*妖鳥を従える謎の怪火*
一見すると鳥が火をまとっているように見えるが、実は火が本体で鳥は飽くまで従者だと言う、実に不思議な妖火。
名前の通りふらりふらりと彷徨うだけで、全く実害のない存在であるが、闇夜にこんな火がふらふらと彷徨っているのを見れば、きっと誰でも驚くであろう。
この「ふらり火」に関しては、こんな伝説が伝わっている。
富山県の領主・佐々成政(ささ なりまさ)には、その名を「小百合(さゆり)」と言う美しい愛妾がいた。容姿端麗、才色兼備の言葉を地で行くような優れた人だったと伝えられ、成政もこの小百合を深く寵愛してはばからなかった。それが他の奥女中達の反感を買ってしまったのだろう。ある時成政が城を留守にしたその最中に、「小百合姫が小姓と密通している」と言う根も葉もない嘘の噂を流したのである。帰城した成政はこれを聞いて烈火の如く怒り、有無を言わさず小百合を庭に引きずり出し、木の枝に逆さに吊るした挙句滅多斬りに切り刻んで殺してしまったのである。
またこの時、小百合の一族18人も、小百合が殺された木の傍に引きずり出され、無実の訴えも虚しく切り殺された、と伝えられている。
その後、小百合とその一族が殺された場所に、ふらふらと彷徨う鬼火の姿が見られるようになり、人々はその彷徨う姿から「ふらり火」と呼んでこの哀しい話を伝えたと言われる。
この説話では何故鬼火が鳥を従えているのかは解説されていないが、一説によるとこの怪火が従えている鳥の姿はインド神話に登場する「ガルーダ」と言う巨鳥がモデルともされており、仏教伝来が何らかの影響を与えている可能性が指摘されている。