ウリディム
学名:グランディマルテス・キノモルフス

Wulidim(Grandymartes cynomorphus)
分類*哺乳綱 食肉目 イタチ科
棲息時代*近未来(500万年〜850万年後)
大きさ*全長1m(キツネ大)
分布域*アフリカ、アジアの草原地帯

イタチの仲間から進化した草原性の肉食動物。
耳が小さく胴体がやや長めな事を除けば、
現世のキツネやコヨーテに非常に似ている。
開けた土地に数頭の群れで棲息し、群れの力を頼みに大型の草食獣を狩る。
群れの形成はオオカミなどのイヌ類に比べると然程社会的ではなく、
しばしばメンバーの入れ替えが行われるが、
これは近親交配を防ぐ為の知恵であろう。
妊娠したメスは通常群れから離れ、藪の中などに穴を掘って巣を作り、
其処で出産する。
一回のお産で生まれる子供は3〜4頭が普通だが、
食料条件がよければもう少し頭数が増える事も。
前の年に生まれた子供がヘルパーとして母親に付き、
子供や巣篭り中の母親に餌を運ぶ事もある。
名称はバビロニア神話に登場する猛犬の魔物「ウリディシム」に由来。
学名の意味は「イヌの姿を持った偉大なるテン(イタチの一種)」である。
*見晴らしの良い草原で数頭の動物が何かの屍肉に貪りついている。黒と灰褐色のまだら模様に包まれたその姿はキツネやコヨーテなどのイヌ科動物に非常に似ているが、小さ目の耳、しなやかで少々胴長の身体はイヌのそれとはやや異なる体つきである。彼等はウリディム。イタチから進化した社会的な肉食動物である。
やがて彼等は満腹になったらしく、柔らかい内臓や滋養が豊富な筋組織があらかた食い尽くされて骨のみになった獲物の骸を捨て去り、小高い丘にある住処に向かう。大きな石で囲まれた巣穴の中には、乳離れは済んではいるもののまだあどけなさを残した子供達がいる。戻った大人の個体のうち数頭がその前に立ち、その口に咥えていた獲物の内臓の一部を子供達の前に差し出した。顎の発達が弱く、まだ堅い肉を食べられない子供達にとって、内臓は食べやすく且つ栄養を豊富に含んだ欠かせない食料である。子供達が夢中になって内臓に貪りついているのを、群れの統率者と思しき一番大きな個体が慈しむように眺めている。いつしか昼間の強い日差しは静まり、夕暮れの涼しい風があたりを漂い始めていた。

*リュ−ゴとは対照的に、群れの力で獲物を倒して多くの個体を養う方向へ進化したのがウリディムである。
イタチの仲間はごく一部を除けば、殆どが単独で行動する動物だった。そして群れを形成する種類でも、共同で獲物を狩ると言う行動を取るものはいなかった。然し進化の過程で、あるイタチの一派は群れで行動するそれなりのメリットに気が付いた。一個体では到底狩る事の出来ない獲物を狩る事も出来るし、更に獲物を他の肉食獣から防衛する時にも群れると言う行動は非常に有利である。結果、一部のイタチ類は身体の進化だけではなく行動の進化も遂げ、ウリディムを生み出すに至った。
嘗てはオオカミやマダラハイエナ、リゥカオン等が、同様に群れで行動する戦略を以って繁栄する事が出来た。彼等が滅びた後、同様の生態的地位を目指す生き物が登場するのは非常に理に叶っていると言えよう。
彼等は群れと個体数の維持、更に近親交配を防ぐ為に非常に複雑なシステムで維持される群れ社会を形成している。この戦略は非常に成功したものであり、ひいてはそれがアジア・アフリカの広大なサヴァンナでの彼等の隆盛を助けている一因ともなっている。また、彼等の一部には本来の分布域を離れて北部ヨーロッパへと上陸を果たし、其処で別の種類の動物を進化させたものもいる。北部ツンドラに住まう彼等の近縁種については、その項を参照されたい。
***この動物をより知る為のキーワード***
ヘルパー(Helper)

鳥類や哺乳類の一部に措いて、子供の両親以外の成熟個体がその子供を庇護・養育する事、若しくはその個体。
前年に生まれた個体、即ち養育されている子供にとっては兄や姉に当たる個体である事が多い(一部例外もある)。
子供の致死率を大幅に下げるだけではなく、縄張りを保持する動物に措いては、ヘルパーの個体が縄張りを持てるようになるまでの様々な“修行”を兼ねていると考えられている。