大河「義経」管理人のタワゴトレビュー

ここでは大河『義経』毎回の感想をだらだらまったり(時にはピリッと)管理人なりに書かせていただいております。
あさってな暴言&失言が飛び交ってますが一介の義経ファンのタワゴトと笑って読み流してくだされば幸いです。

#1「運命の子」/#2「我が父清盛」/#3「源氏の御曹司」/#4「鞍馬の遮那王」/#5「五条の大橋」

#6「我が兄頼朝」/#7「夢の都」/#8「決別」/#9「義経誕生」/#10「父の面影」/

#11「嵐の前夜」/#12「驕る平家」/#13「源氏の決起」/#14「さらば奥州」/#15「兄と弟」/

#16「試練の時」/#17「弁慶の泣き所」/#18「清盛死す」/#19「兄へ物申す」/#20「鎌倉の人質」/

#21「いざ出陣」/#22「宿命の上洛」/#23「九郎と義仲」/#24「動乱の都」/#25「義仲最期」/

#26「修羅の道へ」/#27「一の谷の奇跡」/#28「頼朝非情なり」/#29「母の遺言」/#30「忍び寄る魔の手」/

#31「飛べ屋島へ」/#32「屋島の合戦」/#33「弁慶走る」/#34「妹への密書」/#35「決戦・壇ノ浦」/

#36「源平無常」/#37「平家最後の秘密」/#38「遠き鎌倉」/#39「涙の腰越状」/#40「血の涙」/

#41「兄弟絶縁」/#42「鎌倉の陰謀」/#43「堀川夜討」/#44「静よさらば」/#45「夢の行く先」/

#46「しずやしず」/#47「安宅の関」/#48「北の王者の死」/#49(最終回)「新しき国へ」


「義経」見終えて最後のタワゴト

大河「義経」放送にむけてのタワゴト
 『義経』…源義経からあえて“源”を除いたこのタイトルは、源氏と平氏の間でゆれる「孤児」義経をあらわす象徴的なタイトルです。京都・鎌倉・奥州…どこにも居場所を見つけられずさまよい続けた彼の孤独な魂は、ただひたすらに「家族」を欲していました。古代から中世へと向かう時代の大きなうねりの只中で、彼はあまりにも小さなものを求めすぎました。それは愚かなことかもしれません。彼の悲劇的な末路はその愚かさゆえかもしれません。でもそれこそが彼の魅力の本質です。強くてかっこいい「英雄」義経に人は恋し、それ以上に、弱くて不器用な「人間」義経を愛します。今回の大河で、そんな「かしこくないけど愛さずにはいられない」素敵な義経に出会えることを期待しています。
 逆に、ひたすらかしこく生きねばならなかった兄・頼朝もまた、誰よりも孤独なもうひとりの悲劇のヒーローかもしれません。情に脆かったがゆえに一族を滅亡に導いてしまった平清盛といい、平家物語の登場人物たちは皆、ままならぬ人生を精一杯に生きているのが魅力的。今回の大河では頼朝や清盛が単なる悪役ではなく深い肉付けがなされるようで、とても楽しみです。
 ところで近年、源義経の名が若い世代にどんどん忘れられていっているという衝撃の事実にガクゼン!それならいっそ今回の『義経』は下手に敷居を高くするよりも、若者はもちろん子供からお年寄りまで家族みんなで見られるわかりやすい大河にしてほしい!そう腹を括ると、アイドルから大御所までの幅広いキャスティングもフルに活きてくるような気がします。タッキー義経、配役発表時は「あかん…」と落胆した私ですが今ではケロリと一変、一世一代のはまり役かも…と期待をつのらせています(イイカゲンな奴なんです私)。
 …何はともあれ、ほかに類を見ない歴史上のファンタジックヒーロー義経、ドラマよりドラマチックなその一代記を楽しまない手はありません。どうが『義経』がすばらしい大河ドラマになりますように、楽しい一年になりますように…NHKさん!がんばってください。

第一回「運命の子」1/9
 記念すべき注目の第一話はエキサイティングな一ノ谷合戦シーンからはじまります。映画のように迫力満点の映像で「つかみ」はバッチリ(ロケがんがんやってます!お金かけてます!というNHKのなみなみならぬ気合を感じる)。タッキー義経は文句なくかっこいい!彼の義経にかける真摯な姿勢を様々なインタビューで知って以来いたく胸打たれ(それまでは「ジャニーズタレントなんて…」と甘く見ていた)、また鎧兜の映える凛々しい若武者ぶりに目を奪われ、義経役が彼でよかったなとあらためて思いました。まだ始まったばかりでどう転ぶかわかりませんけどね。彼のためにも大河ファンのためにも、うまく当ってほしいものです。
 そしてオープニング、銀河をバックに水面から真っ赤に燃えさかるタイトル「義経」がスゥーッと浮かび上がる映像は壮大でかっこいい。そこからわっと飛び出してくる白馬も綺麗ですね。まさか最後まで延々走り続けるとは思いませんでしたが(笑)。
 初回は牛若の母・常盤御前と平清盛が主役です。今回の大河では、幼い牛若が清盛を父と慕ったがためにのち源平の板ばさみになり苦しむという斬新な解釈が賛否を呼んでいるようですが、私はドラマならではの脚色でおもしろそうだと思います。いっそ常盤は実は義朝と清盛どちらもから愛されていて牛若はどっちの子かわからない…というくらい過激な設定でもよかったかも。義経を信じられない頼朝の愛憎ドラマもそれならいっそうドロドロと盛り上がります。…いやそこまでやったら昼メロです。やめましょう。
 それにしても稲森いずみの美しさには脱帽!薄幸の美女・常盤御前役にぴったりです。女の私ですらうっとり見とれてしまいました。目の福でございます。渡哲也のクールで思慮深い清盛も新鮮でいいですね。これは惚れます。松坂慶子の平時子は清盛をめぐっておっかない「女の情念」をびしばし見せてくれそうな予感。どのキャスティングも今のところかなりハマッてます(牛若の父・義朝は今回限りの出演なのにムダに男前)。しかしいちばんキュンときたのは牛若役の赤ちゃん(笑)。かわいいなあ〜。しかもちゃんと演技してる!(ようにみえる) 頼朝子役も子供ながら凛々しくていい面魂をしています。馬上から牛若に向けた複雑な一瞥が印象的でした。子役は全員すばらしくよかったです。今回のみの出演なのが惜しいくらい。
 ともかく初回は大満足。大御所俳優陣をメインに据えたオーソドックスな仕上がりで、心地良い緊張感が漂っています。そしてはしょるところは思い切りよくはりょり(平治の乱とか…)、心理描写など丁寧に描くべきところはじっくり時間をかけるという緩急のメリハリも効いています。ナレーションが多めなのが気になりますが(そしてちょっと聞き取りにくい)、初回だし仕方ないか。このクオリティを保ったままどんどんドラマが盛り上がってゆくことを期待します。

第二回「我が父清盛」1/16
 常盤御前の愛情を一身に注がれてすくすくと育つ牛若少年、演じるは天才子役の誉れ高い神木隆之介くん。「ハウルの動く城」での声の演技(マルクル役)もお見事でした。そんな彼もこれが時代劇初挑戦。う〜んどうかな?と不安でしたが、やはり巧い!前回の頼朝子役(池松くん)の嫡子らしい堂々たる演技とはまた好対照な、のびのび生きる庶子ならではの天真爛漫さがよく出ています。鬼才・義経の子供時代ならもう少しクセモノっぽくてもいいですが、おのずと肩入れしたくなるナチュラルなかわいさは子役主人公の必須条件。ナイスキャストといえましょう。
 今回から平家の女性陣がちらほら顔見せ、華やかにして陰湿な「女の世界」が垣間見えてきました。松坂慶子の平時子は歩き方もしゃべり方も元気一杯すぎて、シリアスなドラマの中でひとりキャピッと浮いてる気もしますが、そういう演出なのでしょう。常盤に向ける憎悪のまなざしの迫力はさすがです。「あの女の顔には夜叉がひそんでおる…」と言う時子自身がおそろしい夜叉の表情になってるよ!対する常盤はいかにもはかなげで、なおかつどこか凛として、その美しさは逆境に追い込まれるほど痛々しく引き立ちます。やさしい母性を感じさせる細やかな演技が泣かせます。清盛との別れの際のけなげな笑顔も素敵でした…本当に稲森いずみ常盤はハマッてます。
 そんな常盤が新たに嫁ぐこととなったのは貧乏貴族・一条長成、演じるは蛭子能収…笑えるくらい似合ってます。お歯黒ギラリの笑顔ではしゃぐ姿が憎めません。ええキャラです…。
 福原(神戸)を描いた屏風のエピソードは、清盛の権力者としての壮大なビジョンと一個人としての懐の深さを示すいいシーンでした。そんな清盛と心を通わせる牛若の無邪気な明るさ、そしてダメ息子宗盛の屈折した悲しみにも引きつけられます。宗盛は平家きってのヘタレキャラですが個人的にきらいじゃないので今後に注目したいです。
 各キャラクターの心理を掘り下げて個性をきわだたせた今回のホームドラマ的展開で、登場人物がぐっと身近になり、物語もますますおもしろくなってきました。お堅い史実を適度にほぐし、歴史ファンのみならず一般視聴者をもひきつけて幅広い年代層にアピールできる作品になってほしいです。特に若い世代に…。古風な台詞、複雑な政治背景など子供にはむずかしいかもしれませんが、やはり牛若という感情移入しやすい子供が主役なのは強みです。それに少しくらいむずかしくても本当におもしろければ子供はちゃんと自分から背伸びして物語についてきます。わからないところはいっしょに見ている大人が説明すればいいことでしょう。とりわけ源義経は年配層に根強い人気がある題材ですし。お年寄りと子供がいっしょに楽しめるのが本来あるべき大河ドラマの姿だと私は思ってます。義経を知らないいまの子供たちがこれからひとりでも多く毎回楽しみに見てくれるよう、がんばっていってほしいです。

第三回「源氏の御曹司」1/23
 今回からいよいよ!われらが牛若=遮那王が、主人公として物語の中心で動き始めました。平家の命により鞍馬寺に入れられることになった牛若。門前での母子の別れは、美しくもいたたまれない名シーンでした。「今日只今より母はなき者と心得よ…」あふれる涙を見せまいとふり向かずに去る常盤、なすすべもなく呆然と取り残される牛若…母の悲しみと子のとまどいと、どちらの気持も胸に沁みて、見ているこちらもつい涙ぐんでしまいました。
 鞍馬での孤独な生活のなか、牛若あらため遮那王はふたりの人物と深くかかわることになります。ひとりは覚日律師。小学校のベテラン先生みたいな実直さで遮那王をきびしくも親身に指導します。そしていまひとりは謎の陰陽師・鬼一法眼…出た〜もののけ!美輪明宏氏であります。出てきたとたんたちまち妖怪映画です。森の中からノッソリ現れると完全に例の巨大白オオカミ。いまにも「黙れ小僧!」とか言い出しそう。神木くんと並ぶと「ハウルの動く城」での荒地の魔女役も思い起こされます。どんな役を演じても圧倒的に「美輪明宏」、役を食ってしまうその存在感はさすが。ことにこの大河での鬼一法眼は鞍馬の天狗とかぶらせた妖しいキャラで美輪氏にはぴったりの配役です。いかんせん、出番が少ないのがもったいない。もっと見たい!個人的に美輪氏には後白河法皇役なんて意外にハマるんじゃないかと思ってます。年齢不詳、性別不明(!)のミステリアスな「歌う法皇」…めちゃくちゃインパクト強そう!…強すぎて他キャラがかすんでしまいますがな。やはり美輪氏には物語のアクセントとしてチラリチラリご登場願うのが正解です。
 その後白河上皇、演じるは平幹二朗氏。まだ出番は少ないですが、白拍子たちとニコニコ楽しげに踊る姿、また清盛とのやんわりとした腹の探り合いなど登場するすべてのシーンが印象的。「戯言、戯言!ハハハ…」鷹揚だけれどノラリクラリとつかみどころのない因業君主っぷりがたまらないです。
 新宮十郎義盛(のちの行家)も早々に登場、いかにも今後迷惑ふりまきまくってくれそうな押しの強い叔父ちゃんです。鞍馬に押しかけてくるなり衝撃の事実をズケズケ暴露!何の心の準備もなくいきなりおのれの出自を知ってしまう気の毒な遮那王。父とも慕っていた平清盛が実父源義朝の仇…!驚き、傷つき、葛藤する遮那王の心理ドラマは今回の大河のオリジナル、どう描かれていくのか気になるところです。
 ラスト、迷いを断ち切るため滝に飛び込んだ神木遮那王がタッキー遮那王になって上がってくる演出は、予告を見たときから予想していましたが、そのバトンタッチの違和感のなさに驚きました。本当に神木くんがそのまま育ってタッキーになったみたい。キャスティングの妙に今更ながら脱帽です。映像的にもスムーズできれい(水もしたたるいい男!)でした。神木くんのいたいけな牛若姿をもうちょっと見たかった気もしますが、これからようやく遮那王タッキーが元気一杯動き出すのだと思うとたまらなくワクワクします。

第四回「鞍馬の遮那王」1/30
 今回からタッキー遮那王が本格登場、のみならず満を持してマツケン弁慶も鮮烈デビュー!これはもう盛り上がらないわけがありません。あとうつぼ役の上戸彩もちょこっと、ホントにちょっとだけ顔見せ…。
 平家、そして母に対する複雑な思いに苦しむ遮那王は、鬼一法眼(美輪明宏)に修行を申し込みます。タッキーの身のこなしの機敏さ、力強さには目を奪われました。おみごと!なぜだか脱ぎっぷりもよく、鍛え抜かれた肉体美を惜しみなく見せてくれます。ただ…何なんでしょう?闇に飛びかうナゾのムササビ軍団は。明らかに不自然です。CGを多用してムリに迫力出そうとしなくても、タッキーの殺陣だけで十分に見ごたえのあるシーンなのに〜。というか美輪様が出てくるだけで迫力ありあり。美輪様のビブラートの効いた低いお声はたいへんありがたい響きです。六根清浄六根清浄…今回でもうお別れですか?お名残惜しい。
 吉次屋敷のあかね(萬田久子)、都の組紐屋・お徳(白石加代子)といった方々の「語り」も魅力的。ベテラン女優による京ことばはやわらかくて音楽的で聞きごたえがあります。ただ初回から気になっていたことですがよけいなナレーションが多すぎるような…時代背景などの説明は当然必要でしょうが、遮那王の心情はわざわざ補足しなくてもふつうにドラマを見ていればわかると思うんだけどなあ…。
 お徳の世話になっている都の浮浪児五足たち、私かなり気に入ってます。「遮那王〜久しぶりやなあ!」と無邪気に声をかけ、また母のことで思い悩む遮那王をなぐさめるなど、いつでも親身に遮那王の面倒を見てくれる彼らには、ほんわかくつろいだ気持にさせられます。こういうオリジナルキャラはあんまり出張りすぎると物語がたるんでしまうんですが今のところちょうどいいあんばいで登場してますね。彼らはいわばドッシリ重い史実のフルコースの箸休め的存在、ほっと一息つかせてください。
 前回から遮那王メインに物語が進んでいるため平家のシーンは軒並み減りましたが、今回から知盛役の阿部寛、宗盛役の鶴見辰吾、維盛役の賀集利樹、資盛役の小泉孝太郎、そして徳子役の中越典子が登場、役者がそろってきました。まだほんの顔見せ程度ですが、皆なかなか似合っているように思えます。そして清盛と時子は出家。尼姿になって時子(松坂慶子)は急にしっとりとした美しさが出てきたような…?そして後白河法皇(平幹二朗)は今回もやってくれます。病にウンウン苦しむ清盛を前にやたら楽しげに薬草の説明をしている姿がむしょうにおかしくて、笑うシーンじゃないのに笑ってしまいました。
 そして武蔵坊弁慶(松平健)ご登場!私はもっと若手の俳優さんに元気いっぱいイキのいい弁慶を演じてほしかったのですが、主役・タッキー義経の若さを慮れば、どっしりとしたベテラン弁慶がそばで支えてくれるのがバランス的にベストですね。これでよし。また今回の弁慶はこれまでにないコミカルな弁慶とのことで、高貴な「上様」イメージのマツケンではギャップがあるのではと案じてましたが、折からヒットしていた「マツケンサンバ」のおかげか、まったく違和感なく受け入れられました。叫ぶ!キレる!ごねる!笑う…暑苦しいくらいアツい演技がむしろステキ。僧兵姿もこわいくらい決まってます。
 さあそしていよいよ序盤屈指の名シーン、五条大橋ですよ!被衣の下から橋の向こうをいぶかしげにそっとうかがうタッキー遮那王、そして薄闇に浮かび上がるむくつけき僧兵のシルエット!…と盛り上げるだけ盛り上げといて、「続く」。もう最高の「引き」ですね。にくいです。

第五回「五条の大橋」2/6
 満開の桜、ばかでかい月。長い長い橋の上、静かに歩み寄るふたつの影…あまりにも絵画的、リアリティなんぞくそくらえってなケレン味たっぷりの五条大橋対決です。前回のムササビCGには正直ひきましたが、今回の徹底的にビジュアル重視のファンタジックな演出には魅入られてしまいました。タッキー遮那王のワイヤーアクションも心配していたほど違和感はなく、襲いかかる弁慶をふわふわかわす身のこなしの軽やかさと鋭さは純粋にかっこよかった。これだけ華麗にロマンチックに殺陣もかっこよくキメときながら、「弁慶の泣き所」でケリがつくなんて笑えます。そして橋の上にひとり取り残される弁慶…対決後すぐに主従の契りを結ばないのがまたやきもきさせますね。遮那王を探し求めてごはんも食べずに髭ボーボーでさまよう弁慶、目がイッちゃってるよ!うなってるよ!ふらふらしてるよ!大丈夫かっ!でも、ステキ…マツケン熱演ですね。大拍手をおくりたい。
 そしてうつぼ(上戸彩)が今回から本格登場。タッキーと並ぶとどうしても思い浮かぶのはオ○ナミンCのコマーシャル…どうでもいいことですが遮那王の水干はCMの白いやつのほうが好き。大河の蛍光グリーン色のは派手すぎて目がチカチカする。ほんとにどうでもいいことですが。上戸彩ちゃん、CMの十二単姿もなかなかでしたが、こちらの身軽な庶民スタイルも似合ってる。スラリとのびたきれいなおみ足がまぶしいです。不幸な生い立ちを背負いながらも明るく生きるうつぼ役に彼女はぴったりハマッてますね。彼女自身もリラックスしてのびのび演じているようで、ひとり現代語でしゃべっていてもさほど不自然に思いません。活発でいじらしい、ついつい応援したくなる女の子です。
 逆にちょっと「あらら…」だったのが静御前(石原さとみ)。神社の境内に逃げ込んできた遮那王をとっさにかくまう印象的な登場シーンですが、どこか演技がたどたどしい。舞と唄について私は何の知識もありませんが、見てて何だかひやひやしました。静御前役はキャスト決定までにいろんなすったもんだがありヒロインということで大河ファンの思いいれも強く、彼女には相当なプレッシャーがあるのでしょう。テレビ誌のインタビューでは「見てほしいような見てほしくないような…」などと自信なさげでした。私は彼女の初々しくて可憐な静ちゃん、決して悪くないと思っているのに、こんな弱気発言はいただけませんな。おっかなびっくり演じてちゃよくなるものもよくならない。静御前に求められるものは芯の強さと内に秘めたる刃のような「凄み」、つまりは心の強さです。ふだんはおっとりしていても決める時にはピシャリとキメる、それが私の静御前の理想像。「堀河夜討ち」や「鶴岡八幡宮での舞」といった見せ場ではぜひ「かわいい顔して実はやる」静御前の独壇場を見てみたい!そのためにも、さとみちゃんにはもっと自信を持って、早く役を自分のものにして、彼女なりの静御前を不敵なぐらい堂々と演じてみせてほしい。がんばれ〜。
 ほか、今回の見どころは…平家の女性陣がズラリ額を集めて徳子入内プロジェクト発動。丹波哲郎のいろんな意味でスリリングな源頼政ご登場。頼朝にニセの「髭切りの太刀」をつかまされたと知った怒りの清盛、咆哮しながら夜通し庭木を伐採。後白河法皇は趣味の薬づくりに余念なし(挽いた薬草をメロッとなめる時の顔のワルそ〜なこと)。ちょこっと出てきた相変わらずおきれいな常盤(稲森いずみ♪)とオドオド長成(蛭子さん…)。初めてしゃべった(たぶん)烏丸さん。そして、相当悪いことやってきたんだろうな〜とひと目でわかる憎々しさがすばらしいうつぼの兄・春慶。平家の褒賞に目がくらんだ彼奴は「母危篤」とのニセ情報で遮那王をおびき出し、悪者仲間とともに待ち伏せます。危うし!遮那王。というところで、「待て次回」。またしても焦らされます。気になる〜。

第六回「我が兄頼朝」2/13
 平家の命を受けて遮那王を待ち構えるうつぼの兄たち。遮那王ピンチ!…とあおってみたものの、そもそも寄せ集めのゴロツキなんかにやられる遮那王様ではありません。ひとりで軽くあしらっちゃいますよ!謎の宙返り戦法で…。タッキーはせっかく運動神経が抜群にいいんだからあんな不自然なワイヤーアクションじゃなくてもっとフツーのかっこいい殺陣を見せてほしいのに〜。
 自分が平家に狙われている身と知って思い悩む遮那王。タッキーは憂い顔が実に絵になります。とはいえ、あまりにもずっとずっと悩みすぎ。打ち沈んでるばかりじゃなく、もっと感情を爆発させるシーンがあってもいいのではと思います。謀られたと知って「よくも母の名を!」と激昂するシーンなんてかなり胸に迫るものがありました。ああいうのをもっと見たいのです。
 そしてお待ちかね!頼朝お兄ちゃんの登場です。若いみそらで伊豆に流されてから十数年の時がたちました。時は人を変えるもの。遮那王の子役神木君→タッキーへのバトンタッチはとても自然でしたが、頼朝の子役池松君→中井貴一は「いったい何があったんだお前」と言いたくなるほどの劇的ビフォーアフター。容姿から性格から、もう何から何まで。貴一さんのヒヨヒヨと甲高い声が耳について離れません。「なんじゃそのクネクネしたものの言い方は!」政子のツッコミに「まったくだ」と思いっきり同調してしまいました。でもそんな貴一頼朝のこと、私めちゃくちゃ好きになりそう。クールで聡明なだけの頼朝なんてもう飽き飽きよ。えへらえへらおどけているけれどその合間に見せるギラリと鋭いまなざしは、まさしく武家の棟梁のもの。これからその本性をどう見せていくのか(まさかこのまんま、なんてことはないよな…)、そして政子との運命の糸がどのように絡んでゆくのか、楽しみでたまりません。
 財前直見演じる粗野で直情的な政子はこれまた魅力的!危なっかしくて目が離せません。昨今のドラマやマンガ等では北条政子は華麗で完璧な女性に描かれることが多かったので、こういう土臭くてワイルドな政子を待ってました。ドラマストーリー本を読む限りでは今後ダーティーな役回りになるようですが、こんな人間味あふれる政子なら単なる憎まれ役にはならないはず、むしろ大いに暴れてほしい。今から頼朝との夫婦バトルが楽しみです(「夫婦漫才・宮川頼朝政子」という言葉が脳裏をかすめました)。ぜひダメ夫頼朝に喝入れてドツきまわしてやってください。
 頼朝の愛人・亀の前役はオセロの松嶋尚美、あけっぴろげな田舎娘役がよく似合ってます。流人時代の頼朝がことに愛したという亀の前については、鄙には希な都風のおっとり美女というイメージを勝手に抱いていたのですが、このドラマの頼朝にはこういうさばけた無邪気な「おかめちゃん」が合ってるかもしれません。のんきでかわいいバカップルです。
 そしてそして京都では、弁慶が遮那王たずねて三千里。橋の上でジトッと待ちぶせる姿はほとんどストーカー。恋しいお人(?)の名前がわかってよかったね…。一日も早くめぐり合わせてあげたい気持です。
 雅やかな京都と躍動的な坂東、ふたつの舞台が同時進行するようになって、俄然ドラマに引力が出てきました。やはり頼朝の登場は大きいですね。(今のところ)暗い遮那王、(表向き)明るい頼朝、という対比もおもしろい。腹に一物ありそうな吉次や、遮那王の強さと優しさに触れて心揺れる喜三太など、周囲の人々の動きも活発になってきて、今後がいよいよ楽しみです。

第七回「夢の都」2/20
 京の都を離れる決意を固めた遮那王は、かつて幼い日に平清盛が語ってくれた「夢の都」福原にでかけることにします。初めて見る京都以外の都、そして広大な海。海水を飲み、そのしょっぱさに驚いて笑みをこぼす遮那王のかわいいこと!ふだん物憂いきまじめな表情が多いので、こういう無邪気な笑顔は新鮮で、見ているこっちも心がほぐれます。また、洋上をゆく船に清盛の姿をみつけて思わず「清盛さまー!」と叫んで駆け出してしまうワンコのようないじらしさもたまりません。しかし次の瞬間には「夢は…奥州で見るしかなさそうだ!」と凛々しくまなじりを決し、強い意志を見せてくれます。回を重ねるごとにタッキー演じる義経のキャラクターに血肉が通ってきて、まるで本当に義経その人の成長をリアルタイムで見守っているような気持になります。がんばれよっ!
 そしてそのころ伊豆では頼朝と政子のショートコント…もといラブストーリーが進行しつつありました。頼朝のことが気になって仕方がない政子、近辺に出没しては投石などゲリラ的攻撃をしかけます。そんな政子を得意のふにゃふにゃ笑顔でいなす頼朝。北条時政(小林稔侍)は娘の変化にアタフタ、妻の牧の方(田中美奈子)は笑って事態をおもしろがるだけ。この人たち歴史上ではかなりシビアな役回りのはずなのに、こんなおとぼけホームドラマを見せられちゃあ憎むに憎めません。伊豆のシーンは見ていて一番笑えます、今のところ…もちろんいい意味で。もっともっとヒートアップしてってほしい。
 うってかわってシリアス度の増してゆくのが平家の周辺。後白河法皇を福原に招いた清盛は、徳子の入内計画を着実に進めてゆきます。しかし、そうやすやすと思い通りにはさせんぞ、という法皇の射抜くような牽制のまなざしがコワイ。それよりこわかったのが重盛(勝村政信)の大激怒。公家の牛車と小競り合いをして負けて帰ってきた維盛・資盛ら息子の失態に、お顔ピクピク、柱を叩いてヒステリックにお怒りです。先に描かれた清盛の怒り(夜中に奇声を発して大暴れ)よりも、こっちのほうがよっぽど生々しくてハラハラしました。ふだんおだやかな人が怒るとホントにインパクトありますね。次回は報復だ、こわいぞー!
 福原から帰ってきた遮那王を待っていたのは弁慶。ようやくめぐり合えた恋しいお人にさっそく「何とぞ家来に!」と告白しますがばっさりフラれます。「拙僧はあきらめませんぞ〜」「決してあきらめませんぞ〜!」しつこいわね警察呼ぶわよ!と言われかねないストーカーぶり。そして間髪いれずこのナレーション→“この時遮那王様は都を離れて平泉に向かうことを決意されたのでございます…”まるで弁慶ウザさに都を去る決心がついたかのような流れ。くじけるな弁慶!そしていまひとり、遮那王の配下につきたいと願う喜三太も忘れてはなりません。福原にいきたい遮那王のために馬を盗んできたり、ゴリ押し弁慶とはまた違った健気なカワイイやつです。早く主従の契りが結べるといいね、ふたりとも…。
 清盛が思い描き遮那王が憧れた「夢の都」とは、親子兄弟夫婦みな仲睦まじく諍いのない理想郷。同族内で殺し合った源氏、仲睦まじかったがゆえに滅亡した平家、どちらにとってもそれは「夢」でしかありえない都です。われらが遮那王がこれから甘ちゃんな平和主義一点張りではなく、戦で手を汚す者としてその「夢」とどのように向き合っていくのか、そこがきっちり描かれてこそドラマに深みが出ると思います。義経の持つ強さと弱さ、優しさと苛烈さといった二律背反の魅力を描ききってほしいのです。

