから選び放題です。こういうことをお遊びで考えるのは楽しいですが、今後のファンの声次第で義経物語の存続が決まっちゃうかもと思うと、お遊びどころじゃなくついついマジに考えてしまう。新キャラや新シーンの投入次第で義経物語はいろんな見せ方ができると思うので、「もう義経飽きた」とかほざ…おっしゃる一部ジャニーズファンの皆様にも引き続きお楽しみいただけると存じます。なので何卒!来年からもよろしくお願いします!…こんなとこで吠えたってどうにもなるまいが。

 悪役がしっくりこないという点は滝沢「頼朝」にも当てはまります。頼朝ならではの威厳や苦悩などは十分伝わってくるし文句なくかっこいいのだけれど、演技の上手い下手の問題ではなく、どうしても「なんかちがう」と思ってしまう。やはり彼には汚れ役や憎まれ役より、義経のような「正統派ヒーロー」役のほうが似合う。なにも私が義経ファンだからそんなふうに言うんじゃないよ!(←信頼性ゼロ)第二部の義経だけでなく、第一部の白虎隊や忠臣蔵等を見ていてもそう強く実感します。あの凛とした一途なまなざし…皆の期待と憧れを一身に受け、苦悩と使命を背負って戦う「清く正しく哀しいヒーロー」役がこれほどイヤミなく自然にはまる人は他にいません。あの美貌、あの存在感で、フツーの人の役をやるほうがむしろイヤミ。
 過去のドラマではヘタレ役も器用に演じていましたが、そういう役は他の誰かでもできる。でも義経や「雪之丞変化」の雪之丞闇太郎等はそんじょそこらのアイドルや若手俳優には決してできない。彼は高い理想や憧れを託すに値するスターの気品、ヒーローの風格を持っています。アイドルにすら平凡さや親近感が求められるこの平成の世にあって、その貴重さはもはや絶滅危惧種レベル。トキです。アムールトラです。当の本人が「そんなことない」と否定したって、彼のファンが「フツーっぽさが魅力」と主張したって、世間一般の多くの人が彼に抱くイメージ、求めるキャラクター像は「さわやかで礼儀正しい美貌の王子様(or殿)」なんですから。その知名度と潜在的好感度はかなりのもののはず。これはもう使命だと思って、そのイメージをさらに磨いて武器にして、もっともっと多くの人を魅了してほしい。気の置けないファン向けイベントもいいけれど、大河「義経」の時のような、それまでファンじゃなかった人までファンにしてしまうようなお茶の間(←死語かな)向けの活躍も期待しています。そんなのジャニーズ事務所にいえよって話ですね。
 でも「義経」の時の滝沢さんは本当にすごかった。大河主役という重責、時代劇という未知のジャンルへのプレッシャー、大御所俳優や初顔キャスト勢…アウェーのなかで数々の試練を耐えぬき、批判や否定的意見をみごとにはじき返した彼。そんな義経を思わせる不屈の魂、ひたむきな姿、見ているだけで幸せな気持にさせてくれる清々しいたたずまいに胸打たれ、私も彼のファンになろう、応援しようと決めたのです。
(※これをアップする直前、タッキー連ドラで初の悪役!というニュースが入ってきました…4年ぶりの連ドラ再登板が悪役ですか。う~ん…せっかくの誠実なイメージ、純白のオーラを封印しての新境地開拓ですか。う~ん…毎度安直なジャニーズWキャストというのが一番「う~ん」だなあ。でも美しき悪のカリスマという設定は魅力的だから何だかんだで楽しみです。いいドラマになりますように)

