セスジキノボリカンガルー
Ornate Tree Kangaroo (Dendrolagus goodfellowi)

「ブタもおだてりゃ木に登る」等という戯れ歌が少し昔に流行った事があるが、
カンガルーの仲間にも木に登る奴がいると聞いたら、
意外に思われるだろうか。

小学生の頃、
「ニューギニアには木に登るカンガルーがいるんだって」と級友の前で話したら、
物笑いの種にされた事が有る。
それだけ、地上を力強く跳躍するカンガルーのイメージが強いと言う事なのだろうが、
真実を述べているに関わらずお終いには嘘つきと嘲られ、
幼な心に酷く哀しかった物だ。

嘗てキャプテン・クックは、
オーストラリアでカンガルーをスケッチして持ち帰り発表したところ、
聴衆にホラ吹き呼ばわりされたそうだ。
その時の孤独感、悲しみは如何ばかりであったか…。
期せずして私は幾星霜の時を経て、
稀代の冒険家と同じ悲しみを味わう事になってしまった。

キノボリカンガルーを見る度に蘇る子供の頃の苦い思い出である。

<データ>

*分類*
哺乳綱 有袋目 カンガルー科
*分布*
パプワニューギニアの山岳地帯
*大きさ*
頭胴長55〜75cm、尾長65〜85p、体重7〜9.1s。メスの方がやや大きい。
*食性*
植物食。木の葉が主食。果実や花なども食べる。
飼育下ではニワトリの肉を食べるようになった例も知られている。
*備考*
ニューギニアの高地に住むキノボリカンガルー9種のうちのひとつ。
全身赤褐色で、背面の色合いは濃く、背筋にそって目立つ縞模様がある。顔面や手足の色合いはやや淡い。
通常のカンガルーとは逆に、前脚の筋肉と爪が非常に発達しており、尾は細長い。
後脚は幅が広くなっており、交互に動かす事が可能。
これらの特徴は全て樹上生活への適応である。
夜行性で、滅多に地上には降りないが、降りた際は普通のカンガルーのように跳躍しながら移動する。
樹上での移動能力は高く、またジャンプ力もかなりのもの。
性質は極めておとなしく、現地ではペットにする人もいる。
スポーツハンティングの絶好の標的とされ、数が激減している。