第八回「決別」2/27
 徳子入内、公家との軋轢…平家の動きが活発になってきてます。重盛は平家のために「鬼」となり汚れ役に徹することを決意。「わるいやつ」清盛と「いいひと」重盛という従来のイメージがこのドラマでは逆転してるんですね。そして宗盛はあいかわらずねたみっぽいイジケッ子。知盛はクールで重衡はオロオロ、平家の面々もどんどん個性が出てきて楽しくなってきました。
 伊豆の頼朝も忘れちゃいけません、くねくねしつつも都の最新情報をがっちりキャッチ。「…火種は、くすぶる」次第にマジモードに入ってきてます。熱い宿願を静かに燃やす頼朝、その内面を垣間見た政子は今回で完全にオチちゃいました。
 そんななか遮那王はついに奥州に発つことになります。しかし新天地への憧れよりもまずつのるのは親しい人達との別れの寂しさ。鞍馬寺ではかわいい年少者として皆に愛され、都の浮浪児たちとも屈託のない友情を交わし合いました。義経は貴種でありながら何のこだわりもなく身分ちがいの人々と親しく交わる稀有の人。その磊落さが愛されるゆえんでありましょう。今回のタッキー遮那王はどこまでも気品あふれる御曹司で、だからこそ下層の人々のなかに入ってゆくと目立ちます。私はもともと九郎義経に「心優しい不良少年」というちょっとすさんだイメージを抱いているのですが、こういう上品なおっとり義経も悪くない…むしろ歓迎いたします。どんなかたちであれ「愛される義経」はうれしいものです。
 お徳の手引きで遮那王は蓮華王院(三十三間堂)にて平清盛とふたりきりの対面を果たします。ふり向かぬまま「牛若…」とあえて幼名で呼びかける清盛。対する遮那王はひたむきに清盛の後姿を見つめます。「わしは平家、そなたは源氏。決してそれを忘れるな」愛あるがゆえのきびしい言葉に、遮那王は清盛の去った畳の上にそっと手を置いてひとり「…おさらばでございます」とつぶやきます。誰よりも強い絆を感じつつそれを断ち切らねばならない両者の葛藤が画面から伝わってくる、とてもいいシーンでした。
 遮那王はいまひとり思いを残す相手・母のもとへ暇乞いに赴きます。タッキー遮那王と稲盛いずみ常盤、ふたりそろうと何て美しい母子像なんでしょう!まっすぐな目をした凛々しい息子と繊細で優しい母との別れのシーンは、感情をぐっと抑えた演技だからこそ、その切なさが胸に迫りました。「生きていよ遮那王…」常盤の言葉には母の真情があふれています。源氏の妻の誇りを捨てても母の情愛に生きることを選んだ常盤は武家の妻としては失格なのかもしれませんが、私はそんな彼女のしなやかな生き方にこそ女性の強さの真価をみます。そしてそれを見事に演じてくれた稲森いずみさんに感謝します。稲森常盤は今回をもちまして歴代ドラマ史上トップ常盤に認定されました(私の中で)。ぜひぜひ、再登場をお願いいたします。
 自己犠牲をいとわぬ母の無償の愛、師の御坊のきびしくも真摯な愛、都の仲間たちの明るくまっすぐな愛…皆からの愛をたっぷり受けて育った遮那王ですが、唯一足りなかったのが父の愛でした。仁徳ある強い男・清盛は十分父がわりになり得たのですが、やはり遮那王にはその存在は遠すぎた。何より実父の仇です。その実父にはしかし、かわいがってもらった記憶すらありません。義経の人生は己に欠けた「父」探しの旅でもありました。今回大河ではそんな義経のコンプレックスが物語を貫く大きなテーマになるようで、心理ドラマとしても興味深く見られそうです。
 そして遮那王は愛しい人達との別れをすませいざ奥州へ!…って、誰か忘れちゃいませんか。鞍馬門前にて遮那王を待ち伏せし続けるあの人を。…弁慶さんっ!遮那王行っちゃったよ〜。さあがんばって恋しい遮那王様を追っかけろ!きっと次回には報われる…はず。

第九回「義経誕生」3/6
 別れがあれば出会いもある。前回いとしい人達とのせつない別れを乗り切った遮那王に、今回はごほうびのようにたくさんの出会いが待ってます。…そろいもそろっておかしなやつらばかりですが。
 まずは犬ッコロのように飛んでくるいじらしい喜三太、そしてちょっとあぶない「押しかけ郎党」弁慶。ゴリ押しでようやく家来となるも、喜三太にやきもち妬いてブンむくれ。マツケン弁慶、ここまでやってくれるとは…嬉しい誤算です。おちゃめキャラとしても期待大ですが、初めて人を殺めた遮那王を気遣う包容力も忘れちゃいけません。
 ナンチャン演じる山賊・伊勢三郎も登場。伊勢三郎は伝説が多くいろんなイメージを持たれる人物ですが、「しゃべりの達人」「ワルモノだけど義経ひとすじ」、これさえクリアしてれば私はどんな伊勢三郎でもかまいません。その容姿も蟹のような醜男だったり色男だったりと書き手によっていろいろですが今回はまちがいなく前者のイメージ。でも私、ナンチャンが伊勢三郎を演るとわかってからバラエティー等でナンチャンを見るたびなぜかえらい男前に見えてドキドキします。どうかしちゃったのかな?私の目…。いずれにしてもナンチャン伊勢三郎はムサい盗賊スタイルがばっちりはまってていい感じ。「供を許そう」と言われオニギリむさぼり食いながら義経にすがりついて号泣するシーンは、見る者の笑いを取りつつジーンとさせる絶妙の演技でした。
 そしてうじきつよしの駿河次郎。「山賊」伊勢三郎に対する「海の男」駿河次郎という設定がおもしろい。粗野だけど純朴な駿河をうじき氏がナチュラルに演じてます。彼もまたあっという間に義経のトリコになり、船を置いてほいほいついてきちゃいます。
 そしてメインイベント「元服」、源九郎義経誕生です。タッキーは水干姿もみずみずしくてよかったですが、烏帽子姿は稚児装束以上にお似合いです。凛々しさが加わったのはもちろん、成人男子の格好になるとそのあどけなさがいっそうきわだってカワイイ!つい守ってあげたいと思わせる魅力はもはや「武器」ですね。
 ところで今回の元服地は尾張ということで、元服最有力地の滋賀県竜王町はガックリしてるそう。私も義経の元服地は京を出てまもない鏡宿だと思っていたので残念です。でも「家族」がメインテーマの今作品で父・源義朝最期の地である尾張が選ばれるのは無理のないこと。父と慕った男・清盛と「決別」し平家に追われる身となった今、遮那王の心にようやく源氏の血への執着が芽生えてきたのでしょう。しかし父因縁の地とはいえ、縁もゆかりもない人達に見守られてのたったひとりの元服式です。髪をみずから切り、名をひとりで決め、おのれ自身の烏帽子親になる…本来なら元服式は一族郎党に囲まれて盛大に執り行われるものですが、私はこの孤独きわまりない義経の元服式がとても好き。寄る辺のない身を憂うことなく、ひとりぼっちでおのが未来とまっすぐ向き合う少年のけなげな気負いがいいのです。
 それにしても僧兵くずれにみなしご、盗賊に船乗りといずれ劣らぬゴロツキどもがよくもこれだけ集まったもの。タイトルは「義経誕生」ですが内容は「義経ファンクラブ誕生」(男のみ)の回でした。みんな義経の周りでポジション争いにしのぎを削ってます。そんな彼らを菩薩のような笑みで見守る義経…いいなあ。弁慶は一挙に増えた仲間たちに「俺は足掛け四週も待たされたのに何でこいつらは登場してすぐ供を許されるんじゃ」とさぞかしムカついてることでしょう。ゴロツキキラー御曹司とジェラシーメラメラ弁慶(&ゆかいな仲間たち)から、今後も目が離せません。
 伊豆ではハンター政子がとうとう頼朝をしとめたもようです。頼朝の「しまった…」という表情がよかったです。そのあとのラブシーンをはしょったのはもっとよかったです。財前政子と中井頼朝は魅力的ですがラブシーンは正直キツイっす。

第十回「父の面影」3/13
 ついに奥州にたどりついた義経主従、待ち受けるは藤原一族です。当主の秀衡(高橋英樹)を筆頭に、長男国衡(長島一茂)、次男で嫡子の泰衡(渡辺いっけい)、三男の忠衡(ユキリョウイチ)…京を離れてようやく平家モリモリ地獄から抜け出せたと思ったら、お次は奥州藤原ヒラヒラ天国でございます。そういや源氏もかなりヨシヨシヨリヨリしてますね。この怒涛の名前攻撃、源平になじみのない方にはかなりキビシイのでは。かくいう私も平家の方々の名前と血縁関係が未だにきちんと頭に入っていません。…大丈夫か?
 今回の見どころは高橋英樹のこってり秀衡とタッキーのおっとり義経、このふたりの出会いと心の交流です。歓迎の宴で初めて酒を飲みすっかりおねむの九郎義経。そんな胆の据わり具合に秀衡は興味を覚えますが、「やっかいな毒」をすぐさま受け入れるわけにはいかないと、まずは見張りをつけてボロ屋に住まわせます。
 ボロ屋だろうとどこだろうと義経とともにあればそれだけでうれしい郎党たち。ヤキモチやきがますますエスカレートする弁慶、踊りもトークもばっちりの最強エンターティナー伊勢三郎、濃いやつらに囲まれてけなげさが光る喜三太、いったん船に戻るもののすぐに帰ってきてしまう駿河次郎、みんな生き生きと個性があふれて魅力的。そんなデコボコ郎党をただただニッコリながめ、手ずから薪割りや種まきまでしちゃう大らかな御曹司…明るい仲良し主従の姿は本当になごみます。見張り役につけられた佐藤継信(宮内敦士)も武士らしい実直な雰囲気がすてきです。早く主従仲間になってね…。
 秀衡の嫡男・泰衡は、人はいいけどいまいち自分に自信がもてない気弱な嫡男という感じがよく出ていました。あと一茂サンの国衡が思いのほかサマになっていたのが驚き(「からくりテレビ」のとぼけた印象しかなかったので…)。ひげもじゃの武者姿が似合ってるし、ちょっとひねくれたぶっきらぼうな長男という役どころもぴったりです。
 伊豆では頼朝と政子がすっかりラブラブになりました(政子が一方的にラブラブな気もするが)。政子に弟のことを問われ「庶流じゃ」と言い放つ頼朝、そのシビアな声色にゾクッ…。へらへら頼朝もいいですが、やっぱり頼朝はこうでなきゃ。
 そんな兄の冷ややかな胸のうちを知る由もない義経ですが、彼の人柄と才能を知った秀衡は義経をすっかり気に入りました。愛馬を贈り、みずから平泉を案内し、ついには父親宣言までしてくれます。しかしそんな秀衡の姿に息子たちは妬いてます。たしか清盛の時もそうだった…平清盛、藤原秀衡、のちには後白河法皇と、海千山千の因業ジジイ(←失礼)にこぞってかわいがられまくる義経。彼には「じじいキラー」の新たな称号を授けねばなりません(いらねえよ!)。
 今回のタイトル「父の面影」はまさしく九郎義経の人生のテーマのひとつ。実父の愛を知らない九郎はその代償にいろんなオヤジの間を遍歴しました。本当はお兄ちゃんの頼朝が父代わりになってくれればベストだったのですが、父親から溺愛され母親から「あなただけ特別」と育てられた頼朝もまた本当の親の愛というものを知らず、己は愛せても他者を愛することができない不幸な人だったように思えます。嫡流というたったひとつの楯を奪われたら彼にはもう何もないのです。一方庶子である九郎義経は何の迷いもなく人を愛し信じることのできる人でした。それは母や近しい人々から何の打算も底意もないまっすぐな愛情を受けて育ち、愛し愛されることの喜びを知っていたからでしょう。親はなくても愛を知っている義経、親はあれども愛を知らない頼朝、そんな兄弟が互いにないものを与え合い手を携えて生きてゆければどんなにすばらしかったかと思いますが、それが叶わぬ願いだったことは史実の伝えるとおりです。ああせつない…。史実は覆らずとも、せめてドラマではこの不幸な兄弟に何らかの「救い」が施されればいいな…と思います。

第十一回「嵐の前夜」3/20
 狩りの途中にはぐれてあっさり捜索を打ち切られたかわいそうな泰衡のため、義経は愛馬・白童子を駆り救出にでかけます。薄暗い森をわけ進み、急坂を一気に駆け下りる!撮影時には馬も足を震わすほどだったという急勾配での「逆落とし」をやり遂げたタッキー、彼の胆力には今更ながら敬服します。「無謀であったが…見事!」秀衡の言葉に私もウンウンと強くうなずいたのでありました。
 たったひとりで泰衡を救った義経の知恵と勇気はたちどころに評判となり、地元豪族から縁談を持ちかけられます。実際、源氏とよしみを通じるため奥州や京の権力者たちはこぞって義経に娘を差し出したことでしょう。一説に義経はモテモテだったため非常な好色のように言われてますが史実の“義経の女”たちはみな誰かからのもらいもの。彼の艶福ぶりは女漁りにいそしんだからというよりは来るもの拒まずでなりゆきに任せた結果なのでは…ないかな。ともあれ今回のドラマでは義経周辺にあまり女を置かないそうです。扇情的なラブラブ話よりも描いてほしいものはたくさんあるので、この方針は歓迎です。
 でも目下貴重な紅一点のうつぼちゃんはけなげでかわいいのでぜひがんばってほしい。言葉づかいやしぐさは乱暴でボーイッシュだけど自分の幸せよりもまず好きな相手のことを優先して考える、実はとてもひかえめで古風な女の子。そんな優しい本心を強がりでごまかすのもいじらしい。オリジナルキャラにありがちな図々しさもなく、上戸彩ちゃんの自然体の演技がマッチしていて好感がもてます。
 それにしてもうつぼが去ってあからさまにうれしそうな弁慶はけしからん奴!そんな大人げないところがカワイくて憎めないんですけどね。…天下のマツケンにカワイイなどと言える日が来るなんて思いもしませんでした。
 佐藤継信に続き、弟の忠信(海東健)が猛ダッシュで登場。温厚な兄に激情家の弟というコントラストが楽しい。思い人をめぐる誤解がとけて仲直りの「相撲」、これぞ男の友情ですね。アナクロだけど実にさわやかで胸のすく光景です。山賊・海賊・僧兵くずれにみなし児とはぐれ者ばかりの義経チームに、ようやく立派な武士の郎党(候補)ができました。しかもとびきりの男前兄弟。やったね!
 ところで今回も義経の「愛されオーラ」の威力はとどまるところを知りません。前回秀衡をオトしたのに続き、かねてよりグラグラきていた泰衡にばっさりトドメの一撃をくらわせ、返す刀で国衡・忠衡らの頑ななハートをもノックアウト。佐藤兄弟は言わずもがな、会う人会う人みなバタバタ転倒。すごい…!何かもうこの才能だけで戦にも勝てそうな勢いです。奥州藤原氏一族がそろって義経にぬかずくシーンは壮観でした。天性の素直さ、いやみのない聡明さ、分け隔てない人への接し方、春の陽光のような笑顔…宮崎駿作品のヒーロー(ヒロイン)像にも通じる、人間への切なる理想が託された正統派主人公です。おバカでイカレた「新しい義経像」が氾濫するいま、こういうスタンダードな義経像は逆に新鮮。古いものを悪と決めつけ美しいものをダサいと言ってはぶちこわしてきた戦後教育のツケで平成の日本人は地盤を失いさまよっています。こんな世にこそ古きよきヒーローの活躍が望ましい。私の理想の義経像はずっと変わらず北崎拓先生のコミック「ますらお」の“荒ぶる少年”ですが、このたびの“イイコ”タッキー義経にも同じくらい強く惹かれています。一見正反対の義経像ですがその根幹は同じです。「強さと弱さ」「優しさ」「孤独」がきちんと描かれていてなおかつオプションとして「美しさ」が加わっていればまずは文句もありません。作り手に義経への深い愛情が感じられるのが何よりも頼もしいことです。
 ところで今回は歴史的事件「鹿ケ谷の陰謀」がありました。このドラマでは平家がさほど驕っていないので陰謀自体にあまり切迫感がないですが、陰謀に加担した後白河法皇をねめつける清盛の鋭い眼光は震えがくるほど迫力がありました(怯えまくる後白河法皇もチャーミング)。のびやかに成長してゆく奥州の義経と、ぎすぎすし始めた京の平家…いよいよ動乱の世へと時代が動き始めます。

第十二回「驕る平家」3/27
 相変わらずの仲良し義経主従は越後まで見聞を広めるプチ旅行におでかけです。佐藤兄弟も参加して、みんなでご飯を食べて温泉に入って…と完全に親睦旅行のノリ。武士出身のシャンとした佐藤兄弟がガチャガチャした郎党たちに囲まれてるさまはさながらフダつきの不良校に転校してきた優等生のよう。でも何ら戸惑うことなくすっかり溶け込み楽しんでます。佐藤兄弟のいいところは、その忠誠心や勇敢さはもとより、山賊や猟師などウロンな奴らといっしょくたにされても何ら不服に思わず仲良くやっていける屈託のなさ。そんな彼らを束ねる義経の大らかさもまた素敵。仲良きことは美しきかな…。義経主従のシーンはいつでも和気藹々と楽しそうで、見ているこっちもついニコニコしてしまいます。
 そんな主従の前に唐突に木曽義仲(小澤征悦)と巴御前(小池栄子)がご登場。いきなり痴話げんかです。しかも一方的に義仲がやられてる。義仲といい頼朝といい、源氏の男はキツい女性に惚れられる宿命にあるのか…?お兄さん方がえらい目にあってるぶん義経にはぜひ可憐な恋をしてもらいたいもの。それはともかく、小池栄子の巴御前は声にドスが利いてて迫力満点、乗馬姿も堂々としていてイイ!男なんて素で軽くブッとばしそう。義仲も、裏表のない豪胆な性格がしのばれて魅力的。義経との再会がどのように描かれるのか楽しみです。
 ところで今回タイトルは「驕る平家」、今までわりとクリーンだった平家がついに?と思いきや、やっぱりあんまり驕ってません。せいぜい我が世の春に浮かれるお調子者一族という程度で、これではとても憎めません。どうせなら憎たらしいまでにおごり高ぶってくれないと物足りない。悪名高いスパイ集団「かむろ(かぶろ)」を冒頭ナレーションだけですませて本編で出さないのもパンチの弱さの一因かも。民衆の平家への怒りの原因は京の治安悪化からくるトバッチリだし、法皇は平家に与えたはずの所領を理不尽に取り上げるし…悪者というよりはむしろ被害者のような平家です。
 平家チームでいちばんのヒール役、重盛がお亡くなりになってしまいました。そして清盛は「鬼」と化す宣言を。しかし清盛からは憎しみや怒りよりもまず子をなくした悲しみや孤独感がひしひし伝わってきて、こわいというより痛々しい。傲慢な権力者として描かれることの多い彼のそんな弱さが描かれるのは新鮮ですが、やっぱり己の力でのしあがってきた男ならではの憎憎しさやアクの強さも見たいです。欲張りかな?
 そんななか、いちばん「アク」を出してくれているのが宗盛さん。かつては父の勘気からかばってくれたこともある兄重盛の死を「目の上のたんこぶが取れた」と喜ぶ始末、相変わらずのダメ息子っぷりから目が離せません。あと「平家にあらずんば人にあらず」で有名な平時忠もこれからどんどん毒を出してくれそう。どうやら私は平家に関してはどこかひねくれてクセのある人物に惹かれるよう。武闘派の知盛や重衡(教経…は出るのかな?)、維盛や資盛などイケメンだけど戦はサッパリの軟弱坊ちゃんたち、今はただ安穏としていますが、これから平家が苦境に追い込まれれば追い込まれるほど彼らの個性も浮き上がってくると思うので、これからに期待です。
 しかしそれより何より個人的に今回一番ショッキングだったのは久々登場の五足くん。お徳の頼みでイヤイヤながら清盛の「耳」役としてそばに仕えることになりますが、えらいおかしなことになってますよ!…髪型が。パッツン前髪(ひょっとしてこれが「かむろ」のつもり?)、そしておそろしく似合わない水干姿。五足よ、お役目そのものよりもこの格好のほうがよっぽど苦痛なんじゃあ。…驕る平家の今回いちばんの悪行は「法皇幽閉」でも「盗賊処罰(冤罪)」でもなく、「五足の髪型」でございました。

第十三回「源氏の決起」4/3
 驕る(ようにはみえないが…)平家に業を煮やした源氏がついに決起です。その直接の原因となったのは、源頼政の息子・仲綱の名馬「木下」を強奪したあげく虐待した平宗盛。動物虐待までやっちゃあフォローのしようもありません。でも平家の面々のなかで見ていていちばんおもしろいのは宗盛…。空気読まないボケ&キレ演技がおみごとです。他の誰も驕らないから彼ひとりがドロかぶっていてお気の毒ですが、汚れ役ががんばればドラマはぐんとおもしろくなる。宗盛さんには今後いっそうゴンタクレ根性をふりかざして我が道を突き進んでってほしいです。
 平家のドロかぶりが宗盛なら源氏はこの人、新宮十郎行家(大杉漣)さん。なにしろのっけから「トラブルメーカー」呼ばわりですから。頼政の依頼を受けて以仁王(岡幸二郎)の令旨を携え各地の源氏を訪ねるも、その任務の内容を酒の席でべらべらしゃべってしまい、結果平家にバレてしまいます。たくらみごとが大好きだけどどっかヌケててドジふんで誰かを窮地に追いやっちゃう、これが彼のお約束パターン。でも…何か憎めないんですよねえ。人間くさくて。
 ともあれ行家のはたらきにより、伊豆の頼朝、木曽の義仲、そして奥州の義経は令旨を受け取ります。その際の三者三様の反応がおもしろい。躍る胸のうちをひた隠しに隠しつつ、うさんくさい行家を冷たくあしらって即答を避ける賢明な頼朝。いつの間にか完全に頼朝シンパと化しているお調子者北条時政、そんな父と対照的に挙兵は見合わせるべきと進言する聡明な政子。伊豆の地盤はどんどん固まってきています。木曽の義仲はさすが血気盛んな直情男、無邪気に喜びすぐに行家と意気投合します。そして奥州の義経は「兄が兵を挙げるなら駆け参じる」と意気込むも、秀衡に「かつては父と慕った人(清盛)に弓を引けるのか」と問われてたちまちぐらつきます。さすが秀衝さん、ファミリーコンプレックス義経のイタイところをわかってらっしゃる。根っこのところでまだ清盛と決別できていない義経、そんな義経に親の情を覚え手放したくないと思う秀衡。それぞれの葛藤がよく伝わってきます。悩む義経をみつめる郎党たちのせつないまなざしも印象深い。ちょっと没個性ぎみの平家陣とひきかえ、源氏サイドはみんなクセがあって特徴的です。
 それより今回忘れちゃいけないのが源頼政(丹波哲郎)のご活躍。「平家物語」には魅力的な爺さんがたくさん登場しますが、なかでもこの頼政は、平家の権勢のもとただひとり源氏として生き延びて、忍従の果てついに一念発起!飛ぶ鳥落とす勢いの平家に反旗をひるがえすんだから小気味いい。炎の中でみせた凄惨な笑みはゾクリとするほどかっこよかった。
 ところで今回のインパクト大賞は夏木マリさんの湯婆婆…じゃなくて丹後局に決まりです。こわすぎる!湯婆婆の3倍はこわいともっぱらの評判です(クロウズ・アップ!調べ)。あのボリューム感あふれる爆風ヘアはなに…?おんなじ妖怪キャラ(こらっ)でも美輪明宏様の鬼一法眼の神々しさとはまたテイストがちがいます。ひと目見ただけで呪われちゃいそうなあの黒さ、不吉さ。まがまがしいったらありません。でもこわいもの見たさでついつい見入ってしまいます。こんなこわい女房をそばにはべらす後白河法皇もすごい人。正統派からキワモノ系まで、キャスティングがおもしろいようにピタリとハマッているのがこのドラマの何よりの魅力です。
 前回「驕る平家」に引き続き、今回「源氏の決起」もタイトルにやや偽りあり。決起は決起でもまだほんの序盤、料理でいえば材料をそろえただけの「源氏の決起・下ごしらえ編」でした。でも伊豆の頼朝、木曽の義仲、そして奥州の義経がそれぞれ決意を胸に強いまなざしで空を見つめるラストシーンには興奮です。いよいよ次回は京で頼政が、伊豆で頼朝が挙兵!“決起”本編、見逃せません。

第十四回「さらば奥州」4/10
 源氏挙兵の口火を切った源頼政ですが、平家の勢に包囲されあわれ敗死。挙兵を決意した時から彼にはこのような結末は承知の上だったのかも。各地の源氏を奮起させるため己が捨石になろうと…「本望にござ〜る!」じいさんだけど、否、じいさんだからこそかっこいい散りざまでした。
 そして頼朝も挙兵です。伊豆目代を不意打ちアタックでやっつけて出だしは上々ですがあとはグダグダの負け戦。でもフツー死んじゃうところをなぜか死なずに切り抜けるのが彼のすごいところ。悪運の強さも才能のうち?敵方の梶原景時(中尾彬)に救われます。いかにもクセモノっぽい中尾景時は存在感ばっちり。ゲジゲジ景時は「にくたらしーっ!」と思わせてナンボの人物ですから今後の義経イジメに期待してます(←義経ファンとも思えぬ発言)。
 頼朝敗戦を知った義経は兄のもとに駆けつけたいと逸る一方、福原遷都を敢行した清盛にも思いを馳せます。源平ふたつの「家」に引き裂かれる義経の胸中やいかに…。しかしそのジレンマの描写っていつも淡泊。もっと情感豊かな義経を見たい気もしますが、些細なことでキィキィ取り乱さないおっとりタッキー義経もそりゃあ魅力的。ふだんグッと抑えているからこそ、今回のような「命を惜しんで戦に参ると思うか!」と声を荒げて苛立つシーンにインパクトがあります。
 平家の菊見の宴にて義経の異父妹・能子(後藤真希)も初お目見え。憎い常盤の娘を時子はやや複雑な表情で迎えます。ゴマキは…現代風のカワイコちゃんなのでカツラはちょっと似合わないかも…。
 女性陣は優雅に菊見を楽しんでますが遷都のせいで平家の評判はますます悪くなってます。ただ平家討つべし!の気運にはやっぱりあまり説得力がありません。このドラマでは「平家の悪行」はハレモノに触るようなもんなのかしら?そんななか今回も清盛に怒られてひとりトホホな宗盛さんがいじらしい。今回出番なしの行家ともども、源平ドロかぶり双璧(やな双璧だな)にはこれからもがんばっていただきたい。
 行家・宗盛がドロかぶりなら、さしずめ九郎義経は灰かぶり(シンデレラ)。無力な末っ子ヨシツネは武者デビューしたくても着ていく鎧も乗っていく馬もありません。それを哀れに思った魔法使いヒデヒラが魔法もとい金の力できらびやかな鎧とたくましい馬、そして頼もしい家来をつけて「さあ楽しく(?)戦っていらっしゃい。ただし戦いがすんだらモタモタせずにすぐに戻ってくるように。戦がすめばあなたには何の力もなくなってしまいますよ」と何やら不穏な戒めをそえて送り出してくれました。あこがれの棟梁さまヨリトモのもとに出向いたヨシツネはみごとな戦いぶりで一躍スターに!ところがほめてくれるはずの棟梁さまが何だかコワイ顔で追っかけてきます。「やべえ!」ヒデヒラとの約束を思い出したヨシツネはあわてて逃げ出しますが時すでに遅し、棟梁さまはガラスの靴ならぬ「追討令」を部下に持たせヨシツネを全国的に指名手配。あわれヨシツネ、棟梁さまに認められて末永く仲良く暮らすはずがなぜこんなことに…。ハッピーエンドとは程遠い結末にヒデヒラもなすすべなく嘆息するしかないのでした。
 …などとアホなこと書いてますが実際秀衡は「兄とともに戦いたい」という義経の子供じみた願望を満たしてやるため、ほんのかりそめのことと思って送り出したのでは。のちの艱難辛苦がわかっていれば決して参陣を許さなかったはず。一緒に葉笛を吹いたりと本当に親子の情がかよっているような高橋秀衡と滝沢義経をみているとそんな思いが強まります。旅立つ義経主従をこっそりただ一騎で見送る秀衡の姿からは義経への未練と慈愛がひしひし伝わってきます。「そなたの帰るところはここぞ…」こんなにやさしい秀衡のもとを去り、覚えてもない父のため、見たこともない兄のため、九郎義経はまっすぐな矢のように戦乱の只中に身を投じてゆくのです。「いざ参ろうぞ!」行かなきゃいいのに…。でもそんな義経だからこそ、応援せずにはいられません。