 え~と、頼朝の話をしていたんでした。ちなみに私の理想の頼朝像はヒガシさんです。ヒガシさんも過去に民放ドラマで義経をやってましたが、こちらも滝沢頼朝に感じたのと同様の違和感があった。申し分なくかっこいいのに、何かしっくりこない。彼のどこか近寄りがたいクールな雰囲気は、義経よりは頼朝のほうがはまるはず。というわけで「城」にヒガシ頼朝呼びましょう。え?ムリ?じゃあもう影絵で。ややこしいことは全部影絵で済ませる気か。でもいつか実現してほしい、滝沢義経にヒガシ頼朝。ついでにTOKIOの長瀬君に弁慶を。私がジャニーズで好き、かっこいい、ドラマで見たいと思うのはこの3人だけ。(笑)
 ここまで言っておいて何ですが、滝沢座長の義経頼朝一人二役・早変りは、舞台ならではのメリハリのある演出ですごく好きなのです。同じ志を持ちながら決して並び立つことのできない兄弟を一人二役というかたちで浮き彫りにするアイデアはさすがだし、またそれを鮮やかに演じ分ける技量は何度見ても感服します。これなら義経と木曾義仲の一人二役、義経と平知盛の一人二役とかもいけるかも?あるいは義経と静御前とか。(笑)鶴岡八幡宮の舞のシーンだけ「女形」静御前になる滝沢義経。滝沢座長の「しずやしず」の舞、観たい!でもこうして考えると、やっぱり一人二役というスタイルが一番しっくりくるのは頼朝義経兄弟なんですよね。
 その滝沢頼朝、前回よりも感情の揺れがおもてに出ています。相次ぐ讒言に「黙れ!」と突っぱねるも、景時ばかりか富樫にまで追い打ちをかけられ、思わず「あの義経が…!」とガクッと膝をついてしまう。この頼朝、頼朝にしてはピュアで直情的で、いかにもだましやすそう。(笑)そもそも兄弟不和の原因は坂東武士らの乾いたエゴイズム、そしてそれに逆らえない頼朝の微妙な立場にあると私は思っているので、弁慶と三郎の「なぜ鎌倉殿は殿の御心がわからぬのだ」「取り巻きが悪いのだ。鎌倉殿の取り巻きどもときたら皆腹黒い奴らばかりだ」「そんな小賢しい取り巻きどもの言いなりになる鎌倉殿も鎌倉殿だ」という何気ない会話はまさに真実をついていると思う。そう、頼朝は取り巻きどもの言いなりです。言いなりになるよりほかなかった。腹心の景時すら、大切なのは幕府であり頼朝個人ではないのだから。頼朝は成功者なのに、ちっとも幸せそうにみえません。
 それと対比させるように義経と弁慶・三郎の仲の良さはいちいちほほえましい、本編もアドリブも。鎌倉勢の奇襲を受けて三郎が怪我をするシーンでは、三郎が死んだふりをしてなかなか起きないというアドリブが加わりました。私の観た20日は第一生命の関係者がご来場だったのか、動かない三郎をみて弁慶が「三郎は死んでしまいました。残念ながら彼は保険に入っていませんでした」というと三郎が飛び起き「入ってますよ!殿の家来なんですから!第一でナイト!」と猛アピール、「でもこれは俺じゃない気がする…これをやってしっくりするのは…」とわざとらしくキョロキョロ。しかし殿は背を向けて知らんぷり。代わりに弁慶がやるはめになり、何かひねらなきゃと思ったのか「サタデーナイト!」とキメポーズを取るもすべる…。そのまま「殿、先刻の者たちはいったい…」とふつうにお芝居に戻ったので、場内からは「この空気どうすんの」的な笑いが力なく漏れた。結局殿の「第一でナイト!」は見られませんでした。やってほしかったな~。
 2日のアドリブは、三郎を心配する義経に弁慶が「あんな奴いなくても大丈夫です」と冷たく言い放つと三郎突然「キョーレツー!でもそんなの気にしな~い」と起き上がり、「ワカチコワカチコ~♪」と腕をふりふり何だかよくわからない動きを…どうやら流行りのお笑い芸人のネタだったらしい。(元ネタ知らないけど爆笑してしまった)ひとしきり踊った三郎、弁慶に「ハイッ!」とふり、弁慶も元気よく「ワカチコワカチコ~!」そして殿のほうをみて…(殿、いやな予感に身構える)「ハイッ!」殿は一瞬「やらんぞ」的に眉をしかめるものの、たちまち笑顔全開で「ワカチコワカチコ~」やったー!さらに殿、花道脇の最前列のお客さんに「ハイッ」とふるも、あいまいな動きだったらしく「中途半端にやるな!」とキレてた。(笑)
 ちなみに私はその回、そのネタをふられた人のすぐ近くにいました。三郎が盗んだ餅団子(とみせかけたマシュマロ)を殿が食べてしまうアドリブシーンで殿を間近に見られるラッキーエリアです。あ~殿が!殿こっちキター!(このへんからもう頭真っ白)義経様が目の前に座り…そしてじっとこっちを見つめ…。ヒエ~それだけでもう嬉しすぎて死にそうなのに…なんと!手ずから!マシュマロを!もらえました~~~!!殿ー!ありがたき幸せにございます…!もうこれで一生分の運を使い果たしたにちがいない…(アタフタする私の隣で扇子を広げて雅やかにマシュマロを受け取ったM様、おさすがです)
 さて殿からいただいたマシュマロですが、すぐ食べるには忍びなく家に持ち帰って小さいビニールパックに入れて冷蔵庫に保存していたところ、母に古くなった脂身とまちがえられて捨てられそうになるというハプニング発生。あ…危ね~!!(大汗)無事奪還したマシュマロ、食べるのはもったいないけどこのまま腐らせるのはもっともったいない、ましてや捨てられちゃたまらないと、意を決して食べました。殿のマシュマロはほのかなコーヒー味、まことに美味でございました。殿の味(←へんな言い方すんな)、忘れませんっ!

