オオグンカンドリ
Great Frigate-Bird (Fregata minor)
「軍艦鳥」とは、また物騒な名前を付けられたモノだ。
名前の重々しさも然る事乍ら、彼等グンカンドリの暮らしは、
その様相を知らぬ者には度肝を抜く事ばかりである。
彼等は「飛びながら」生きる事に高度に適応している。
餌を得る事も、巣の素材を集める事も、殆ど飛びながらこなす徹底振りだ。
ある科学者が、砂浜の一角に魚の切り身を置いて、
グンカンドリが咥え去る際の速度などを測定する実験を行った。
グンカンドリは、記録されている最高速度に近い素早さで切り身を咥え去ったが、
その際、砂浜には砂の乱れた形跡は少しも残されてなかったと言う。
だが、こうした熟練の狩りの技術を身に付ける為には、
相当の「修行」が必要だと言われている。
グンカンドリは、鳥類の中でも取り分け成長の遅い鳥としても知られる。
そして、グンカンドリの名に恥じぬ狩りの技術を身に付けるまでに、
多くの雛が修行半ばにして命を落とす事も知られている。
ローマは一日にして成らず、
空の海賊も生まれながらの強者、と言う訳には行かないのである。
自然の厳しさを垣間見るようなエピソードだと思う。
<データ>
*分類*
鳥綱 全蹼目 グンカンドリ科
*分布*
南半球各地の島嶼
*大きさ*
全長79〜104cm、翼開長1.76〜2.3m、体重750〜1625g
*食性*
魚食性。表層を泳ぐトビウオなどの魚類やイカなどを捕食する。
時折、他の海鳥を追い回し、その獲物を吐き出させて力づくで奪い取る事も多い。
*備考*
ペリカンに近縁の大型の水鳥で、空を長時間飛ぶ事に極端に適応している。
燕尾状の尾羽と長大な翼で、最高速度400km近いスピードで飛翔する事が可能。
対して脚は短く退化していて、泳ぐ事も歩く事も不可能な程で、木の枝を掴むくらいしか出来ない。
耐水性に乏しい黒っぽい羽毛、先端が鉤状に曲がった長い嘴、そしてオスは特徴的な赤い喉袋を持つ。
喉袋は繁殖期の際ディスプレイの道具として用いられ、オスがこれを膨らませ誇示する様は見事。
大抵2年に1回の割で産卵・育雛する。
成長の遅い鳥で、雛が孵化し、巣立ちまでに凡そ1年、
更に一人前になるまで3年前後の長い期間を要すると言われる。