第十五回「兄と弟」4/17
 平家との大規模な合戦を目前に控えた頼朝の陣にわれらが義経到着!血を分けた(ただし半分)兄弟、運命の邂逅です。「兄上…」あんなに瞳にいっぱい涙をためて子犬のように一途に見あげられたら、私が兄上なら「あああ…もういいや他のことなんてどうでも…」とヘロヘロになること必至です。喜びにふるえて熱いまなざしを向ける弟、値踏みするようにどこか冷たい一瞥をおくる兄…対称的な兄弟の気質がこのワンシーンでよく表れていました。
 そして富士川を挟んで源平最初の大合戦!…のはずでしたが、平家が鳥のはばたきに驚いて戦う前に逃げちゃいました。前代未聞の赤っ恥なこのいくさ、実は逃げたのではなく戦略的退却との説もありますが、どっちにしても大将の維盛さんは清盛にこっぴどく怒られてるから、世間体の悪かったことはたしかでしょう。
 義経一行は平家の陣に取り残されて足を怪我した白拍子を救いますが、彼女はかつて京であぶないところを助けてくれた静(石原さとみ)でした。たった一度出会ったきりのふたりが思いがけずも戦場で再会!そして燃えあがる想い…。まさしく少女マンガの黄金律。このドラマ、全体的には重厚な印象ですが義経周辺はマンガチックになりがち。時には少年向け熱血バトル、時には少女向けラブコメ。そして郎党たちの脱力系ギャグ…。そもそも義経伝説自体マンガ的だから当然といえば当然ですね。とっつきにくい大河ドラマがわかりやすくなってむしろ得策か?個人的にはきらいじゃないです。わかりやすいのが一番です。
 静役のさとみちゃん、初登場時よりぐんと役が板についてきていて可憐です。タッキー義経と並ぶとピュアな少年少女カップルという感じでとてもお似合い。でも弁慶はゴネてます。…いつものことですね、ハイ。これもお約束。
 そして頼朝の妻・政子も義経の人となりを探るべく面接します。「きびしくしなきゃ」と思いつつ美貌の御曹司にポーッとなってしまう女心…さしもの政子もタジタジか。兄との対面の感想を聞かれ「うれしゅうございました!」とキラキラ笑みをこぼす無邪気なタッキー義経にはそりゃあ誰も太刀打ちできませんて。
 奥州の時と同じくボロ家を与えられた義経主従、しかしめげることなく郎党らは匠の技で理想の住まいに改築します(また器用そうなやつらばかりだから…)。そして皆で歌う「義経主従のテーマソング」。♪君〜を守りていざゆかん〜♪いいなあ…この歌いいなあ。私も仕事でぐったりしている時などに歌いたいのでぜひCD化してください(←けっこうマジ)。
 鎌倉入りののち、兄弟はようやくふたりきりで対面します。酒を酌み交わし互いの身の上を語り合うふたり。義経のまっすぐさをまぶしそうに見る頼朝。「庶流」と軽んじていた異母弟に、複雑ながらほんのちょっと温かい感情が芽生えてきたもようです。が、そんな兄弟のこれからの運命を思うとやるせなさがつのるばかり。なので早くもボロボロ泣けてしまいました。頼むよ頼朝さん!義経を救ってやって…。殺さないでとは言いません、救ってほしいのは命ではなく心です。ほんの少しでいい、兄のために必死に生きた義経を哀惜してあげて!もし一片の哀れみもなく弟いじめて高笑いするような奴なら、私はその脳天に憎しみ込めて会心のカカト落としをくらわすしかありません。私は義経に対しては心のなかのどこを切っても「好き」「好き」「好き」と金太郎飴のように同じ気持しか出てきませんが、頼朝に対しては「憎い」「恋しい」「憎い」「恋しい」…と八代亜紀の名曲のワンフレーズさながらに愛憎が市松模様を描いてます。御曹司いじめやがったら承知しないぞ!という郎党的心情と、兄は立派な人だ!と純粋に憧れる義経の思いが心の中でごっちゃになっているのです。義経バカの私としては頼朝には優しい兄の素顔を持っていてほしい。でも、だからといって甘いだけの頼朝なんて見たくない!(どないせえっちゅーんじゃ)日本最初の武家政権を築き上げる頼朝にはやっぱり基本的にシビアでいてほしい。義経とは対極の人物であってほしい。対極にあればこそ兄弟それぞれの真価が引き立ち、その魅力がより輝くのですから。ソフトだけどつかみどころのない中井頼朝とどこまでもまっすぐで初々しいタッキー義経がそんな運命の兄弟をどう演じていってくれるのか、これからが本当に楽しみです。

第十六回「試練の時」4/24
 「夢の都」計画が頓挫してガックリの清盛、俺はもらわれっ子?とイジける宗盛、夫の浮気に苦しむ政子、政子のせいでひどい目に遭う亀の前、癒し系恋人を失ってさびしい頼朝、…今回は義経のみならず誰もが「試練の時」でありました。
 平清盛と宗盛、タイプは違えど彼らはともに孤独です。己の志に共感してもらえない清盛の孤独、親の愛を強く求めるがゆえの宗盛の孤独(それにつけこむ後白河法皇のずるさったら…)。池のほとりにしゃがんで小石を投げる幼い子供のようなベタないじけっぷりに、宗盛の心のゆがみの原因が見える気がします。情に流されやすくひたむきに愛を乞うこの宗盛とわれらが義経はどこか通じるものがあるのかも。壇ノ浦合戦後のこのふたりの邂逅はちょっとした見ものかもしれません(気の早い話ですが)。
 それはさておき今回のキーパーソンは北条政子。初々しい義経と静のツーショットを覗き見し「うらやんでいるわけではない」と強がるも、愛する頼朝がほかの女(亀の前)と幸せそうにしているのを見てジェラシーメラメラ!手にした小枝ベキバキッ!(←これもベタな表現)。しかもその一部始終を義経に見られてた。ハズカシーッ!政子の動揺もさることながら、この時の義経のうろたえぶりも特筆もの。「こっこれは何かの気の迷いとしか…」としどろもどろになぐさめの言葉をかけつつ野の花をプレゼント。そんな義経の不器用な優しさに般若の政子もつい涙。しかしここで義経にグラグラバターン!とよろめいてしまわないのが政子の偉大なところです(私ならよろめく)。あくまでも頼朝のことを最優先に考える政子は、義経の人をひきつける魅力(コレで幾人の登場人物が落とされてきたことか)を知り、逆に警戒を強めていくのでした。
 災難なのは亀の前。政子に家を焼かれ、怯えて伊豆に帰ってしまいます。そして焼け跡にたたずみやるせなく視線を落とす頼朝もまた痛ましい。正妻の政子は政治のパートナーとして申し分ない存在だけれど、私人としての頼朝が真に求めていたのは安らぎを与えてくれる亀の前のような女性だったのでしょう。政子さん、愛人のひとりくらいは許して…あげられないですよねえ。
 兄夫婦の壮絶バトルを目の当たりにした義経と静は男女のむずかしさについて語り合ううち何だかイイ雰囲気に。「私は静を都に返したくはない!」高ぶる気持を抑えるあまり怒ったような強い口調で義経告白、「私も…おそばにいとうございます」静、恥じらいながらも難なくOK。やったあ!…個人的にはあんまりラブラブ話でドラマを引き伸ばしてほしくはないんですが、このふたりはカワイイからいいや。見ているだけでホンワカ幸せな気分にしてくれる、宮崎アニメに出てくるような相思相愛清純派カップル誕生です。その行く先はいばらの道だけど…ガンバレ。
 そして本日の「試練」メインイベントは有名な馬引き事件。大工の馬を引くという卑しい役を命じられた義経。驚き、とまどい、決心…ゆれる胸のうちをタッキー義経は表情だけでみごとに魅せてくれます。「聞こえぬか九郎…馬を引け」対する頼朝はあくまでもクール。妻や舅からけしかけられたとはいえ(政子のしてやったりのニヤリ笑顔がコワイ)、頼朝自身の強い決意がそのポーカーフェイスからうかがえます。グズグズしている義経をこのドラマの頼朝はやんわりたしなめましたが、史料では頼朝に強く叱られ義経はすこぶる恐怖したとあります。一ノ谷や屋島など九死に一生の戦場では「恐怖した」などと一度も書かれたことがない勇猛果敢な義経が、お兄ちゃんに怒られただけでふるえあがったのです。義経にとっていちばん怖いのは敵の矢や荒れ狂う海で命を落とすことではなく、ただひとつ、兄の機嫌を損ね、見捨てられることだったのでしょう。誰よりも兄のために働きたいと思っているのに兄弟の情を求めることを許されない義経、そんな彼を歌で励ます郎党たち。泣かせます…。家族以上に家族のあたたかみを持っているそんな彼らを、私も静のようにモノカゲからそっと見守っていたいです。

第十七回「弁慶の泣き所」5/1
 「弁慶の泣き所」…このタイトルに「マジっすか」と突っ込んだのは私だけではないはずだ。夢破れてげっそり老け込んだ清盛がひとり失意に沈もうが、重衡が東大寺を焼き討ちして奥さんが泣き叫ぼうが、どんなにシリアスなドラマが展開されようともタイトルはへらっと軽く「弁慶の泣き所」。たまにはいいか、こんなのも!(いつもでは困る)
 ワリナイ仲となった義経と静を郎党たちはほほえましく見守りますが弁慶のみはムクれ顔。ここまで女嫌いのヤキモチ弁慶もなかなか他では見られません。大事な御曹司に近寄る輩は男であろうと女であろうと片っ端からひっぺがしてひとり残らず蹴散らしたい…それが一途な彼の抑えきれない欲望なのです。その弁慶、海でおぼれて漁師の娘の千鳥(オセロ中島知子)に助けられます。生まれて初めて見てしまったオンナの裸にうろたえて壁ぶち破って逃げる弁慶。ここらへん、もう完全にラブコメ(というかドリフ)。このドラマ、時々どうしようもなく「まんが」になります。世にも奇妙な弁慶初恋物語をみんなでかわるがわる覗き見する郎党たちもプチエグザイルでふざけてる。お笑い担当の義経郎党、その実力を余すところなく発揮した回でした。
 しかしおちゃらけている場合ではありません。せっかく両思いになれた義経と静に因業夫婦(頼朝&政子)から横やりが入ります。武門の御曹司ならば白拍子なんて卑しい女と付き合ってないでキチンとした嫁を取れというのです。もう、庶流だ庶流だと普段そまつな扱いをしながらこういう時ばっかりイチャモンつけてくるんだから。理不尽なり!
 それにしても政子の義経への態度は屈折していて真意が読めない。夫の立場をゆるがす義弟を警戒するクールな賢妻か、義弟に惹かれつつ可愛さ余って憎さ百倍でイジメちゃう情念の女か。どっちにしてもコワイ悪役にはちがいないですが、財前政子は何だか人間くさくて憎みきれない。むしろ頼朝しっかりしろ!いつまでも嫁の尻に敷かれてんな!と言いたいです。でも頼朝も後楯の北条氏(や坂東武士団)を失えば何の力もなくなる身、さぞかし気ィつかってたんでしょう。源氏の棟梁なんてちっともいいもんじゃないね…。頼朝が心置きなくえらそうにできる相手はせいぜい弟ぐらいだったんじゃないでしょうか。史実の頼朝の、政治的思惑を差し引いてもなお目に余るヒステリックな義経いじめをみていると、トップに立ってるのに威張れないストレスを全部義経にぶつけたんじゃあ…とすら思えてきます。そんな「小っせえ男」ではないと信じたいですが。
 その頼朝さん、愛する亀の前を失って早くも次の女(政子の侍女・手古奈)に手を出します。さびしいのね…。政子が嫌う従順・無力な女こそ頼朝の好みのストライクゾーンなんでしょう。政子はそれを見抜いているからあてつけがましく静のことをこきおろしたのかな?常盤を憎む時子、静を憎む政子の心情は似てます。男に愛される女への女の嫉妬…。こんな政子がのち「静の舞」のシーンではどんなフォローをしてくれるんでしょうか。
 静は嫁取りを迫られている義経の立場を慮り、みずから身を引く決意をします。この展開は奥州時代のうつぼちゃんと同じですが、天真爛漫なうつぼと、どんな時もぐっと感情を抑えるいじらしい静、別れのシーンは異なる趣でそれぞれ見せてくれました。ふたりとも好きな相手のために自分を押し殺してしまう健気な女の子。こんないいコたちに慕われる義経は男冥利に尽きますね。
 ところで今回の恋話で弁慶が主君よりおのれの色恋を優先する浮かれトンチキになっちゃったらどうしようと案じていたのですが、無駄な心配でした。女を知って静への態度も180度変わった弁慶、義経が静と別れるなら自分も千鳥と会わないなどと言い出します。トンチンカンでひたむきな忠愛は相変わらず。よしよし。純で不器用な男、御曹司のこととなると何だかヘンになっちゃう男、それが弁慶。つまり弁慶の泣き所(弱味)とは「カナヅチ」であり「オンナ」でありそれ以前に「御曹司」なのだというオチですね。

第十八回「清盛死す」5/8
 義経主従はせっかくリフォームしたマイ屋敷(別名・頼朝の愛人駆け込み寺)から頼朝の大倉御所の一角に住まいを移すこととなりますが、気詰まりな暮らしを疎む郎党たちは千鳥の小屋にいりびたっては一様に頼朝への不満をぶちまけ御曹司を案じます。さすが「仲睦まじさは鎌倉でも評判(by手古奈)」の義経主従。
 頼朝の魔の手(笑)から逃れた手古奈は無事京都に到着し、お徳に就職斡旋を頼みます。またうつぼや烏丸に義経の話を聞かせてくれます。義経に妻がいないとわかってパアッと明るい笑顔になるうつぼちゃん、相変わらず気持ツツヌケでかわいい。お徳にあかね、うつぼ、烏丸…京の人々のなつかしい顔ぶれが久々にそろいました。
 しかしそんな彼らの仲間・五足が…!清盛のため福原まで数珠を取りにいったのに、清盛の遺言どおり蓬の壺に火をかけたのに、その彼を平家はまるでムシケラのようにあっさり処分してしまいました。へんな髪型にされたのみならず命まで奪われてしまった哀れな五足。彼の理不尽な死は、これまでのどんなエピソードより「驕る平家の悪行」としてインパクトがありました。歴史上の人物の死は必然だけどオリジナルキャラが死んでしまうのは本当にやるせない。せめて遮那王(義経)と再会できたらよかったのに…。合掌。
 病に倒れた清盛は死に際して「思い残すことなし」と伝えますが、時子は一門を鼓舞するためその遺言を捏造します。「頼朝を討ちその首を墓前に供えよ!」平家物語では清盛本人が言ったことになっているこのセリフ、あえて時子に言わせることの是非はともかく、松坂時子の憑かれたような鬼気迫る演技には圧倒されました。また清盛を看取るシーンも、最愛の人を失う悲しみと混乱が痛いほど伝わってきました。そして渡清盛の死の演技は、見ているこっちまで息苦しくなってくるほどの生々しさでした。息を引き取った際のお顔が穏やかなのもまたせつない。いま一度、合掌。
 鎌倉では、頼朝が義経を呼び出して清盛の死を伝えます。清盛危篤の報もわざわざ直々伝えにきていたし、ポーカーフェイスの裏側で義経の清盛への思いをかなり懸念している様子。義経はそんな兄に「これで心置きなく平家と戦える」と言っておきながら、ひとりになると清盛との思い出が次々とよみがえり、その頬にはとめどなく涙が流れます。断ちがたい思慕を胸に押し込めひそやかに泣く姿が痛ましい。どこまでも情に引きずられる義経、そんな義経を危なっかしく思う頼朝、両者の葛藤はこれからの見どころとなりましょう。
 ところでこのドラマの清盛は非道な悪役イメージは影をひそめ、見果てぬ夢への執着と無念、一門のなかで深まる孤独など、強さよりも弱さがよく描かれていて新鮮でした。でも…清盛はやっぱり悪役のポジションにあってこそ魅力的だったのでは、とも思います。私は清盛の優しいところが大好きですが、それは圧倒的な悪の強さがあってこそ引き立つもの。ワルい奴がほろっとみせる弱さや優しさほどいとおしいものはありません。たとえば捨て犬をこっそり拾うフダつきの不良少年とか(ベタだなあ)。
 義経物語における悪役は前半清盛、後半頼朝と相場が決まっています。その悪役をあえて悪として描かないこのドラマの方針は実はものすごい冒険なのかも。平宗盛、新宮行家など小悪候補はたくさんいますが、やはり大悪がいないことにはパンチがなくて物足りない(あっ後白河法皇がいたか)。今の感じだと清盛の悪は時子が、頼朝の悪は政子がそれぞれ受け持つようです。汚れ役を奥さん達に任せてどーすんの…。時代を動かす強さにはどうしても悪が伴います。男たるものそれを避けちゃいけません。悪に汚れたおのれの姿に悩みつつも目的のため突き進む姿を力強く描いてこそ、清盛や頼朝といった定番悪役たちは見直され愛されるのではないでしょうか。そして他ならぬ義経にもそれは当てはまります。虫も殺せぬ(たぶん…)優しい御曹司が「汚れっちまった悲しみ」に真正面から向き合うその時、きっとドラマは真の盛り上がりをみせる…はず。

第十九回「兄へ物申す」5/15
 親友・五足の死を知った義経は激しい怒りと悲しみにとらわれて野を駆け竹を薙ぎ払い、ひとり涙にくれます。鞍馬以来久々にみる「荒れる御曹司」。このところずっとおとなしかったからこんなふうに暴れてくれると逆にほっとします。ひとしきり暴れて屋敷に戻った義経は郎党たちに言葉をかけて安心させ、また自分と同じく五足の友人だった喜三太(遮那王襲撃事件ではその五足に殺されそうになったけど)にそっと目配せします。郎党たちへの細やかな優しさがにじむ、さりげないけどいいシーンでした。
 京都では、清盛なき平家が船頭なき船と化しています。宗盛はあいかわらずだし、時子は前回の気概どこへやら、遺言捏造の及ぼす効果にタジタジ。どうせやるなら最後まで意地張らんかい。この調子では法皇・丹後に平知康(草刈正雄)を加えた最恐妖怪トリオに手玉に取られる一方です。
  源氏サイドは行家おじちゃん久々登場!墨俣合戦でボロ負け、頼朝に所領おねだり、断られるとブチ切れ、義経に擦り寄り…知略人望まるでなし、功名心だけ人一倍。そんな叔父の誘いを義経は「聞く耳持ちませぬ!」と彼にしてはきわめて冷たく拒みます。肉親大好きの義経すら引かれる迷惑おじちゃん行家。でも彼がいるから話がドンドンおもしろおかしい方向に転がってゆく。希代の名トラブルメーカーに今後も注目です。
 そして義経のもうひとりの異母兄、範頼(石原良純)が初登場。範頼はたいてい「凡庸だけど無欲ないいひと」イメージで描かれます。でも史料などでは義経より先に官位をもらうことにこだわったり、義経に戦功を取られそうだと頼朝に泣きついたり、どうも随所ではしっこい異母弟を意識していた様子。実際の範頼は人並に欲もねたみも持っていて、それを表に出せずにストレスためこむ鬱屈タイプだったのかも…なんて考えるとドンヨリしちゃいますが、「いいひと」オーラ全開のざっくばらんな石原範頼とニコニコ無邪気なタッキー義経のツーショットをみていると、やっぱり範頼はこうでなきゃ!とうれしくなってしまいます。酒を酌み交わすふたりは屈託なく心から楽しそう。頼朝との酒宴と比べるとその差は歴然です。あの時は互いの席すら遠かったもんね…(でも義経は酌するついでにチャッカリそばに居座りましたが)。
 ところでほかのお兄ちゃんたち(常盤腹の今若・乙若)は出ないのですね。乙若(義円)なんて今回の墨俣合戦で戦死したのに名すらまともに出ずじまい。今若も政子の妹を娶っているはずですが、「義経」は鎌倉幕府がメインじゃないので出なくても支障はない…かな。そのぶん頼朝・義経・範頼の兄弟関係をじっくり描いてもらえればうれしいのですが。
 範頼と義経は庶子同士相通じるものもあるでしょうが、“棟梁”頼朝はやはり別格。歳の離れた義経にとっては兄というより「父」がわり。その頼朝に「物申す」、とな?尻尾ふりふりポチ状態の義経がついに咬みつく!? 兄弟バトル第一ラウンド開始、カーン!(←ゴング)…という感じかと思いきや全然ちがいました(あたりまえだ)。あいかわらず兄上のいうことは何でもきき、そのビジョンもきちんと理解しているおりこう義経ですが、自分のことではなく郎党のため、初めて兄に意見します。
 「秀衡のスパイ」疑惑をかけられた佐藤兄弟は主に迷惑をかけぬため暇乞いします。それを受けた義経は頼朝に直談判。郎党たちを愛し秀衡を信じる義経の必死の言上に、さしもの頼朝もちょっと圧倒されたよう。一途さと情深さ。義経の魅力に改めて気づく頼朝ですが、政子に釘を刺されるまでもなく、それが諸刃の剣であることも承知しておりましょう。
 「今までどおりそばにいろ」という主の優しい言葉に佐藤兄弟は涙し、郎党たちは大喜び。強い絆で結ばれた彼らは本当に“かけがえのない”仲間たちです。「理」の頼朝と「情」の義経、それぞれ大切なものは異なります。どちらがまちがっているわけでもないけれど、それがため、ふたりのズレはこれからどんどん大きくなっていくのです…。

第二十回「鎌倉の人質」5/22
 鎌倉に本拠を据えた頼朝ですが、まだまだ東国の地盤は固まっていないので、反勢力を牽制すべく各地に軍を派遣します。しかし義経はいつもお留守番。郎党たちがブーブー怒るのを毎度のことながらたしなめます。義経は御家人衆のなかにいるといかにもコドモコドモしてますが、郎党らを前にすると実に成熟した包容力をみせてくれる。怒る郎党たちの頭を冷やすため?雨に打たれてほほえんでみせる御曹司、それにならって次々庭に飛び出しズブぬれではしゃぐ郎党衆…。周囲がぎすぎすした勢力争いに明け暮れる中、この主従は本当に清涼剤です。郎党どもの烏帽子姿はちっとも似合ってないけれど(ほっといてやれ)。
 前回頼朝にコケにされ義経にもフラれた行家は、今度は木曽の義仲のもとへ身を寄せます。義仲の動きを危惧した頼朝はみずから兵を率いて木曽に迫り、行家と、同じく義仲のもとに逃げ込んだ叔父の志田義広の引渡しを迫ります。義広おじちゃんは名のみで出番ナシ。名前が出ただけ義円(前回戦死)よりマシか。さらに頼朝は叔父らの引渡しがならぬなら義仲の嫡男・義高をよこせと非情な要求をしてきます。厄介者をしょいこんだ義仲陣営は大いに苦悩。迷惑かけてる当人・行家はしかしケロリとしたもの。殺気立った巴に迫られてもビクともせず逆に言いくるめてしまうふてぶてしさは確かに得がたい人材かも。でもリスクのほうがはるかに高そう…敵に回せば厄介だけど味方につければますます面倒くさい男。義高じゃなくてコイツを引き渡せればどんなによかったことでしょう。
 ところで小池栄子の巴御前、かなり好きです。ビジュアル的にも似合っているし、何といっても声がいい。はきはきと張りがあって小気味よい。義仲への必死の訴え、行家への抑えがたい怒り、義高を見送る哀切な叫び…。どの「声」もズシンと胸に響いてきます。声の演技って重要なんだなあ…と思い知らされました。
 義高は表向き頼朝の娘・大姫の婿として鎌倉に迎えられます。11歳と6歳、かわいいカップル誕生です。義高は幼い面差しにけなげな緊張感がみなぎっていて好ましい。大姫がまたかわいい。とろ〜んとしたまばたきがカワイイ。この大河、子役にハズレなし!
 お仕事のない義経はこのふたりの世話係に任じられます。子供たちを前に“ジャニーズ”タッキー義経本領発揮!ちょうちょを捕まえるなんて序の口、ジャンプに側転、屋根までだってとんじゃうぞ!天狗仕込みの超人アクロバットで子供たちのハートをたちまちゲット。おまけに草花にもくわしい。昔取った杵柄、鞍馬時代の修行が思わぬところで活かされました。九郎の叔父上すごーい!(どこぞのメイワク叔父ちゃんとは大違い…)
 義経が義高(&大姫)の世話係になるのはドラマオリジナルですが、親から引き離された幼い義高に義経がかつての自分の姿をみたであろうことは想像に難くない。その心情を慮れば、このふたりに何かしらの心の交流があったと考えるのは不自然ではありません。それが証拠にこのふたりの兄弟のような関係を描いた小説やコミックは数多い。しかし義経が義高を可愛がれば可愛がるほど、この後待っている「悲劇」がより惨いものになりそうで今から心がキリキリと痛みます。
 源氏は信用できぬ身内を排除して平家との決戦に備えます。平家は一族の結束を固めて源氏に臨もうとしています。そのどちらが正しい選択だったかは結果をみれば明らかですが、頼朝助命の件で肩身の狭い思いをしている頼盛一族をも気遣い受け入れる平家と、同族同士で足を引っ張り合って幼い子供を親元から奪い取る源氏、どちらの身内になりたい?と言われたら、少なくとも私は源氏なんてまっぴらゴメンです。

第二十一回「いざ出陣」5/29
 大姫と義高の子守役がすっかり板についた御曹司、今度は郎党たちも引き連れてお出ましです。飛ぶ!消える!超人天狗マジック御曹司に続きましては、怪奇!カニ人間(伊勢三郎)&うさんくさい陸の船乗り(駿河次郎)、岩石とオッサンを持ち上げる怪力男(弁慶)など芸達者が続々登場。九郎サーカス団の巡回興行(ちがいます)に義高と大姫は大喜び。頼朝夫妻はそんな彼らを眺めて満足げに微笑んではいますが、…この人たち顔は笑ってても何考えてるかわからないからなあ。こわいこわい。
  こわいといえば、酒の席で義高を処刑すべしと進言した家臣が、主のやり方に異をとなえたとしてソッコー斬首されてしまいます。非情な措置に動揺する義経に、頼朝はおのれがめざす新しき国の構想を語ってきかせます。かつて清盛が語ってくれた「夢の都」にあこがれる義経は、主従の絆はギブアンドテイクというシビアな頼朝の考え方に納得できません。何だかんだいって全然清盛と決別できていない義経、「平家には平家のよさもございました」なんてバカ正直に訴えます。この瞬間、ピキーンと空気の凍る音がした(ような気がした)。
 平家は仲睦まじいが情を捨てる強さがない、と言われた義経は、「夢を叶えるには力が要るぞ…」という清盛の言葉を思い出します。非情になりきれぬ己の弱さに誰よりも苦悩していたのはこの清盛かもしれません。しかしその「情」を軽んじた源氏もこのあとほどなく絶えてしまうんだから皮肉なもの。やさしいけど弱い平家、強いけど冷たい源氏、結局どっちもどっちという気がします。
 それにしても…頼朝が義経と会う時ってもれなく政子がついてくる。
「オホホ…九郎殿は情けにお厚い!」なんてチャチャ入れないで話ぐらい兄弟ふたりきりでさせてやれよ!頼朝も、ほかの問題はバリバリ自分で処理しているのになんで義経のことになると全面的に政子の言いなりになっちゃうの?くねくねしながら余裕で政子をいなしてた頼朝が好きだったのに…。いや尻に敷かれる情けない頼朝もそれはそれでおもしろいんですが。もとより「読めない」キャラクターの彼ですが、こと義経問題に関しては政子に仕切られてるぶん何を思っているのかますます読めない。ポーカーフェイスに垣間見えるわずかな表情のほころびからその内心を推し量るしかありません。己と正反対の純真な弟のことを、実はけっこう気に入ってるようにも見えるんですが…。
 政子と同様、頼朝の片腕となっているのが梶原景時。汚れ役もすすんで引き受ける有能かつ謙虚な武将です。中尾景時はもっとダーティな感じかと思っていたので意外でした。おまけに息子の景季(小栗旬)も義経に友好的なさわやか好青年。今後の義経との関係に注目です。
 義仲は倶梨伽羅峠で平家軍を殲滅し、破竹の勢いで都に向けて進軍します。牛の角に松明をつけ突進させた(といわれる)奇想天外な激しい戦い!は、ナレーション&屏風絵+「ぶもーっ」(牛の声)でさらっと紹介。木曽勢の見せ場なのに…。
 それよりかわいそうなのは平家の総大将維盛です。前回は水鳥にびびって逃げ、今回は牛に追われて逃げ…名誉挽回どころか恥の上塗り。これは彼のせいではなく平家の人選ミスでしょう。ちゃんと戦上手の人を送り込めばよかったのに。もちろん宗盛は論外ですが(本人ロコツにいやがってるし)。推薦した知盛さん…ひょっとしてわかっててイヤガラセ?
 義仲の不穏な動きを受け、ようやく義経に出陣の命がくだります。喜び勇む義経主従ですが、「いつお戻りじゃ?」という大姫の無邪気な問いかけが切ない。九郎叔父ちゃんはね、もう戻ってこられないんだよ…。義経本人もまさかこれを最後に二度と鎌倉の地を踏めなくなるとは思ってもいなかったでしょう。兄頼朝とも今生の別れです。
 タッキー義経は何着ててもほれぼれしますがやっぱり鎧姿がいちばんかっこいい。われらが義経、ようやく歴史の表舞台に登場です。それはすなわちこの先待つ悲劇に向けてまっしぐらに突き進んでいくということ。どんどんつらい展開になってゆきますが、ワンシーンワンシーン、大事に見届けてゆきたいです。

