ベニイロフラミンゴ
Greater Flamingo (Phoenicopterus ruber)

フラミンゴには、「自分の血を雛に飲ませて子育てをする」と言う俗信がある。

滅多にお目にかかれないシーンだが、フラミンゴが子育てをする時…
運がよければ親鳥が雛に口移しで真っ赤な液体を飲ませる光景を目の当たりに出来る筈だ。

これは「フラミンゴ・ジュース」と言い、親鳥が体の中で
特別に作った栄養食である。
脂肪分・蛋白質に富んだこの栄養食を食べて、雛は草が伸びるが如くずんずん成長する。
この栄養食が赤いのは主に羽毛に沈着しているカロチン系の赤い色素の為で、
ほんの少々赤血球が含まれている。
フラミンゴの雛は生まれた時は白い産毛に包まれているが、
この「フラミンゴ・ジュース」を摂取する事により、
成長した時にあの鮮やかなピンク色の羽毛を生じる事が出来るのだ、と言う。

哺乳類のミルクとは違い、この栄養食はオスメス両方で分泌が可能だ。
動物園の観察では、オスの方がメスより熱心にこれを与える傾向があると言う。
自らの羽毛の色素を消費して作る栄養食だから作る方は大変だ。
与え続けると自らの羽毛の色素が減少し、子育てが終わる頃には羽毛が真っ白になってしまう。

フラミンゴのピンク色は、繁殖行動において非常に重要な意味を持っている。
若し次の繁殖期までに羽毛が元のピンク色に戻らないと、そのオスは伴侶に見捨てられてしまうのだ。
動物園では子育てが終わったオスに、羽毛の色を戻すのに効果的な、
摩り下ろしたニンジンやサクラエビなどの「特別食」を与えてオスの努力に報い労を労う。

子育てとは常に何らかの浪費と犠牲を伴うものである。

<データ>

*分類*
鳥綱 フラミンゴ目 フラミンゴ科
*分布*
カリブ海沿岸、ガラパゴス諸島周辺の塩水湖や干潟。
近縁種がヨーロッパ、アフリカ、西アジアの同様の環境に棲息。
*大きさ*
全長80〜145p、体重2.5〜3kg。オスの方がやや大きめ。
*食性*
濾過食。塩水湖に豊富に産する緑藻類やプランクトンが主食。
*備考*
深紅の羽毛が美しい大型の渉禽類。又の名を「紅鶴(べにづる)」とも言う。
姿形はツルやコウノトリに似ているが、分類学的にはサギ類とカモ類の中間に当たると考えられており、
現在では独自のフラミンゴ目に分類される。
極めて群集性が強く、少ない個体数で飼育するとストレスで死んでしまう程。
「へ」の字に曲がった嘴と肉厚な舌、「ラメラ」と呼ばれる櫛型の細かい歯状突起が特色。
これらの口器を使い、水中の微生物を水ごと吸い上げて漉し取り、食べる。
動物園ではニワトリ用の飼料にシラス、オキアミ等の動物性蛋白や食紅を混ぜたものを与える事が多い。
極めて長寿な鳥で、飼育下で50年前後生きた個体も知られている。
泥を捏ね上げて塚を作り、それを巣として1卵を産卵、雌雄両方で抱卵・育雛する。

※フラミンゴ・ジュース…別名「フラミンゴ・ミルク」とも言う。
主成分は脂肪分15%、蛋白質8〜9%、炭水化物0.1〜0.2%、赤血球1%前後。
親鳥はこの「ミルク」を『そ嚢(そのう)』と呼ばれる消化器由来の内臓で生成し、口移しで雛に飲ませる。
似たような栄養食はハトの仲間でも知られており、こちらは「ピジョン・ミルク」と呼ぶ。