インドマングース
Indian Grey Mongoose (Herpestes edwardsi)

私が小学生くらいの頃だったか、
当時住んでいた家の近所に剥製の販売店があった。

その店のショウウィンドウには、鎌首をもたげるコブラと、
牙を剥き後脚で立ち上がるマングースをあしらった剥製が飾られていて、
道行く人々の目を奪っていた。

昔からマングースは毒蛇を貪欲に食い殺す生き物と考えられていて、
私が子供の頃の図鑑にもその説はよく取り上げられていた。
実際、沖縄やハワイ、キューバなどではネズミや毒蛇の害を除く目的で、
無数のマングースを野に放した経緯がある。

然し、ヒトと言う生き物がともすれば「楽をして生きたい」と思うように、
マングースだって捕らえるのに危険を伴う餌よりは
より捕まえやすい餌を欲するのが当然の帰結と言うものである。

今、世界各地に放たれたマングースがすっかり野生化し、
土着の生態系を大幅に撹乱する事態となっている。

自然と言う存在の調和を考える上で、
我々はこの先人の負の遺産を決して忘れてはならないだろう。
<データ>

*分類*
哺乳綱 食肉目 マングース科
*分布*
インドからアジア西部、中東にかけての草原地帯
*大きさ*
頭胴長30〜45cm、尾長27〜40p、体重400〜1500g
*食性*
肉食。ネズミなどの小哺乳類、トカゲやヘビ、カエル、昆虫などの節足動物などを獲物とする。
鳥やワニの卵、家禽を捕る事も有り、時には果実等も食べるらしい。
*備考*
一名を「ネコイタチ」とも言う。ジャコウネコ類に近縁の小型の肉食動物。
生垣や藪の中などを住環境として好み、また自ら巣穴を掘って隠れ潜む事も多い。
単独〜家族群までの多様な棲息頭数で生活し、昼も夜も活発に活動する。
尾の付け根に臭腺を持ち、仲間同士の識別の為に用いるらしい。
一般に毒蛇を貪欲に捕食すると言う説が流布しているが、特にヘビを好む訳では無い。
また、ヘビに噛まれても平気だとも通説では言われているが決してそうではなく、
毒への抵抗力は通常の哺乳類よりほんの少し強い程度で、噛まれれば死んでしまう。
大抵、ヘビを凌駕する素早い動きで相手を翻弄し、瞬時に殺してしまう為、噛まれずに勝敗が決するに過ぎないらしい。
近年、様々なメディアでヘビを殺す際の巧みな様子がクローズアップされ、世界各地に毒蛇駆除の目的で導入されたが、
その後、土着の生態系を大いに撹乱するようになり、その対応が問題視されている。
極めて獰猛な側面があり、動くものならヒトの指にも食いつく。