第二十二回「宿命の上洛」6/5
 平家との戦いに勝ちまくる義仲は勢いにのりグングン京都に迫ります。それを受けて平家はとうとう都落ちの覚悟を固めました。このような時にこそ一族団結して逆境に備えねばならないのに、相変わらずおバカ棟梁宗盛はおもしろいほど空気読みません。維盛が兵糧と引き換えに売ってしまった平家嫡流の鎧を横取りし、息子の清宗に与えてしまいます。清宗もスネちゃま(※ドラえもん)なみの小憎たらしい坊ちゃんぶりで大はしゃぎ。清宗はふにゃふにゃした父にくらべて比較的ちゃんとした息子かと思っていたのですが、父子そろってこんなにアホでは処置なしです。もうだめだ平家。
 連戦連敗大将・維盛はイジめられっぷりがすっかり板につき(そんなもの板についたって…)、愚兄のしわよせモロかぶりの知盛はいかなる局面でも巌のようにどっしりと頼もしく(そしてニクイ愛妻家ぶりも初披露)、その知盛の横でウンウンうなずくだけだった重衡は堪えきれずに激昂して存在感を示し、ここにきてようやく平家勢がそれぞれの持ち味を出してきてくれました。優雅に取りすました“花のイケメンズ”平家よりも、ドジで不運なおっちょこちょい平家のほうが魅力的…なんてヒドイことを思ってしまうのは、私が特に熱心な平家ファンではないからでしょうか。それとも私がイケメンモデルよりお笑い芸人のほうが好きだからでしょうか(関係ない)。
 そんな私が今平家でとりわけ好きな人は…やっぱり宗盛さん。汚れ役上等!ひとくせもふたくせもあるぶん血肉の通った味わい深い人物になってます。一条長成(蛭子さん久しぶり!)が持ってきた因縁の福原の屏風を、何もかもコレのせいで〜!と燃やそうとするも、父清盛の夢がつまったそれを消し去ることはついにできませんでした。いつも自分に冷たかった父清盛を恨みつつ、誰よりも執着していたのでしょう。タイプは違えど義経と同様、ひたすらに愛を求め続ける哀しい人です。
 ところでその義経は、義仲の動向を見張るべく都付近に潜伏しています。待ちに待ったはずの出陣ですが、身内である義仲と戦うことはどうしても避けたいと、その入京を阻む策をあれこれ思案します。兄から「義仲に情はかけるな」と念押しされていたのに、“義高の父である義仲と戦いたくない…!”思いっきり情かけまくってます。
 同族の義仲に甘くなるのは仕方ないにしても、今回の義経は平家ですら擬似家族。父と慕った清盛の子たちと戦う“宿命”に苦悶しています。兄頼朝の前では「義仲に情けはかけません」「清盛なき平家とは心置きなく戦えます」と誓ったはずなのに。まっすぐで嘘のつけない義経、その時は本当にそう思っていたのでしょうが、ひとたび決意してもすぐ情に流されてグラついちゃうのが彼らしいところ。兄への思慕、義仲への愛着、平家への未練、すべてが本心なんだから厄介です。いくつもの愛にがんじがらめに縛られて、こんな状態で本当に戦えるのでしょうか。
 そもそもこのドラマの義経は一貫して戦そのものを疎んでいる様子。できるものなら本当は誰とも戦いたくない。でも…義経から戦を取ったら何が残るっていうの?(←ヒドイ)戦うことでしか兄の役に立てない彼には戦がすべて、いつまでも迷ってちゃダメ!背負う宿命が重ければ重いほど、情が深ければ深いほど、それを振り切り矢のように突き進んでゆく姿が胸を打つはず。うじうじ悩む心優しいナイーヴ義経も好きですが、そろそろスパッと切り替えてください。戦場においては苛烈な「鬼神」、それ以外ではじれったいほどやさしい「情の人」。どっちの顔も義経です。真っ赤な鎧に身を包んだ「動」の義経、ブルー系の直垂を着た「静」の義経。見た目にはとても鮮明にカラー分けされているので、ビジュアル面のみならず、その内側の二面性をぜひメリハリつけて効果的に魅せてほしいです。 

第二十三回「九郎と義仲」6/12
 義経は近江まで陣を進め、そこで久々にうつぼ(上戸彩)と再会します。弁慶、今度はみんなといっしょにニッコリ歓迎。よかったねうつぼ!彼女から平家の都落ちを聞いた義経は、その様子を確かめるべく京の都に潜入します。源氏の大将とばれないよう、町人に身をやつして…。いや御曹司、逆に目立ってますがな。あんなムダにキレイな庶民がいたらつい尾行したくなっちゃいます。サイコーにかっこいい鎧姿、きりりと涼やかな直垂姿、ボロは着ててもお顔はキラキラ庶民姿、今回は御曹司のいろんなファッションが一挙におがめて得した気分です。
 平家の都落ちに、後白河法皇はドロンと雲隠れ。いっしょに西国へ落ちてくれると信じてたのに…パパかもしれないと思っていたのに…宗盛ブロークンハートです。元気のないのは平家一門誰しも同じで、福原に立ち寄り管弦の宴を催すも皆一様に浮かぬ顔。なかでも維盛は負け戦のショックから未だ立ち直れずくよくよ悩み、知盛は「平家は公家になっていたのだ…」とむなしく虚空を見あげます。誰よりも平家の現状を知りその未来を憂う知盛、このままだと戦よりも先に神経性胃炎で倒れそう。
 去った平家と入れ替わるように、木曽勢が晴れて都入りを果たします。が、入京早々ダブルリーダーの義仲と行家はゴリゴリ見苦しく牽制し合い(おもしろいからもっとやれい)、さっそく法皇にナメられてしまいます。力を失った平家を見限り、頼りない義仲&行家にほくそえみ、法皇さまは「出すぎた武門はほかの武門に潰させるがよい」と本格的に腹黒モードに突入しました。脇を固める丹後局&平知康のおどろおどろしさも増すばかり。この妖怪トリオには誰であろうと勝てない気がする。こわすぎる。
 そんな彼らの実力(?)をまだ知らない義仲は夢にまで見た都の生活に舞い上がり、また木曽軍の乱暴狼藉も日増しにひどくなる一方。義仲と戦いたくない義経は、彼を説得すべく単身宿所へ赴きます。こういうムチャな顔合わせはドラマならではのお楽しみですね。刀を突きつけられてもビクともしない御曹司のかっこいいこと!たとえ衣装はナンチャッテ庶民でも。
 肉親の愛憎を知らぬゆえその絆を信じる純粋な義経、知るがゆえに信じぬ義仲の怒りと悲しみ、両者の「情」と「情」とのぶつかり合いは、「理」の頼朝との息詰まる議論とはまたひと味ちがう、熱くて泣ける名シーンでした。
 頼朝のもとで力をあわせようと義経は訴えますが、「源氏の棟梁」の座にこだわる義仲の心は頑なです。しかし義高の言伝を聞いた彼の顔には、情を振り捨ててまでおのが夢へ手を伸ばすことへの苦悩がまざまざと浮かんでいました。「すまぬ…」我が子への決別とも取れる言葉があまりにも痛々しい。
 結局互いの思いは相容れることはありませんでしたが、義仲はその気になればいつでも殺せたはずの義経をそのまま帰しました。甘ちゃんな義経を愚かしく思う一方で、その一途さをうらやましく感じたのかもしれません。九郎と義仲、相反しながらも相通じるふたり。ひょっとしたら誰よりもわかり合えたかもしれない、そんな両者が戦わねばならないのは何とも皮肉な悲劇です。
 ところで義経の思う「新しき国」とは果たして清盛の描いた夢の都か、頼朝のめざす武家社会なのか。福原炎上を知って「清盛様の夢の都が…」とせつながる義経をみていると、未だどちらがおのれの理想とも決めかねている様子。いずれにしてもその「新しき国=争いのない国」をつくるために多くの血を流さねばならないというシビアな矛盾にこの義経は耐えられるのでしょうか。悩める彼が「厭戦モード」から「戦闘モード」に切り替わるのは合戦直前ギリギリまでおあずけかな?待ってるよ〜。

第二十四回「動乱の都」6/19
 義仲説得がままならず失意の帰路についた義経は、巴の差し向けた刺客に襲われます。よっしゃ久々の乱闘シーン!心置きなく暴れてください御曹司〜!…と思ったら弁慶の活躍と義仲の仲裁でアッという間に終わっちゃいました。タッキー義経の殺陣、楽しみにしてるのに。アクションシーンのためだけに毎回意味もなく襲われてほしいくらいです(ムチャいうな)。
 後白河法皇は西国に落ちた平家に三種の神器を返すようお手紙を出しましたが、宗盛さんたら読んだら食べた。ヤギさん宗盛。食べきれない餌をほお袋につめこんでオグオグしてるハムスターにもみえます。毎回何かしらやってくれますねこの人は。トラブルメーカーというよりギャグメーカー。そんな彼が大好きです。
 かつて頼朝の命を救ったことで肩身の狭い思いをしていた平頼盛が鎌倉へ身を寄せることになり、義経の陣を訪れました。どこでも仕事のできるスーパー侍女・手古奈も再登場。義経は頼朝に義仲の所業を報告すべきか迷いますが、弁慶に諭されてありのままを伝えることにします。このところ弁慶は義経の保護者としての包容力のみならず名参謀としての聡明さをも発揮してきてくれて頼もしい限り。かつて半狂乱でストーカーやってた人とはとても思えません。
 法皇は行家を優遇して義仲と仲違いさせようとしますが、その行家は平家との戦いにあっさり敗れて早々にトンズラしちまいました。さすがは連戦連敗大将、期待どおりの負けっぷり。平家のみなさん、こんなヒトに勝ったからって浮かれてちゃダメですぞ。
 行家は消え、西国の平家は勢いを取り戻してにじにじと都に近づき、鎌倉の頼朝はいまだ動かず、頼るもののない法皇は、義仲の様子を探るべく平知康を使いに出します。が義仲は法皇の二枚舌に怒り心頭でもはや取りつくしまもありません。高坏を鼓に見立ててポンポン叩き「しってん、しってん、しってんてん♪…ワーハハハハ」…義仲ついにコワれちゃいました。
 コワれた…いやブチキレた義仲はとうとう後白河法皇のいる法住寺を襲撃します。いつも安全な場所でうふふオホホと陰謀めぐらしてる貴人たちがあわてふためくさまは見ててちょっぴりスカッとする。田舎モンをばかにすんなよ!えばってんじゃねーよ公家ども!という義仲の心の叫びが聞こえるよう。義仲には無法者ゆえの純粋さ、そして悲しみが感じられ、それがそのまま彼の魅力になっています。
 あぶり出された後白河法皇は「お許しあれ〜命だけは〜」と恥も外聞もかなぐり捨てて義仲に懇願します。が、この人どんなに怯えていても心の中ではチロッと舌を出してそう。「特技・人をだますこと」ですもんね(オープニング参照)。法皇様のビビり演技も宗盛ばりの笑いどころです。
 法住寺襲撃後、タガが外れたように暴挙の限りを尽くす義仲に、ついに頼朝が動きます。近江にとどまる義経のもとに、鎌倉から範頼が大軍を率いてやってきました。お人好しの範頼はともかく梶原景時がやたら義経に温かいまなざしを向けてくれるのがふしぎな感じ。息子の景季も義経に心酔しきってて今やすっかり郎党の一員です。梶原父子がそろって義経に優しいのは意外でうれしいけれど、そのぶんこの先の仲違いが心痛むものになりそう。
 さんざん迷っていた義経も、ついに心を決します。「木曽殿は私がこの手で討ち取る!」「木曽殿お覚悟あれ」待ってました、バトルモード!さあもう迷うな。悩み憂うハムレット義経をこれまでタップリ堪能したぶん、勇ましい「武将」義経にいやが上にも期待が募ります。

第二十五回「義仲最期」6/26
 ついに義仲との決戦です。対木曽戦といえば宇治川合戦、宇治川合戦といえば梶原景季と佐々木高綱の先陣争い。は、やはりはしょられましたね。肝心の佐々木高綱が出ないんじゃどうにもならない(一応名だけ出ましたが完全にその他大勢扱い)。高綱はかなり好きな人物なので残念ですが仕方ない。景季もせっかくの見せ場が減ってしまいましたが、見せ場といっても彼には不名誉なシーンだし、今ドラマの景季くんはみっともない目に遭わせたくないようなさわやか好青年なので、はしょられてむしろよかったかな?
 ともあれ待ちに待った合戦らしい合戦です。タッキー義経の目にもとまらぬ華麗な殺陣にほれぼれ、そして駿河次郎の網攻撃にビックリ(案外効果的な攻撃…なのか?)。軽装でがんばる喜三太(もっと重装備にしてやれ)、その危機を弓で救う伊勢三郎など、義経主従個々の活躍が見られて満足です。
 義経はいち早く都に入り、まずは後白河法皇を救い出します。幽閉中の法皇&丹後局の前に颯爽と現れた彼はまさしく正義のヒーロー救世主。しかしそんな義経をなめまわすようにみつめる法皇の視線がやばすぎる。味方とわかったとたん態度が180度変わる丹後局もご立派だわ。これから義経はこの二人にいいように弄ばれてしまうのね…。
 対する義仲は行家に裏切られ兵も散り散りになり、満身創痍の敗走です。彼に残されたのはわずかな股肱の郎党と男の意地だけ。「旭将軍」義仲が一番輝いたのは皮肉にもその最期だったといえましょう。夕陽(幻影)のなかで燃え尽きるように死んでゆく義仲の姿には哀れさを超えた壮絶な美がありました。「どこかで行く道を違えたか…」と憂いつつも「いろいろ楽しかったな」と快活に笑う、そんな強さと弱さを全力で演じきった小澤義仲は最高に男らしかった。マイベスト義仲決定です。
 そして忘れちゃならない巴御前。彼女がもし強いだけでなく頼朝をサポートする政子のように賢かったら義仲の運命も変わったかもしれません。でもそんなコセコセした巴なんてきっと誰も見たくない。体育会系の明るく激しい小池巴は義仲と似たものカップルでお似合いでした。彼女にはまだこの先も出番があるようなのでさらなる名演に期待です。
 一方、京に凱旋した義経は勝利の喜びよりもやりきれぬ思いにとらわれます。その思いは叔父行家の訪問でついに爆発。平然と義仲の悪口を連ねる鉄面皮にガマンならず、荒々しく席を立ってしまいます。いいぞもっとキレたれ!おっとり優しいタッキー義経をここまでブチキレさせられるのは行家叔父ちゃんぐらいのもの。互いに貶め合う源氏一族の醜さを目の当たりにして、一族の絆を信じる義経の胸には言い知れぬ不安が広がったことでしょう。自分もいつか義仲のように同族に討たれるのでは…と不吉な未来を無意識のうちに予感したかもしれません。
 そんな不安から逃れるように義経は母常盤に会いにゆきます。あいかわらずお美しい常盤さま。そしておちゃめな一条さま。常盤よりもウキウキしながら義経を待ってくれてます。いい人だ…。
 久々の母との対面に義経は無邪気な子供の顔に戻り、「母上」という呼びかけもどことなく甘えた声色です。また常盤も息子のみごとな若武者ぶりにほほえみ「すっかり源氏の武士じゃな…」とつぶやきます。しかしそんなことを言いながら母子ともども思うのは義朝ではなく清盛のこと。義朝不憫なり。ひょっとしたら常盤は義朝より清盛のほうを愛していたのでは…なんて邪推してしまいます。
 しかし常盤は義経に二度と会いに来てはならぬと言い渡します。義経はその意を汲み、ただ黙して母の笛の音に耳を傾けます。心が通じているからこそ距離をおくこともできる。このふたりの関係にはせつなく凛々しい抑制の美を感じます。
 蛇足ながらビジュアル的にもこの母子は圧倒的に美しい。今回やたらとふたりのどアップが多かったのは視聴者へのサービスでしょうか。いや堪能させていただきました。

第二十六回「修羅の道へ」7/3
 木曽との戦いを終えた義経は同族である義仲の首を獄門にかけることに抵抗を覚えます。実際の義経が義仲をどう思っていたかはわかりませんが、こういう見境のない優しさはまさしく義経の持ち味。でもね、それを世間は甘さとみるんだよ…。ほ〜れさっそく法皇様に目ぇつけられちゃった(あの目つきヤラシすぎる)。おまけに義仲に情をかけたことを鎌倉にチクられちゃった。きっと景時のしわざだ!まだこの時点では義経に対して悪気はないでしょうが、ささいなことでももれなくチクリ…いや報告する細やかな仕事ぶりが伺えます。
 ともあれ義経は次なる平家との戦いまで「つかの間の平和」を満喫します。まずは鞍馬寺で恩師・覚日律師と久々の再会。すっかり白くなったその頭髪に、ああ…義経が京を出てからずいぶん経ったんだなあと思い知らされました。「後姿が悲しんでいたように見えたが…」師の御坊の言葉はどれも味わい深くて胸に沁みます。
 そして恋しい静御前とも再会です。タッキー義経とさとみちゃんの静、この可憐で初々しいツーショットは見ているだけでほのぼの幸せ。静を迎えて郎党たちもますます元気。主従の歌(忠信ヴァージョン♪はなはだはなはだ…♪)にあわせて踊るゴキゲン佐藤兄弟、ふざけすぎて静に優しくいさめられる次郎&三郎、みんなカワイイ。さとみちゃんの静は見た目幼いですが穏やかな母性を感じさせます。静の笛に聴き入る義経は、きっとその音に母常盤を思い出していたのでしょう。
 そして静の母・磯禅師(床嶋佳子)がようやく初登場。おおーっお美しい。過去にいろいろあったっぽいミステリアスな雰囲気に尼姿がたまりません。でもどうせなら現役ベテラン白拍子の姿も見たかった。何たって彼女は元祖・白拍子ですから。
 ところで鎌倉では義仲討死の報を受けた義高が幼いながら気丈にふるまい大人達を感嘆させますが、頼朝はそんな彼にかつての自分の姿を重ね、殊勝な態度は生き延びるための子供なりの知恵とみます。義高は保身や復讐など考える余地もなくただただ悲しみをこらえるのに精一杯なだけなのに。頼朝さん、誰もがあなたと同じように周到に考えてカシコク生きてるわけではないのよ…。
 そして義経の穏やかな生活にも暗雲が?静とうつぼ、二大ヒロインどっきり鉢合わせ!うわぁ〜…。義経、戦場へ赴く前に早くも修羅場に立つ!?…いやいや我らがうつぼちゃんは愛する義経様を困らせるようなことなどしません。まちがっても某御台さまのように恋敵のお家をぶっこわしたりはしません。彼女にできるのは悲しみをこらえて走り去ることだけ…。こわばった笑顔が痛々しい。どうせオリジナルキャラならもっとガンガン迫っていらんことばっかりして物語を引っ掻き回すぐらいのほうが盛り上がるかもしれませんが、うつぼはこれでいい。オテンバ娘が恋しい人に対してだけしおらしくなっちゃうのが泣かせるではありませんか。
 いよいよ戦場に赴く義経を、静は舞で見送ります。ひとり残されひそかに睫毛を濡らす静、その思いを映すように雨に打たれてうなだれるおだまきの花。リリカルな演出が冴え渡ってます。“おだまき”はのちの「あのシーン」へのさりげない伏線なのでしょうか。
 そんな静とは対照的に義経の隊列を追っかけてっちゃうアクティブなうつぼちゃん。臆面もなく涙をぽろぽろこぼすこの子の表情もすばらしい。心の底から義経を慕っているのがわかります。うつぼ、静、こんなにけなげで可憐な女の子たちに送り出してもらえる義経は果報者っ!
 ドラマも早いもので折り返し地点、第一回の冒頭・一ノ谷シーンが今やなつかしく思い出されます。その一ノ谷合戦もいよいよ次回が本番。エキサイティングな合戦シーンはもちろんのこと、タッキー義経はじめ出演者たちのめざましい成長ぶりを初回と見比べるのもまた楽しみです。

第二十七回「一の谷の奇跡」7/10
 ひそかに京を出た義経軍は三草山にて平家軍と遭遇します。率いるは平資盛、情けない負けっぷりにかけては右に出る者のない維盛の弟くん。案の定彼も戦はヘタっぴ、夜襲をかけられろくすっぽ戦いもせず屋島に逃げてゆきます。せめて一ノ谷の陣に加勢しろよ!宗盛、これについては存分にキレてよし。
 対する義経は民家に火を放って大軍にみせかけるという狼藉まがいの戦法をとりますが、民家を焼くのは当時しばしばとられた手段であり義経ひとりが特にあくどいわけではないので念のため。村人達の了承を得るようなまだるっこしいことを実際にしたのかどうかはあやしいところですが。むしろ偽善的で不自然なような…。しかし闇夜を貫く火矢の鮮烈な美しさ、そして弓引くタッキー義経の凛々しさの前にはそんなささいな疑問などどうでもよくなってしまいます(おいおい)。
 そして一の谷合戦のキーパーソン、鷲尾三郎(長谷川朝晴)が初登場!またひとり義経の身辺にムサくるし…いや頼もしい郎党(候補)が増えました。鷲尾の妹・まごめ(高野志穂)も登場、こちらは可憐に花を添えてくれそう。男ばっかり見せられてるとやっぱりかわいい女の子は目の保養です。しかし彼らとの出会いにはもうちょっとドラマがほしかった。単に「連れてこられた」だけじゃなあ…。
 ついに平家の背後・一ノ谷にたどりついた義経軍、さあ逆落とし決行です。不慣れさが目立つ初回映像にくらべて、新たに撮り直したタッキー義経の勇ましい大音声「方々、参る!」、大鎧に身を包んでの俊敏な殺陣はただただおみごとの一言。キレイなだけのお飾り御曹司なんて言わせない、百戦錬磨のトップアスリートのような無敵の輝きを放ってます。そこいらのヤワなアイドルではとてもこれほどの動きはできまい。タッキー義経、いやはや恐れ入りました。
 ところでこの戦の裏で糸を引いていたのは後白河法皇。源氏を勝たせるべく平家の足を引っぱる策をめぐらします。かたつむりの歌(?)を歌いつつ薬づくりにいそしむ姿のまがまがしいこと。このシーンだけホラー映画のようでした。
 そんな法皇様の謀略にうかうか乗っちゃう宗盛さん、「和睦ではなかったのか…!」何べんだまされたら気が済むの?このお人よし棟梁は。と思ったら知盛ですら半ば信じてたもよう。法皇のはかりごとのせいとはいえ、平家は敗れるべくして敗れたというしかない。戦に嘘や流言はつきものというシビアな認識がなく、矢合わせの日を「四日は清盛公の命日だから…」「五日は陰陽道的によくない日だから…」なんていかにも公家的な考えで予測するなど(結果的には合ってたけど)、命を張った戦に対する心構えが源氏勢とまるで違っていたことがそもそもの敗因でしょう。
 そして見終わってから気づいた重大事実。平敦盛が出ていない!源平ドラマ(しかも平家寄り)でこの人気エピソードを完全無視するとは大胆な。でも私など敦盛が出なかったことなんて全く気にせずドラマにのめりこんでいました。宇治川合戦の先陣争いや敦盛と熊谷直実の悲話など定番の名シーンはお約束としてぜひとも見たいものですが、今回のワクワク胸躍る勇ましい展開に敦盛のしんみりしたエピソードを急に挿まれても面食らってしまうので、ばっさり省いたのはむしろ英断かもしれません。
 敦盛には悪いけど、そのぶんほかの平家の面々をもっと濃く描いてくれれば…。幼き日にともに遊んだ「牛若」が敵として現れ愕然とする重衡、その事実を未だ知らずに「あの崖を駆け下りたのは何者だ!」と驚愕する知盛、言葉もなくただただボーゼンの宗盛…それぞれの行方が気になります。
 そして梶原景時がやっとゲジゲジ化?戦勝に湧く義経陣に「(三種の神器を)奪い損ねましたな」とチクリと皮肉。くぅ〜景時はやっぱりこうでないと!汚れ役になってくれない景時なんて景時じゃない。息子の景季はといえば義経の策にことごとく「なるほど!」「いかにも!」と素直に驚嘆してくれますね。これもまた愉快。
 そんな景時とは対照的に「気にするな」というふうに肩をポンポン叩いてねぎらってくれる範頼兄ちゃん、優しいなあ〜。実の兄ならではの包容力を感じます。兄弟はやっぱり仲良しが一番!…などとのんびり喜んでたら次回が大変。鎌倉の兄が…頼朝が…!どうする、義経。

第二十八回「頼朝非情なり」7/17
 義経は人質となった平重衡を護送するため鎌倉へ赴きます。出陣後の義経はもう二度と鎌倉の地を踏むことはないと思っていたので、頼朝との対面がまた見られるのは素直にうれしい。しかし…この再会は義経にとって何とも苦いものとなるのでありました。
 鎌倉への途、義経と重衡は親しく遊んだ幼い日々を思い出し、お互い複雑な胸のうちを明かします。血は異なれど互いを兄弟と思い合っていたこのふたり。そんなふたりが戦わねばならないという皮肉な宿命、そして真の血族同士はわかり合えずに反目するという現実。「血」って一体なんだろう…。
 久々に兄と相見えた義経は、幕府創建のため京から呼び寄せた文官たち、大江広元(松尾貴史)と三善康信(五代高之)を紹介されます。どこか掴みどころのないヌンメリとした松尾広元、いいですね。ちょっと今までにないタイプの広元です。
 鎌倉でしばし平和な日々をすごす義経主従ですが、義高が鎌倉脱走を図ったことで事態は急変。義経は義高助命のため頼朝に目通りを願いますが叶いません。ならばと家人の盛長に必死に声を乱して訴えかけます。タッキー義経の演技は回を重ねるごとに魅力と迫力が増してきてますが、こういう切ないシーンの演技はことに絶品です。
 しかし嘆願むなしく義高は斬首されてしまいます。その厳しい処断の一方で平重衡は一命を救われました。源氏だの平家だのにこだわらない頼朝は「我が首刎ねられよ」と堂々たる態度を示す平家の重衡には感服し、こそこそ逃げる源氏の義高のことは許さない。だけど重衡は大人で義高は子供、逃げ出したのはたしかに浅はかだけど子供だものそりゃ死ぬのは怖いよ!(子供じゃなくても怖いよ)怖けりゃ逃げるよ!それを斟酌せずに「裏切り」としか受け取らない頼朝もかなり短絡的(ドラマではさんざん悩んでますけどね…ドラマではね…)。何にせよ子供が殺されるのは本当にやるせない。すべてをあきらめきったような義高の虚脱の表情があまりにも哀れです。
 義高処刑の翌日、頼朝は義経を呼び寄せて苦渋の決断の理由を語ります。中井頼朝とタッキー義経の対話シーンは凛とした緊張感があり、それでいてほのかな情緒も感じられて見ごたえがある。でも…。「非情もまた情」…?頼朝の言っていることは理路整然としているけど詭弁のようにもきこえてイマイチ腑に落ちない。義経が欲する答えはこんなクールな建前じゃなくてもっとホットな本音。このセンシティブな弟を納得させるには兄はたった一言「チクショー俺だってホントはつらいんだー!」と叫べばいい。心を見せるだけでいい。でも頼朝にはそれができないんですよね…立場的にも性格的にも。
 いずれにしてもこの今生最後の兄弟対面で、頼朝と義経の人物の大きさの差が明らかになりました。やはりこの兄弟は絶望的に相容れぬ…。しかし義経に言葉を尽くして語りかける頼朝には、弟にだけは自分の心をわかっていてほしい…という切なる思いも感じられます。いつでもまっすぐぶつかってくる義経に、頼朝もわずかながら感化されている部分があるのではないでしょうか。
 そう、頼朝の強靭な「理」も時として義経の「情」に気おされる。義高処刑の前に義経との対面を拒んだのがいい例です。義経は情の人、その情で相手の情をもかきみだす人。頼朝はせっかくの非情の決意をそんな義経にゆるがされるのをおそれたようにもみえます。そして頼朝以上にそんな義経をあぶなく思っているのが妻の政子なのでしょう。
 頼朝にも情はある。けれど源氏の棟梁として坂東武士団に担ぎ上げられた瞬間からその情を隠した。「捨てた」のではなく「隠した」。クールだけどいつもどこか苦しそうな(そして寂しげな)中井頼朝の表情をみているとそんな気がします。タッキー義経が「平家を憎めたらどんなに楽だったか…」と悩むように、中井頼朝もまた「情を捨てられたらどんなに楽だったか…」と苦しんでいるのでしょう。

