ニホンコウノトリ
Oriental White Stork (Ciconia boyciana)

嘗て「松上の鶴」と呼ばれ、
身近な神鳥として敬われ、親しまれた鳥…コウノトリ。

明治維新後、猟銃の所持と大型鳥の狩猟が
一般に許可されてからと言うもの、
コウノトリの運命は一変した。
大きな翼と身体を持ち、ゆったりと勇壮に空を舞う彼等は、
鉄砲撃ちにとって格好の的であったからだ。

その上、度重なる戦乱で、松脂や木材としての針葉樹の需要が高まり、
コウノトリの営巣に適した高い針葉樹は片端から伐採された。
農業技術の向上と共に農薬の使用量が増え、
餌を奪われた事も大きな痛手であった。

そして、彼等の命脈は日本ではすっかり絶えた。昭和46年の事と言う。

それから34年。

兵庫県豊岡市で、人工飼育されていたコウノトリが5羽、
自然復帰の期待を一身に背負い、野に放たれた。

野生個体が絶滅した鳥を放鳥、自然繁殖させ、
人との共生を試みるという取り組みはこれまでに例が少なく、
世界各国が注目している。

神鳥の復活は成就するのか…。
コウノトリは、滅びの深淵から飛翔する事が出来るのか…。

私もその行く末を見守って行きたい。
<データ>

*分類*
鳥綱 鸛鷺目 コウノトリ科
*分布*
東アジア(ウスリー、中国北東部、朝鮮半島)の河川・湖沼流域。嘗て日本にも棲息していた。
*大きさ*
全長105〜115cm、翼開長1.5〜2m前後、体重4〜6kg
*食性*
肉食。カエル等の水棲動物、ドジョウやフナなどの魚類、昆虫、時にはネズミやトカゲなども食べる。
*備考*
大型の渉禽類で、ツルに似た姿をしているが全く別の種類。
黒と白の染め分けが美しい羽毛と、赤い脚、短剣のような太い嘴が特徴的。
ある程度ヒトの手が加わったような水田地帯などの湿地に広大な縄張りを構え、
単独若しくはつがいで行動・採餌する。
針葉樹の巨木の頂に枯れ枝を集めて大きな巣を作り、雌雄共同で抱卵。
つがいの形成が難しい鳥で、飼育下でも相手が気に入らなければ激しく争い、
殺し合いにまで発展する事があり、それが飼育下での増加を困難にしている。
「シュー」と聞こえる弱い鳴き声以外、音声らしきモノは出さず、
個体間のコミュニケーションは「クラッターリング」と言って、
嘴を激しくカタカタと打ち鳴らす動作で行う。
世界各国で個体数増加の為に様々な取り組みが試みられている。
日本では1956年に特別天然記念物に指定されている。