ツチブタ
Aardvark (Orycteropus afer)
動物の世界には時折、驚くべき能力を持った動物が現れる。
ツチブタはそんな動物のひとつだ。
彼等の特技は穴掘りである。
シロアリを主食に生きる彼等にとって穴掘りは生き抜く上で必須のスキルだ。
小型のイノシシ程もある大きな体を隠す為の巣穴も自前で掘る。
その掘りっ振りたるや惚れ惚れする程である。
彼等の爪はあたかも鋤(すき)の様に緩くカーブしており、
石の如く堅牢なアフリカの大地を容易く掘り返してしまう。
彼等の穴掘りのスピードを物語る幾つかの言葉がある。
「ウマの上でツチブタを発見し、捕らえようと降りたら既に地中に潜って姿が見えなかった」
「1頭のツチブタがスコップを持った数人がかりが掘るより早く穴を掘りあげてしまった」
そんな彼等に付けられた学名は…
「オリクテロプス・アフェル」。
“アフリカの穴掘り名人”と言う意味である。
初めて彼等に出逢った学者先生方の驚きが伝わるようでもある。
<データ>
*分類*
哺乳綱 管歯目 ツチブタ科
*分布*
サハラ砂漠以南のアフリカの草原地帯
*大きさ*
頭胴長1〜1.6m、尾長45〜60cm、体高60〜65p、体重50〜85kg
*食性*
昆虫食。ある種のシロアリが主食。アリやバッタなど、他の昆虫も食べる。
胃袋や糞からある種の植物の種が発見された事もあり、若干量の植物質も食べるらしい。
*備考*
現存する動物では他に類縁の無い特殊な動物で、全ての有蹄類の祖先に最も近い生き物。
ブタに似た鼻先と蹄、ロバのような耳、クマのような体、カンガルーのような尻尾を持ち、
全身にはまばらに剛毛が生えている。
夜行性で、昼間は自ら掘った巣穴で休んでいる事が多い。
穴掘りの腕(?)はかなりのもので、恐らく穴を掘る事のできる野生動物では最も大きなものと言える。
エナメル質と歯根が全く無い特殊な歯を持っており、それが分類名(管歯類)の名前の由来となっている。
気候の変化に敏感で非常に臆病な動物。
動物園ではオオアリクイと同じような飼育環境、餌で飼育される。