ダークパレスの執務室でルシファーはいつものように仕事を片付けていた。
仕事の手を止めふと顔を上げると先程までソファーに座って大人しく本を読んでいた筈の
刹那がいつの間にかいなくなっていた。
自分の仕事の邪魔はしない様にと刹那なりに気を使って
静かに本を読んではいたものの、次第に飽きてしまったのだろう。
あの子は何時間もそこにじっとしているような子ではないから・・・
ルシファーは席を立ち、刹那が読みかけのままにしていった本を片付け、
彼の部屋を出て行く時の表情を想像して、困ったように微笑った。

その時、ドアがノックされた。声をかけると静かにドアが開かれて
「こんにちは、お父さん。ご機嫌いかが?」
入って来たのは未来だった。声をかけた後、つかつかとルシファーの前まで来ると突然、
「・・・お父さん、刹那の事甘やかしているでしょう?」
そんな事を言い出した。いきなりの事で驚きつつも
「私はそんなつもりは無いのだが・・・未来にはそう見えるのか?」
そんなルシファーの問いかけに未来はじりっとルシファーに詰め寄り、
「見えるわよう!さっき庭で刹那に会ったけど、その時こんな事言ってたのよ〜」
未来はほんの数分前、刹那に会った時のやりとりを話し出した。



「刹那、これからお父さんに勉強見てもらうんじゃないの?」
「そうなんだけど・・・父さんの仕事がまだ終わらないんだよ、あの様子だとまだ
暫くかかりそうだからちょっと出かけてくるよ!」
「なら仕事が終わるまで一人でやってたらいいじゃないの!」
「嫌だね!父さんが教えてくれるんじゃなけりゃわざわざ難しい魔界の知識なんか
教わるもんか、一人でやる位なら遊びに行った方がましだ」
「そんな事言って・・・お父さんがそれ聞いたら怒るわよ!?」
「未来、父さんはそんな事位じゃ怒らないよ。じゃあな!」



「刹那はお父さんが刹那に甘いのを知ってるからそんな事言うのよ、
あまり甘やかさない方が・・・って聞いてる!?」
さっきの刹那とのやりとりを怒り気味で話した未来はルシファーを見上げた。
しかし彼は穏やかな表情でニコニコとしているので、未来はガックリと肩を落とし、
「お父さん〜、少しは注意してよね〜〜!!」
そう言って近くにあったソファーに腰を下ろした。ルシファーは呆れた表情の未来に
「いや、済まない。未来の表情の変化が可愛らしかったものだから・・・」
そう言いかけた時、未来にピシャリと一喝された。
「そんな事言ったって駄目よ、もう!私が真剣に話しているのに。
そうやってすぐはぐらかすんだから!」
「・・・未来、私は甘やかしているつもりはないが、刹那が私に対して
甘えたいというのなら、それでも構わないのだよ。そして未来、
お前にもにもそうして欲しいのだが」
先程までの穏やかな表情とは異なり、ルシファーは真っ直ぐな視線を未来に向けた。
「・・・私は・・・甘えん坊じゃないわよ?」
未来はそう言葉を返したものの、表情には戸惑いの色があった。



・・・甘えん坊じゃない?ううん、違う!!本当は私だって甘えたい。
私だってお父さんが大好きだもの、刹那と同じように一緒にいたい。
でも刹那と同じように私まで甘えてしまったら、お父さんの負担になってしまう。
お父さん、そうして欲しいなんて言わないで。
優しい言葉で「甘えてもいいんだよ」って言わないで。
今までずっと我慢してきたのに、耐えられなくなっちゃう・・・



頭の中が様々な思いで一杯になり、俯いてしまった未来が我に返ると
いつの間にか、未来の横にルシファーが座っていた。
ビックリして顔をあげる未来に、ルシファーは静かな口調で
「未来がしっかりした娘なのは私も良く解っている、しかしそういう人間ほど
色々と我慢しているのもよく知っているのでな。私が未来に常々感じている事も
あながち間違いではないと思うのだが、違うか?」
そう言って未来を穏やかに見つめた。
「・・・ずっと前から知ってたの?私が無理してるって・・・」
未来が不思議そうな顔をしてそう尋ねると、
「刹那の手前、一緒になって我侭言えないのだなとは感じていた。
未来がしっかりしているだけに私は以前から心配していたのだがな」

