「・・・遅いですね、いつもなら私よりも早くここに来ているのですが・・・」
ミカエルはそう言って席を立ち、庭の周囲を見回した。
ミカエルは毎日必ず永久と話す時間を持つ事にしている。
今まで出来なかった分、少しでも永久といる時間を。
初めは自分の存在に戸惑っていた永久も次第に心を開いてくれた。
ぎこちなかった表情も、今では年相応の無邪気さで自分に接してくれている。
永久に甘えられる事がミカエルにとって嬉しかった。
兄、刹那と離れ離れになった彼にこれ以上寂しい思いをして欲しくないから・・・

かつての自分のような・・・


「-----? 父さま!?」
ミカエルがはっとして振り返ると、手にいっぱいの花を抱えた永久が立っていた。
「2回くらい呼んだけど、父さまの返事が無かったから心配したよ?」
そう言って不思議そうに顔を覗き込む永久にミカエルは慌てて、
「ああ・・・少々考え事をしてましたから。あなたが来ないので
心配していたのですよ。あなたはいつも早くに来て私を待っていてくれますから」
穏やかに微笑んだあと、永久の抱えている花にそっと触れた。
「この花は・・・あなたが毎日大事に育てていた花ですね。綺麗に咲きましたね」
ミカエルの言葉に照れたように俯き加減に頷く永久。
そして持っていた花をミカエルに差し出す。
「今日はね、地上では父の日なんだよ。本当は何か良い物をと思ったんだけど、
僕にはこの位しか父さまにしてあげられなくて・・・」
すまなそうにミカエルを見る永久に、ミカエルはそっとしゃがみ込んで永久を抱き寄せた。
「いいえ、私はあなたが私を父親として認めてくれて、
そして何かをしようとしてくれた。それだけで私は充分幸せですよ」
永久を抱き寄せたまま、何かを噛みしめるように言うミカエルに
永久は顔を真っ赤にして、
「え、えっと・・・。父さま、そろそろお茶の時間にしませんか。」
照れを隠せない様子でしどろもどろに話す永久にミカエルはくすっと微笑って
「そうですね。いつもより遅くなりましたが、お茶にしましょうか。
是非あなたにこの花の育て方とか聞いてみたいですしね」
「・・・!はい、父さま」
永久はこの上なく幸せそうな笑顔で元気にそう答えた。


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ミカエルと永久「Angel's Tale」.