「なんか熱があるみたい…」
刹那が言った。看病なんてものをしたことがない私はとまどう。
こんなとき頼りになる未来も今日はいない。
とりあえず刹那を寝かせ、食べたいものはないかとたずねる。
「アイス…」
聞き出せたのはそれだけだった。
私は刹那が寝入ったのを確認して買い物に出る。
近くのコンビニでいいだろう。

うちに戻ると刹那は起きていて、私の買ってきたものを物色しはじめた。
いくらか顔色も良くなっている。
「これ食べてもいい?」
刹那が選んだのは、ホイップアイスが凍った果物の上に
のっているものだった。彼が好みそうなものだ。
しかし刹那はそれを手にしたまま動かない。
よく見ると刹那は耳たぶをいじっていた。私はそれを見て納得する。
ようするに食べさせてくれるのを待っているのだ。
その仕草が物語っている。甘えたいとき、無意識に出る癖。
私は刹那の手からそれを受け取り、ひとさじ持ってゆく。
刹那はそれを待っていたかのように素直に受けた。
「おいしい」
少しはにかんだように笑う。
それを何度か繰り返して最後の一口になった時、スプーンを奪われた。
そしてそれを私に向ける。食べろということらしい。
私もそれを受けてやる。
「どう?」
刹那が問う。美味かったと言うと刹那は嬉しそうに笑った。

看病は大変だが、たまにはこんな時間を持つのも悪くないかもしれない。
他でもない刹那のために。


会長と話していた某コンビニのアイスネタ。
刹那に食べさせたいね〜ということ。
ただそれだけなんです…ええ。
ちこっとルシセツ風味。
2001.8.19 UP