制作 1998.9.12   演奏時間 約 9分   初演 1999.3.27   製本済

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[解説] 

  この合唱曲は、マーラーの交響曲第6番第3楽章に、歌詞をつけ歌えるように編曲したものです。また、原曲を基にピアノ伴奏をつけました。

 グスタフ ・マーラーは1860年、ボヘミアのカリシュトでユダヤ人商人の子として生まれました。幼少より音楽教育を受け、ウィーンに出て指揮者 ・作曲家として大成しました。彼の作品中、特に九つの交響曲と「大地の歌」は、音楽史上大変高い価値を持っています。その音楽は、彼の死後まもなく始まった第一次世界大戦や、ユダヤ人の惨劇を招いた第二次世界大戦、更には環境破壊や人間性の喪失に苦しむ現代までをも、まるで予感しているかのようです。

  マーラーは「やがて私の時代が来る」と言い残しました。不安な現代は、彼の音楽を渇望しているように私には思えます。テレビではコマーシャルに使われ、レコード店によっては、幾段もの棚にCDを並べています。しかし、そうした表面的な現象にかかわらず、マーラーの音楽は依然として難解です。ボヘミアの土壌が培ったユダヤの民謡を幼い影として、魅惑的なロマンに別れを告げ、純粋で芸術的な高みに成長した音楽は、分かりやすいものとはいえません。今なお彼の音楽は、つじつまがあわぬもやむなしという範囲で、許容されているのかもしれません。

  私は、マーラーの音楽こそ現代人の心を癒すものと信じています。交響的宇宙ともいわれるその音楽には、ユダヤ四千年の文化が結実しています。私は、彼の音楽がもっと大勢の人々に親しまれるよう願ってやみません。この合唱曲がそのきっかけとなれば幸いです。

  渇望と難解との間に横たわる溝を、私は歌詞で埋めようとしました。この方法は、それほど間違っているとは思いません。マーラーの音楽は、たとえそれが器楽曲でも本質的に歌としての性質を持っているからです。ただしその詩は、原曲のイメージを損なうものであってはなりません。
  さて、歌詞をつけ合唱の形をとったために、原曲と異なる部分ができてしまったことを書いておきます。しかしそれは、こうしなければ歌いようがないという限界でした。いろいろ悩みつつ七夕の夜に作業を終えることができました。ボヘミアに七夕があるかどうか知りませんが、この日はマーラーの誕生日でした。                                 
  1998年9月12日 
平 井 文 和