ユーラシアカワウソ
European Otter (Lutra lutra)

TVで放映されていた海外の自然ドキュメンタリーで、
カワウソとオオワシの、餌を巡る争いの始終を見る機会があった。

カワウソが海に潜り、60cmはあろうかと思われる大きく太った魚を捕らえて岸にあがった。
其処へ、まだ若く狩りの技術が未熟な1羽のオオワシが舞い降りた。

オオワシはけたたましく鳴き、嘴をガツガツ鳴らしてカワウソを牽制する。
餌を狙われていると知ったカワウソが、剥き出しの敵意を顕わにする。
暫く、太った魚を挟んでカワウソとオオワシの睨み合いが続いた。

その内、痺れを切らしたオオワシが魚の頭を鋭い嘴で咥えようとすると、
負けじとカワウソが魚の尾に噛み付く。

一瞬、血みどろの争いを想定して目を覆った。
然し、そうはならなかった。

カワウソは器用に魚の鰓蓋から下の胴体を噛み千切って持ち去り、
残されたオオワシは、さもそれを待ち構えていたが如く、
残された大きな魚の頭を嘴で啄ばみ始めたのだ。


若鳥とは言え相手は空の猛者、カワウソが相手の力量を測り、叶わぬと睨んでの結果か。
いや、叶わぬと見ての逃走なら獲物そのものを諦めそうなモノだが…。
それともオオワシの攻撃は、初めからカワウソが頭を残す事を想定しての擬似攻撃だったのか…。

やや擬人的過ぎるきらいがあるが、

「闘う為のエネルギーを消費するくらいなら、仲良く半分っ子」

結局これが一番の結論のような気もする。
何故なら彼等は、食う為以外に他者の命を奪う必要など無いのだから。
<データ>

*分類*
哺乳綱 食肉目 イタチ科
*分布*
ヨーロッパ、アジアの広範囲の河川流域
*大きさ*
頭胴長50〜80cm、尾長35〜40p、体重5〜12kg
*食性*
肉食(魚類が中心)。ウナギや底棲魚などの動きの遅い魚を好んで襲う。
ザリガニなどの甲殻類やカエル、ネズミなどの小動物、時には水鳥を襲う事もある。
*備考*
水棲のイタチ類。
扁平になった尾、艶のある防水性に富んだ毛皮、水かきのある四肢が特徴。
海岸近くから山間部にかけての広範囲の河川付近に穴を掘って住処にし、
通常単独で生活するが、時には集団で魚群を追う事もある。
山間部に住むカワウソは夜行性の傾向が強く、海岸近くのカワウソは昼間の行動が多くなるらしい。
遊び好きな一面があり、狩りが終わった後など、坂を滑り降りたり、
或いは目的を持たずに水中で数時間も泳ぎ回ったりして過ごす事もある。
コミュニケーションの為に様々な鳴き声を使い分ける。
毛皮を狙った過剰な狩猟や住環境の乱開発が原因で、個体数は減少気味。