第二十九回「母の遺言」7/24
 帰京した義経は頼朝の代官として京都の守護を任されますが、そんな義経に法皇は官位を授けます。義経最大の失敗として有名な「無断任官」問題です。とまどう義経を寄ってたかって言いくるめる朝廷妖怪トリオ、巧いなあ〜。これでは断りようがありません。
 この任官に頼朝は「激怒」!無表情な中井頼朝が激怒するっていうから楽しみにしてたのに、扇パッチンでおしまいでした。くそぅ…。中井頼朝は今までにない柔和なイメージで新鮮ですが、そのソフトさが時として歯がゆい。たまには盛大にブチ切れてくれてもいいのに。頼朝をマジギレさせられるのは義経だけなんだから(たぶん)。
 でもこの問題に関しては法皇につけいる隙を与えてしまった頼朝にだって責任はある。戦功のある義経を無位無官で捨て置くという不自然な措置がそもそもの原因です。だいたい頼朝の代官である義経が無位無官では公卿らとのやりとりもままならない。圧倒的に朝廷の力がものをいう当時の京で、一介の武将である義経にできることは限られています。京で暮らしたこともある頼朝ならそういう事情は重々承知のはずなのに。京にくわしい大江広元も義経に恩賞を与えるべしと進言していたのに。「何ゆえことが見えぬのか…」なんて自分ばかりが苦しんでるように言うけれど、義経だって困ってんのよ!…と何やらだんだんきついトーンになってきました。やっぱり私は判官びいきの人間です。
 とにかく怒った頼朝は義経を戦列から外し、おまけに坂東武士である河越氏の娘・萌(尾野真千子)を正妻として送りつけます。非を咎めるなら真正面からズバッと叱ればいいものを、これでは罰というより粘着質ないやがらせ。政治的判断だけではなく個人的感情がまじっているのではとすら思える仕打ちです。理の頼朝にもついにボロが出てきたか?
 ともあれ正妻になる萌ちゃんとやらはどんな娘さんかな〜…と思ったら一瞬で出番終了。ありゃりゃ…。今後に期待。
 そんなすったもんだが繰り広げられるなか、平維盛が入水自殺してしまいました。平家の嫡流に生まれながら、絶世の美男子と言われながら、あまりにさびしすぎるその最期(演出的にもさびしかった)。私は平家公達の華奢なところがどうも好きになれなくて、ましてやこんなふうに戦わずして自ら死ぬ男になど全然魅力を感じないのですが、美形キャラなのにみっともないエピソードてんこもりの彼は滑稽やら気の毒やらで何だか憎めませんでした。戦はへたっぴだけど心優しい彼は生まれてくる時代を間違ったのでしょう…合掌。
 そして今ひとり、この世に別れを告げたお方が…。常盤様ーっ!ホントはもっと長生きしてるはずなのに。このドラマのオリジナル設定はたいがい許容範囲内でしたが今回ばかりは「なぜだーっ!」と怒りの雄たけびをあげずにはいられません。稲森常盤はタッキー義経とならぶナイスキャストで、物語序盤は彼女が主役といってもいいほどの存在感だったのに。回想シーンではなつかしさも相まって思わず泣いてしまいました…。
 流されるままに生きた常盤にはさまざまな批判もありますが、彼女の「死なない」生き方が私は好きです。夫を追って死ぬのは美しいけれどそれは一番楽な道。それよりも数多の恐怖と屈辱に耐え子供を守って生き抜いた常盤に私は賞賛を送りたい。ことに今回の稲森常盤はどんな風にもしなやかにそよぐ草木のようなナチュラルなたくましさがあり、またわが子への深い愛が演技の端々ににじみ出ていて、これまで見てきたどんな常盤像よりもダントツに魅力的でした。(ついでながら蛭子さんのほにゃららとした長成も大好き)これでお別れなんて本当に悲しい…「幻影」でもいいから今後も出てきてほしいものです。
 父の顔など知らず、兄とは隔てられ、家族の温もりに恵まれぬ義経にとってこの母は何よりの支えであったろうに、その心細さはいかばかりか。帰る母のあとをトボトボついてゆくわんこのような彼がいじらしく、また母の亡骸に深々と頭を垂れる姿がたまらなく痛々しかった…。
 それはそうと白い狩衣姿(そしてお初の長烏帽子)の義経は輝くばかりに美しい。真っ赤な戦闘カラー、さわやかブルーの御曹司スタイルもいいですが、清潔で高貴な白もタッキー義経には何とも映えます。何ものにも染まっていない純白、まさしく義経の心そのもの。しかし、それを汚してやろーとする悪いお人が次回…。怖っ!義経逃げろー!

第三十回「忍び寄る魔の手」7/31
 「忍び寄る魔の手」。この大河、たまにガクッと脱力するようなタイトルがつきますね。まあ忍び寄るのが後白河法皇で忍び寄られるのが義経なんだなとは容易に推察できますが、ああまでネチネチあぶなく忍び寄られるとは想定外でした。なんならタイトルはもっと率直に「あやうし義経!」とかにすればいいのに。…いや冗談です。
 無断任官の罰として京でおるすばんの義経は、腐ることなく都の警備につくします。まずは京の夜盗の取り締まり。幼少時に京の孤児たちと慣れ親しんだという初期設定が生かされました。どうせ生かすんなら烏丸や五足(回想or幻影)も出してほしかったな…。気難しい朱雀の翁が義経にだけものごしが柔らかいのはほほえましいです。
 そんな義経に後白河法皇は従五位下の位を贈ります。義経は今度はきちんと兄に伺いを立てようと鎌倉に文を送りますが、政子の進言で頼朝はこれに返事をよこしません。黙って様子をみようというのです。法皇と義経の動向にピリピリしているわりにはずいぶん悠長な態度です。鎌倉のやり方は緻密なようで実はリスクが高いだけ。大人げなさすら感じます。
 案の定、ほったらかされた義経に法皇の魔の手がせまる!まさしく「魔の手」。もうさわるさわる。というか近づきすぎ。法皇様、何だかとっても楽しそう(楽しすぎて本来の目的を忘れてそう)。母を失い、兄に疎まれ、さびしくて心細くてたまらない義経につけこむなんてたやすいこと。義経の常套句「親子兄弟争うことのない世」まで持ち出され、義経あっけなく陥落です。あ〜あ…。
 純情な義経をもてあそぶ法皇は本当にワルいお人。でも人の心の機微を熟知している彼もまた「情」の人。人心掌握には真の情も必要です。わざとらしーウソ泣きでしみじみ語った弱音は、義経を篭絡するためだけでなく、偽りなき彼の本心でもあったのではないかと思います。
 それにひきかえ頼朝さんよ。寂しがりやの義経をほったらかしにしてたらへんなおじさんにフラフラついてっちゃうのは火を見るより明らかなのに何でわからないのか。頼朝も「情」があるなら相手の気持を推し量るくらいのことしてほしい。実の兄より出会ったばかりの法皇のほうが義経の心中をより深く理解しているというのが皮肉です。
 そもそも頼朝の情ってあまり役に立ってない…というか政子の指摘したとおり弱点でしかない。義経の情が人を癒し法皇の情が人を動かすのにくらべて、頼朝の情は無力でひとりよがり、内にこもって悩むだけ。父として娘の心を救うこともできません。義高の一件で心を病んでしまった大姫に詫びる中井頼朝の表情は心に迫るものがありますが、今さら義高の法要を盛大に行ったって見当違い。そんな形式だけの愛情表現に娘はごまかされやしません。この先大姫はその短い生涯を閉じるまで、生涯父を許すことはなかったのです。
 こんな頼朝に「父性」を求めたことが義経の過ちだったのか…。返事もくれずに試すばかりの兄とひきかえ、奥州の秀衡は遠くからつねに義経を心配してくれてます。些事に動じぬ大らかさ、あたたかな包容力…義経の求めるものはすべてこの秀衡が持っているというのに…。
 娘に嫌われ妻にヤイヤイ責められ家臣に「お疲れなのです」とまで言われてしまったグロッキー頼朝は、突如義経を平家追討軍の大将に抜擢します。九郎判官義経に試練を与える!って…。自軍ボロ負けで義経を頼るしかない状況なのになんて強気な。当の義経だって喜びこそすれ試練だなどと思うはずないのに。恩情ではなくあくまでも試練と言い張る頼朝の真意が正直よくわかりません。中井頼朝、なまじ情があるばかりに難解キャラになってます。こんなことなら従来のイメージどおり「戦しかできぬ愚か者は利用するだけ利用して捨てればいいだけのこと。ククク…フハハハハ!」とか憎々しく高笑いしてくれるほうがいっそどれほどさわやかなことか。
 義経は義経で、情に流されまくる甘っちょろさが顕著になってきました。(でも私はそこが好き)情に突き動かされる義経と理に基づいて動く頼朝、両者の心の距離は開く一方です。誰かアドバイスしてやれよ!とは思えど、頼朝と義経の確執は新しき世(改革派)と古き世(保守派)のせめぎ合いでもあります。もはや兄弟のみの問題ではなく、個人の力の及ばぬ大きなうねりの只中に彼らは呑み込まれているのです。

第三十一回「飛べ屋島へ」8/7
 兄の冷たい思惑もしらずに「恩情をくだされた」と喜び勇むいじらしい義経、心はすでに戦場です。そんな義経のもとに新しい郎党がすべりこんできました。鷲尾三郎とその妹まごめ。義経様のことが忘れられず狩もできない、家来になれないなら飢えて死んじゃう!ときたもんだ。この強引さは郎党志願者共通のもの。そんな新入りに弁慶はロコツにうざそうな顔、久々のお約束リアクション。俺と名前カブッてる!とごねる伊勢三郎は名前だけじゃなくファッション(毛皮)までカブッてることには気がついていないのか。何にせよ、クマ(鷲尾)が加わりいっそうガチャガチャ楽しい郎党衆になりました。
 屋島への出陣をめぐって、義経と軍目付の梶原景時が対立!有名な「逆櫓」論争です。中尾景時ド迫力。こんな人に怒鳴られたら私ならすみやかに「すいませんでした」と引き下がります。逆櫓自体は“あってもよいがなくてもよい”もののような気がしますが、それがきっかけで武将はどうあるべきかという精神論に発展してしまったものだから、お互いひっこみがつかなくなってしまいました。
 備えあれば憂いなし、でも備えに頼れば油断が生じる。義経の主張は、ただ突き進むべしという単純なものではなく、軍全体の士気を考えれば当然の言い分とも思えます。しかし景時の「退くも軍略のひとつ」という意見もまったく正論です。突き進んで兵を失ったら元も子もありません。
 しかし義経はその正論を頑として受け入れません。義経とてやみくもに進みたがっているわけではない、綿密な現地調査と熟慮の結果、勝機をみつけたのです。それをむざむざ逃すわけにはいきません。両者互いに一歩も引かず。業を煮やした景時の「イノシシ」発言には、理解不能な若者への苛立ちと、軍目付の俺を無視しやがって!という個人的な怒りもうかがえます。その場その場で臨機応変、迷わず突撃!という現場主義の熱血義経と、机上の正論とマニュアル重視で用心深くことを運びたがる事務的な景時。型破りな青二才と頑迷なオヤジの対立、どちらが正しいとは一概に言えないからこの問題はむずかしい。
 そもそもこの両者は戦の目的がちがう。景時はじめ東国武士は自分の所領を守るためビジネスとして戦っています。だから無駄なリスクは負いたくない。一方義経の戦う理由は単純明快、「兄のため」。その兄に認めてもらうチャンスは今しかない、今回がダメなら次はない。どうしても勝ちたい。いっそ戦場で命を散らせば己の心をわかってもらえようか…なんて捨て鉢な思いもあったことでしょう。所領安堵という現実を守りたい景時と、愛情というかたちのないものを守りたい義経、こんなふたりにズレが生じるのは無理からぬことです。
 それにしても景季くんは本当に義経大好き。ややもすれば郎党たちよりも前に出て義経賛美しまくってます。今回、その義経と父との狭間で困惑することになり、俄然「義経を慕う景季」という設定が生きてきました。父を振り切り義経についてきてくれた彼の今後にいっそう注目です。
 景時とやりあったあと心揺らぐ義経を励ます佐藤継信がとてもいい。寡黙な彼がめずらしく雄弁です。まるで「何か」の前兆のように…(泣)。義経と出会えて「生きることのすがすがしさを知りました」…だなんて…泣かせます。彼こそ武士の鑑です。
 義経のまっすぐさが一貫して描かれた今回は実に爽快でおもしろかった。景時の抗議に一歩も引かない強気なまなざし、まぶたを閉じて脳内で進軍シミュレーションするクールな表情、そして嵐の船上での狂的な笑み。勝機を見つけた鬼神の目です。これだっ!これが義経だ!ふだんおとなしいタッキー義経だからこそインパクト大。行け九郎!放たれた矢となれ、天かける龍となれ!今回やたら義経のセリフがかっこよくてしびれました。たとえ危険な賭けでもこんな義経にならついてゆく。ついてゆかなきゃ漢(おとこ)じゃねえ!
 さあ次回はいよいよ屋島の合戦です。しかし…待ち遠しいような永遠に次回がきてほしくないような…。予告をみただけで涙が止まらなくなった私は果たして次回放送を最後まできちんと見届けることができるのでしょうか。 

第三十二回「屋島の合戦」8/14
 義経軍は嵐の海に乗り出して超高速で四国は阿波へたどりつき、讃岐山地を越えて一気に屋島の平家を襲撃します。
 さて屋島の合戦といえば「扇の的」。小船に扇を掲げて射てみよと挑発する平家に、源氏武者らは我が我がと名乗りをあげます.。そんななか義経は自信なさげなひとりの若者に注目します。彼の名は那須与一。「それがしには無理かと存じます…」弱気な発言に逆に冷静な判断力と分析力をみてとった義経は、あえて彼を大役に抜擢します。
 しかしこれは成功すればヒーローだけど仕損じたら即自害の超ハイリスク任務。名だたる猛者どもが「あっ俺今日カゼぎみだから…」「うっ持病の脚気が…」と次々辞退→若造の与一にムリヤリ押し付ける→与一いやがる→義経キレる、という本来の展開のほうが情けなくて笑えるのに。でもタッキー義経は「バカヤロー俺の言うこと聞けんなら荷物まとめてとっとと帰れ!」(by「平家物語」※意訳)なんて言うキャラじゃないですね。
 那須与一、演じるはタッキーの相方・今井翼くん。某バラエティーの流鏑馬ごっこでことごとく的を外してズッコケてる彼の姿を思い出し「大丈夫かよ」と案じてましたが、鎧兜に身を固めたビジュアルは凛々しくてばっちり決まってる。華やかながら謙虚で実直な若武者の雰囲気がよく出ていて好感が持てます。(最後までニコリともしないストイックさもいい)イベント回のゲスト出演としては効果抜群、悪くないです。
 的を狙うのがジャニーズの翼くんなら、的を掲げるのは元モー娘のゴマキ。源平合戦のアイドル対決!現代風美少女のゴマキ、初登場時は気まずいくらい似合ってなかったカツラと装束が今は案外しっくりハマッてみえる。演技もややブッキラボーながら平家への忠節と源氏の兄への思いにゆれる胸のうちが表情からうかがえてなかなかよかったです。
 与一によって扇の的はみごと射落とされ源氏勢は無邪気に拍手喝采、対する平家勢は陰鬱に静まり返ります。「平家物語」では与一の妙技に源氏も平家も大いに沸き立ったとありますが、やっぱり現実の平家は落胆するよりほかなかったと思います。海に落とされやがて沈みゆく扇、それは平家の不吉な未来の象徴でした。
 屋島合戦に勝利した源氏ですが、海戦ではどうしても平家に劣るため、地元水軍を味方につけねばなりません。そこで伊勢三郎大活躍!単身、阿波水軍の陣に乗り込みうまいこと言って源氏軍に引き入れます。個人的にこのエピソード大好きなので、はしょられなくて本当によかった。ナンチャン三郎の大胆不敵なへらへら笑顔の頼もしいこと。こういう現場ではエリートではなくアウトローが役に立つのが愉快です。
 しかしそんな朗報と時を同じくして義経主従に悲劇が…。継信…!義経を狙う平資盛の矢から主を守ろうとして…って、ちょっと待て。なぜ資盛なの。教経出さんかい!平家随一の猛将・教経が相手ならば不足はないが、よりによってなんであんなボンボンに大事な継信を殺されにゃならんのだ。(ゴメンね資盛恨みはないが)一ノ谷合戦での平敦盛スルーは許せても平教経のいない屋島・壇ノ浦合戦なんて考えられない。那須与一のように教経だってゲストで出せばいいのに。ただでさえ平家には強い男が不足しているんだから。知盛は長門に遠征中だし、重衡は捕われの身だし、宗盛は論外だし…。
 いやもうそんなことはどうでもいい。今回は継信がすべてです。死にゆく継信と見守る義経主従のやりとりこそが最大のハイライト。わかっていたこととはいえ…覚悟はできていたというのに…つらくて寂しくて私も義経主従とともに泣きました。
 「継信、こののちも私のそばに居れ」「はい…居りまする」 「皆して平泉に戻ろうではないか、今ここで眠ってはならぬ!」 「心得ましてござる…」義経、継信、両者のセリフと涙が突き刺さるようなせつなさで胸に迫ります。息絶えた継信を囲んで主従のテーマソングを歌う郎党衆にも泣かされます。ただ…こういう大事なシーンに言わずもがなのお徳ナレーションをかぶせるのはやめとくれ…。
 悲しくつらい永遠の別れ…しかしこの継信の死ほど「満ち足りた死」はないと思います。主を守りその主に看取られる、その名と忠義を末永く語り継がれる、武士にとってこれほどの名誉はありません。死してなお皆の胸に生き続ける継信、彼はきっと幸せ者です。…そう思わねばせつなくてやってられません。
 満足げに旅立った継信とひきかえ、残された義経は悲しみと無力感に打ちひしがれます。遺髪を手に「戦が終わるまで私とともにあれ」とつぶやく姿が痛ましい。タッキー義経、宮内継信、ともに演技を超えた最高の演技でした。そして継信役の宮内敦士さん、お疲れさまでした…私はすっかりファンになりました。すばらしい継信をありがとう!

第三十三回「弁慶走る」8/21
 屋島の合戦に勝利したものの源氏軍には圧倒的に水軍が足りません。多数の水軍を擁する紀州の熊野別当をぜひとも味方につけたいところ。その交渉役に、なんと弁慶が名乗りを上げます。口のうまい伊勢三郎や海賊仲間によしみのある駿河次郎ならともかく、バカ正直の熱血漢弁慶に交渉役などつとまるのか?しかし義経は、亡き継信にかわって…という弁慶の熱い思いを汲んでこの役目を託します。「郎党をもう失いたくない」という不安を必死でこらえながら…。
 さて交渉相手の熊野別当湛増(原田芳雄)。実は彼は弁慶の父という説もある。もしそうなら弁慶が交渉役を志願したことにも納得がいきますが、今回の湛増は赤の他人、弁慶にはせいぜい鎌倉の猟師・杢助の娘婿という微妙な切り札しかない。そのうえ策略も何もない。あるのは気合と熱意のみ。なんて無謀な!でもそれでこそ弁慶です。
 ともかく今回はマツケン弁慶ワンマンショー。湛増屋敷の前でさっそく家来衆とひと悶着。戦う弁慶のかっこよさを余すところなくみせてくれるのね!と思いきや、そっくりさん弁慶の登場で「あっここ笑うとこだったんだ」と気づきました。気づいた時にはニセ弁慶は「弁慶の泣き所」を打たれて早々にハケていきました。いったい何だったのアレ…。
 ともあれ湛増に目通り叶った弁慶は直球勝負で源氏への協力を頼みますが断られ、アレよアレよという間になぜか闘鶏で決着をつけることに。この大河、有名エピソードをすっとばしたかと思えばこういうマイナーエピソードを拾ってくれます。本来は赤い鶏(平家)と白い鶏(源氏)を戦わせますが、今回は湛増の鶏と弁慶の鶏が戦い、弁慶の鶏が負けてしまいます。(弁慶の鶏はハゲててあからさまに弱そうだった)この勝負に命を賭けていた弁慶は覚悟を決めますが、湛増は彼の一途な忠心とその彼を心酔させる義経という男の真価を汲み取って、ついに源氏への味方を約束してくれます。「おぬしの命、義経殿にくれてやるのよ」くぅ〜かっこいい!湛増の懐の深さ、豪胆さにはしびれます。熊野を牛耳るえらい人のわりには山賊のかしらみたいなワイルド系なのも意外でステキでした。
 いい報せを一日も早く伝えるべく弁慶走る!本当にうれしそうに走ってく。(ガッツポーズまで飛び出した)走って走ってあっというまに義経のもとへ…早っ!しかしこの大河のキャラはみんな移動が異様に早いのでいまさら驚くまい。(牛若少年の鞍馬⇔常盤邸とかうつぼの京⇔奥州とか)
 それよりもびっくりなのは義経の宮崎アニメヒロインばりの超能力。カモメとのテレパシーで弁慶の居場所をドンピシャで言い当てます。今にも「コナン…コナンが呼んでる!」とか言い出しそうなラナチック義経。船上から弁慶を発見して喜ぶ義経と仲間達、そんな皆に手を振り応える弁慶のシーンなんて完全に「未来少年コナン」最終回。宮崎駿ファンでもある私はつい嬉しくなって、「ありえねえ」とツッ込むタイミングを逃してしまいました。
 それにしてもこのドラマの弁慶はつくづく不器用であぶなっかしい。いや、そこがいいんだけど…これでは義経の保護者というよりは義経保護者。帰還した弁慶を迎える義経の表情は、頼れる郎党が戻ってきた安堵の顔というよりは、「はじめてのおつかい」から帰ってきた幼児の無事を喜ぶ親のようだった。そもそも弁慶のみならず郎党たちみんな、義経を慕ってキャッキャとはしゃぐ子供のよう。本当は誰よりも義経が子供なのに!まだまだ甘えたい盛り(?)の子供なのに…。思えば郎党のなかでひとり大人の落ち着きを持っていたのが継信でした。その継信亡き今、弁慶よ「父」になれ。年長者の包容力をみせてくれ!そう…かつて初めて人を殺めた遮那王を励ました時のように…。
 平家は得意の海戦に余裕ぶっこき、法皇は義経の働きぶりにニンマリ、そして鎌倉では頼朝が義経の動向をまるで他人のゲームのようにクールに見守っています。「危ぶんでおられるのか楽しんでおられるのか…」政子に問われてうっすらと笑み(のようなもの)を浮かべる頼朝…実際どっちなの?このところ本当に頼朝の真意がわかりません。政子は楽しんでそうだけど…苦戦する義経のことも、苦悩する頼朝のことも。
 今回は久々にのほほんと楽しい回でした。弁慶の活躍はマンガチックでおもしろかったし、ゲストキャラの湛増もかっこよかったし、千鳥の太もももセクシーだった(いらんこというな)。こういう息抜き的なストーリーもいいものです。ハードな最終決戦を目前に控えているだけに…。

第三十四回「妹への密書」8/28
 瀬戸内海各地の水軍を味方につけつつ西へ西へ、義経軍は決戦の海・壇ノ浦へ刻一刻と近づいています。
 そしてお徳と烏丸もまた源平の行く末を見届けるべく京から壇ノ浦へ…相変わらず移動の早いこと。まるでスタジアムに野球観戦に出かけるかのような気軽さもすごい。しかし「戦ののちには何がありますねやろ…」というお徳の言葉は暗示的で印象深かった。このセリフだけでもお徳が義経のもとに来た意味があります。
 京ではうつぼ・静・正妻(萌)が鉢合わせ、すわ三つ巴の戦い…にはなりません。義経をめぐる女の子たちはなぜか火花を散らすことなくスンナリ仲良くなっちゃう。男をめぐる女の情念なんて実際はそんな甘っちょろいもんじゃないでしょうが、義経の人徳のたまものということで納得しておきましょう。おっとり静、おてんばうつぼ、きまじめ萌、それぞれから愛される義経はやっぱりいい男です。
 しかし萌の痛々しい心中を察してうつぼは複雑。義経への思いをあきらめて結婚か…?その話に動揺しまくる喜三太くん、やっぱりうつぼのことが好きなのね。彼女が義経に片思いしているのを承知で、むしろそんなうつぼだからこそ好きだったんでしょう。自らの失恋とうつぼの失恋…心優しい喜三太にはダブルの痛手。うつぼと喜三太、お似合いなのに。くっつけばいいのに。ひとり義経のみがニッコリいい笑顔。妹のように思っていたうつぼの幸せを純粋に喜んでいるもよう。まったくニブいお人です。
 妹といえば、平家にいる義経の実の妹・能子が今回の主役なのでした。もともとあまり存在感のない義経の妹のエピソードなどそんなに掘り下げて描かなくても…なんて思ってた私ですが、意外にこれがけっこうよかった。じんわりきました。
 赤子の頃に別れたきりの妹とはいえ、肉親思いの義経にとっては大切な身内のひとり。屋島の合戦で扇の的を掲げていたのがその妹と知って一挙に思いがこみあげます。あの役目をムリヤリやらされたんじゃないか、義経の妹ということでいじめられているんじゃないか…なんていらぬ心配もつのったことでしょう。
 能子は能子で、危険な役目に志願したのは平家への忠誠を示すためではあるけれど、源氏方の兄をこの目で見たい、あわよくば妹だと気づいてほしい…というけなげな思いもあったはず。そこへトドメのあの手紙。あんなに情のこもった手紙が届いたらそりゃ泣きますわ…。手紙の内容もさることながら、それを読み上げるタッキー義経の静かなやさしい声がまたいいのです。思わず能子がうらやましくなったほど。妹の成長を喜びその身を案じる兄の思いやりがひしひしと伝わってくる、今回最高の名シーンでした。
 ゴマキ能子については当初一切期待してなかったのですが最近意外といい感じ。アクのない率直な演技でドラマにすんなり溶け込んでます。しかしながらルックス的にどうも鼻っ柱の強い子にみえてしまうので、守ってあげたい幸薄な少女役としてはやや違和感アリ。どうせならルックス通り強気な女の子という設定にしていれば今回の滂沱の涙ももっと効果的だったのに。あたりさわりのない平家女性陣にはひとりくらいストーリーを引っ掻き回す強烈キャラがほしいところです。
 そう…前々から思っていたことですが平家の女たちのシーンはメリハリがなくてつまらない。今回の安徳帝にまつわる密議だって本来ならもっと緊迫感あるシーンになるはずなのに何だかタルい。この女の人誰だっけ、とこの期に及んで見分けがつかない…のは単に私に記憶力がないからですが、せっかく名前がついてても出番も少ないしインパクトもない女性たちに今さら「活躍」されても感情移入しにくい。いじわる継母役の領子だけは目立ってるけど…。やはり義経というタイトルで宮尾本平家物語をやるのはムリがあるのか。
 ともあれ次回はいよいよ源平決戦、壇ノ浦。いつもより長くて派手な予告が見ごたえありすぎ!スピーディな一ノ谷合戦、絵画的な屋島合戦もいいけれどやはり一番ドラマチックなのは壇ノ浦。平教経が出ないことに未だわだかまりの残る私ですが、教経の代役が知盛なのは大歓迎。長身の阿部知盛と身軽なタッキー義経の最初で最後の直接対決が楽しみです。

