バビルーサ
Babyrusa (Babyrousa babyrussa)

どんなに頑張っても日本の動物園では見る事の出来ない動物は結構いるもので、
海外のイノシシ類などはその顕著な例だと思う。

理由はなぜか。

アフリカや東南アジアに産する野生のイノシシ類には、
家畜のブタに感染すると高い確率で伝染・大量死に至る恐ろしい病気、
その名も「豚コレラ」の病原菌を保持している個体が多いのである。

人間には感染する可能性が低いとはいえ、これと言った予防法も見つかっておらず、
日本を始め多くの養豚推進国では、
自国のブタを守る為にイノシシ類の大幅な国内持込規制を布いている。

此処に紹介する珍獣・バビルーサは、
東南アジアのスラウェシ島だけに住む非常に珍しいイノシシの仲間だ。
乱開発が原因で最近数を減じており、絶滅が心配されている。
彼等から豚コレラが見つかった話は、まだ聞かない。

日本で培われた多くの有蹄類の飼育技法が、ひょっとしたら彼等の命脈を
保つのに役立つかも知れない、その考えは動物関係者なら少なからず思う所処だろう。
でも、前述の規制がある限り、イノシシの仲間である
この動物を国内に持ち込むのは、不可能に近い。

歯がゆい話である。
<データ>

*分類*
哺乳綱 偶蹄目 イノシシ科
*分布*
スラウェシ島の森林地帯
*大きさ*
頭胴長85〜110cm、尾長20cm前後、肩高70〜78cm、体重43〜100s
*食性*
植物食の割合が強い雑食。主に木の葉、木の芽、落果、根菜等を食べる。昆虫等の小動物も少しは食べる。
*備考*
イノシシ類の中でも最も珍しい動物で、分布域が限られており、個体数も少ない。
体毛が殆ど無く黄褐色の地肌が露出している。
オスの上顎の犬歯が、上唇を貫いて恰もツノのように伸びるのが特徴で、
一名を「シカイノシシ」とも言う。
因みに英語名、学名ともマレーの言葉で「シカのようなブタ」と言う意味。
牙の役割については不明な点が多いが、ライバルに対しある程度視覚的な威嚇の効果があるのかも知れない。
あまり大きな群れは作らず、夫婦とその子供で行動する事が多い。夜行性。