「ゼブルにいたん、おねがいがあるの〜♪♪」
屋敷の廊下をスタスタと歩いているゼブルに物陰からフェゴールが声をかけた。
ゼットが振り返ると、フェゴールが物陰に隠れてモジモジとしている。
いつもならパーッと駆けて来てしがみつくのに・・・ゼットは不思議に思いつつも、
「何?遊び相手なら嫌だからね、ベリトに遊んでもらいなよ」
ゼットはウンザリといった感じで手をひらひらさせた。先程ベリトに仕事を任せて
ようやく解放されたのだ。これからゆっくりくつろぎたい、正直そんな所だった。
でも取りあえずはフェゴールの話を聞いておかないとぐずり出すのは目に見えている・・・
ゼットはフェゴールの前にしゃがみこんで話を聞いてやることにした。
するとフェゴールは目をキラキラと輝かせてこう言った。
「ゼブルにいたん、クリスマスパーティやろう〜〜!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
スッと立ち上がってその場を立ち去ろうとするゼットにフェゴールは
「にいたん、フェゴ、クリスマスパーティやりたいの〜〜〜!!」
そう言ってゼットの足にしっかりとしがみついた。ゼットはフェゴールを見下ろして
「嫌だよ、面倒だもん。クリスマスなんて面白くないよ〜」
「やだやだ〜、やりたいの〜〜!フェゴもケーキとかごちそうたべたりとかしたいの〜〜!」
「んとね、あとねサンタさんがみんなにプレゼントくれるんだよ〜〜♪」
「フェゴール、クリスマスってどんな日か知ってるかい?」
「・・・? しらない」
「ちなみに誰からその話を聞いたんだい?」
「んとね、セツナとミライがいってたの」
・・・こんな事だろうと思った・・・、ゼットは重い溜息をついた。
少し前、刹那と未来が学校でやるクリスマスパーティの話をしていた。
フェゴールもどこかでその話を聞いていたのだろう、さてどう諭したら良いものか・・・
暫く考え込んでいたゼットだったが、何か思いついたのかフェゴールにこう言った。
「フェゴール、僕たちはクリスマスはお祝い出来ないんだよ」
「ふぇ?」
フェゴールは不思議な顔をしてゼットを見上げた。ゼットは言葉を続けて
「クリスマスは天の神様の誕生日だから僕たちデビルはお祝いしちゃいけないんだよ。
それにサンタは悪い子には何もくれないよ?」と言ったのだが、
「フェゴわるいこじゃないもん!プレゼントもらえるもん!!」
フェゴールはそう言って暴れだした。こうなるともう手が付けられない・・・
「もういいもん、ゼブルにいたんにはたのまないもん!!ベリトにいたんにいうもん!」
「勝手にすれば!!」
「ルシにいいつけちゃうから!!」
「・・・・」
泣き出して訳が分からずに転がりだしたフェゴールを見て溜息をつき、
ゼットはその場を立ち去った。
「・・・・どうした、私の執務室に来てからずっと黙りっきりだが」
ゼットはルシファーの執務室に来ていた。
しかし話しかけることなく椅子にただ座っているだけなので、見かねたルシファーが声をかけた。
「フェゴールがクリスマスパーティをやりたいんだってさ、でも面倒くさい・・・」
「そういえばフェゴールが昨日パーティをやりたいと私の所に来たが・・・
あちこちに声をかけているらしい、未来たちがそう言っていた」
ルシファーは書類から目を離しゼットを一瞥した後、こう言った。
「刹那たちがクリスマスにここに来てクリスマス会をやると言っていた。
刹那たちにやってもらっても良いが、お前がやった方がフェゴールも喜ぶのではないか?
あの子が喜んでくれたらお前自身も嬉しいだろうに」
「それはそうだけど・・・・」
ゼットがそういいかけた時、ドアの外から小さな声で
「ルシ〜、フェゴなの〜〜」
相手がフェゴールだと分かった途端、ふくれっ面をするゼットにルシファーは首振った。
ルシファーがドアを開けるとフェゴールが顔を涙でぐしゃぐしゃにして立っていた。
「あのね、ゼブルにいたんにパーティしたいってフェゴいったの〜
でもにいたんいやっていうの、でもフェゴにいたんとごちそうたべたりしたいの。
いっしょにサンタさんからプレゼントもらったりするの〜〜!」
再びしゃくりあげ始めたフェゴールの顔をルシファーは拭いてやり、そっと抱き上げた。
「今お前の兄さんが来ているからまたお願いしてみたらどうだ?」
そう言って部屋の奥にいるゼットに目をやった。中にいるゼットに気が付いたフェゴールは
「・・・ゼブルにいたん、フェゴとパーティやろう〜〜?」
しゃくりあげそうになるのを堪えてゼットに声をかけた。しかし心細いのか、
ルシファーの服の裾をギュッと掴んで離さないでいる。
その様子を見てゼットは参ったな、といった感じで
「もう・・・しょうがないなぁ、フェゴールが泣き止まないのも困るからパーティやろうか!
その代わりフェゴールも準備手伝うんだよ?」
そう言ってから首をすくめて見せた。すると途端にフェゴールの表情が明るくなり、
「うん!フェゴもゼブルにいたんのおてつだいする〜、みんなをよんでパーティするの♪」
先程の泣き顔とは一転してニコニコしているフェゴールにルシファーは穏やかに微笑んだ。
「ねえねえ、サンタさんここにもきっとくるよね?」
側に歩み寄ってきたゼットにフェゴールはニコニコしながら話しかけた。ゼットは
「うん、きっとプレゼント持って来てくれるよ。そうだよね、大魔王さん♪」
と言ってルシファーを見上げた。
ゼットの意味ありげな表情に困惑しつつ、そうだなと言って苦笑いをした。
手を取り合ってはしゃいでいる2人を見ながらプレゼント選出に真剣に悩むルシファーであった・・・
あああ〜、何とか書き上げました。原稿無しでいきなり打ち始めたので、まとまるか心配でしたが・・・
打ってても「これ以上長くなるとマズイって!」とオロオロしながらやってました。
クリスマス企画、「フェゴールとゼット」でございます。いや、正確に言うと三人ですか。
フェゴ、2、3歳位の喋りを目指してみましたが、いかがでしょうか?会長流になってしまいましたが(笑)
フェゴール、可愛くて好きなのですが、なかなか同志様がいなかったりします。
フェゴールとゼットの小説は別にもう1本あるのですが、そこでもケンカしてます(苦笑)書きやすいのかしら。
ギリギリでいっぱいいっぱいでしたが、読んで頂けると嬉しいです♪
もう少し文章構成力を養わないと・・・。