第三十五回「決戦・壇ノ浦」9/4
 ついに壇ノ浦決戦!とうとうここまできました。雅な旧時代(平家)がシビアな新時代(源氏)に滅ぼされる、象徴的な一戦です。
 戦を前に先陣をめぐって義経と景時がまたゴッツンコ。前回の逆艪論争はどっちの言い分ももっともでしたが、今回は景時がひとり功を焦っているようにみえた。いかに効率よく勝つかを最優先する義経と、戦を手柄を立てるための個人プレーの場と考える景時とはどうしたって相容れない。景時のみならず坂東武士は皆そうなのだろうけど…。
 船戦に慣れた平家がやや優勢の中、さあ義経アンチ格好の叩きどころ「漕ぎ手を射よ!」ですよ。清廉潔白なタッキー義経にはやらせないんじゃないかと思ってましたがやってくれました。非戦闘員である水夫・楫取を狙うなんて!ルール違反といってしまえばそれまでですが、やむなく連れてこられた女子供じゃあるまいし、平家に与して戦に貢献している時点で「非戦闘員」ではないと思うんだが…。そもそも武士は彼らを船の動力としてしかみておらず、何も現代的ヒューマニズムから保護していたわけではない。いずれにしてもその動力を狙うことによる利点に着眼した義経の戦闘センスこそおそるべし。敵の弱点を鋭く見つけてすぐさま叩く判断力・決断力はまさしく天才戦術家ならではのもの。でもこのドラマではこの戦法が効果的なんだかどうなんだかハッキリしない描かれ方でちょっと消化不良でした。
 そして今回のメインイベント、知盛VS義経!俊敏で軽やかなタッキー義経もどっしりド迫力の阿部知盛も申し分なくかっこいい。キラキラ金粉シャワーもまた一興…五条大橋の過剰な桜吹雪といい、この大河、対決シーンではとにかく何かを撒き散らさなきゃすまないようです。
 そしてお約束の八艘飛び。タッキー義経、いつもより多く飛んでおります。宙返りのサービスつき!(さすがジャニーズ)飛んで飛んでまわってまわる義経の超人っぷりに、知盛はすっかりやる気をなくしてしまいました。
 男達が戦うかたわらで女達は秘策をめぐらしていた…原作(宮尾本)の安徳帝すりかえ作戦です。でもコレわざわざこの大河でやらなくてもいいのに。身代わりになる子かわいそう、としか思えない。どうしてもやるというなら「何が何でも生き残ってほしい!」と視聴者に思わせるくらい安徳帝をみっちり魅力的に描くべき。だけど「義経」でそれができようはずもない。今回はそんな小細工しないで原典どおり従容と本人が入水しといたほうがどれだけ素直に感動できたことか。よその子を殺してまで自分達の血を天皇家に残そうとする平家のさもしさばかりが気になって折角の名シーンが台無しです。あ〜もったいない。
 それでも平家の女達の最期(実はほとんど生き残るけど)は何とも悲しくやるせなかった。明子の涙には胸を打たれたし、ゴマキ能子も凛としていじらしかった。そして松坂時子…ドラマ初期は何だかキャピキャピ軽くてイマイチでしたが、清盛の死以降、平家をしょって立つ「凄み」が出てきてさすがでした。義経に向けられた彼女の最期の微笑みは凄絶で息をのむほど美しかった。その真意は果たして虚勢か諦観か…考えさせられます。合掌。
 しかしながら女達がどんなに悲劇を演じようとも、義経がいかに活躍しようとも、この合戦の主役の座は知盛のもの。見るべきものを見て、やるだけのことをやって、恨みつらみを残すことなく颯爽と散る…かっこいいなあもう。平家の大黒柱として、威風堂々とした阿部知盛はばっちりハマり役でした。(私のイメージする知盛像はもうちょっとシニカルで毒があるのだけど…まあいいや)
 知盛はどんな作品でもかっこよく描かれる人気者。私も義経にハマッた当初はそんな知盛が平家の中で一番好きでしたが、あまりにもソツがなく、またあまりにも人気があるので、ソツだらけで不人気な宗盛のほうに次第に心が移ってゆきました(これもまた判官びいき)。そのダメ宗盛、死ぬのがいやでグズグズしていて見かねた家来につき落とされドボン。このみっともないエピソード、鶴見宗盛ならやってくれると思ってました。感動が爆笑に変わった瞬間です。最後まで笑かしてくれる…いやまだ最後じゃない。今後も期待してるよ!(何をだ)
 安徳帝すりかえ作戦の無意味さ、勝敗が決するまでの経緯のわかりにくさ、また弁慶の投げた岩がどうみても手作り感あふれるものだったことなど細部に不満もありましたが、全体的にはケレン味もあり情緒的でもあり、息つく暇もなく面白かったです。
 戦には勝利したものの、義経は達成感とはほど遠い苦い気持を味わいます。自らの手で滅ぼした平家の中にこそ彼の望む世界はあったのに…。平家の滅亡と同時に義経の命運も尽きたような気がします。そんな彼の、真の戦いはこれから…。

第三十六回「源平無常」9/11
 源平の運命を決する壇ノ浦が終わり、ハイッ今回は総集編です。「平家物語」のおさらいをしましょう!…とはいえ大半が回想シーンというのもどうかと思うが(…手抜き?)。まあかわいい牛若赤ちゃんや美しい盛りの常盤様の姿を拝めたからよしとするか。久々に物語序盤のワクワク感を思い出し、同時に放送期間があとわずかであることを思い知らされ、何とも寂しい気持になりました。
 義経は戦後処理に明け暮れながら、つのるのはむなしさばかり。「戦には勝ったというのに…喜べぬ」そんななか平家の総大将・宗盛と対面します。宗盛、服装はすっかり質素なものになっちゃいましたがいじけっ子ぶりは健在。「御大将は我ではない、知盛ぞ」と拗ね、義経に対しては「あの牛若よな!」と言外に恩知らずをなじる。しかし母時子の死を伝えられて思わず落涙…誰よりも愛情に飢えているくせにそれをうまく伝えられない不器用な男。悲しいね…。
 また義経は主上(安徳帝)と三種の神器のひとつ・宝剣の行方を問うべく、平家の女性達を訪ねます。建礼門院徳子、知盛の妻明子、重衡の妻輔子…いずれも自害を試みつつ救われた面々。助けられてラッキーだったのか、皆とともに波間に沈んだほうが幸せだったのか…敵将・義経への恨めしげな目つきがすべてを語っています。こわいこわい。「平家に憎しみでもありましたか…?」徳子の天然なのか皮肉なのかよくわからない言葉が義経の胸を刺す。憎くもない相手を倒さなければならない「さだめ」を背負う彼には酷な質問です。この「さだめ」ゆえ、痛快なはずの連戦連勝も苦いものとなりました。今さらだけど、義経が大活躍する合戦シーンくらいは苦悩や悲しみよりもスカッと強さをみせてほしかった。いっこも悩まないパッパラパー義経も何ですが、今回の義経は悩みすぎるくらいよく悩む。いい加減「うじうじすんな!」と叫びたいところですが、タッキーのおかげで何とかキレずにすんでます。あの美しすぎる憂い顔は反則です。
 平家の生き残り達からことごとく怨念ビームを浴びてすっかりお疲れの義経は、ようやっと異父妹・能子と再会してひとときの安らぎを得ます。妹に向ける義経のまなざし、セリフ、所作…すべてのなんと慈愛に満ちて優しいことか。「やっとめぐり会うたな…!」タッキー義経はこういう繊細な演技が本当にうまい。二十年ぶりに会えた妹への万感の思いがびしばし伝わってきます。恋人・静と対する時よりよっぽど深い愛情が感じられる…のはちょっと問題か。肉親命!の彼ならではの現象と思っておきましょう。
 ゴマキ能子の演技も思いのほかよかった。兄と袂を分かつと決意したものの、兄の無償の優しさはしみじみと嬉しく…。「兄上様…!御文ありがとう存じました…」平家の妹エピソードなんかどうでもいいからチャッチャとすませてくれと思ってたこの私を泣かせるとは。ゴマキ、やるな!元モー娘のアイドルなんてしょせん話題づくりの客寄せパンダよ、と軽く見てたことをあやまります。うれしい誤算をありがとう。
 義経が優しい清盛(平家)への恩愛をふりきって冷たい頼朝(源氏)のため一心に働くのと同様、この能子も、情深い兄義経のもとに身を寄せたほうがよっぱど幸せだろうに、尾羽打ち枯らした平家とともに生きる苦難の道を選びます。源氏の義経と平家の能子、父の血に従って離れ離れにはなれど、母の血で結ばれたふたりの心の絆はずっと続いてゆく…そんな希望がうかがえる、悲しくも感慨深い別れでした。
 母を同じくする兄と妹は敵味方に別れていてもこんなふうに心を通わせることができるのに、父を同じくする兄弟…頼朝と義経の場合はどうでしょう。この時代、重んじられるのは母より父の血ですが、真のつながりは母の血のなかにこそあったのでは。(こと弟にきびしい頼朝も同母の弟妹には特別優しかったというし)義経の今後を思えば「父の血」なんてむしろ忌まわしい呪縛のようにも思えます。そんなものにこだわったがゆえ、一番生きにくい道を進むことになってしまったのですから…。
 それでも…生きにくいか生きやすいかなんて考えもせずまっすぐ生きる彼だからこそ、我々は応援せずにはいられない。悲しい運命がはじまるこれからが義経物語の真骨頂!燃える判官びいきスピリッツで見守ってまいりましょう。

第三十七回「平家最後の秘密」9/18
 平家追討戦の一番の功労者義経に、後白河法皇から直々に「よくやった!」とお褒めの文が届きました。さすが法皇様、人心掌握にぬかりなし。一方鎌倉からは何の音沙汰もありません。義経の無断任官を依然として許していない頼朝は、彼のほかに無断任官した御家人に処罰をくだし、義経だけは咎めずにその進退を見極めることにしたのです。この期に及んでまだ「試す」んだってよ。肉親を特別扱いしないとかいってこういう時だけ逆の意味で特別扱い。そんなわかりにくいことしないでキチンと平等に弟も叱れよ!単純な義経が許してもらえたと勘違いすることくらい再三の「試し」の結果でわかってるだろ兄さん。はあ〜。もういいよアンタ。試すだなんてウソばっかり。わざと放置してドジふませて追放の口実にしたいだけなんだと正直に言えやオラァッ!(タワゴトレビューならぬ暴言レビューと化してきました)
 また頼朝は「三種の神器」を武家政権樹立のための駆け引きに使おうと思っていたのに、義経がそれを自分にではなく法皇に返してしまったため大激怒。でも…拾ったものを元の持ち主に返すのは当たり前、ましてや相手は天皇家。その“当たり前”をやっちゃいかんのならちゃんとその旨伝えとかんかい。それを怠って「何もわかっておらぬ」ってお前こそ何を勝手な。義経の戦術を非常識だ非常識だと責めるけど、頼朝の政略だってとんでもなく非常識。武士が朝廷と対等に渡り合おうなんていわば前人未到のクーデター。そんな特殊思想を遠方にいるバトル専門の弟が汲めるもんか。(そういう頼朝サイドの手抜かりは説明してくれないんだからなあこのドラマ)ひとりだけ蚊帳の外の義経はわけのわからぬままある日突然みんなからシカトされるようになりました。ガキのイジメをみているようです。
 ドラマでマンガで小説でいろんな頼朝がいるけれど、見ていてこんなに気持の悪い頼朝は初めて。憎まれ役じゃないのに憎たらしいなんて。頼朝だって優しいんですよツライんですよとアピールしてるのがむしろアダ。わざとらしい。設定どおり「情」ある頼朝なら政治に不慣れな義経にもっと心配りするだろうに、何かにつけてネチネチ試しては「理解してくれない…」とひとりよがりに悲劇づら。やることはまわりくどいし言うことは弁解くさいし、ぶっちゃけ見苦しい。たとえ極悪人イメージは払拭されたって、こんなヒクツでイビツな頼朝魅力的か?
 中井頼朝、最初は新鮮で自然体ですごーく期待してたのに。回を重ねるごとにシビアな史実のフォローでがんじがらめになって余裕もおもしろみもなくなっちゃって…。最近は出てくるたびにイチャモンつけたい気持でいっぱい。けっ頼朝なんて…中井頼朝なんて…ちくしょー好きだー!こんだけボロクソ言っといて実はまだ好き。好きだからこそ憎さもつのる。「本当は優しい頼朝」という設定自体は歓迎なのです。それがどうもうまくハマッてないから歯がゆいだけ。きっともっと魅力的にできるはずなのに。でもまあ最後まで見届けないとまだ何とも言えません。なんたって私はささいなことでコロコロ意見の変わる節操なしですから。
 鎌倉方面にやたらイライラしたせいで、平家女人たちとのエピソードが思いがけず心癒されるものとなりました。中越徳子…眉毛がまともになってよかったね。美人さんなのにあのゴキゲンなおじゃる眉で今まですべてが台無しだったね。流されるままボンヤリ生きてきて子や夫に対する愛情も稀薄だった(ようにみえた)彼女、髪を切り、不自然なおじゃる眉から天然眉毛になり、ようやくキリリと「自我」が戻りました。平家のために生かされて何もかも捨てた女と、源氏のために生きたゆえ捨てられようとしている男…「この世は思わぬことばかりにて…」「まことに…」徳子と義経の間にシンパシィが生まれた瞬間。この因縁めいたツーショットも味わい深くていいですね。
 安徳帝すりかえ設定はやっぱり蛇足だとは思うけど、マニュアル人間ではない義経ならではの優しさ(もしくは甘さ)を示すエピソードとして効果的でした。「秘密」を見逃してくれた義経に静かに頭を下げる平家の女達のシーンも、前回の恨めしげなまなざしが印象的だったぶん感慨もひとしおです。
 「戦でしか役に立てない私はもはや不要ということか…」義経…かわいそうだけどその通りなのよ…。「抱え込んだ重いものはいっそ捨てられよ」「求めても得られぬゆえ人は苦しむ」師の御坊の言葉がいちいち胸を衝く。そう、解き放たれたらどんなに楽か。でも捨てられない、求めずにはいられないのが義経の義経たるゆえん。くぅ〜っがんばれ!タッキー義経のうるうる涙目は最強です。応援せずにいられようか。

第三十八回「遠き鎌倉」9/25
 前回義経がせっかく身を清めてしたためた起請文も頼朝には効果なし。あの水垢離シーンは非常に効果的でしたが…タッキー義経ファンには。フガッ!(←鼻血を噴く音)頼朝兄さんは返事を出さずにま〜た様子を見るんだってさ。いいかげんにしろ!「こいつはおバカだからハッキリ言わんとダメだ」とそろそろ気づけよ。ここまでくるとおバカなのはむしろ頼朝のほう。そら後白河法皇もニンマリ笑うわ。「頼朝は人を試すのが好みのようじゃ…」完全に読まれてる。中途半端な頼朝とひきかえ法皇様の堂々たるドス黒さはお見事。悪の魅力にシビれます。このドラマに限っては法皇様のほうが頼朝より一枚も二枚も上手にみえる。
 久々登場の行家おじちゃん、この人の毒々しさからも目が離せません。義仲との同族争いのことをあげつらうイケズさがたまらない。ろこつにウザがる義経にかまわずひたすらアタック。→義経キレる→行家絶句→気まずい空気…こんなやりとりこれで何回目?懲りない行家、見あげた根性です。
 義経シカト作戦(by鎌倉)により、梶原景季も義経のもとを去ることに。お互い憎みあってるわけじゃないのに悲しいね…でも小栗景季は優しそうでいてどこか冷淡な雰囲気もあるので、いきなり豹変して冷たく笑いながら去る、みたいなパターンでもよかったかも。利で動く坂東武士のシビアさを体現する人物がいたほうが義経の「浮き」っぷりがよくわかる。さわやか小栗景季にそんな汚れ役がムリならば、せめてもうひとりくらい義経に近づく武士がいればよかったのに。義経をとりまく坂東武者が梶原父子だけではなあ…。
 鎌倉では大姫が「九郎の叔父上にお会いしたい」とつぶやき、それを聞いた政子は義経を鎌倉に呼び寄せようと思案します。政子あんた…義経には「肉親の情」を持つことを禁じておきながら、自分はといえば我が子のために私情優先しまくり。なんて勝手な女だっ!でも人間ってしょせんエゴイスティックなものよね…。それに大姫の心を救うには確かに頼朝と政子ではダメだ。どうしたってダメだ。政治家としては最高でも家庭人としては最低の悲しき因業夫婦です、きゃつらは。
 義経の命を受けて毎月義高の供養塔に花を供えていた千鳥。彼女はオリジナルキャラのなかではわりに効果的に登場しますね。しかしほかのオリキャラは今どこで何してるんだろう…手古奈はどうしてるの?(主の平頼盛は久々に出てきたのに)頼朝の「忍び寄る魔の手」を逃れてちゃんと鎌倉でやっていけてるのかな?うつぼは前回で結婚したことが明らかになりましたが、ここに至ってわざわざ無名キャラと結婚させる意図がよくわからない。吉次のパートナーあかねは?熊(鷲尾)の妹・まごめはどうした?…多くのオリキャラを出すだけ出していまいち使い切れてない感じ。それならレギュラーキャラの義経郎党たちをせめてもうちょっと丁寧に描いてほしかったなあ。最近すっかり背景と化してて悲しい。
 兄頼朝に気持を伝えたい一心の義経は、宗盛親子を護送する名目で鎌倉を目指します。その途、南都に送られる重衡一行と遭遇し、宗盛と重衡は久々の対面を果たします。タッキー義経のうるうる涙目に負けず劣らず宗盛の臆面もないポロポロ涙も胸キュンもの。「すべては…私のせいよな!」ここで「うん」といわずに優しく庇ってあげるところがさすが重衡。宗盛のようなダメ兄貴も頼盛のような裏切り者も決して見限らず互いにいたわり合える平家ファミリーの真髄をみました。親子も兄弟も叔父甥もみんな仲良しこよし。それにひきかえ源氏はいったい何やってるんだろう…義経はさぞうらやましく、そして情けなく思ったことでしょう。
 さて頼朝はあれだけ義経に対してネチネチ怒っときながら、いざ彼が会いにやってきたとなるとセンチに迷います。へんなの。そんな頼朝に大江広元は「迎えるべきでない」ときっぱり進言。松尾広元の無機質なトーンがいい味出してる。今後は彼が頼朝のかわりに手を汚すことになるのかな?
 それにしても…覚悟していたこととはいえ、ロングヴァージョンの予告「今後の義経」がもうかわいそうでかわいそうで…でもがんばって見届けてゆかねば。とりあえず次回は「涙の腰越状」。なんか往年の名曲「涙のリクエスト」を連想させるタイトルですね。♪最後の書状に祈りをこめて因幡前司(大江広元)様〜♪青筋立ててる兄貴に伝えてまだ好きだよと〜♪…すみません。次回を見るのが怖さにすでに現実逃避がはじまってます。♪いいさ政子と抱き合いながら〜アホな舎弟を笑ってくれよ〜♪(まだやるか)

第三十九回「涙の腰越状」10/2
 腰越に足止めされた義経主従は日々をやきもきとすごします。そんな最中、政子は心を病んだ娘大姫のためひそかに義経とのコンタクトを試みますが、義経は頼朝直々の許しがなければ…とこれを拒絶。ソデにされた政子は激怒!おのれのスタンドプレーを棚に上げて義経を恨みます。「許せぬ…!」ゴゴゴゴ…(←効果音がコワイ)今回の政子は時政の言うとおりただの哀れで愚かなひとりの母親。つい同情したくもなるけど、きっと今後はその私情をふりかざして政治にくちばし挟みまくるんだろうな〜。くわばらくわばら。彼女はまさに“引っ掻き回す女”。でも、こんなふうに何やらかすんだろーとヒヤヒヤさせてくれるほうがドラマ的にオイシイ。頼朝がどうにも味気ないぶん、彼女がもっと昼ドラばりの強烈な汚れ役に徹してくれたらいいのに。(政子ファンが怒るか)
 しかし義経も今回はなんかヘン。あの性格なら大姫哀れさにうかうかと誘いに乗って会いに行きそうなものを。兄のことを一番に考えつつも目の前の者への情を優先してしまって墓穴を掘る…というのが彼のお決まりパターンなのに。今回ばかりはこれまでの失敗をかえりみて心を戒めたか。(それとも兄上のことで頭がいっぱいで大姫のことまで思いが及ばなかったのか)でも結局政子を怒らせてみずから首を絞めてしまうことになるんだから、どっちにしても何をやってももうダメなんだよ、これからの義経は…。
 そうそう、何やってもダメな人がもうひとりいました。平宗盛。頼朝と対面するも「どうか命ばかりは!」と見苦しく取りすがりあっさり見切られちゃった。どうせ見切られるんならもっとねちっこく命乞いすればよかったのに。最近の彼はなんかお行儀がよすぎて笑いどころがないから肩透かしです(何を求めてるんだ彼に…)。
 ひどい扱いを受けながら頑なに兄を信じる義経を見るに見かねた弁慶は、ついに主に物申します。歯に衣着せぬ弁慶の訴えは、義経自身がひた隠してきた悲しい本音そのものでもありましょう。鎌倉殿の一御家人であると理屈ではわかっていても兄と慕う感情を捨てられない…所領も栄達もいらない、ほしいのは温かい兄弟の情だけ。しかしどんなに望んでもそんなものはもらえない。となると弁慶ならずとも言いたいことはみな同じ。あんな兄貴捨てちゃえよ!
 しかしただでさえ精神的にまいっていたところにイタイところをつかれた義経は、つい激昂して弁慶を放逐してしまいます。どうせすぐ仲直りするくせに…とはわかっていてもやっぱりこの仲良し主従の決裂はみていて胸がキューッと苦しくなる。弁慶のつらさ、義経の悲しみ、どちらも同じくらい切実で痛々しいだけに…。
 千鳥の家でひとりシクシク涙にくれる弁慶。飼い主に怒られてしょんぼりしてる大型犬のよう…。主に意見したり励ましたりと要所要所ではいいとこ見せてくれるんだけど、基本的にこの弁慶は泣くわ拗ねるわヤキモチやくわでまるで手のかかるコドモ。従来の弁慶イメージとはちょっとちがうけどおもしろいからいいか。こうなったらもうこのいじられキャラ路線を最後までガシッと貫いてください。
 弁慶と仲直りして頭を冷やした義経は、おのれの本心を文にしたためることにします。思いをつづってゆくうちにこれまでの苦難の日々が思い出され…長い長〜い回想シーンに突入。寄る辺なき身の義経が兄のもとにたどりつきどれほど嬉しく心強かったかが、こうして振り返ってみるとよくわかります。頼朝と義経の出会い&ふたりきりの酒宴はつくづく名シーン。この頃の中井頼朝は本当に魅力的だったのに…「なんでこんなことになっちゃったんだ…」と義経ともどもやるせない気持にさせられます。出会った頃の兄の優しさ、そしてさびしさを知っているからこそ、義経はこれだけむごい仕打ちを受けてもなおしゃにむに慕い続けずにはいられないのでしょうか。
 渾身の思いをこめた義経の書状、果たして頼朝はこれを読むのか読まないのか。待て次回!(どっちにしても結果は変わらないけど…)「涙の腰越状」というわりに今回泣いたのは弁慶だけでしたが、次回は「血の涙」!うわぁ…次こそが腰越の悲劇の本番なのね…。タイトルみただけでヘコみます。

第四十回「血の涙」10/9
 義経が心血を注いでしたためた書状は無事大江広元に届けられますが、それを真っ先に読んだ政子は「見せるべきでない」と判断。わざわざ皆の面前で書状の存在をほのめかし、頼朝に「読むには及ばず」と言わせます。夫の行動パターンを熟知した妻の悪だくみ、うまうまと成功。政子はいい感じにどす黒さがドロドロ煮詰まってきました。頼朝のためというよりは自分のため、鎌倉のためというよりは北条氏の安泰のためにひたすら動いている感じ。ダンナへの愛なんて二の次なのね…むしろダンナの苦しむ姿をみて楽しんでいるようにすら思えます。おまけにその弟もいじめちゃうんだからまったくとんだ女王様。怖いなあ。もっとやってください。
 また以前はやたら義経を買ってるようなそぶりをみせてた北条義時も「(義経の処遇については)話し合いの余地などない」とにべもない。義経が落ち目になったらとたんに冷淡。坂東武士のシビアな現実主義の一端がうかがえます。
 一方「読まない」と宣言しておきながら書状が気になって仕方がない頼朝。大江広元はそんな頼朝に書状をこっそり渡します。頼朝、せっかくポーカーフェースを気取っても政子や広元、そば近く仕える人たちにあっさり本心読まれてる。大丈夫か?この頼朝は老獪にみえて案外ウブですね。なるほどこれじゃうかうかと上洛して後白河法皇の前なんかに出られないわけだ。
 頼朝は書状を受け取ったものの文箱に手を伸ばしてはやめ、紐をほどいてはやめ…浜辺に出ればついしみじみと腰越方面を眺め…「ええ加減にしなさい」と突っ込みたくなるほど長い長い葛藤の末、ついに書状を開きます。そこにはひたすらに情を乞う弟の悲痛な訴えが…。文を読み上げる義経の低くふるえる声がまた哀切きわまりない。タッキー義経はこういう泣かせる演技が本当に秀逸です。
 文面から伝わってくる弟の純粋でまっすぐな思いに激しく心をゆさぶられた頼朝はつい落涙…えっ落涙?泣いてるの?義経のために泣く頼朝なんて他作品じゃめったにお目にかかれない。ちくしょーやられた!これはやられた。泣かれたらどうしようもない。「なぜわしを苦しめる…!」とか言われたらもうだめ。かわいそう…頼朝がかわいそう。これまでつのりにつのってた中途半端な頼朝像への不満も違和感も今回だけは忘れましょう。きっと彼はホントは「試す」なんて姑息なことせず毎回きちんとアドバイスの手紙を送ってたのよ、でも全部ブラック政子に握りつぶされて届かなかったのよ…とでも思っておきます。(でないと「今さら泣くぐらいならちゃんと指導してやらんかい!」とツッ込んでしまう)
 本当は誰よりも情を求めている頼朝…さもあろう、父はなく母もなく叔父はいるけどロクデナシだし嫁はコワイし嫁の実家もガメついし家人たちはいつ裏切るかわからないし、真の味方が誰ひとりいないなか、ただただ無心に自分を慕ってくれる実の弟がかわいくないわけがない。しかし「鎌倉殿」には私人としての行動は許されない。謀反人(※義経)にこそこそ会ったりしたら御家人衆にしめしがつかない。ましてや「身内を特別扱いしない」と公言してしまってる。弟が兄を思うように兄も弟を思っている…なんて誰にも、当の義経にも気取られるわけにはいかない。「読まねばよかった…」義経の気持がわかるからこそそれを拒まねばならない頼朝の、血を吐くような苦しみが伝わってきます。
 源兄弟が悲劇のどん底にまっさかさまに落ちてゆくなか、義経郎党たちの存在が何よりの救い。苦境にあっても元気に内職(?)。喜三太らはカゴ職人、忠信はプチ仏師姿がすっかり板につき…ほんとにこの主従はどこででも楽しくたくましく生きてゆけますね。忠信の彫った仏像をみて義経は「継信じゃ…」と穏やかにほほえみます。ああ〜この笑顔…!郎党達よこの先なにがあっても殿のこの笑顔だけは守り抜いておくれ…!物語が重苦しくなればなるほど、この主従の温かいシーンをせめて一分一秒でも長く見ていたい。
 兄に会えぬまま追い返されることがわかった晩、ひとり室にこもり「兄上!」と何度も絶叫する義経の姿は痛々しすぎて直視に耐えない。そしてむなしく引きあげていく義経一行をこっそり見送る頼朝…ええいそこまでするならそのまま飛んでって会ってやらんかい!くぅ〜じれったい。今回のタイトル「血の涙」は腰越状からの引用(「紅涙に沈む…」)でしょうが、頼朝と義経、兄弟ゆえに引き裂かれてしまう「血」の悲劇をも表しているんでしょう。本当はわかり合えたかもしれない両者の心の距離がこれからみるみる遠くなってゆくのだと思うと本当にやりきれません。

