コモリガエル
Surinam Toad (Pipa pipa)
進化の実験場、アマゾン。
その淡水域に住むカエルの仲間達には、
過酷な環境で少しでも自分の子孫を確実に生き残らせる為に、
実に奇抜な方法で卵を守護する種類が多い。
此処に示すコモリガエルは、その中でも最たる存在であろう。
卵を産み落とす時、オスがメスの背にしがみ付き、そのまま暫く遊泳する。
遊泳の運動が刺激となり、メスが先ずオスの腹部に卵を産み付ける。
其処へ、オスが精子をかけて受精させ、今度はその卵をメスの背中に押し付ける。
メスの背中に押し付けられた卵は、
その後、スポンジ状に発達したメスの背中の皮膚に半ば埋没し、
完全にメスに保護されるのである。
メスの背中に埋め込まれた卵は、そのままの状態で発育し、
オタマジャクシの段階を経て、
仔ガエルの状態にまで成長してから初めて卵の膜を破って外へ出る。
奇抜な保育方法であると共に、
神秘的な術と言うべきであろう。
<データ>
*分類*
両生綱 無尾目 コモリガエル科
*分布*
南米(アマゾン川水系、オリノコ川水系)
*大きさ*
全長18〜20p
*食性*
肉食性。小型の魚類やイトミミズなどを食べる。飼育下ではレバーなども食べる。
発達した舌を持たないので、餌は感覚器官がついた前肢で掻き込むようにして口に運ぶ(後述参照)。
*備考*
ほぼ一生を水中で過ごすカエルの仲間で、ヒラメのように平べったい身体と、大きく発達した後足の水かきが特徴。
また、水中生活に適応して、魚類などで顕著な器官である、
生体電気や水流などを感知する「側線器官」と言う感覚器官を有する。
前肢の指の先端に星型の皮膚突起があり、鋭敏な神経が集中していて、
これを頼りに泥中で獲物を探す。
目と舌はカエルとしてはやや退化気味で、対照的にに口は非常に大きい。
産卵の際、メスの背中に卵をくっつけ、
孵化するまでメスがそれを背負って生活すると言う特徴で有名。
オスは発情期に、金属的な「カチッ、カチッ」と言う鳴き声を出す。