 とにかくマシュマロの一件で何もかもどうでもよくなった私ですが、いやいやいや、きちんと見ましたよ最後まで。盗んだ餅団子だと気づいた殿はあわてて団子の袋をお客さん(ワカチコふられた人)に投げつけてしらんぷり、三郎に覗きこまれるもお口をモグモグしながら「食べてない」としらばっくれる。お客さんの持っている袋をみつけた弁慶が「マシュマロ持ってるじゃないか!」と言って「マシュマロ…?
餅だろ!!」と殿につっこまれ、弁慶大いにうろたえる。うろたえすぎてそのあとしばらく挙動不審になってた。(笑)20日には、弁慶の衣装のフサ(白いボンボン)をフニフニさわって「団子…」と無茶な言い逃れをする殿に弁慶が「ちがいます」「三年前からつけてます」とピシャリとつっこんでました。
 この後、恒例・影絵遊びに入るのですが、影絵もいろいろグレードアップしてます。義経主従だけでなくうしろのスクリーンにも数人スタンバってて、ゾウとかエイリアンになって弁慶三郎をいじります。いじるだけいじった挙句「わ~い」という感じではしゃぎながらはけてゆくのが笑える。このシーン、スクリーンの影絵も見つつ、影絵をつくる殿の美しい指にもつい目がいってしまう。三人ではばたく鳥の影絵をつくりながら「殿のおかげで平和な世になった」と弁慶に言われ「そう思うか…?」と返す、この声音が何ともいえない優しい響きでめちゃくちゃ萌えます。しどけなく寝そべりながら言ってるからなお萌える。(笑)

 このほのぼのとした主従の休息を鎌倉勢の襲撃によって破られた義経…、それでも頑として兄と戦おうとはしません。ストーリーはほぼ前回と同じですが、今回は端々の細かな演出から頼朝義経兄弟の「違い」がより明確に伝わってきます。相次ぐ讒言にいちいちぐらつき「なんだと!」「許さん!」と取り乱す頼朝。一方、京の貴族達にいくら唆されても「私ひとりの天下など少しも望んでいない」と頑としてゆらがない義経。信じる力、という点において、頼朝の弱さと義経の強さがきわだっています。たとえ憎まれても、裏切られても一本気に信じ抜く…。
 そして出てくるこの発言、「このくらいのこと耐えなくてどうする…」。このセリフ大好きです。義経の覚悟と無償の愛を象徴した「城」きっての名セリフだと私は思う。おまけにこのセリフ、実生活にも役立ちます。つらい時、ムカつく時、へこむ時、滝沢義経に「このくらいのこと耐えなくてどうする…」と言ってもらえた(と妄想した)ら、どんなことでも耐えられる気がする。ちなみに初演の滝沢義経のセリフ「お好きになさるがよい!」も好き。理不尽な仕打ちを受けた際、滝沢義経になったつもりでこのセリフを心の中で叫んでみると胸がスカッとして怒りもふきとぶ。ふだんの生活まで潤し心を支えてくれる滝沢義経。すでに神の領域です。(笑)