第四十一回「兄弟絶縁」10/16
 弟義経をすげなく追い返した頼朝は「アイツ逆ギレして鎌倉に反旗をひるがえすのでは…」と気に病みはじめます。そんな心配するんなら前回きちんと会って説得するなり処罰するなりしとけばよかったのに。会いもしないで中途半端な対処をするから疑心暗鬼にとらわれる。結局自業自得なんだってば!
 前回と今回では頼朝はまるで別人ですね。いくら「理」と「情」の間でせめぎあっているとはいえここまでチグハグだと正直わけがわからない。実は彼はジキルとハイドのような二重人格者で優しくなったり冷たくなったり日によって態度がコロコロかわるんだ!というふざけた設定にでもしたほうがいっそ辻褄も合わせやすかろう。そもそも頼朝という人は元来ややこしい性格の持ち主で、脇役として掘り下げるには難解すぎるのです。このドラマでは特に欲張って「理」も「情」もどっちも描こうとしてるからますます収拾がつかなくなってる。単純明快にしろとは言いませんがせめて何考えてるのかぐらいわかるようにしてほしい。彼の不可解さには義経ともども毎回ふりまわされる一方です。
 ともあれ頼朝は義経の力を削ぐため所領を没収、そして平宗盛親子の処刑を義経本人に命じます。鎌倉から追い出しておきながら鎌倉への忠心を試す…なんてイヤらしいやり口か!怒りにわななく義経の表情がいい。鋭く静かな迫力が無言のうちに伝わってきます。鎌倉の使者・盛長の憎たらしい能面ぶりもさすがですね。
 しかし今回は何といっても宗盛が主役。否…ドラマ序盤の屏風のエピソードの時から彼こそがこのドラマの陰の主役でした。かっこいい阿部知盛よりもさわやかな細川重衡よりも私はこの鶴見宗盛が大好きでした。登場人物が総じて「物語の人物」としてキレイに描かれるなか、彼だけは血の通った生身の「人間」として生き生きと自由自在に動きまわっていて、誰よりも存在感がありました。彼がいなければこのドラマは何とも平板で味気ないものになってたことでしょう。
 まっすぐな義経とひねくれた宗盛、正反対にみえる両者ですが、不器用で甘ったれで情に弱いところがとてもよく似ています。やたら心を隠したがる兄頼朝よりも弱さやみっともなさをさらけ出して接してくれるこの宗盛のほうにこそ義経は近しさを感じたのではないでしょうか。そして宗盛もまた義経のなかに自分と同じように愛を乞うさびしい心を感じ取ったゆえ、みずからわだかまりを解き歩み寄ってきたのでしょう。
 宗盛から「優秀な弟たちに嫉妬していた」「恐れすら抱いていた」と打ち明けられた義経は、兄弟というもののダークな部分に初めて思い至ります。仲睦まじい平家ですらそうなのだから源氏なんて…。公正を装っている頼朝だって内心嫉妬や憎しみを燃やしているのでは…。義経の陰鬱な疑念はますます強まったことでしょう。
 ともあれ平家兄弟の場合はそういう齟齬があろうとも仲良く助け合ってゆけるところが立派。それが甘さであり滅びの一因でもあるのですが、疑わしきは殺せ、の源氏のもとでビクビクしながら生きながらえるよりかは平家のように一蓮托生で心穏やかに滅びるほうがよっぽど幸せな人生のような気もします。
 宗盛の最期の微笑…それは時子の場合とは比べるべくもない弱々しいものでしたが、敵味方の垣を超えて心を通じ合えた義経への親しみのようでもあり哀れみのようでもあり…穏やかな悟りと慈愛すら感じさせる、かつての宗盛の姿からは想像もつかない立派な最期でした。鶴見宗盛お疲れさま!マイベスト宗盛はもちろんこの鶴見宗盛に決定です。
 そうそう忘れちゃいけない平重衡、こちらはどこまでも男らしい天晴れな最期でした。このところぐんと見せ場が増えて印象づいた彼ですが輔子という妻がいることはおおかた忘れるとこだった。(ごめん)夫婦なのにまともなツーショットは今回が最初で最後。一話だけで「夫婦の絆」を描ききろうという強引さにびっくりです。そしてその強引なシーンに泣かされるんだからくやしいなあ。名シーンは単独でも十分に見られるものなのですね。でも夫婦の睦まじさをもっと最初からみせてくれていればより切ないいいエピソードになったのに…。
 度重なる兄の残酷な仕打ちに怒りの涙おさまらぬ義経は…ついに決別の言葉を口にします。「付き従う気力も思いも消えうせた!」私は個人的に頼朝義経兄弟が仲良かったらいいのにと願ってますが、この決別宣言にはスカッとした。そりゃあんなつかみどころのない兄貴じゃもうどうしようもないよ。待ってましたと気勢をあげる郎党達の気持がよくわかる。ただ…頼朝と袂を分かつことがどんな結果をもたらすか知っている身としては「がんばれ!」と無邪気に応援できないのが悲しいところです。

第四十二回「鎌倉の陰謀」10/23
 「鎌倉の陰謀」…ああ〜もう見る気なくすタイトルだなあ。毎度毎度つらそ〜に悪事をやってる頼朝を見ているとこっちまで気が滅入る。私情を捨てて仕事に生きる男…というと何だかかっこいいけど、今にも神経性胃炎でぶっ倒れそうな悲痛な顔で仕事してるオヤジのドラマなんか正直あんまり見たくないです。
 京では大地震など災害が相次ぎ、義経は警護と救援に奔走します。そんな折うつぼが再登場。義経を忘れるため結婚した彼女はその夫を震災で失いまたもやひとりぼっち…。でも義経に「また元気な顔を見せてくれねば困るぞ?」なんて優しい笑顔で言われちゃあヘコんでなんかいられません。がんばれうつぼ。また前みたいに無邪気に義経の追っかけしておくれ。でもすぐそばに純で優しいイイヤツ(喜三太)がいることにも気づいてやって…。義経は義経で、「誰にも頼らずひとりで生きてく」といううつぼの悲愴な決意に、兄と別れて独り立ちしようとしている自分の姿を重ねたかもしれません。
 そんな義経に後白河法皇は「伊予守」の位を授けます。鎌倉を追放されて所領は没収されてスッテンテンの義経には法皇様の厚意にすがるよりほか生きる道はない。イチャモンつけてくるだけの鎌倉よりも「役に立ってる」という充足感を味わわせてくれる法皇のために働くほうがよっぽどやりがいもありましょう。法皇だって政治的思惑を抜きにしても従順で心優しくしかも強い義経のことを快く思っていたはず。このドラマを見ていると、義経は法皇と本気でタッグを組んで「新しき国」(実は「古きよき国」)づくりをめざしたほうがよかったのでは…と思えてきます。
 頼朝はそんな義経の動向をあやぶみ景時を遣わします。すでに鎌倉に未練などない義経は慇懃にして冷淡な対応。また正妻・萌の態度も凛としたもの。東国に戻っては…との誘いに決然と「そのようなつもりはございません!」さすがの景時もたじたじと目が泳ぐ。いつもボルテージの低い正妻さんだけにこんな姿にはハッとさせられます。彼女なりに義経を愛しているのですね。義経に引きとめられた時心なしかちょっとうれしげなのもかわいかった。
 そしてやにわに行家おじちゃん登場〜!「うわ〜また来やがったよコイツ…」と義経主従はうんざり顔。でも彼が出てくると無性にほっとするのはなぜ?腹に一物抱えた老獪な奴らばかりのなかで、やたらあけっぴろげでオッチョコチョイな彼の姿はむしろすがすがしい。そして彼は義経が目をそらしがちな部分をいつも鋭く突いてくる。そう、全国制覇をたくらむ頼朝にとって独自に「新しき国」を探そうという義経の動きは謀反にほかならないのです。でもそんな正論も行家おじちゃんが言うとうさんくさく聞こえちゃうからなあ…。
 捨てられた義経を拾おうとする者たちの出現に、捨てた本人の頼朝は戦々恐々。前回は「平家と結ぶのでは…」と疑い今回は「法皇に抱き込まれるのでは…」「行家とくっつくのでは…」とあやぶみ、今後は「奥州藤原氏とヨリを戻すのでは…」と気を揉むにきまってる。味方にすれば心強いが敵に回せばおそろしい…そんな相手をなぜ捨てた?「義経は一途でまっすぐで扱いづらい」というけれど、その義経を法皇様はやすやすと操っておられます。法皇にできることが頼朝にはできない。同じワルでもこういうところに両者の違いが出ています。敵でも何でもまず自分の懐に入れて遊ばせてやる豪胆な法皇にくらべて、頼朝はあまりに閉鎖的で神経質。史実上の勝者は頼朝のほうですが、生きる喜びや愛する幸せを放棄してまで手に入れたその勝利は果たして真に彼の求めたものだったのでしょうか?
 今回タイトルは「鎌倉の陰謀」より「政子の陰謀」にすべきでした。頼朝に義経殺害をそそのかす凄惨な笑顔はまさに夜叉そのもの。「すべて政子におまかせくださいませ!」(なんか数年前にもそんな決め台詞の女主人公がいましたね)彼女が悪の黒幕をやってくれたほうがやっぱり断然盛り上がります。それにひきかえ頼朝は…もういいや。「鎌倉殿」としては義経を消さねばならない、兄としては弟を殺したくない…理と情のジレンマで金縛り状態の彼に「面白み」を求めるのは酷というもの。もういい。ずっと悩んでていい。そのぶん政子にがんばってもらいましょう。
 このところジットリと動きのない回が続いていたから、次回、鎌倉からの刺客を相手に大暴れしてくれそうなタッキー義経に期待が高まります。さあ来い刺客!義経様にギッタギタにやられに来いっ!

第四十三回「堀川夜討」10/30
 鎌倉の危険分子とみなされた義経に、ついに刺客が差し向けられます。世にいう「堀川夜討」です。怒れる義経主従はこれをわけなく返り討ち。久々のアクションシーンは見ごたえたっぷり!タッキー義経のすばらしさは言うに及ばず、郎党総出の大乱闘もパワフルで迫力満点。吹き矢をすかさず投げ返す義経がアシタカ(もののけ姫)みたいでかっこいい。今回の殺陣は源平合戦のどんな大々的な戦闘シーンよりも緊迫感があっておもしろかった(それは問題だ)。でも原典『義経記』ではもっとスリリング。なんと郎党全員出払っていたため喜三太ひとりで義経を守るのです。頼りなげな伊藤喜三太くんにぜひこのエピソードをやってほしかった。いつも郎党十把一絡げでゴチャゴチャ行動させないで、たまには一人一人にスポットを当ててじっくり描いてほしいです。
 また静御前の名エピソード(土佐坊の宿所にスパイ派遣&寝くたれてる義経に鎧をぶつけて叩き起こす)もなくてちょっとガッカリ。この逸話で静というキャラのすべてがわかるのに。そのかわり女だてらに薙刀かまえて出陣だ!負けじと正妻・萌さんもダテに武家の妻やってまへんで!(←こんなセリフはない)とキリリと応戦。意気込みのわりにふたりともまったく戦力になってない、どころか足手まといなのがまた泣かせます。殿のためならムチャもする。まさしく愛のなせるわざ。
 どさくさに行家おじちゃんも駆けつけました。みんなが必死で戦ってる時、かっこよく登場するタイミングを物陰から見計らってたに決まってる。捕われた刺客を得意げに足蹴、あげく言いたいことだけ言って去る…本当に調子いい奴です。
 刺客の名は土佐坊昌俊(六平直政)、さすが刺客をつとめるだけあってその面構えの憎々しいこと!でも義経の澄んだ目に見つめられてつい本心を吐露してしまいます。タッキー義経のじじいキラーは健在です。
 ともあれ命まで狙われた義経はついにキレ、「ここは私の存念を頼朝に示すのみ!」と自らの手で土佐坊を処刑します。土佐坊の泣かせる「母」ネタにも斟酌せず、あんなに敬愛していた兄をついに呼び捨て!憤怒のほどがわかります。それでよし義経。いや、もうそうするしかあるまい。ドラマ初期の頼朝は義経が忠誠を誓うのももっともと思えるほど魅力的でしたが、最近の破綻しまくった言動には義経ばかりか一視聴者である私ですら振り回されて、ほとほと疲れ果てました。ユーあんなの早く見限って楽になっちゃいなよ!(ジャニーさん口調で)と思うまでになってしまいました。はあ〜…頼朝好きだったのに。頼朝と義経の兄弟コンビが一番好きだったのに。「頼朝!」義経の憎しみのこもった呼び捨てに「よっしゃ」と溜飲をさげる日が来ようとは思ってもいませんでした。
 義経の「存念」表明に頼朝もついに立ち上がります。「もはやこれまで…九郎を討つ!」兄弟対決を仕掛けたのはあくまでも義経のほう、とでも言いたげな態度がずるいなあ。刺客を送った時点で義経を討つ気まんまんのくせに。鎌倉を締め出したり所領を取り上げたりあげくは命を狙ったりと挑発的なことばかりしておいて、いざ反抗されるとさも意外そうに驚く。政子まで「なんと!」とは何だ。鎌倉の考えていることは本当にわかりません。
 義経&行家は兵を募るも、強大な勢力となった鎌倉を相手に戦おうとする武士などいません。平家には圧倒的な強さを見せた義経もこと鎌倉相手では別人のようにダメダメ、算段を誤って打つ手なしです。何だか今年の阪神タイガースの「明」と「暗」をみているよう。ぶっちぎりのペナントレース制覇は対平家戦における義経の無敵の強さ、こないだの日本シリーズのみごとなまでのズッコケぶり(はぁ〜…)は対鎌倉戦でなすすべなくいいとこなしで終わってしまった義経の弱さ…。何でもかんでも義経にこじつけてしまう私はビョーキかもしれません(何を今さら)。
 こじつけついでにもうひとつ。先だって無敵の三冠馬となったディープインパクトにも「衝撃の英雄」義経の姿が重なります。競馬のことは全然知りませんが、小柄で闘争心の強い「はねっかえり」を愛情深く指導しながら大事に育てていった人々の惜しみない努力、また騎手と馬とのゆるぎない信頼関係をテレビ等で知るにつけ、頼朝がもしこんなふうに義経を本気で守り導き育てようとしてくれていたなら…と、見当はずれな比較をして悲しくなりました。
 ともあれ今回は久々にタッキー義経の殺陣をみられて幸せでした。ずば抜けて強い者が戦う姿はやはり痛快です。が…これからは防戦一方、苦しくせつない戦いばかり…。でもどんな形になるにせよ最後まで見届けますとも。強い義経も好きだけど弱い義経も好き。無敵のディープインパクトに惜しみない賞賛を送る一方で負け続けるハルウララも愛せる日本人独特の感性は忘れたくないものです。

第四十四回「静よさらば」11/6
 頼朝追討の院宣を手に入れたものの都を戦場にすることをよしとしない義経は、手勢のみを引き連れてひそやかに京を去ります。去り際に都に火をかけるような浅ましい真似はせず、また貴人(法皇など)を道連れにすることもせず、その去り方は実に殊勝でスマート。戦に明け暮れたイケイケ狂戦士と思われがちな彼ですが、こういう思慮深さがあったからこそその人気は後世にまで伝わる絶大なものとなったのでしょう。都のために都を離れた義経に京の人々がどれほど喜び感謝したか、ワンシーンでいいから描いてほしかった。こういう時のためのうつぼやお徳や烏丸じゃないの?また後白河法皇も、これまでの武将とはちがって権力欲などサラサラない純情な義経の去りゆく姿に少しは心動かされてほしかった。しょせんは悪役、しかたがないか…。
 法皇の側近平知康は弁解のため鎌倉に赴きますが、頼朝らから立て続けに鋭いツッコミ入れられて針のムシロ状態。ノラリクラリと義経を翻弄してた姿からは想像もできないみじめな有様です。ザマーミロ!と思いつつほんのちょっとかわいそうだったりして…。鎌倉も朝廷も義経を弄ぶ悪い連中だけど、やっぱり私はどっちかといえば鎌倉のほうが憎たらしい。誰か鎌倉の奴らをギャフンと言わせてくれ!
 都落ちを前に義経は正妻・萌を鎌倉に帰します。義経としては彼女のためを思えばこそでしょうが、いつも感情をぐっと堪えてる彼女がポロポロ臆面もなく涙をこぼすのをみると無理してでもつれてってやれよと思ってしまう。愛するからこそ身を引く萌殿、哀れです。これで視聴者ともおさらば…かな?お疲れさまでした。武家の妻らしい立派な引き際でした。
 一方静はどこまでも義経についてゆく所存です。これもまたひたむきな愛の形。その静と郎党らとともに西国に向け船出した義経ですが、嵐が起こってさあ大変。知盛(亡霊)も出てきてコンニチハ。能「船弁慶」の世界ですね。でもドラマでそのままこれをやるのはいかがなものか。壇ノ浦で「見るべきものは見た!」とすがすがしく散った知盛がなんで今さら未練がましく出てくるの。「西国は平家のものだ〜お前なんかに渡すもんか」なんて女々しいことを言われては、でっかい阿部知盛に「小っせえ男だな!」とツッコみたくなります。不自然な高笑いも青ざめたCG顔も怖いというより痛々しい。こんな人じゃなかったよね?知盛さん…。弁慶の読経むなしく船は転覆させられるし、知盛の亡霊は結局成仏したのかどうかわからないし、なんか後味の悪いシーンでした。怨霊登場のエピソードはアクセントとしてはおもしろいけど無理に知盛でやらなくても。かわりに名もなき平家の雑兵をショッカーみたいに団体でうじゃうじゃ出せばいい(それではB級ホラーだ)。いずれにせよ実兄に追われ法皇に捨てられ、あげく家族とも思っていた平家一族(怨霊)にすら拒まれるんじゃ義経がかわいそうすぎます。
 義経一行は浜辺に打ち上げられ辛うじて命拾いしますが一難去ってまた一難、追捕の兵に囲まれてしまいます。そこへ、ああ〜お懐かしや美輪鬼一法眼さま!これまた懐かしいムササビ軍団とともにお出ましです。まさかの再登場、懐かしさとありがたさのあまり私など思わず涙ぐんでしまいました。孤独と不安のいや増す義経にとってこの師との再会は、そして「心に己の都を思え」という言葉は何よりの励みになったことでしょう。
 追捕の手を逃れひとまず吉野に隠れた義経主従ですが、これ以上静を伴うことはできません。女人禁制だから…という以前に、兵に捕まったり病に倒れたりとあれだけ足手まといになっちゃあね…。義経と静の吉野の別れは数多の作品で何度も見てきた定番シーンですが、どんなかたちで何度見せられても切ない。ふたりとも泣き叫んだり取り乱したりしないからなおのこといじらしい。募る不安をぐっとねじ伏せ「また会える」と信じるよりほかないのでしょう。キレイというよりはカワイイさとみちゃん静がこのシーンでは無性に美しくみえました。
 今回は異常にスリリングかつスピーディな展開で、再三ピンチに見舞われながらも鮮やかに切り抜けていく義経一行から一時も目が離せませんでした。獣のように追われるタッキー義経の果敢なアクションは鋭く美しく、野性的でセクシー…たまりませんな。ツッコミどころ満載のファンタジー演出も久々!ドラマ初期の独創的でポジティブな雰囲気を思い出しました。飛び交う赤目ムササビ、どっさり散る桜吹雪、巨大満月などの過剰演出には当時こそボーゼンとしましたが、今思えばあの頃のほうが「何が起こるんだろう」とワクワク楽しく観られたような。義経モノに必要なのはやっぱりこういう破天荒なロマンと活劇とファンタジーです。そしてこれからのつらく悲しい逃避行こそが「義経物語」の真骨頂。残すところあと数回となってしまいましたが、どうかどのエピソードも大事に丁寧に描いていってほしいです。

第四十五回「夢の行く先」11/13
 吉野山にて愛しい義経と別れた静ですが、ほどなく鎌倉の手に落ちてしまいます。静も可哀想だけど(妊婦なのに何て手荒な扱い…)それより静を託された忠信と次郎が痛々しい。主の大切な人を守りきれなかった無念はいかほどのものだったでしょう。
 捕われた静は北条時政の尋問を受けますが、脅されようとすごまれようと微塵も動じません。頼朝の威を借りて朝廷相手には居丈高だった時政が、たかが小娘ひとりにあしらわれてます。いや〜痛快痛快。冷ややかに時政をにらみ返す静、あっぱれです。さとみちゃん静はいつでもどこでもほんわかオットリしていたので、鎌倉に捕われたのちひとりでシャッキリやっていけるのか?と心配していましたが、杞憂でした。むしろ、これまで一貫して柔弱だったからこそ、今回のような何ものをも怖れぬむきだしの怒りがきわだちます。まことの愛を貫く女の強さ思い知れ鎌倉勢!
 静は「日本一の白拍子」、現代で言えばトップアイドル(アーティストか?)のはずなのに、出番といえば義経主従の身の回りのお世話のみでどうにもヌカミソくさかった。でも今後はそんな“雑仕女”静ちゃんが“トップスター”静御前になるギャップが逆に楽しめるかも?いつもオットリした人がたまに怒るとメチャクチャ怖いし、いまいち目立たないコが急におしゃれをしたらひときわ美人にみえるもの。このドラマの静にはそんな「変身」「二面性」の魅力が望めそうです。
 しかし同じように「ニ面性(理と情)」を持つ頼朝からは制作サイドの意図したような魅力がイマイチ伝わってこない。「本当は優しい頼朝」というよりは「いい人ぶってる頼朝」にみえてしまう。冷たい・残酷・変態(!?)といった「憎たらしい」頼朝像は過去数多ありましたが「偽善者みたいで憎たらしい」頼朝なんて前代未聞。悪にも善にも徹しきれないならいっそ情なんて見せてくれるな!混乱するから。義経をダシに朝廷をしめ上げ大得意に「天下の草創」を宣言する頼朝は「九郎…なぜわかってくれぬ」と身を揉んでいた人と同一人物とはとても思えません。
 その鎌倉を向こうに回しヒヤヒヤ綱渡りの後白河法皇はみごとなまでの朝令暮改ぶり…よく言えば柔軟な思考(よく言う必要はない)で態度を二転三転、逆賊とした義経をふたたび頼ろうと考えます。それを知った義経はいたく感激しますが…鬼一法眼さまに禁じられたにもかかわらず法皇への情を理由に危険を冒してまで都に帰るなんて何だかヘン。奥州から兄頼朝の窮地を救うべく駆けつけたほどには、義経の法皇への思いは強くないはず…少なくともこのドラマでは。こういう展開にするならば、かつて清盛や秀衡にしたように法皇にも「父」の面影を重ねておくべきでした。義経の人生のテーマは「父探し」なのだから。「父(=ファミリー)」のこととなるといきなり理性が吹っ飛ぶんだからあの方は。
 散り散りになっていた郎党たちが次々現れ、うつぼも加わり、ようやく義経の周囲ににぎやかさが戻ってきました。うつぼはすっかり以前の元気なうつぼになってて一安心。むしろ前より何だかキレイになったような?傷心の次郎も救われたし、あとは忠信だけですが…忠信…!あああ次回が怖い。
 行家おじちゃんがついに捕まり処刑されてしまいました。ゴキブリなみの生命力だけが売りだったのに。同じ汚れキャラでも最期を美しく飾った宗盛とちがい、どこまでも見苦しく愚物に徹しきった彼。これはこれでみごとな散りざまといえましょう。あなたのおかげで退屈しなかったで賞を贈りましょう(いらない)。しかも彼の言い分は感情的ながらいつも案外的を射ていた。「源氏は頼朝ひとりのものではござらん!いずれこの災いが頼朝の身にもふりかかろうぞ!」そう、身内を根こそぎにしたツケはやがてゴッソリ頼朝に返ってくる。「これで九郎はひとりになったな」とつぶやく頼朝に「ひとりになるのはアンタのほうだよ」と言ってやりたい。
 今後の行く末に悩む義経の前に「例の」屏風が立ち現れました。ラクガキされようが破られようが燃やされかけようが売り飛ばされようが何度でもよみがえり燦然と輝く不死鳥のような屏風です。義経の思想のコンセプトはやはりこの屏風に託された清盛の夢なのでしょう。しかし清盛や頼朝の思い描く夢=「新しき国」が全国レベルなのに対して義経の願う「国」はせいぜい「町」程度の小ぢんまりしたイメージ。きっとそれは家庭の延長なのでしょう。孤児の喜三太が「皆が身内じゃ」と言えるような、血縁に限らず万人に開かれた家庭です。義経には国家を動かすほどの大きな力はないけれど、そんなノーボーダーの「家族」をつくるささやかな力がある。ささやかだけれどそれはかけがえのない力です。

第四十六回「しずやしず」11/20
 義経は平泉へ向かう準備を着々と進めつつ静奪還の策をめぐらしますが、静の母・磯禅師は、義経の無事を願う静の意を汲んでほしいと諭します。いいなあ…静のお母さん。穏やかで思慮深く、都の女性ならではの気品とプライドを感じます。出番は少ないですが私の中では稲森常盤に次ぐ美女グランプリ候補です。
 義経主従は山伏姿にお召しかえ。タッキー義経ったら…ホント何着ても似合うんだから。むさい郎党に囲まれてひとりキラキラ浮いてます。なるほどこれではどこへいっても「きさま義経だな!」と見破られるはず。前途多難です。
 そんな目立ちまくりの山伏ルックで静の輿を見送る主従ですが、そこへ飛び出してきたのが吉野ではぐれた忠信。カラの輿を襲撃し、無駄に命を散らします。ああひどい。ひどすぎて涙が止まりません。忠信が可哀想で…ザコキャラみたいなつまんない死に方が気の毒で。なぜなの?制作スタッフさん。忠信はなあ、本当はもっと晴れやかに散るんだぞ!吉野では義経の身代わりとなって数多の荒法師を蹴散らし、京ではたったひとりで追捕の兵をあしらったあげく「武士の死にざまとくと見よ!」と衆目の中堂々自害、頼朝をして「天晴れな武士」と言わしめる。それこそが忠信の人生最大の勲であり、ひいては主・義経の誉れとなるのに。一話まるまる使ってもいいほどの名エピソード、ことに海東忠信はハマリ役だから期待してたのに。何なの?このショボさは。許せん…取り消せやり直せー!義経と郎党仲間に最期を看取ってもらえたのがせめてもの救いと言えなくもないけれど。忠信…いろんな意味で悔いの残る最期でしたがせめて安らかに…。
 しかし今回の見どころは忠信でもなく義経でもなく静です。静オンステージ!独壇場!頼朝相手に臆することなくメンチきってズバリ面罵。いやはやスカッとします。「義経様への妬みでしょうや!憎しみでしょうや!」対する頼朝はただ一言「弟ゆえじゃ」と返すのみ。弟も御家人も平等に扱うと主張していた彼もとうとう語るに落ちました。
 そんな強気な静ですが、せっかく身ごもった義経の子を生み落とすなり政子に奪われ殺されてしまいます。我が子を求めて政子につめよる半狂乱の静、すさまじかった。さとみちゃん静は穏やかにニコニコしているよりこういう鬼気迫るシーンでこそ本領を発揮しますね。「義経のお子を…亡き者になされたなぁ〜!」演技とも思えぬ迫真の号泣が痛々しくて可哀想で、私も泣きました。そんな静を眉ひとつ動かさず見下す政子の憎たらしいこと。あのふてぶてしい無表情をぶん殴ってやりたい…。このドラマの政子は頼朝のダークサイドまで肩代わりしてとことん黒い。ここまで黒く憎憎しくなれる財前政子の力量はさすがです。
 また、これだけひどい目に遭わせておきながらまるで何事もなかったかのように「静の舞を見たい」なんて言える鎌倉のオッサンがたの厚顔無恥、無神経さったらない。「(舞の装束など)この鎌倉でご用意いただけますかどうか…」という静のさりげない一言には、無粋な東夷ふぜいが!という痛烈な皮肉が込められていて小気味良い。
 季節はすでに秋…燃えさかるような紅葉のもとで舞う静の姿はとても新鮮。(本当なら新緑の頃のはず)愛しい人への慕情に子を殺された怒りと悲しみが加わり、まことに凄みのある情念の舞となりました。舞う静と戦う義経、両者の映像がドラマチックに交錯する演出も切なさをあおります。追捕の兵らが弱すぎてやられっぷりが笑えるのが難点ですが。そして画面狭しと舞い散る無数の紅葉。五条大橋の桜、壇ノ浦の金粉…この大河、イベント時にはきっと何かが派手に舞う。そして壮大なテーマ曲へ突入…お約束とはいえ盛り上がります。好きです、こういうケレン味たっぷりの演出。
 哀切にして勇敢なこの舞を政子は「みごと」と褒め称えますが、子殺しのあとでこんなふうに態度をひるがえされてもなあ…。舞はかばってくれるのに子の助命嘆願はしてくれないのね。同じ女として静の恋心には共感できても母心には配慮できない(できない事情があるとはいえ)政子のメンタリティってどうなってるの。一方頼朝はこの舞に怒り…ません。政子がかばうまでもなく、いつもの無言・無表情(ノーリアクション)で無難にことをおさめます。静や政子の凄みにくらべると印象の薄いこと。頼朝の存在そのものが薄くなってきているようにも思えます。いいのか?これで。
 今回はとにかく静に尽きる。さとみちゃん静は今までかわいすぎて幼すぎてハラハラさせられてきましたが、そんな危なっかしさも今回ですべてチャラ。頼朝夫婦への憎しみ、子を失った悲しみと狂気、舞の要請を受けて立つ不敵な凛々しさ、そして万感を込めた壮麗な舞…すべてが胸に迫るすばらしい演技でした。静役が彼女でよかった。今、心からそう思えます。

