ユキヒョウ
Snow Leopard (Panthera uncia)
チベットに伝わる神話。
長い長い日照りが続いた年があった。
作物は実らず、木々は枯れ、人々がもはや死を待つのみとなった或る日。
天上に近い山の頂に一頭のユキヒョウが現れた。
彼は空をねめつけ、太く長い尻尾を天に向かって振り上げ、
懇親の力を込めてグルグルと振り回し始めた。
尻尾が巻き起こす風は、何時しか空に四散する雲を山の頂に集め、
巨大な雨雲と為した。
地上には叩きつけるような大雨が降り注ぎ、大地は再び潤った。
以来、人々はユキヒョウを神の使いと崇めるようになった。
嘗ては神獣と呼ばれた彼等。
だが時代は一変し、彼等は密猟者に追い詰められている。
美しい毛皮を狙われての事である。
滅びの運命を否が応無く背負わされた、神獣の復権を願うのは私だけではあるまい。
<データ>
*分類*
哺乳綱 食肉目 ネコ科
*分布*
ヒマラヤ山脈とその周辺
*大きさ*
頭胴長1〜1.3m、尾長80cm〜1m、体重25〜70kg
*食性*
肉食。野生のヒツジ類やウサギ等の小獣、時にはキジ等の鳥類も捕らえる。
大型の獲物を捕らえるのは10〜15日に1頭の割合らしい。ごく稀に家畜を襲う事も。
*備考*
ヒョウに似ているが、小型のネコ類の特徴を併せ持つ特殊な肉食獣。
中央アジアの限られた地域にのみ棲息する。
棲んでいる場所が難攻不落の高山地帯である為、野外での調査もあまり進んでおらず、
生態には謎の部分も多い。
季節によってかなりの距離を移動して暮らすが、これは獲物の移動に合わせての事らしい。
単独生活者で特定の縄張りは持たないが、糞尿などによるマーキングで他個体との衝突を避ける。
寒冷な環境で暮らす為、他の動物に比べ夏と冬の換毛がはっきりしている。
特に冬毛では足の裏にも毛が生えて、防寒と雪上で滑らない為のブーツ代わりになる等、適応が著しい。
毛皮を狙った密猟の危機に晒されており、早急な保護が叫ばれている。