キンシコウ
Golden Snob-nosed Monkey (Rhinopithecus roxellanae)

金色の美しい被毛と、目も醒めるようなブルーの顔。
一度見たら忘れられない姿をした美しいサル。
それがキンシコウである。
その印象深い姿ゆえ、日本では
「西遊記」の孫悟空のモデルとなったサル、と言う通説まで誕生している。
(実際のところは、必ずしもそうではないようだ)

その美しさだけではなく、
住まう環境が容易にヒトを近付けぬ険しい山中だった事もあり、
昔からこのサルは希少な生き物として付近の住民に崇められていた。
嘗てはこの動物の毛皮製品や意匠は皇族や貴人しか身につけてはいけないモノだったし、
近世でも、昨今までは「門外不出の珍獣」として
海外の動物園での飼育を一切禁じていた程だ。

この珍奇なサルが日本でも見られるようになったのは、
ごく最近の事である。
幸いと言うべきなのかどうか、日本に齎された彼等は
いち早くその環境に慣れた様子だ。
子供も生まれ、その子供が長じて新たな繁殖群となり―
日本生まれのキンシコウも年々数が増えているらしい。

現地では畏敬の念を以って扱われながらも、
時代の荒波に揉まれ決して安泰な暮らしを送っているとは言い難い彼等。
日本での繁殖の隆盛が、少しでも彼等の命脈を保つ一助となればよいのだが。
<データ>

*分類*
哺乳綱 霊長目 オナガザル科
*分布*
中国西部の山岳地帯
*大きさ*
頭胴長52〜83cm、尾長61〜97cm、体重16〜22kg
*食性*
植物食。様々な木の葉やその芽、花、冬には樹皮や枝も食べる。
植物食に適応した大きな消化器官を持ち、摂食後の消化活動の際に出る熱で極寒の冬も乗り切ると言われている。
*備考*
別名「シシバナザル」または「コバナキンイロテングザル」とも言う。
人間を除く霊長類の仲間では、最も寒い地域に棲息する種類。
名前の由来となった金色がかった褐色の毛皮(毛の長さ15〜18cmにも達する)と、
パステル系ブルーの顔つき、上を向いたシシ鼻が特徴。
サル類としては異例な、大きく発達した胃袋を持つのも特色のひとつ。その為、おなかがぽっこりとしている。
1頭のオスを中心にした小規模の群れで生活し、水を飲む時以外は殆ど樹上で生活する。
時にはこの群れが幾つかまとまって大きな群れになる事も。
優れたジャンプ力の持ち主で、枝から枝へ渡る時に見せる大跳躍は見事の一言。
学名は19世紀のトルコ王朝に実在した宮廷娼婦・ロクセラーヌに因む命名。
棲息地が狭く、ヒトの手の及ばぬ険しい土地な為、その生態は未だ明らかになっていない。