ルリカケス
Purple Jay (Garrulus lidithi)

カラスが若し今のような黒一色の羽毛じゃなくて、
例えば赤とか青とかの美しい色を帯びた鳥ならば、
人々はどう思うのだろうか?

…識者がしばしば取り上げる話題である。

私は、カラスが派手な色を帯びているならば
きっと此処に示したルリカケスのような鳥になっているだろうと想像する。

ルリカケスはその美しい瑠璃色の羽毛を付け狙われ、
戦前は年間数千羽も捕殺されて羽毛を毟られる憂き目に遭っていたと言う。
そして今は、分布域に不用意に放たれたマングースに雛や卵を狙われ、
ルリカケスの個体数は非常に少ない物となっている。

かたやカラスはと言えば…。
人間達の活動と共に年追う毎に生息域を拡大し、
毒殺、銃殺などの個体数調整活動など何処吹く風、
未だにその隆盛は多くの人の悩みの種となっている。

同じ“翼をもつもの”に生まれたのに、何と言う境遇の相違。
ルリカケスにとっては、これも美しい姿に生まれた故の悲劇、と言う奴か。何処かで、

「この瑠璃色の羽に恨みが御座る」

と言う、ルリカケスの哀しげな呟きが聞こえそうである。
<データ>

*分類*
鳥綱 燕雀目 カラス科
*分布*
日本(奄美大島の内大島本島と加計呂麻島、請島)の森林地帯。嘗て徳之島にも棲息すると考えられていたが、
最近の研究で同島には現存しない事が判明した。元々居なかったか、或いは嘗て存在したが絶滅したのか…は不明。
*大きさ*
全長30〜38cm、体重170〜196g
*食性*
雑食。木の実や草の根、昆虫などを食べる。中でもサツマイモとシイの実が好物。
ごく稀にトカゲや小さなヘビを捕食する事もあるらしい。
*備考*
奄美大島の限られた地域にしかいない日本固有の鳥で、天然記念物に指定されている。
日本本土に棲むカケス類よりも寧ろインドに棲息するカケス類に血縁関係があると言われ、
その進化の道筋について様々な研究が為されている。
朝や夕方に活発に活動する薄暮性の鳥で、繁殖期にはつがいで、それ以外の時期は少数の群れで活動する。
樹洞や廃屋の屋根裏に営巣し、1〜4個のタマゴを産卵。雌雄で雛の面倒を見る。
戦前、美しい瑠璃色の羽毛を羽根飾りの材料にする為、多数捕獲されて輸出されていた。
昨今は環境破壊や外来の捕食動物による食害で、個体数が減少。保護活動が活発化している。
現地では「ヒョ−シャ」若しくは「ショーシャ」と呼ばれている。