カラカル
Caracal (Felis caracal)

いったいにネコの類には、
ヒトの目には何も見えぬ場所を、
唐突に凝視するものが多い。
飼いネコが突然何も無いところをじっと見つめ出して、
何事かと不気味に感じる方も結構多いのではなかろうか。

アフリカの砂漠に住む大型のヤマネコ、カラカル。
彼等はその鋭い眼光から、
中世ヨーロッパでは「優れた透視力」のメタファーとされた。

その力は、人間の肉体をレントゲンの如く透視するは朝飯前、
分厚い壁も聳え立つ山の向こうも、
ありありと見透かしてしまうと言うのだから凄い。
カラカルの透視力を示す言葉として、
「若し人間がカラカルの透視力を身につけたなら、誰もが道行く人間を見て吐き気を催すだろう」
…と言う主旨の言葉があるほどだ。
皮膚の下に存在する血液や胆汁が丸見えになると言うのである。
成る程、巧い言葉である。

確かに彼等の眼光を見ていると、
昔の人々がそのような幻想を抱いた事に納得が行く。
<データ>

*分類*
哺乳綱 食肉目 ネコ科
*分布*
アフリカ北部から中東、インドにかけての砂漠地帯
*大きさ*
頭胴長60〜90cm、尾長25〜30cm、体重13〜20kg
*食性*
肉食。主な獲物は鳥類。他にウサギや小型の有蹄類、マングース等も襲う。
鳥類を捕獲する時は脚力にモノを言わせ、2mもの高さまでジャンプして飛ぶ鳥すら落とす。
*備考*
中型犬程の大きさになる大型のヤマネコ。又の名を「サバクオオヤマネコ」とも言う。
砂色の単調な体色、発達した四肢、そして特徴的な房毛のついた黒い耳を持つ。
カラカルの名はこの耳に因むもので、
トルコの古い言葉で「黒い耳を持つ者」と言う意味の“karakulak"の語に由来。
単独生活者で、概ね夜行性。
素晴らしい跳躍力を持ち、走れば速く、木登りも巧み。
一見凶暴そうな外見に反して非常にヒトに馴れ易い動物で、
インドやペルシアでは飼い馴らしてハトなどの鳥を捕らえる際に猟犬の代わりに用いる。
中世ヨーロッパの古書に「鋭い透視力」のメタファーとしてしばしば記される
“ボイオテイアの大山猫”は本種の事。