特別天然記念物『タンチョウ』を撮り始めた「きっかけ」

 高校に入学したころだと思うが、NTV系列で放映していたドラマ『池中玄太80キロ』で、
俳優・西田敏行氏がふんする大京通信社カメラマン「池中玄太」が、タンチョウを見に連れて行
ってあげると約束していながら病死した妻、鶴子(女優・丘みつこ氏)の位牌を鶴居村の雪原に
置いて、偲び、涙に咽びながら「鶴子〜ごめん」と叫び、優雅に舞うタンチョウに大砲のような
超望遠レンズを向け、何十枚という写真を撮っているのを見てジーンときてしまい「いつかは私
もタンチョウを撮ってみたい」と思った。
 
 「鶴子〜ごめん」のシーンで『お父さん…』のひとことのあと、放心状態で立ち尽くしたのが
杉田かおるさん(絵里の役柄)であることを付け加えておく。

 何年か経ち、たまたま休暇で家にいてTVを見ていたら、放映していたのは「池中玄太80キ
ロ」の再放送。しかもあのシーンが……。この時まで富士山を撮る以外、特に決まったテーマが
なかったこともあって、次の新たなテーマが欲しいと考えていた矢先、あのシーンを見て「これ
だっ!」とひらめき、約40万円を現金で払って500mmの超望遠レンズを、新宿の量販店で買
った。このレンズを家に持ち帰ったとき、母から「それいくらしたの? あんた正気なの?」の
ひとことがショックだった。