 考えてみればこの義経物語、本来ならメインの見せ場になるべき一の谷・屋島・壇ノ浦の合戦をろくに描いてない。絵図と短いナレーションでとっととすませちゃう。義経モノとしてはかなり特殊です。なのに、観ていて不足感がありません。物語の重点が平家との戦いではなく主従愛と兄弟確執に置かれているからというのもありますが、義経の力強いセリフ「合戦とは押しに押し、進みに進んで勝利を得るもの!…ものども、この義経に続け!」これで、すべて伝わってしまうのです。これだけで、義経の勇猛果敢な戦いぶり、頼もしい大将ぶりを見届けたような気にさせられてしまう。壇ノ浦合戦なんて「瀬戸の海、壇ノ浦!」だけですよ。そのセリフだけでシーン終了。「えええー!?」って思っちゃう、はずなのに、このセリフを聞くだけで、よし!勝った!と高揚した気分にさせられるんだからスゴイ。滝沢義経の短くも熱いセリフはそれだけで聞く者を満足させ納得させてしまうドラマティックな気迫があります。
 何より、クライマックスの殺陣がすばらしいので、このシーンにすべてを凝縮するために、それまでの合戦(殺陣)が省略されているのかという気もします。決戦に臨む義経主従のやりとりからクライマックスまでは、もうすべてが名場面。三郎に太刀を手渡すシーン、弁慶と来世の誓いを交わして別れるシーンなど、死を前にした主従の覚悟がみなぎって、最期の瞬間に向けてびりびりと空気が引き締まってゆくのを感じます。滝沢義経の圧倒的な存在感に引っ張られるように、戸塚君の三郎も藤ヶ谷君の弁慶も実にいい演技をしています。
 壮絶な死を遂げた三郎の残した刀をいとおしむように拾い上げ、そのまま二刀流で敵兵に斬り込んでゆく滝沢義経。「三郎、弁慶!この義経の流す涙、しかとその身に受け止めよ!」生声による魂の叫び。ふりほどいた長い黒髪とはだけた白い素肌がみるみる雨に濡れ、返り血に染まってゆく…じわりじわりと狙いを定め、多勢の鎧武者を目にもとまらぬ剣さばきで斬り捨ててゆくその姿はまさに鬼神、凄絶な美しさです。
 腕を切りつけられたり、倒したと思った武者に背後から斬りかかられたりと、前回よりスリリングな演出も加わっていますが、そんなピンチにビクとも動じず冷徹に敵を片付けてゆくので無敵ぶりがますますきわだちます。そして最後は憎き景時との一騎打ち。悪人顔じゃない北山景時ですが、義経をにらみつけ執拗に向かってゆく姿はあっぱれな悪役ぶり。とどめを刺されてもなお義経のほうへと手を伸ばし、口惜しげに息絶えてゆきます。
 そして義経、最期の瞬間…。「兄上―っ!」己の首を搔き切って血に染まる白い体、しかしすぐには絶命せず、苦しげに息を荒げて身を揉む姿が痛々しい…。刀が床にガタンと落ち、ついに動かなくなる義経。そして幕…。義経にはきっちり死んでほしい派(こう言っちゃうとなんかヒドイな)の私ですら直視に耐えないほどのつらく悲しくやるせないシーンです…。
 前回はここで「牛若…義経…この頼朝を許せ!」というせめてもの救いとなる頼朝のセリフが入ったのですが、今回はなかった。でも、このセリフを入れるなら頼朝の心境をもっと掘り下げておかねばならないので(でないと取ってつけた感ありあり)、なくしてしまってむしろよかった。その代わりに滝沢さんのナレーションが入るのですが、これが義経にとって、また我ら義経ファンにとって、何ものにも代えがたい救いの言葉になっています。
 「日本人の心の英雄、源九郎義経。義経を愛する人々はその死を謎に包み、いくつもの伝説を誕生させ、その存在を永遠のものにしました。時代を超えて生き続ける義経は、僕らにとっても最高のヒーローなのです」


 ふたたび幕があがるとそこには真紅のスーツに身を包んだ滝沢座長が。まだ血のりの痕が残る手にマイクを持ってお別れの曲「WITH LOVE」を歌います。今回は定型のあいさつの言葉以外に座長のコメントがなかったのがちょっと残念…。
 そして、何度見ても感動してしまう心づくしの三方礼。精一杯の拍手を送りながら、来年も再来年も、ずっとずっとこの舞台の感動を、この瞬間を味わいたいとあらためて思ったのでした。

