リーフィー・シードラゴン
Leafy Seadragon (Phycodurus eques)
初めて彼等を見た時は、とても魚類だとは信じられなかった。
伝説に語られる『龍』が実在するのなら、
こんな生き物なのだと思わしむる威厳と迫力が、其処にはあった。
だからこそ、通常のタツノオトシゴを
「海のウマ(Sea Horse)」と呼ぶ英語圏でも、
敢えて彼等には「海の龍」を意味する名前をつけたのだろう。
因みに、日本では嘗て彼等を「ボロクズウオ」と呼んでいた事があった。
体に生えている海藻状の突起からの連想だが、
あんまりな命名だと思う。
<データ>
*分類*
硬骨魚綱 ヨウジウオ目 ヨウジウオ科
*分布*
オーストラリア南部の浅い海の地域
*大きさ*
全長25〜40cm、体重200〜225g
*食性*
肉食。小魚、エビ、プランクトンなどの小さな生物を、
管状の口で海水ごと吸い込んで食べる。
*備考*
タツノオトシゴに近縁の海水魚。但し、見かけはとても魚類には見えない。
最大の特徴は全身に隙間なく生える海藻状の皮膚突起。
これは「皮弁(ひべん)」と呼ばれ、彼等の住処である海藻の林立した浅い海においてカムフラージュの役割を果たす。
この皮弁によるカムフラージュと、非常にゆっくりした遊泳法の為、
傍から見るとちぎれた海藻が潮の流れに漂っているようにさえ見える。
オスは腹部に「育児嚢(いくじのう)」と言う特殊な器官を持ち、メスがこの部分に産み付けた卵を
孵化するまで保護すると言う非常に変わった習性がある。
珍妙な姿から水族館の人気者であるが、
環境の変化に極めて敏感で、飼いこなすのは容易な事ではない。