そう言った後、ルシファーがソファーから立ち上がろうとしたが、
未来に腕を引かれ、再び座り込んでしまった。少々驚いた表情のルシファーに
「・・・お父さんに負担かけたくないと思ってたんだけどな〜、こんな事なら
最初から刹那みたいにお父さんに甘えていれば良かった」
未来はそう呟いてルシファーの腕にしがみついた。
娘の精一杯の甘えにルシファーも応えるように未来の頭にそっと触れた。
腕にしがみついたまま、黙ってしまった未来の頭をそっと撫でていると、
「あ、今刹那の気持ちが分かった気がする〜!!」
何かを思い出したかのように未来はハッと顔を上げた。そして
「・・・刹那も、お父さんに頭をくしゃっとされた時こんな感じなんだ・・・
ええと、猫が頭を撫でられてゴロゴロしている感じ!!」
「・・・刹那と未来は猫でもいいのか?」
「お父さんの前だったら別に猫でもいいもん♪きっと刹那もそう思うわよ」
未来が嬉しそうに話すので、ルシファーは困った表情で
「さすがの私もお前たちには敵わないな・・・」
そう呟き、穏やかに微笑んだ。それを見た未来はポツリとこう言った。
「お父さん、お願いがあるんだけど・・・」


「ただいま〜!!父さん、もう仕事は終わったの〜!?」
出かけ先から戻った刹那はノックもせずにドアを開けるなり、素っ頓狂な声を上げた。
「何で未来がここで勉強してるんだ!?」
「今日から私も一緒に見てもらう事にしたの。私だってお父さんの娘だもん、
少なくとも刹那よりは出来ると思うけどね〜」
未来のその言葉に刹那は困惑と動揺が入り混じった表情で、
「お、お前一緒にやるの嫌だって言ってたじゃないか!!」
「別に刹那と一緒にやりたい訳じゃないわ、お父さんに勉強見てもらうんだもん!」
「何いきなり甘えたモードになってんだよ!!」
「刹那なんかずっと前から甘えたさんじゃないの!誰だっけ?父さんとじゃなきゃ
誰が魔界の勉強なんかするもんかって言ってたのは?」
「うるさい、うるさい!!黙れデコ!!」
「何ですって!?図星だからってムキにならないでよ!!」
しまいにはケンカを始めてしまった二人の前にルシファーは割って入った。
「・・・ここに勉強しに来たのだろう?時間が勿体無い。一日のうちの
少ない時間でも、私はお前たちと過ごせる時間があるのはとても嬉しい事なのだよ」
ルシファーにそう諭され、二人は素直に謝り、席に着いた。
「それでは始めようか」
その一言に二人は嬉しそうに大きく頷いて見せた。



父の日企画に続いて親子ネタ、第三弾です。今回は「ルシ様と未来」でございます〜♪
未来を甘えたさんにしてみました。未来ってしっかりもののイメージがあるのですが、
こう・・・しっかりものの娘が「本当は私だって甘えたいのよ」的なものに弱い会長(爆)
ルシ様相手ならば私も是非是非甘えてみたいものです!(病)
相変わらず文章がダメダメ表現で申し訳ないです。ボキャブラリーの無さが露呈して・・・
こんなのでも何かしら伝われば幸いでございます。マコさんに今度弟子入りするか!
イメソン・・・AIRのサントラばかり聴いていたからなぁ・・・AIRか?(爆)
次はルシ様と刹那(ノーマル/爆)か、刹那と永久辺りでしょうか?
あくまでほのぼので行くぜ!の うえむら会長なのでした。(それしか書けんです)

2002.08.05 UP