オミヤゲ情報
パンフレット(\2000)
 今年のパンフは義経ファンには狂喜乱舞の永久保存版!あの大河「義経」で使用されていた赤糸縅の鎧をまとう滝沢さんのグラビアが載っているのです。その凛々しく麗しい姿に感動…するのはもちろんのこと、あの鎧が今もきちんと残されていたという事実に感激です。大河ドラマの鎧ってすぐ使い回しされちゃうと聞いていたので、あの美しい鎧もとっくに分解されてどこの誰とも知らない人が着ているのかと思ってた…。無事でよかったー!!でも実際、今までどこに保管されてたの?今は誰の所有物になってるの?あの典雅で軽やかな鎧は義経だけのもの、滝沢義経にしか似合わない。もう滝沢さんが買い取っちゃえばいいのに!
お金、持ってるんでしょ?(笑)滝沢家代々の鎧にしてください。端午の節句には滝沢さん自らがあの鎧を着て五月人形となり床の間を飾ります。(笑)
 ちなみにパンフの周囲に散らしているのは舞台で使用された紙吹雪各種。幕間には床に落ちた色とりどりの紙吹雪をお客さんが拾う姿があちこちで見られ、さながら紅葉狩りの様相。「無限の羽」のシーンで舞った羽根はとくにレアものです。
ステージフォト・ポストカードセット・ショッピングバッグ・扇子
 絶対絶対ボラれてるとわかってるのに買ってしまうステージフォト(一枚\500)、すっかり「城」定番アイテムとなった扇子(\1500)とショッピングバック、そしてポストカードセット。パンフ同様、ポストカードにもあの大河「義経」の鎧を着用した滝沢さんの写真が!全3セットのうちそれぞれ一枚ずつ入ってます。なので3セット全部買うしかない…。

   
  殿のマシュマロ
 義経様にいただいた舞台小道具のマシュマロ~~~!!食べてしまうのが本当にもったいなかったけど、焼肉の脂身とまちがえられて捨てられそうになるというピンチ(上記レビュー参照)を経て、このあと無事(?)私のお腹におさまりました。殿のマシュマロは私の血となり肉となり、私の中に生きている…(こんなこと書く自分にドン引き)
   
   
 06年の初演、07年夏、08年「命」、そして今年と、大きな骨組みは変わらないものの、毎年それぞれ趣を変えて楽しませてくれた「滝沢演舞城」。初演を観た時は、こんな世界があったんだ…!という驚きと興奮の連続で、とにかく何もかもが衝撃でした。そして07年は唯一の夏公演、「義経物語」の今のかたちがほぼできあがった年でした。壮絶な最期を迎える08、09のクライマックスも好きですが、舞台の締めとしてなら、後味の良い07バージョンが一番好き。自害のあと牛若の姿となって晴れやかに舞い上がり、弁慶三郎とともに旅立ってゆく…というあの終わり方は、義経の悲劇をまっすぐに描きながら、熱い幸福感が胸一杯に広がる名ラストシーンでした。夏ならではのダメ音頭も今思えば貴重だった。(笑)劇場を後にするお客さんが皆、幸せそうないい笑顔だったのを思い出します。08年は滝沢歌舞伎が加わってクオリティがぐんと上がり、また座長の義経愛が全編を通して伝わってきて、感動の涙が止まりませんでした。“衝撃”の06年、“幸せ”の07年、“感動”の08年。そして09年はその3年間の積み重ねが活かされた、いっそう見ごたえのある完成度の高い舞台になっていました。いったいこれからどこまで進化し続けるのでしょう?「変化」よりも「進化」。手を変え品を変えではなく、ひとたび手にしたものを大切に磨き育て上げてゆくのは尋常ならぬ努力と根気のいることです。その面倒で難しい道をあえて選び進もうとするところに、滝沢座長のすごさがあるのでしょう。
 そんな滝沢さんに敬慕と感謝の念をこめつつ、場所が変わってもタイトルが変わっても来年からも滝沢座長と滝沢義経に会えることを願いつつ、私の「城」レビューもここでひとまずファイナルとさせていただきます。こんなチマチマだらだら読みにくいレビューに最後までお付き合いくださいました皆様、本当にありがとうございました!



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