バニップ
学名:ティラザロフス・ピスキヴォルス
Bannip(Tylazalophus pyscivolus)
分類*哺乳綱 有袋目 フクロアザラシ科
棲息時代*近未来(今から500万〜700万年後)
大きさ*全長3.5m(セイウチ大)
分布域*オーストラレーシアの河口、海岸
「鰭足有袋類」では最大の体躯を誇り、
大きな個体では4m近くにまで大きくなる。
柔軟な長い首と、アザラシ類に酷似したヒレ状の四肢が特徴。
沿岸部に数頭の群れで棲息し、様々な魚類を捕獲して食べる。
長い首は20個もの頚椎(普通の動物では7個)で形成されており、
地上に棲むどんな捕食者よりも柔軟に出来ている。
海中では四肢を羽ばたかせてゆったりと泳ぎ、急ぐ時はイルカの様に海中で跳躍する。
交尾・出産(一産一子)は海岸で行うが、
育児嚢で新生児を保護できる為、従来の鰭脚類ほど陸地に縛られずに行動できる。
子供は育児嚢である程度まで大きく育った後、安全な潮溜まりに離され、
親について泳げるようになるまで其処で泳ぎの鍛錬をする。
学名は「魚を貪り食べる、袋を持ったオデコ坊主」の意味。
*潮溜まりの中に数頭の海獣のシルエットが見える。1頭は大きく、残る数頭はまだ子供のようだ。海に進出した有袋類、バニップの子供達とそのベビーシッターのようだ。子供達は安全な潮溜まりの中で只今泳ぎの訓練中である。此処なら、彼等を狙って深海から迫り来るサメや、陸上でのもたもたした動きに付け込んでちょっかいをかけてくる煩わしい陸地の捕食者も来る事は出来ない。パチャパチャと水を跳ねながら、必死に泳ぎの鍛錬をする子供達。後3ヶ月もすれば、彼等は今よりももっと泳ぎが巧くなり、親達について遠洋まで餌の魚を狩りに泳ぎ出せるようになるだろう。
*気温の変動により影響を受けたのは陸地だけではなかった。 極度の乾燥と海水面の低下(現世の海との格差150m!)により、多くの魚類とそれに支えられて生きてきた動物達が駆逐されたのである。
その時絶滅した動物群のひとつに鰭脚類(ききゃくるい)がある。流線型の体型と鰭状の四肢を持つ彼等は、沿岸部では太刀打ちできる競争相手がいないほど反映した。然し、その分特殊化も激しかった為、急激な環境の変化には対応できず、遂には絶滅してしまった。こうした鰭脚類の絶滅に伴い、各地で様々な動物がその生態的地位につくべく進化した。
地域に寄ってその出自は様々だが(ある地域では鳥類が進出した例さえある)、オーストラリアでは有袋類(フクロネコの仲間)が海に進出を果たした。これが「鰭足有袋類」若しくは「フクロアザラシ類」と呼ばれる、泳ぎを得意とした捕食性有袋類の一群である。彼等はオーストラレーシアの島々を中心に、沿岸部や河口でその漁の腕を振るっている。狙う獲物の種類やサイズに寄って、カワウソに似たものやラッコに似たもの、アザラシに似たもの等様々な種類に分化している。彼等にとって最大の敵は、クジラ類の絶滅によって勢力を増した肉食性の軟骨魚類である。
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鰭脚類(ききゃくるい)
食肉目鰭脚亜目に属する海生の捕食性哺乳類。四肢が鰭状に進化しており、これを推進力やバランサーとして用い、水中を高速で移動できる。アザラシ、アシカ、オットセイ、セイウチなど。