*天地間の気を操る荒ぶる神*
読んで字の如く、風を操る神である。背中に背負った皮の袋から様々な強さの風を繰り出す。それは天地万物の滞りを解消する為のそよ風の事もあれば、神罰を体現した暴風の事もある。
また、配下に様々な風の精霊を従えているとも言われ、これらの精霊は「風神(ふうじん)」の号令一声の元、各地に散らばって猛威を振るったと言われる。人々はこうした風の精霊が齎す暴風に対して、鎌等の鋭利な刃物をかざして風に対するまじないとした。鎌等の刃物には風の猛威を和らげる効果があると信じられていたのだ。
「風神」の伝承は古くから日本各地に伝えられ、様々な姿形で語られている。
例えば「古事記」ではオオクニヌシ(大国主命)の子、タケミナカタ(建御名方神)やイザナギ(伊耶那岐命)の子、シナツヒコ(級長津彦命)等が風を司る神として伝えられている。また、風の神を女性の姿で伝える伝承も多い。これを鎮める為に若い男性が声をあげて祈ると風が治まるが、女性が声をあげたり騒いだりすると「風神」が怒り、ますます風が強くなると言う。
今現在最も普遍的な、鬼の姿をした「風神」は仏教伝来の影響によるもので、その後、時代を超えて多くの絵師によって屏風絵に描かれ、すっかりイメージが定着して今日に至っている。昨今では某製薬会社のコマーシャルに登場した姿が記憶に新しい。