シロサイ
Square Lipped Rhinoceros (Ceratotherium simum)

2004年1月19日未明。
上野動物園のシロサイ「ガンコさん」が永眠す…との報せを受けた。

1965年にオスのシロサイ「ツノキチ」(1997年永眠)と共に
アフリカの大地から上野の杜にやって来て以来、
これまでその威風堂々とした姿で子供達の人気者だった彼女。
もっともっと長生きして欲しいと願っていただけに、
非常に残念でならない。

彼女には、他のサイと比較して直ぐにそれと判る際立った特徴があった。
鼻面の2本角が釘抜きか何かの様に交差して生えているのである。
通常のサイではこのような角の生え方は珍しい。
歳をとって活発な動きがままならなくなり、
角の剥落が殆どなくなってしまった為だろう。

その特徴ゆえ、彼女は私にとって非常に印象深い動物のひとりだった。
上野動物園に出向いた時は、何を置いても彼女に逢いに行くのが
恒例行事のようになっていたものだ。

今でも目を閉じて思い出せば、陽だまりの中で
隣に飼育されているクロサイの夫婦を横目に、子供達の歓声を受けながら
うつらうつらと夢路を辿るガンコさんの小山のような巨体が目に浮かぶ。

ガンコさん、安らかに。

<データ>

*分類*
哺乳綱 奇蹄目 サイ科
*分布*
アフリカ南部・東北部の草原地帯
*大きさ*
頭胴長3.7〜5m、体高1.6〜2m、尾長70p前後、体重2.3〜3.5t。
*食性*
植物食。地表の草本を幅広の唇で刈り取るようにして食べる。
*備考*
アフリカに住む2種類のサイの内のひとつ(もうひとつはクロサイ)。現存するサイ類では最大。
「白犀」と言っても特に白っぽい訳ではなく、
一説には幅広の唇を指して言った「Wide」の語を
「White」と誤認した為の命名とも言われる。
この幅広の唇は、地表に生える草本を選り好みせずに食べる為の適応である。
頑健なつくりの身体と、厚さ2〜3cmもある皮膚、
そして鼻面に生えた2本のツノが特徴。
このツノは皮質に含まれるケラチンが発達したもので、折れても半年〜1年程度で再生する。
サイの仲間としては比較的性質は温和。
草原若しくは低木林につがいで暮らす。
そのツノを漢方薬や装飾品の材料にする為過度に乱獲され、
此処数年の間に個体数が著しく減少した。
現在、他の現存するサイ4種と共に国際的規模で厳重に保護されている。