第四十七回「安宅の関」11/27
 山中に一夜の宿を借りた義経一行は、そこできこりの妻となった巴御前と再会します。巴のその後についてはいろんな説があるけれど、穏やかな顔で「生きていてよかった」と言えるようになった彼女の姿にはほっとさせられます。古典文学では夫や一族のあとを追って自害する女性ばかりが賞賛されますが、私は常盤や今回の巴のようにあえて生きる道を選ぶ女性をこそ尊敬したい。おのが美学とともに潔く散るのが男の本懐ならば、何があってもへこたれずしなやかに生き抜くことが女の本領ではなかろうか。あれだけ案じていた義高のことを何も問わないのは不自然な気もしましたが、おそらく彼の末路については風の噂で知っているのでしょう…。その巴の子に「女子じゃな?」とほほえみかける義経は、自分の子が義高同様、男子ゆえ殺されたことをまだ知らない…。かつて巴に言った「恨みや憎しみが人を強くする」という言葉は今や義経自身の問題。苦難の末、愛憎の果て、すべてのしがらみから解き放たれて幸せを得た巴の姿は、新天地に穏やかな暮らしを求める義経にとって何よりの励みになったことでしょう。囲炉裏端で理想の生活を語り合う義経主従の情景はホンワカと幸福感に満ちている。でも彼らの末路を知っている私としてはほのぼのなんてできねえよチクショー!せつない…。ついにうつぼへの恋心をカミングアウトした喜三太にはひと時でもいいから幸せになってほしいものですが。
 そして一行は安宅の関へ…。あのオチャラケ郎党達なら「安宅関…そんな関あたか?」とボケてくれるかなと期待しましたがダメでした。(あたりまえだ)歌舞伎「勧進帳」でおなじみの、追う者と追われる者の丁々発止のかけひき!あらすじがわかっていてもやっぱりドキドキしてしまいます。
 関守の富樫(石橋蓮司)、いきなりへべれけ状態でご登場。富樫は大概きまじめなエリート武士のイメージなのにこりゃたまげた。しかしその目はギラリと不気味に鋭いぞ。ほ〜らすぐさま義経に目をつけた。そんな富樫の視線から義経を隠そうとそぉ〜っと身をよじる弁慶…マツケン弁慶はいつも肝心な時にそそっかしくてハラハラさせられるんですが今回ばかりはちがいます。さりげなく義経を庇いつつ堂々勧進帳を読み上げる姿はさすが貫禄タップリでしびれます。そんな弁慶を見つめる義経の、頼もしい父を見るような誇らしげな表情がまたいい。
 さあそして一番のヤマ場、疑いを晴らすため義経を殴る弁慶!でもあんなロコツにせつない顔して殴ってたらバレちゃうよ〜(しかも涙ぐんでるし)。対するタッキー義経は弁慶にすべてを任せ、なすがまま、苦痛に顔をゆがめつつひたすら従順に殴られ続ける…(笛を踏みつけられた時はさすがにギョッ!としてたが)。タッキー義経は殴られてても美しいですね。むしろセクシーですね!(こらっ)それでもやっぱり一方的に痛めつけられる姿は見るに忍びない。殴られてる時間が異様に長く感じられ、富樫あんたギョロ目むいて固まってないで早く止めたれよ!とツッ込んでしまいました。
 殴る弁慶も涙、止める富樫も涙…助け起こされた義経の目も潤む。立場の違う三者の思いがひとつに重なる瞬間は最高のカタルシス。弁慶の胆力と忠心、富樫の葛藤と恩情、そして義経の弁慶への厚い信頼…守るべきものを持つ者のゆずれぬ思いが交錯する、スリリングかつセンチメンタルな人間模様。「勧進帳」が古来より愛され続ける理由はここにある!(主従逆転の倒錯SMプレイが「萌える」から…という説もあるが…)あえて背中で見送る富樫に頭を下げる義経主従、去りゆく主従にそっと黙礼する富樫…言葉にせずとも通じる心。ラストシーンまできっちり魅せてくれました。
 ピンチを切り抜けたあと「被害者」義経が「加害者」弁慶を優しくいたわるシーンも印象的。打たれた義経より打った弁慶のほうがより苦しく痛かったのは義経自身が一番よくわかってる。タッキー義経にあの潤んだ温かいまなざしで「案ずるな…そちの苦しみはわが苦しみじゃ」なんてねぎらわれたら、この殿のためなら何百回でも死ねる!と普通に思えちゃう。こんなふうに思わせてくれる義経はどんな源平ドラマでもお目にかかれはしなかった。タッキー義経おそるべし。
 それにしても弁慶、静の笛までぶっ壊してよく許してもらえたな…そういや五条大橋でも常盤の笛を川に落としたし。義経の大事な笛をことごとくダメにする弁慶。たとえ清盛や頼朝やうつぼ等から笛をもらってたとしても何らかの要因できっと弁慶が壊すような気がしてきました。
 今回は義経主従から視点をそらさずじっくり描いてくれたので一貫して心地良い緊張感がみなぎり、実におもしろく見られました。できれば毎回こういう感じでやってほしかった…忠信の死もこれぐらい丁寧に描いてくれてれば…。いやもう言うまい…済んでしまったことは。残りあと二回。これよりは、しっかと目を見開いてすべてを見届けるのみです。

第四十八回「北の王者の死」12/4
 苦難の旅路の末ようやく奥州平泉にたどりついた義経一行。尾羽打ち枯らしたヨレヨレの義経(…には見えないが)を「何も申されるな」と迎え入れてくれる心優しい秀衡…心身ともに傷ついた義経を癒せるのはやはりこの人をおいて他にない。義経に心を重ねてドラマを見てきた私などは彼が清盛や頼朝といった父代わりの相手に拒まれるたび胸がズキズキ痛んだものですが、そのぶん惜しみない情愛を注いでくれるこの高橋秀衡にすっかり心奪われてしまいました。いっそ義経に成り代わりその懐に飛び込んでわんこのようにジャレつきたいほど(よせ)。高橋英樹氏はバラエティ番組で盛大なバカ笑いを披露してくれる一方、本業の時代劇ではこうして風格たっぷりの歴史人物を演じきってくれる。その貫禄と存在感には今さらながら感服です。知力・胆力を兼ね備えた「北の王者」秀衡役としてはこれ以上ないくらいのハマリ役。鎌倉の陰険な試しに動じるどころか小手先でいなしちゃう度量の大きさ、頼もしさ!もう惚れます。惚れるしかない。本来なら中井頼朝に惚れるはずだった私が完全に高橋秀衡に惚れてます。どっしり頼もしい秀衡には甘えたくなるけどピリピリ神経質な頼朝には甘えられないもんね。ジャレつくなんてもってのほか(むしろガブリと噛みつきピュッと逃げたい)。秀衡にあって頼朝にないものは「父性」あるいは「包容力」。それこそ孤独な義経が何より欲したものでした。
 ともあれ義経主従はようやくひとときの安息を得ます。喜三太たち、腰越で暇つぶしに習得した籠づくりの技術がメシの種になってよかったね!佐藤兄弟だけが遺髪の帰還とはやりきれないが…。兄弟の父・元治が子らの死に取り乱さないのがむしろ痛ましい。いかにも秀衡の重臣らしい沈着にして誠実な人柄です。ここでぜひ兄弟最期の回想シーンがほしいところですが、継信は猛将教経ではなく坊ちゃん資盛ごときに討たれるし忠信は鎌倉に名をとどろかすこともなく地味に犬死にするし…こんな事実、お父ちゃんは知らないほうがいいかもね。
 渡辺いっけい泰衡も高橋秀衡とはまったく逆の意味でハマッてます。あのキョロ〜ンとしたまんまる目がオドオド泳ぐ情けなさったら。現代人にも通じるこういうダメキャラがいてくれるとほっとします。そんな危なっかしい次期領主を冷静にサポートする長島一茂国衡がやたら頼もしくみえたりして。何だか平家の宗盛と知盛の関係を彷彿とさせます。平家の鶴見宗盛、奥州藤原氏の渡辺泰衡、そして源氏の大杉行家…彼ら三名を栄えある「義経」ヘタレトリオに認定しましょう(しなくてよし)。平家と奥州藤原氏が滅びた最大の原因は跡継ぎ選びの失敗ではないかという気すらしてきます。でも源氏の頼朝だってダメ息子たちのせいで早々に血筋が絶えたんだから敗者たちと同じ轍を踏んだと言えなくもないか。
 そんな抜き差しならぬ状況の中、ついに秀衡が亡くなってしまいます。清盛よりも頼朝よりもこの秀衡といる時の義経がいちばん幸せそうだったのに…。夢の都プランを嬉々として語る義経、それを優しく見守る秀衡、このふたりには本当の親子以上の温かい情が通い合っていました。泣くも笑うもきわめて上品なタッキー義経ですが、唯一無二の「慈父」を失った今回ばかりは声を放って身も世もなく慟哭してほしかった。
 さらには吉次のへたっぴなウソにより静の生んだ義経の子が殺されたことまで知れてしまいます。親を失い、子をも失い…義経ってよくよく家族運がない。そんな彼が「親子兄弟仲良く暮らせる国を…」とバ○のひとつ覚えのように繰り返すのも無理のないこと。でもその「新しき国」って「国」じゃなくてただの「家」だろ!まあ私としてはそんな義経のスケールの小ささこそがいとおしいんですけどね。
 奥州攻めの姿勢を強める頼朝に、義経は一命を賭して戦う覚悟を固めます。あんなにこだわっていた「源氏」のポジションをついに捨てました。ドラマタイトルが「源義経」ではなく「義経」である意味を改めて考えさせられます。今までは一貫して「源氏のため」「兄のため」に戦ってきた彼が、これよりはおのが信じる夢のため、愛するものを守るため、最初で最後の「自分のため」の戦いに挑むのです。
 いよいよ次回クライマックス…早い、早すぎるよ!展開も早けりゃ鎌倉軍が攻めてくるのも早すぎ。もう白河の関手前まで来てるって?史実を無視してなんてセッカチな。それより高橋秀衡をはじめ個性豊かな息子達など奥州メンバーをもっとじっくり描いてほしかった。彼らが義経をめぐって何を思い、いかに悩んだか、その心理ドラマをもっと繊細に見せてほしかった。
 …いや、もうとやかくは申しますまい。泣いても笑っても残すところあと一回。たとえどのような結末を迎えようとも、全スタッフ、全キャストに「一年間ありがとう」と感謝の思いをこめて、最後までしっかと見届けさせていただきます。

第四十九回(最終回)「新しき国へ」12/11
 鎌倉との決戦を前に義経主従は意気軒昂ですが、奥州の新領主・泰衡は度重なる頼朝の脅しに怯え、ついには義経を討つ決意を固めます。このお人よし泰衡ならあるいは義経を助けてくれるかとも思いましたが、お人よしゆえ結局史実通りの道をたどるしかなかったか…。弟忠衡は暗殺され、兄国衡は平泉を去り、兄弟力をあわせて義経を守るべしという秀衡の遺言はたやすく破られてしまいました。
 泰衡の思惑を知った義経主従は覚悟を決めて「その時」に備えます。逃げることもできるのにあえてとどまり、ともに命散らす道を選ぶ。それはまるで不幸な恋人たちの心中のよう。だからといって彼らには♪世間に負けた〜この街も追われた〜いっそきれいに死のうか♪といった昭和枯れすすき的な陰鬱さはありません。彼ら主従のイメージは個人的にはチャゲアスの「On Your Mark」。走り出せばいつも叩きのめされる、わかってるけどそれでもやめずに見果てぬ夢めがけて突っ走る…義経主従が最後にみんなで眺める美しい夜明けの空は、そんな彼らの晴れやかな心情を現しているのでしょう。この世がダメなら次の世だ!自害というネガティブな行為すらポジティブに受け止める彼らの魂は神々しいまでにまぶしい。
 最初に鷲尾、次には喜三太(せっかくうつぼに「京で待ってる」と言ってもらえたのに…)が次々と討ち取られてゆきます。駿河次郎の血まみれになりながらの壮絶な最期はことに印象的。また主を悲しませまいとカニの物まねでおどけたまま絶命する伊勢三郎の心意気にも涙…そして弁慶は堂々たる立往生。寄せ手よもっとリアクションしてやらんかい!弁慶に関しては立往生よりも義経との最後の会話に泣けました。「生まれ変わっても我らは主従ぞ」固い絆で結ばれた義経主従の最期…傍目には不幸でも当人達にはもっとも幸せな恍惚の一瞬だったのではないでしょうか。
 そしてついには義経も…。死に臨むあの凛と澄みきったきれいな瞳は、私が一義経ファンとしてもっとも見たかったものでした。そう、義経はこんなふうに恨みも憎しみも口惜しさも捨て、すがすがしい気持で死を迎えたはず…。あらゆる苦しみを乗り越えて研ぎ澄まされたこの瞳を見届けるため私は義経を見続けてきたといっても過言ではありません。短くとも自分らしく生き抜いた彼には満ち足りた死こそがふさわしい。31歳は義経の天寿です。与えられた生を彼はみごと全うしたのです。
 義経がみずからの首を掻き切ったその瞬間、彼の魂は光輝く白馬となってはるか天空に駆けていった…感動的なシーン、のはずなのに映像が奇抜すぎて泣きたいのに笑っちゃったよ!持仏堂の屋根とともにタッキー義経の名演の余韻すらふっとびそうでおののきました。また死に際して常盤や秀衡や五足や佐藤兄弟など先に亡くなった人々がお出迎えにくるかと思ったのですが出てこず残念。前半のキーパーソンである清盛すらスルーだったのは意外でした。が、清盛については義経の独白「清盛様も夢半ばでございましたな…なれど夢の都は我が胸にしかとございます」がすべてを包括しているのでしょう。
 義経自害の報はたちどころに鎌倉に届きます。政子は最後までドライ。そりゃもうスーパードライ。義経に一目ぼれしたこともある彼女こそ案外泣くかと思ったんだけど…最後なんかダンナの落ち込みようにも気づかず楽しげに笑ってた。頼朝が泣くのは予想通りでした。以前の私なら彼とともに素直に涙できたものを今はどうしても「泣くぐらいなら追いつめるなよ!」とツッ込んでしまう。とはいえ、ひとり声を押し殺して泣く彼の姿には言いようのない悲しみ、寂しさ、やるせなさが感じられ、胸が締めつけられました。やっぱり義経のために泣かれると弱いなあ。ああだこうだ言ってますが私、中井頼朝はやっぱり好き。好きだからこそわずかな矛盾も許せなくなっちゃうのさ…。
 「九郎…わしを恨め」しかし義経はもはや頼朝に対する愛情も憎しみすらも失せ、思いを何ら残すことなくさわやかに逝ってしまいました。あれだけ兄上兄上と慕っていたのに決別してからはもう二度とふり向きはしなかった。私は義経には最後まで頼朝に対して和解を望む気持を持ち続けてほしいと思っていましたが、このドラマをみて、義経はこれくらい潔くてもいいかなという気がしてきました。
 戦乱の世がひとまず終わり、義経を愛した京の人々は彼のありし日をしのび、その魂の行方に思いを馳せます。そしてうつぼはひとり鞍馬山に登り、木立の中を自在に駆けまわる遮那王の幻影をみる…。義経自害から「完」までが長すぎてせっかくの盛り上がりがやや冷めてしまった感はありますが(如何せん持仏堂の屋根ボーン!のインパクトがすごすぎた)、晴れやかな静寂に包まれたこのラストシーンはえもいわれぬ余韻があっていいですね。個人的にここはぜひ義経ジュニア(静との子…実はコッソリ千鳥に救われてるんじゃないかと期待してたのに)にご登場願いたかったところですが。義経ジュニア役はぜひ牛若役の神木くんで!(勝手に決めんな)京で母達と平穏に暮らす義経ジュニアがある日鞍馬に赴き、そこで静かに微笑む亡き父の幻影をみる…という終わり方が、幸福な家庭を求めた義経にとって一番救いのあるクライマックスだったのではないかな、なんて思うのです。ムリヤリ生き延びてジンギスカンとやらになるよりも愛する者達が平和な世で末永く幸せに暮らしてくれることこそが彼の本懐でしょう。頼朝の「新しき国」は、そのかけがえのない平和は、短期間で源平争乱を終わらせた義経の活躍あればこそなのですから。
 この一年はまさに義経とともに駆け抜けた、長くて短い濃密な一年間でした。私にはいま心地よい虚脱感に包まれています。いろんな不満も不服もありました。でも今はただただ「義経」に携わったすべての方々に「お疲れさま&ありがとう」と言いたいです。ことに主演のタッキー…いや、滝沢秀明さん。あなたの義経はすばらしかった。この一年あなたの姿を見続けていられたことをこの上なく幸せに思います。本当にありがとう。

 最後に…この「タワゴトレビュー」をここまでお読みくださいました皆様にも心より感謝いたします。「タワゴト」と銘打ったとおり暴言失言は序の口で見当外れな解釈や勘違いも連発し、せっかくの感動もうまく表現することができなくて、正直レビューをアップする月曜日にはいつも自己嫌悪でドンヨリ沈んでました。それでも何だかんだで最後まで続けることができたのは「義経」への愛ゆえ、そして何よりこのサイトにアクセスしてくださる皆様、感想を寄せてくださる皆様の存在があったからこそです。こんなハチャメチャレビュー(しかもチマチマと読みにくいったら…)に一年間お付き合い下さいまして、本当にありがとうございました。
 …と締めに入っておりますが、ドラマは終わっても義経主従座談会、総集編が控えております。総集編を見届けたのち、ふたたびこの場でこの一年を振り返り「義経」に対する総括的な感想(座談会の感想も?)を述べさせていただきたいと思いますので、もうちょっとだけお付き合いいただければ幸いです。

 またサイトトップ&大河トップページに「義経」人気投票を設けましたのでぜひご参加くださいませ。順位や優劣を競う目的ではなくあくまでもお遊びですのでどうぞお気軽にご自由に、お気に入りのキャラクターたちに愛ある一票、熱いコメント、鋭いツッコミをお願いいたします。

「義経」見終えて最後のタワゴト
 大河ドラマ本編が終わり、座談会そして総集編が終わり…夢のような「義経」の一年がついに終わろうとしています。そう、まさしく“夢”だった。黛りんたろう監督の言葉のごとく、私もまた「滝沢義経とともに素敵な夢を見ていた」ような気がします。このレビューの冒頭、私は源義経という人物を「ファンタジックヒーロー」と称しました。彼は史実のみならず伝説・神話の世界に片足を踏み入れた、スサノヲやヤマトタケルにも通じる、日本人の魂を象徴する民族的ヒーローです。彼にはいつの時代も夢やロマンを託せる魅力的な存在であってほしい。そんな願いをこのドラマはみごと叶えてくれました。あの幻想的なオープニング…超新星爆発のように現れた衝撃的な生命体=白馬が山野を駆け海上を馳せ、ふたたび星雲の中に還ってゆく…という映像は、新時代を拓くため天より遣わされた戦の申し子という義経のイメージそのものでした。そんな「ヒーロー」義経をこの平成の世に迎え、一年間見守り続けることができた幸せを今、私はしみじみとかみしめています。
 しかしながら、みっちり一年間見続けたからこそ、思い入れがあるからこそ生じた不満や疑問もある。まずはそれらについて愛ゆえのツッコミをさせていただきたく思います。浅はかなシロート考えで生意気に物申すことをどうぞお許しくださいませ。
 このドラマの最大の魅力はまずは主役滝沢義経をはじめとする、ピタリとハマッた適材適所の豪華キャストです。しかし、ドラマ序盤は自由自在に動き回っていたそんな魅惑のキャラクター達が、回を重ねるごとに予定調和の枠の中に追いやられてチマチマとしか動けなくなっていったように思えます。また物語途中でむなしくフェードアウトするキャラが多かったのもさびしかった。範頼さん…景季くん…師の御坊…萌さん…大姫ちゃん…手古奈にまごめに千鳥…秀衡の妻桔梗さん時政の妻牧の方さん…平時忠に経子さん…そして白童子…!いじりがいのある人(馬)もけっこういるのに。どのキャストもはまり役だったからこそ「もったいない…」という無念の思いがひとしおです。
 こうしてみると、たっぷり一年あってもやはり描けることは限られるのだと痛感します。このドラマはまず平清盛の偉大さを描かねばならず、平家一族・女性達も描き分けねばならず、源頼朝の正当さもアピールせねばならず、もちろん主役の義経のナイーブな内面にも触れねばならず、義経郎党にもそれなりにスポットを当てねばならず(本当に「それなり」だったと思う…ムキーッ!)と、フォローせねばならない対象が多すぎた。そのため焦点が定まらず、結果として源氏も平家も義経主従も十分に描ききれなかったように思えます。言い換えれば、どのキャラにも平等に光が当たった、ということなんですが。
 また斬新なオリジナル設定もこのドラマの大きな特徴でした。屏風にまつわる数奇な因縁や義経と妹能子の心の交流、五足やうつぼといったオリジナルキャラの活躍などドラマならではの見ごたえある名エピソードも多かった。義経と清盛の擬似親子設定、本当は優しい頼朝という人物像も大胆で興味深かった。でも…義経ファンとしてはこういう斬新な解釈を待ち望む一方で、やっぱり定番どおり清盛や平家には憎まれ役としてガンガン驕ってほしいし、その平家を義経は容赦なくとっちめてほしいし、血も凍るような頼朝の酷薄さにふるえあがりたいし、ゲジゲジ景時のやらしいイジメに「にゃろう!」とブチキレたい。お約束のカタルシスを得られないのはストレスです。このドラマは基本的に誰も彼も歯がゆいぐらいに「いいひと」。義経は合戦時ぐらいもっと苛烈に凶暴になってもよかったのでは?彼の魅力は強さだけではない、優しさだけでもない、その双方がせめぎ合う「慈悲と破壊の混沌」にあるのですから。手を血で汚す苦しみ、葛藤を描いてこそもっと人物に深みが出たのではないかと思います。
 でも…今回のように義経の優しさや思慮深さをクローズアップしてもらえるのは正直ありがたい。だって昨今のドラマで描かれてきた義経像はおしなべて“戦バカ”だった。むしろ単なるバカだった。05年大河が「義経」と決まった時、そしてジャニーズアイドル滝沢秀明くんが主役をつとめると知った時、私は喜びよりもまず恐怖に頭を抱え込んだものです。「ああ…またもや軽薄バカ義経が誕生する…」キャスト発表会見に茶髪の彼が義経の扮装で登場した時などは安易なコスプレにしか見えなくて、つい逆上してテレビに投石しそうになりました。そんな私の怒りと絶望を、ところが彼はみごとなまでにくつがえしてくれたのです。今となっては「タッキーが義経?はっ!ふざけんな」と言ってた頃の自分を殴りたいです。清らかで聡明な義経をここまで魅力的にナチュラルに演じられるのはきっと彼だけ。その上アクションもばっちり決めてくれるんだから言うことなし。いやはや恐れ入りました。ええ、今ではすっかりメロメロです。
 いまひとり、この大河を語るには欠かせない人物がいます。源頼朝。義経物語がおもしろくなるかどうかは彼の存在にかかっているといっても過言ではありません。クネクネ時代のつかみどころのなさ、棟梁としての凛とした威厳、弟に垣間見せる温かな情と孤独…通り一遍の冷酷キャラではない中井頼朝はやはり魅力的でした。彼が義経を思って泣いてくれるだけでもう何も文句を言う気になれません。彼の涙は反則です。しかしなまじ情をみせてくれたからこそ、義経への執拗な試しやイヤガラセがいかにも理不尽にみえました。「庶流じゃ!」発言などから、彼の心中は本当は愛憎入り混じった複雑なものだったと思われます。愛するがゆえの妬み、信じるがゆえの疑念…「情」を描くというからにはそういうコンプレックスやジレンマをこそ描いてほしかった。…でもそんなややこしいものに手を出したらこのドラマは「義経」じゃなく「頼朝」になってしまいますね。それほど頼朝というキャラクターはむずかしい。いつか頼朝が主役になる時はぜひそのへんを真正面から深く描いてほしいです。そしてその際には義経サイドの言い分もきちっとフェアに描いてくださいね?頼みますよホント。
 義経がヒーローとして純粋に愛されていた時代は去り、昨今はもっぱら「義経?時代の流れを読めなかったただのバカだろ」と鼻であしらわれてしまいます。私自身も「そりゃバカですよ?わかってますよ」とみずから腰を低くして歴史マニア達からの攻撃を避けてきました。が、歴史の結果を知っている後世の人間に気安くバカにされるほど本当に彼は愚かなのでしょうか?彼だけではない、清盛だって宗盛だって法皇だって義仲だって行家だって泰衡だって、先の見えない乱世を命がけで悩み迷いながら生ききった失敗者たちを笑いものにできるほど我々平成の現代人はかしこいのでしょうか。私はもう、どうせ義経はバカですよ…なんてヒクツなことは言いません。いや、愛情こめて「バカね…!」とは言いますが(モンスリー風に)。ひたむきに生きた者の不器用さを愛しこそすれ、その過ちを笑い優越感に浸るような愚だけは犯したくないものです。
 成功者には成功者の痛みと悲しみが、失敗者には失敗者の誇りと信念があったことを知らしめるのが歴史ドラマの大切な使命です。そういう意味で、悪役を悪役として捉えず、安直なドロドロ愛憎劇に頼らず、哀切にして繊細な心の描写にこだわったこのドラマの果たした役割はやはり大きい。ドロドロも悪くはないけど、どっちかといえば私はやっぱりこういうサラサラした作風のほうが好き。濃すぎる味付けよりひかえめな薄味のほうが、何度もじっくり噛みしめ味わえるぶん心に深く沁み入ります。そりゃあ時には味気なさすぎて「お醤油ください!」とテーブル叩きたくなったりもしましたが。シックなストーリー展開に桜吹雪や金粉やムササビといったケレン味たっぷりの映像演出も思えばいいスパイスでした。いろんな不満やツッコミどころはあったけど、やはり…私の評価は★★★★★で決定!愛ゆえの満点です。「義経」はほかのドラマとは単純に比較ができないくらい、私にとっては特別な、もはや宝物のような存在になっています。

 総集編は、本編を知っていても十分に見ごたえのある出来ばえでした。本編ではじれったかった部分が総集編ではとてもテンポよく、清盛と義経、義経と頼朝のドラマ独自の関係もわかりやすく、「絆」を描くというコンセプトがより率直に伝わってきました。また滝沢義経の目ざましい成長の軌跡も改めてよくわかります。この一年、彼の成長と重ねて義経その人の成長をリアルタイムで見守ってきたような気がします。役を離れても座談会や各インタビューでの彼の誠実で真摯な態度には非常に好感が持てました。最年少大河主役ということでプレッシャーや心無い誹謗中傷もあったことでしょう。それらを乗り越え、よくぞここまで一年間立派に演じきってくれました。「プロ中のプロ」滝沢君に心から拍手をおくります。
 総集編冒頭のオリジナル映像、滝沢秀明と滝沢義経のダイアローグは意味深で印象的でした。「探していたぞ…!」おのが生きざま、おのが心を体現してくれる者の出現を義経はずっと待っていた。…やっと見つけた。あのシーンにはそんな意味が込められているのでしょう。私だって待っていた。一義経ファンとしてこんな義経を待っていた!「この方のためなら命もいらぬ」と郎党さながらに思える素敵な義経を、テレビの中にやっと探し出せました。今後、大河ドラマで源義経が主役の座を得るのは何十年と先のことでしょう。それはとてもさびしいことですが、その間、義経=滝沢義経のイメージが保たれ続けるのならそれもいいかな…なんて思えます。

 また、ドラマの副産物として空前の義経ブームが起こったのも喜ばしいことでした。各地で義経イベンが催され、巷には義経グッズがあふれかえり、義経ファンやっててよかった〜!生きててよかった〜!としみじみ幸せをかみしめたものです。そのぶん、来年からは「祭りのあと」の寂しさをかみしめねばならないわけですが、このドラマを機に義経を好きになった人も、もとより好きだったけどますます好きになった人もいるでしょう。キライだったけどちょっとは好きになったという人もいる…かな?日本全国、老若男女を問わず義経ファン仲間が増えたことが私にとって何よりの幸せです。
 さて、このあたりで語ることも尽きましてございます…(お徳の声で)。この大河レビューに最後までお付き合い下さいましてまことにありがとうございました。最後の最後で調子に乗って長々書き連ねてしまい申し訳ありません。愛想を尽かさずここまでお読みくださった皆様、本当にありがとうございます…そしてお疲れさまでした。どうぞごゆっくり目をお休めくださいませ…。
 「義経」放送は終わりましたが、当サイトでは変わらず、いや今以上に熱く楽しく義経様を応援してゆく所存です。わが義経ブームは永遠に終わらない!彼を愛するすべての皆様、ともにいっそう盛り上がってまいりましょう。方々、参る!

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