ビントロング
Binturong (Arctictis binturong)

熊猫、と漢字で表記した場合、
日本では大抵パンダの事を指す。
しかし、英語圏でBear Catと表記した場合は
全く別の生き物の異名となる。
その生き物がビントロングだ。
ジャコウネコやマングースに近い生き物だと言う。

ビントロングとはマレーの土着語で「クマのようなネコ」と言う意味である。
事実、彼等はクマとネコをない交ぜにしたような奇妙な姿をしている。
もっさりした動きの生き物で、果物や甘い物が好きな所はクマに似ている。
そして、半ば引っ込める事が可能な鋭い爪はネコに似ている。

面白いのは彼等の尻尾。
肉食動物としては異例な事に、物にしっかり巻きつけられるのだ。
若い個体ではこの尻尾を支えにして太い木の枝からぶら下がったりも出来ると言う。
動物園では、天井に張り巡らせた梁に尻尾を絡ませ、
宙ぶらりんのまま外を飽かず眺めている事も珍しくない、との事。

最近はペットショップでもごく稀に見かけるらしいが、
残念な事に、私自身はまだ生きたビントロングに逢った事は無い。
何時の日かお目にかかりたいものだ。

※追記…2005年11月、名古屋・東山動植物園にて、
念願叶って遂に生きたビントロングに出会えました。
(中華的熊猫)
<データ>

*分類*
哺乳綱 食肉目 ジャコウネコ科
*分布*
ネパールからマレー半島、インドネシアの森林地帯
*大きさ*
頭胴長60〜70cm、尾長55〜90p、体重9〜14s
*食性*
果実中心の雑食。中でもバナナに目が無い。
ネズミ等の小獣、小鳥やその卵、魚などを食べる事もある。
*備考*
最大級のジャコウネコ類。クマとネコを綯交ぜにしたような姿が特徴的。
鬱蒼とした森林の樹上で通常単独で生活し、殆ど地上には降りない。
長い尻尾は枝などの物体に巻きつける事が可能で(この性質を『纏じょう性』と言う)、
この特徴が彼等の樹上生活を可能にしていると言っても過言ではない。
若い個体では尾の力のみを頼みに木の枝に逆さにぶら下がる事も可能。
食肉動物で尻尾で物を掴めるのは、本種とアライグマの仲間のキンカジューだけである。
薄暮型の夜行性で、昼間は木の洞などで休み、その際、長い尾を身体に巻きつけ寒さを凌ぐ。
動きは鈍いが、性質は割と荒っぽい。但し、幼獣の頃から飼育すると慣れる事もあり、
最近はペットとして輸入される事もある。