「ひどいな…」
噂には聞いていたがこれほどとは思わなかった。
街の様子を見て回って、私はため息をつく。
「やはりこのままでは駄目だ…」
今の王の統治下ではいずれ、この世界は滅ぶだろう。
セントラルランド、魔界の中心部。
「ん…?」
誰もいないはずの路地から声が聞こえる。
私は微かな気配を頼りに声の主を探す。
「誰…?」
子供だった。ひどく汚れた格好をしている。
「どうした、親とはぐれたのか?」
私がたずねると少年は首を振った。
「親はいないのか…」
こくりとうなずく。どうしたものか。
「これを着なさい」
羽織っていたマントを差し出すと、彼は驚いたように私を見た。
綺麗な赤い瞳をしていた。
「どうした?」
黙って目を伏せる。
「…ありがとう」
消え入りそうな声だった。
「人のたくさんいる所に行きなさい。ここから離れたほうがいい」
私はそう諭して、その場を後にする。
しばらく街の中を見て回って、再び戻ってくると
少年はまだそこにいた。
「まだいたのか」
私が声をかけると少年は嬉しそうに駆け寄ってきた。
「僕も連れてって…」
服のすそを引っ張りながら言う。
しかし連れてゆくわけにはいかないので、そう言い聞かせると
彼は落胆した表情を浮かべた。
「困ったな…」
私はしばし考えた後、答えを出した。
「…ついてくるか?」
私の言葉を聞くと、彼は途端に表情を変える。
「じゃあ一緒においで。ええと…」
「ゼット!タカジョー・ゼット」
「ゼットか。私はルシファーだ」
「る…?」
「ルシファー」
「るい…ふぁ」
どうやら上手く言えないようだ。
「好きに呼んだらいい」
「るしー」
それが気に入ったらしく何度も繰り返す。
「…ふ、行くぞ。ゼット」
「うん!」
こうして私とタカジョー・ゼットの数奇な旅は始まりを告げた。
そのあとの運命など、まだ知る由もなく…。
完全オリジナル設定ですな。
見た目、ルシ様20代、ゼット5〜6歳…?
ううんっ、犯罪臭いですね!!(笑)
乙女回路暴走中。
2001.10.10 UP